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2014年03月30日(日) 阿部慎之助(読売)は限界か

公式戦たった2試合で、どうこう言うのはバカげている――そのことを承知のうえで敢えて言う。読売の主砲・阿部慎之助がおかしい。開幕2試合の成績は10打席8打数2安打、打率2割5分、打点・本塁打はゼロ。

阪神との第二戦(3月29日)では、本塁タッチプレーを怠って阪神にやらずもがなの決勝点を与えてしまった。痛恨のボーンヘッドで、読売は試合を落とした。阿部も読売も開幕ダッシュに失敗した。

阿部はひょっとすると、2013日本シリーズの不振を引きずっているのかもしれない。2013シーズンは打率2割9分6厘、32本塁打、91打点の成績で、悪くなかった。ところが、楽天との日本シリーズに入ると、阿部はまったく打てなくなった。7試合に出場して22打数2安打、本塁打、打点ともに0、打率9分1厘という惨憺たる成績だった。阿部は今年35歳、14シーズン目に入った。しかも捕手という激務である。衰えが来ても仕方がない。

筆者が敢えて、阿部がおかしいと指摘した根拠は、29日の阪神戦最終イニング、阪神の新クローザ―・呉昇桓のスピードボールを打ち損じ、内野フライを打ち上げたシーンからだ。速球に凡フライというのは珍しくないシーンだが、昨年の日本シリーズでも阿部は同じような内野フライを打ち上げて凡退を繰り返していた。阿部の打撃に、明らかに狂いが生じている兆候のように筆者には思えた。

阿部はキャンプインから本調子ではなかったようだ。首を痛めてオープン戦を休んだ、との報道もあった。ルーキーの小林誠司をテストするためにオープン戦に出場しなかったというわけではない。阿部はDHでも出場しなかったのだから。

阿部のスタートダッシュの失敗はコンディション不良なのか、それとも限界なのか。そのことが判明するのにはもうちょっと時間が必要なのだろうが、筆者の直感では、どうも後者のような気がしてならない。そうなると、今シーズンの読売は深刻な危機に見舞われることになる。読売が独走しないぶん、セリーグはおもしろい。



2014年03月23日(日) センバツ、都立高校大敗に思う

◎日本の甲子園出場校はプロ野球マイナーリーグのレベル

今年の第86回選抜高校野球大会(「センバツ」)は興味深かった。「21世紀枠」という筆者にとってはわけのわからない制度で、東京都立高校の小山台がセンバツに出場したからだ。その小山台は3月21日の第一回戦で大阪の履正社と対戦し、0−11、しかも1安打で大敗した。小山台が履正社2年生右腕の溝田悠人から奪った1安打というのも、9回、当たり損ねの小フライが内野手の間に転がり、一塁、間一髪セーフというギリギリの代物。1塁審判の無粋な判定でノーヒットノーランを辛うじて逃れたものだった。

筆者の興味の中心は、いわゆる一般的な高校のクラブ活動の野球と甲子園出場強豪校のそれとのレベルの差であった。小山台の相手履正社は、強豪校がひしめく大阪でセンバツ出場回数4年連続6度、夏の出場回数も2回という実力校だ。はたして、実績、試合結果、試合内容からして、両校の実力差は歴然、プロとアマ以上の開きがあった。やっぱりね〜。

単純に言って、春のセンバツ、夏の大会を問わず、甲子園に実力で出場を決める高校の野球レベルは、一般的な高校のスポーツクラブ活動の次元を越えている。強豪校が行っているリクルーティング、練習量、練習の質、指導者の質と指導方法は、プロ野球並みの専門領域に入っているようだ。言ってみれば、日本の高校野球強豪校のあり方は、米国のマイナーリーグに近い。

◎米国のマイナーリーグは厳しい

米国のマイナーリーグは上からトリプルA、ダブルA、アドバンスト・シングルA、シングルA、ショートシーズン・シングルA、ルーキーリーグの6段階に分かれている。米国においてドラフト指名以外でプロ野球選手になりたければ、まずルーキーリーグでマイナー契約をし、その頂点であるMLBを目指すならば前出の6階段を昇らなければならない。

一説によると、2012年ドラフトで日ハムに1位指名された大谷翔平は、当初米国MLB行きを宣言していたが、米国のシステムを日ハムから聞かされて、恐れをなして日ハム指名を受けたと言われる。大谷の場合、MLB球団がメジャーリーグ契約をするかどうかわからなかったのではないか。だから、大谷を米国野球から日本野球に心変わりさせたのは、ルーキーリーグを出発点にして上に上がる厳しさだったのではないか。

米国のマイナーリーガーの場合、給料はないに等しく、その薄給もすべて食費に消えていくという。移動はバスか長距離の場合は飛行機のエコノミー、ホテルも最低レベルだという。だからマイナーの選手たちは野球以外の仕事で食いつなぎながら、試合で結果を残そうと努める。マイナーの多くの選手が、妻や恋人から経済的支援を受けているともいう。最下層のルーキーリーグであれば、その厳しさは日本人の想像を超えたものであろう。

◎日本の甲子園選手が米国球団とマイナー契約するのはハイリスク

一方、日本の高校野球はそんな心配はない。強豪校に入学すれば、まず身分は高校生として保証され、学割等の社会的恩恵に与れる。給料はないが最低でも寮と呼ばれる宿舎(食費不要)が手に入る。特待生ならば授業料すら免除される。一日野球漬けで、アルバイトで生活費を稼ぐ必要もない。大谷がマイナーの最下層であるルーキーリーグからスタートしたとしたら、それまでの高校時代が天国に思えたことだろう。

大谷の実力ならば短期間で上に上がれるだろうが、厳しいマイナー時代にケガや故障や事故の心配がないとは言えない。だからそれよりは日本野球で実績を残し、松坂やダルビッシュのようにポスティングで直接MLB球団と契約したほうが合理的だ。マイナーで過ごしている間の年収よりも、日本球団に属している間の年収のほうがはるかにいい。さらに、日本球団を経てMLBと契約した場合、その契約金は田中将大の場合、なんと「7年、1億5500万ドル(約161億円)」まで跳ね上がった。田中は日本球団(楽天)に7シーズン在籍しただけだ。

◎大谷はメジャー契約を内定させていたのだろうか

大谷が日本球団を経ずに米国球団とマイナー契約した場合、ルーキーリーグからスタートしてMLBに登り詰めるまで7年かかるかどうか微妙なところだが、7年かからないにしても、大谷の収入という観点からすれば、日本の球団を経たほうが米国よりも上回る確率の方が高い。さらに日ハムとポスティングによるMLB移籍を契約条項に入れていれば、大谷が日本球界で実績を残せば、日本球団を経てMLBとメジャー契約したほうが、収入面ではるかによい。

◎メジャー契約しても3年3億円程度

しかし、大谷ほどの実力の選手ならば、米国球団がメジャー契約する可能性がないとは言えない。例えば、いまボストンレッドソックスで活躍している田澤純一投手の事例だ。田澤の場合、3年総額400万ドル(約3億8000万円)のメジャー契約だった。

田澤は高校卒業後、2005年に新日本石油に入社。ドラフト指名解禁年の2007年には複数の球団が大学・社会人ドラフトの1巡目(希望枠)候補として検討していたが、リリーフ失敗など前年に比べると精彩を欠いたこと、また秋から挑戦した先発転向も結果が残せなかったことなどから残留を表明。翌年(2008年)、復活を遂げ都市対抗野球大会等で大活躍し、大会MVPに当たる橋戸賞を受賞した。と同時に記者会見でメジャーリーグ挑戦の意思を表明し、日本プロ野球12球団宛にドラフト指名を見送るよう求める文書を送付した。

◎米国行き宣言はドラフト破りの隠れ蓑

大谷も田澤のケースに似ていたが、米国球団からメジャー契約の内定を得ていたのかどうか不明だ。日ハムが米国行きを宣言した大谷を敢えてドラフト1位指名(単独)し、入団にまでこぎつけられたのは、日ハムが大谷サイドはメジャー契約の内定を得ていない、という情報をつかんでいたからではないか。

だから、日本球団は、ドラフト会議前に米国行きを表明したアマチュア野球選手の「ドラフト拒否宣言」を信じてはいけない。かりにそのような報道があったとしても、米国球団とマイナー契約をするほどの度胸はないと考えたほうがいい。○○は読売以外に指名されたら米国行きだ、というような報道があったとしたら、それは特定球団=読売と密約を交わした、ドラフト破りのリーク情報だと考えるべきだ。

筆者はかつて拙コラムにおいて、大谷は日ハムと密約を交わしていたのではないか、と書いた。米国球団が大谷の才能を十分認めつつも、高校卒ルーキーとメジャー契約をするのかどうか。米国MLB球団の判断を知りたかったものだ。そういう意味で、日ハムに大谷を1位指名してほしくなかったのだが、いまさら言ってもはじまらない。

今後、特定球団と密約を交わしつつ、表向きは「MLB行き」を宣言するようなドラフト破りが横行しないことを祈っている。



2014年03月21日(金) 道を間違えたJリーグ

サッカーJリーグのクラブチームがアジアで苦戦している。東アジア地区ではE組のC大阪が4チーム中3位(勝点4)、F組の広島が同2位(勝点4)、G組の横浜が同最下位(勝点1)、H組の川崎Fが同3位(勝点3)と、広島以外は序盤で低迷中だ。

この結果は偶然ではない。Jリーグ各クラブが取り組んできたサッカーは、世界標準から外れている。Jリーグのガラパゴス化。日本の生ぬるいサッカー風土のなか――いわば楽園で、独自の進化を遂げてしまったようだ。

◎フィジカルの弱さ

Jリーグからの出場クラブが勝てない理由はいくつかある。その第一がフィジカルの弱さ。C大阪はホームで山東魯能(中国)に1−3で負け、横浜はアウエーで全北現代(韓国)に0−3で負け、H組の川崎Fもアウエーで蔚山現代(韓国)に0−2で、また、ウエスタンシドニー(オーストラリア)に0−1と完封された。

横浜が全北現代に0−3で負けた試合は悲惨だった。全北がフィジカルと気力で押しまくり、横浜はサッカーがまったくできなかった。日本人選手は球際が弱いと言われるけれど、そういう問題ではない。サッカーに対する基本的姿勢の違いだと思う。Jリーグの選手たちはACLでケガをしたくない、今年はW杯イヤーだからJでいいプレーをすれば代表入りもあるかもしれない、なんて思ってはいないだろうけれど、結果的にはそのように見えてしまう。とにかく腰が引けている。

フィジカルと言うと、身体の大きさ、筋量の多さ、スタミナだと思われるが、サッカーの場合、それに走力と俊敏さが伴わなければ意味がない。横浜と全北の試合では、全北の推進力、速さ、そして競り合いに勝てるパワーが横浜を上回っていた。練習量の差と言うよりも、練習の質の違い、試合に求められる選手としての資質の差と言うほかない。

川崎Fが蔚山に0−2で負けた試合は、後半、試合終了近くに川崎Fはガソリンが切れたように失速、連続で2失点した。川崎Fの選手には90分走りきる体力(フィジカル)がない。

横浜がアウエーでメルボルン・ビクトリー に0−1で負けた試合も、横浜の選手のフィジカルの弱さを象徴する試合内容だった。ボールキープでは圧倒的に横浜が優位を保ったし、チャンスの数も横浜の方が圧倒的に多かった。しかし、前半早々に1点リードしたメルボルンはカウンターに絞り込んだ戦術を採用。横浜は失点こそ1点にとどまったが、しばしばそれにはまった。メルボルンが横浜を苦しめることができた要因は、メルボルンの前線の選手の90分間持続して走れるフィジカルの強さだった。

◎チームづくりの差

日本のサッカーがクラブレベルでアジア、しかも東アジア地区で勝てなくなった要因は、フィジカル面だけにとどまらない。選手補強という面も見逃せない。日本以外のアジアの強豪クラブの方が、欧州、中南米の外国人選手の補強においてJリーグの各クラブを上回っている。資金力の差か、それともネットワークの差なのか、その両方か。

Jリーグの各クラブは、近隣国で実績のあった外国人選手を補強する傾向が強い。中国、韓国、中近東の各クラブの“お下がり”を補強している。日本は日本以外のリーグで活躍した外国人選手をその実績を評価して獲得してくるが、放出した側の日本以外のアジアのクラブは、その代替として、放出した選手以上の選手を入団させる。だから、Jのクラブの外国人選手よりも、優秀というわけだ。

◎レフェリングの差

Jリーグの審判団の判定基準もJリーグ弱体化の遠因をなしている。Jリーグの審判団は優秀だと言われている。判定は公正にして、ファウルに厳しい。だが、世界標準からみると、ファウル、イエローの判断が厳格すぎる。前出の全北現代と横浜(開催地/全州)の試合では全北の激しいチャージはすべからく正当な接触プレーと判定されている。この試合の主審がホームである全北を贔屓したというわけではない。横浜は全北の圧力に圧倒され、満足にボールをキープするこができなかった。Jの日本人主審の試合ならば、全北のプレーがことごとくファウルと判定されたような気がしてならない。

相手の圧力に耐えるパワーもなければ、それをかわす俊敏さもない。いわゆる“やられっぱなし”の完敗だ。ケガを恐れたのかどうかはわからない。ただ言えることは、すべてのスポーツにおいて、ケガを恐れて気持ちを引けば、それがケガを招くことになる。相手に対しても自分に対しても気合を入れなければ、ケガをする確率が高まる。

◎クラブ経営の差

Jリーグは「経営」を重視するあまり、拙コラムで繰り返し書いている通り、ダウンサイジングで収支バランスをとろうとしてきた。縮小均衡だ。しかし、このような守りのクラブ運営では、試合の質を維持することは難しい。観客数は減少するし、メディアの露出も減る。社会から関心を払ってもらえなくなる。当然、サッカーといえば日本代表という空気が醸成されてしまう。海外クラブに移籍した選手で構成された日本代表の付加価値が異常に上昇し、メディアのドル箱となり、日本サッカー界から、Jリーグが脱落してしまう。

Jリーグから見れば、優秀な選手たちの海外移籍がその凋落の要因だと見なされる。日本人選手の欧州のビッグクラブ移籍は喜ばしい反面、話題先行の歪みも認められる。欧州のビッグクラブは、ジャパンマネー目当てで日本人選手を受け容れる。しかし、リーグの試合でレギュラーになれる選手の数は、移籍選手の数に比べ少数にとどまっている。3月21日現在、欧州のクラブでまともに試合に出場しているのは、岡崎(ドイツ)、長友(イタリア)、川島(ベルギー)、細貝(ドイツ)の4選手のみ。酒井高、酒井宏、清武(いずれもドイツ)がそれに続く程度。

本年はW杯イヤーということで多くの海外移籍選手がJリーグに復帰したが、それでも、海外に「移籍しただけの選手」が多すぎる。その代表が香川(イングランド)で、マンチェスターユナイテッドは香川によって、日本の多くの企業とオフィシャルサプライヤー契約を結ぶことに成功した。香川は戦力というよりも、ジャパンマネーの集金マシーンとして機能している。もちろん、オフのアジアツアーでも香川は必要とされるだろう。だから香川は、ベンチ入りは果たすが、試合に出場できない。

このような傾向を脱すべく、C大阪がフォルラン(ウルグアイ代表)を獲得したことを評価したい。Jの各クラブがC大阪に続いてほしい。Jのクラブに求められるのは、積極拡大路線だ。

いずれにしても、Jのクラブチームが東アジアで勝てなくなった傾向は、日本サッカー全体の弱体化に直結する。いまはドル箱の日本代表だが、W杯アジア地区予選で敗退すれば、日本のサッカー人気は一気に凋落する。そもそも代表サッカーはイベント的要素が強すぎて、地域に根を持たない特殊装置。広告代理店主導のお祭りに近い。日本のサッカー人気は、いわば代表バブルとでも言う異状な状態なのだ。地域に根付いたクラブがサッカーの人気・実力を支えるという正常な状態に早く戻さなければ、大変なことになる。

ACL東地区試合結果(3月21日現在)
注:( )内は開催地

E組=C大阪は勝点4の3位。
2月25日 浦項 1−1 C大阪(浦項)
2月25日 山東魯能 1−1 ブリラム(済南)
3月11日 C大阪 1−3 山東魯能(長居)
3月11日 ブリラム 1−2 浦項(ブリラム)
3月18日 C大阪 4−0 ブリラム(長居)
3月18日 浦項 2−2 山東魯能(浦項)

F組=広島は勝点4の2位
2月25日 広島 1−1 北京国安(広島)
2月25日 FCソウル 2−0 セントラルコースト(ソウル)
3月11日 北京国安 1−1 FCソウル(北京)
3月11日 セントラルコースト 2−1 広島(ゴスフォード)
3月19日 北京国安 2−1 セントラルコースト(北京)
3月19日 広島 2−1 FCソウル(広島)

G組=横浜は勝点1の4位
2月26日 広州恒大 4−2 メルボルン・ビクトリー(広州)
2月26日 全北現代 3−0 横浜(全州)
3月12日 メルボルン・ビクトリー 2−2 全北現代(メルボルン)
3月12日 横浜 1−1 広州恒大(横浜)
3月18日 メルボルン・ビクトリー 1−0 横浜(メルボルン)
3月18日 広州恒大 3−1 全北現代(広州)

H組=川崎Fは勝点3の3位
2月26日 ウエスタンシドニー 1−3 蔚山現代(シドニー)
2月26日 川崎F 1−0 貴州人和(等々力)
3月12日 蔚山現代 2−0 川崎F(蔚山)
3月12日 貴州人和 0−1 ウエスタンシドニー(貴陽)
3月19日 ウエスタンシドニー 1−0 川崎F(シドニー)
3月19日 蔚山現代 1−1 貴州人和(蔚山)



2014年03月14日(金) 浦和サポはサイテー集団

8日のJ1浦和−鳥栖戦(埼玉)で一部の「浦和サポーター」が「JAPANESE ONLY」という差別的な横断幕を掲出した。報道によると、この横断幕はスタジアム内部に掲示されたらしい。それでも、この「浦和サポーター」はサイテーだ。サポーター(以下「サポ」と略記)の名に値しない。

この横断幕にレイシズムという思想的背景があるのか、あるいはその意味を解さない低偏差値集団の思いつきなのかはわからない。前者であれば、日本を取り巻く右傾化傾向、人種差別(レイシズム)、排外主義等がエンターテインメントの世界にも浸透している不気味さを感じさせる。後者であれば、この(横断幕を出した)やからは、小売店舗や事務所あるいは飲食店の従業員専用扉に掲示されてある「STAFF ONLY」(正確には「STAFFERS ONLY」)を真似て、ゴール裏が自分たち(=日本人)の独占する場(彼らから言わせれば聖域)であることを掲示したかっただけなのかもしれない。それでも、無知は罪なのだ。この言葉は人種差別を表す以外のなにものでもない。

Jリーグ村井満チェアマン(54)はこの案件に対してけん責に加え、23日の浦和のホーム清水戦(埼玉)を無観客試合として開催することを決めた。一方、サポによるトラブルが頻発する浦和は、今後の防止策などを発表した。当然の措置だ。併せて、この横断幕グループについては、埼玉スタジアムへの出入りを禁止する措置が必要だと思う。

浦和サポはJリーグのなかで最も熱心な集団の一つだと言われているが、実際には、その一部の正体は暴力を伴わないフーリガンだったのだ。彼らの“クラブ愛”は、独善的エリート意識・排他主義に満たされた偏愛にすぎない。(一部の浦和サポの)リーダーたちはサポを閉鎖的に組織化し、過激な行動へと向かわせる。過激化こそがクラブへの愛だと錯誤して。

そしてサポ間で過激さを競い、もっとも過激な集団が、いくつかあるサポ集団において主導権を握るようになる。過激さがサポの熱意の尺度だとする負の連鎖が浦和サポ内部に常態化しつつあるのではないか。過激さの度合いが、サポ集団を序列化するメルクマールになっているのではないか。

サッカーは「代理戦争」と言われるとおり、グローバルには過激な応援が常識になっている。日本のサポは生ぬるいとも言われる。しかし、それは愛するクラブチームが全力を出さない無気力な試合やプレーをしたことに対する叱責・怒り、そして、相手チームのラフプレー等に対するブーイングにとどまるべきだ。もちろん、チーム強化を怠っているクラブ経営者に対する抗議があってもよい。それらは、愛するクラブチームを強くするための圧力となろう。

ところが、今回の横断幕はクラブチームを励ましたり強化したりするメッセージが一切含まれていない。サポ内部における自己中心的エリート意識だけではないか。彼らにとって重要なのは、試合を見て分析し、勝利へと導く声援を発することではない。このサポ集団のリーダーは自分の指示でいかに統一のとれた応援をするかがすべてなのだ。リーダーである己の指示に一般サポを従わせることだけが目的なのだ。彼らが求めているのは、愛するチームの勝利ではなく、応援のかたち――応援を指揮する自分に対する自己満足と自己陶酔――だけではないのか。

サポはサッカー選手ではない。フィジカルエリートになれなかった者、すなわち、スポーツ界の主役ではない。だから謙虚さを忘れてはならない。サッカーができない者が、応援という位相において優劣を競い合い、序列化を図り、サポリーダーの主導権争いをするようなことは避けなければならない。

そのような無意味な主導権争いを抑止するのは、サポ一人一人の主体性だ。フィジカルエリートになれなかった者が、サポという世界で自己抑制的にサッカーの試合に熱くのめりこむことだ。試合に熱中し、自己を忘却することはかまわない。それが自分の応援のスタイルならばそれを貫いてほしい。まわりの人と合わせた応援は必要ない。リーダーに従う必要もない。そもそも、応援にリーダーはいらない。

サポ集団の応援をリーダーの自己実現の場にしてはならない。サポのリーダーたちが目指すものが、彼らが社会生活で果たせなかったなにかしらの代償、すなわち、その鬱憤晴らし的代替行為であってはならない。サポ一人一人が、自分流の応援と応援スタイルを貫くことで、スタジアム全体が自然に調和のとれた一体感を生み出すようになることが理想だ。リーダーに従う人工的人為的統一感は、まったくのまやかしにすぎない。



2014年03月07日(金) 疑問だらけのNZ戦―サッカー日本代表練習試合−

◎国際Aマッチデー

2014年3月5日は国際Aマッチデー。W杯イヤーを反映してなのだろうか、世界中でおよそ60試合が行われた。対戦国を分別すると、(1) W杯出場国同士の試合、(2)出場国とそうでない国の試合、(3)不出場国同士の試合――となる。

最初にW杯予選グループの組み合わせについて、おさらいしておこう。

(A組)ブラジル・クロアチア・メキシコ・カメルーン
(B組)スペイン・オランダ・チリ・オーストラリア
(C組)コロンビア・ギリシャ・コートジボワール・日本
(D組)ウルグアイ・コスタリカ・イングランド・イタリア
(E組)スイス・エクアドル・フランス・ホンジュラス
(F組)アルゼンチン・ボスニアヘルツェゴビナ・イラン・ナイジェリア
(G組)ドイツ・ポルトガル・ガーナ・アメリカ
(H組)ベルギー・アルジェリア・ロシア・韓国

前出の分別は以下のとおり。

(1)については、
オーストラリア(B)3 - 4 エクアドル(E)、ギリシャ(C)0 - 2 韓国(H)、スイス(E) 2 - 2 クロアチア(A)、スペイン(B)1 - 0 イタリア(D)、ドイツ(G)1 - 0 チリ(B)、フランス(E) 2 - 0 オランダ(B)、ベルギー(H)2 - 2 コートジボワール(C)、ポルトガル(G)5 -1 カメルーン(A)、メキシコ(A)0 - 0 ナイジェリア(F)、

(2)については、
アルジェリア(H)2 - 0 スロベニア、イラン(F)1 - 2 ギニア、イングランド(D)1 - 0 デンマーク、ウクライナ 2 - 0 アメリカ(G)、オーストリア 1 - 1 ウルグアイ(D)、コロンビア(C)1 - 1 チュニジア、ホンジュラス(E) 2 - 1 ベネズエラ、ボスニアヘルツェゴビナ(F) 0 - 2 エジプト、モンテネグロ 1 - 0 ガーナ(G)、ルーマニア 0 - 0 アルゼンチン(F)、ロシア(H)2 - 0 アルメニア、南アフリカ 0 - 5 ブラジル(A)、日本(C)4 - 2 ニュージーランド(以下「NZ」と略記)
※( )内は予選グループ区分

(3)については、
アイルランド 1 - 2 セルビア、アゼルバイジャン 1 - 0 フィリピン、アルバニア 2 - 0 マルタ、アンドラ 0 - 3 モルドヴァ、イスラエル 1 - 3 スロバキア、インド 2 - 2 バングラデシュ、ウェールズ 3 - 1 アイスランド、キプロス 0 - 0 北アイルランド、グルジア 2 - 0 リヒテンスタイン、ザンビア 2 - 1 ウガンダ、セネガル 1 - 1 マリ、セントルシア 0 - 5 ジャマイカ、チェコ 2 - 2 ノルウェー、トルコ 2 - 1 スウェーデン、ナミビア 1 - 1 タンザニア、ハンガリー 1 - 2 フィンランド、ブルガリア 2 - 0 ベラルーシ、ブルキナファソ 1 - 1 コモロ諸島、ブルンジ 1 - 1 ルワンダ、ボツワナ 3 - 0 南スーダン、ポーランド 0 - 1 スコットランド、マケドニア 2 - 1 ラトビア、マラウイ 1 - 4 ジンバブエ、モザンビーク 1 - 1 アンゴラ、モロッコ 1 - 1 ガボン、モーリタニア 1 - 1 ニジェール、リトアニア 1 - 1 カザフスタン、ルクセンブルク 0 - 0 カーボベルデ諸島、

◎なぜ日本の相手がNZなのか?

テストマッチとはあくまでも練習試合・親善試合なのであって、結果を深刻に求められるものではない。また、一覧すると、日本人には馴染みのない国同士の対戦もあるけれど、W杯出場国の動向としては、日本以外の代表チームは、それなりの相手と対戦していることがわかる。

たとえば、W杯出場国である隣国の韓国が、同じく出場国のギリシャ(日本と予選同グループ)を相手としている。ギリシャは日本を仮想して韓国と、逆に韓国はロシアを仮想してギリシャと対戦したのだろう。双方の利害が一致している。このマッチメークと比べると、日本の相手がNZというのはいかにも情けない。

韓国以外のアジア地区のW杯出場国については、イランがギニアと、オーストラリアはエクアドルと試合を組んでいる。オーストラリアがエクアドル(仮想チリ)を選んだのは、韓国と同じくらい賢明である。イランがナイジェリアを想定してギニアと戦ったのも理に適っている。

W杯イヤーのこの時期のテストマッチは、予選リーグで当たる相手と似たタイプの相手を仮想敵国としてマッチメークすることは常識。前出のとおり、ギリシャは日本の仮想として、アジアの韓国を選んだ。このマッチメークは論理的だ。一方、日本の対戦相手NZはC組のどこを想定しているのだろうか。TV報道によると、ザッケローニ代表監督がギリシャを想定してNZを選んだというのだが、まったく理解できないし、この報道を信じることもできない。ギリシャとNZのどこがどう似ているというのだ。まずもって、日本の練習試合の相手がNZというのが筆者には理解できない。

◎マッチメークも酷いが試合内容はもっと酷い

というわけで、日本対NZ。結果は4−2で日本が勝った。勝ったからと言って、この試合をみて、日本は順調にW杯に向かっていると考える人はまずいないだろう。前半、立ち上がりから動きの少ないNZ。プレスもなければチャージもない。日本に自由にもたせて、後ろに下がるだけの守備。TV画面からは、まるで白い棒(NZのユニフォームが白だった)の立ったフィールド(ピッチ)で日本代表選手が練習をしているかのようだ。前半だけで日本は4点をとったが、得点内容としては岡崎の得点シーン以外、見るべきものはなかった。その岡崎だが、見え見えの裏を取る動きがワールドクラスのDFで通用するとも思えない。

日本の楽勝というペースだったが、前半30分すぎからNZが日本にプレスをかけるようになり、まじめに守備をしだすと、日本から攻め手が消え、逆にミスを連発しだした。あれあれと見ているうち、日本は前半39分に失点、後半にも失点したばかりか、後半はチャンスらしいチャンスもなし。見るに堪えない試合内容となった。

◎海外組のコンディションが悪すぎる

とりわけ動きが悪いのが本田、香川、清武(後半)、細貝(同)、酒井宏、酒井高(同)の海外組。欧州からの移動でコンディションが悪いのだろう。それを考慮しても香川は重症だ。マンUで使われない理由がわかる。後半はミスが多くなり、有効な戦力ではなかった。まずまずだったのが長友だが、サイドからのクロスはワンパターン。

反対に、前半、鋭い動きを見せたのが青山、山口の守備的MF(ダブルボランチ)。Jリーグが開幕したばかりなうえ、移動を伴わない彼らは、海外組よりコンディションがいいのだろう。ただ、国内組とはいえ、後半から出場した遠藤がぎこちない。「日本の心臓」とまで言われた遠藤だが、得点機を演出するような動きが見られない。力が衰えたのか。

国内組のスーパーサブとして期待された斉藤もレベルが低すぎる。後半から交代出場した、前出のとおり、海外組の清武、細貝、酒井高、さらに、国内組の遠藤、豊田及び斉藤(この二人は持ち時間が少なすぎるので同情の余地はある)もまったく見せ場をつくれず、今回の代表チームが、チームとして機能していないことが明らかになった。

◎故障者続出、W杯まで日本代表は間に合うのか

海外組の長谷部、内田は重症。しかもこの期に及んで、国内組の今野、柿谷が発熱で離脱。W杯までの大事な準備期間、貴重な調整試合と言われながら、実態は海外組の顔見世興行だと悟って今野、柿谷はリーグを優先したか。さらに心配なのがDF(吉田、森重)。毎回、“課題はDF”と言われながら修正できない。失点はCBだけの責任ではないけれど、この程度の相手に2失点とは情けない。

W杯まで100日弱。時間はあるようでない。Jリーグから新星が飛び出してくるような予兆もない。この試合をもってW杯最終代表メンバーの選出根拠とすることは不可能とは言うものの、いちおう最終メンバー23選手を予想しておこう。W杯メンバー23名の選出は、(規定によりGK3名選出を除く)フィールドプレーヤーの場合、1ポジション2名の選出が一般的。日本代表の通常のフォーメーションは4−2−3−1だから、

GK
川島永嗣(スタンダール)、西川周作(広島)、権田修一(東京)=3(規定による)

DF(4)
内田篤人(シャルケ04)、酒井宏樹(ハノーバー)、今野泰幸(G大阪)、伊野波雅彦(磐田)、森重真人(東京)、吉田麻也(サウサンプトン)長友佑都(インテルミラノ)、酒井高徳(シュツットガルト)=8

守備的MF(2)
遠藤保仁(G大阪)、青山敏弘(広島)、細貝萌(ヘルタ)、山口蛍(C大阪)=4

攻撃的MF及びFW(3)
本田圭佑(ACミラン)、香川真司(マンチェスターU)、清武弘嗣(ニュルンベルク)、岡崎慎司(マインツ)、工藤壮人(柏)、大迫勇也(1860ミュンヘン)=6

ワントップ(1)
柿谷曜一朗(C大阪)、FWハーフナーマイク(フィテッセ)=2

手術したMF長谷部誠(ニュルンベルク所属)はW杯に間に合わないとみた。なお、予備登録は30名。残り6枠として、MF乾貴士(フランクフルト)、斎藤学(横浜)、FW前田遼一(磐田)、FW豊田陽平(鳥栖)、DF駒野友一(磐田)の5選手が予備登録(30名)に入ることは確実。ただ残り1名がわからない。扇原(C大阪)、大久保(川崎F)、高橋(FC東京)あたりか。だれが入るにしても、サプライズはいまのところ考えられない。



2014年03月02日(日) パの優勝はソフトバンク(日本プロ野球14シーズン)

パリーグはどうか。戦力補強を積極的に行ったのがソフトバンクとオリックス。ソフトバンクは、山崎勝己捕手(=FA宣言しオリックスへ)の退団を鶴岡慎也捕手(=日本ハムからFA)で、ウィリー・モー・ペーニャ外野手(=退団→オリックス移籍)の退団を李大浩内野手(=前オリックス)で補った。さらに、ジェイソン・スタンリッジ投手(=前阪神)、デニス・サファテ投手(=前西武)、ブライアン・ウルフ投手(=前日本ハム)、中田賢一投手(=前中日、FAで獲得)、岡島秀樹投手(=前アスレチックス3A)を獲得。セリーグの読売も驚くほどの戦略なき大量補強である。他球団に渡すよりも自軍においておけば脅威にはならないという金満ぶり。ソフトバンクの首脳陣はとりわけ投手陣において、だれをどのように使っていくのか整理するのもたいへん。

オリックスは、李大浩内野手(=退団→ソフトバンクへ)、アーロム・バルディリス内野手(=自由契約→DeNA)、後藤光尊内野手(=トレードで楽天へ)を失い、代わりに鉄平外野手(=楽天からトレード)、谷佳知外野手(=前巨人)、ウィリー・モー・ペーニャ外野手(=前ソフトバンク)、エステバン・ヘルマン内野手(=前西武)、山崎勝己捕手(=前ソフトバンク、FAで移籍)を得た。ストーブリーグにおける戦力バランスは、ほぼ昨シーズンと相殺だろう。

パリーグにおける戦力ダウンの筆頭は言うまでもなく、楽天である。マー君こと田中将大投手がポスティングでMLBに移籍。打線の主軸であったケーシー・マギー内野手(=自由契約→マーリンズへ)もいなくなった。マギーの穴はケビン・ユーキリス内野手(=ヤンキースFA)で埋めるつもりだろうが、昨シーズン24勝0敗の田中投手の穴は埋められない。楽天は昨年、82勝59敗3引分の成績だったから、勝ち数と負け数の差23と田中のそれである24とほぼ同数。大雑把に言えば、楽天は全勝田中投手で優勝できたようなもの。その勝ち数がなくなるのだから、14シーズンの苦戦は免れない。

というわけで、今年のパリーグは6球団ダンゴ状態の混戦で終始する。そのなかで抜け出すのは、補強で戦力アップを図ったソフトバンクではないか。オリックスも昨年よりは順位を上げる。涌井秀章投手(=西武からFA)、 ルイス・クルーズ内野手(=前ヤンキース)を獲得したロッテも戦力的には落ちていない。反対に、涌井秀章投手(=FAでロッテ移籍)、デニス・サファテ投手(=退団→ソフトバンクへ)、エステバン・ヘルマン内野手(=オリックス移籍)、片岡治大内野手(=FA宣言し巨人)を失った西武は大幅な戦力ダウン。たいした補強もせず、しかも大谷を今シーズンも「二刀流」で使う方針を明らかにした日ハムは、今年も期待できない。

よって、パリーグの順位は以下のとおりとなろう。

(1)ソフトバンク、(2)ロッテ、(3) 西武、(4) オリックス、(5)楽天、(6)日本ハム

※昨シーズンは、
(1)楽天、(2)西武、(3)ロッテ、(4)ソフトバンク、(5)オリックス、(6)日本ハム


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