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2013年11月25日(月) 欧州遠征からW杯を展望する

サッカー日本代表第二次欧州遠征は、オランダ戦(2−2ドロー/11・16)、ベルギー戦(3−2勝利/11・19)の成績をもって終了。第一次のセルビア戦(0−2敗戦/10・11)、ベラルーシ戦(0−1/10・15)と比較すると、FIFAランキング上位国との対戦であるにもかかわらず、1勝1分け負けなし、2試合合計5得点と大健闘した。一次遠征が日本よりランキング下位国との対戦で2連敗無得点と散々なものだっただけに、日本代表復調、攻撃力向上といったメディア報道があふれた。

記録上はそのとおり。ブラジルW杯優勝国との呼び声も高いオランダと第三国での対戦でドロー、いま日の出の勢いのベルギーに完全アウエーで勝利というのは、日本の代表サッカーの歴史上、もっとも輝かしい成績の一つと言って過言ではない。記録上、2013年の第二次欧州遠征の好成績は、燦然と光り輝くものとなろう。

◎日本は1月弱で本当に変われたのか

第一次遠征であれほど低調だった日本が、わずか1カ月弱で急激に強くなれるのか――ミステリーと言って過言ではない。サッカーとはそんなものだ、という見方もある。そのときどきの試合において、出場選手のリズムが説明抜きで噛みあい、うまくパスが回り、シュートを打てば枠をとらえる、あるいは相手DFに当たって得点になったりもする。

逆に相手はクリーンシュートがバーやポストを叩き、あるいはGKのファインセーブに阻まれる。そんな場面が90分間続き、強豪相手に勝つこともある。だから、サッカーはおもしろい。サッカーと似て非なるスポーツがラグビーだ。ラグビーの場合、いわゆる番狂わせが起こることはきわめて少ない。ラグビー日本代表がオールブラックスと対戦して日本が勝つことは、おそらく、筆者の生存中はなかろう。

だから、日本がオランダと引き分けたことも、ベルギーに勝ったことも驚くにあたらない。オランダとの試合は、第三国での試合だった。ベルギー戦はベルギーの首都ブリュッセルであるから日本はアウエー。だから、本当に貴重な勝利であり、称賛に値する勝利といえる。

◎親善試合の利点を生かした日本

忘れてならないのは、この2試合が親善試合だったことだ。オランダ戦の後半、オランダ選手がどこまで突き詰めて試合をしたか不明だ。もちろんベルギーは真剣だったと思うが、公式戦――たとえば、W杯やユーロの予選とはマインドは違ったかもしれない。

つまり、日本がオランダ、ベルギーのどちらかとW杯グループリーグ同組になり、その初戦で当たった場合、試合の状況は大いに異なるだろうと想像できる。その場合、日本が必ず負ける、と言いたいのではない、ただ、相手の守備(マーク、タックル、プレス等)の様相は異なるだろうと。

オランダ戦の後半(日本は2得点)、ベルギー戦の90分を通じて共通していたのは、相手の守備の意識が低かったこと。日本はボールを思うようにキープできた。とりわけベルギーDF陣は動きが悪く、日本選手の早い動きとパスに振り回されていた。そこに日本の勝機が生まれた。

日本はフィジカルの弱さを運動量でカバーするサッカーを身上とする。日本にとって親善試合の利点は、選手交代枠が6名あることだ。6名の交代枠があれば、前半はディフェンシブに戦い、後半は豊富な運動量を使って攻撃を仕掛けるという作戦が功を奏しやすい。

◎公式戦で遠藤をどう使うか

MF遠藤が2試合とも、後半からの出場となったことが、このことをよく象徴する。モダンサッカーの場合、セントラルMF(ディッフェンシブ・ハーフもしくはボランチ)の最低限の役割は、相手の攻撃開始の芽を摘むところに求められる。日本のボランチ像といえば、やや後方で比較的ボールを自由にもちながら時間をかけて攻撃態勢を構築したり、前方にパスを出す役割を想像することができるが、そのイメージを否定しないものの、むしろ、身体をはって最初の守備をする仕事のほうが重要度が高い。だから、身体は屈強でなければならいし、粘り強く相手の攻撃態勢に入りそうな選手に当たっていく、精神力の強さ・タフさも求められる。

日本を代表するボランチ遠藤は、日本代表の中で最も非凡かつ才能豊か、しかも経験豊富な選手の一人。しかし、フィジカルが強いとは言えない。年齢的にもそう若くないし、90分間、守備を全うしながら攻撃を構築するポジションを完全にこなすには難がある。しかし、45分ならば、その力量は十分発揮できる。ザッケローニは、親善試合のレギュレーションを上手に使って、遠藤を有効活用した。そして、オランダ戦、ベルギー戦の2試合の後半において、試合を決定づける得点を遠藤は演出した。

◎日本の課題――ボランチ起用法、ミス、セットプレー

ということは、この成功こそが、すなわち日本の深刻な課題となる。公式戦では交代枠は3に減る。遠藤を90分間フル稼働させると、守備・攻撃構築のパワーは理論上半減する。後半になって疲労度が高まれば、遠藤の弱点=フィジカルの弱さは、致命傷となる可能性もある。遠藤を後半にまわせば交代枠は2となり、攻撃もしくは守備の活性化を図りにくくなる。

しかし、W杯グループ予選第1試合の最終選択としては、「遠藤は後半から」で行くしかないだろう。第二次欧州予選で掴んだ“勝利の方程式”なのだから。

日本の課題はそれだけではない。ベルギー戦の2失点のうち、最初の1失点(しかも先取点を与える)がGKのミスで、2失点目がセットプレー。どちらも日本の長年の弱点であり、修正されていない。ベルギー戦先発の日本の正GK川島はどちらかというと、精彩を欠いていた。故障が完治していないのではないか。

W杯本番では、身長の高い欧州勢、アフリカ勢は、日本に対して空中戦を仕掛けてくる。ペナルティーエリア内でしっかり相手をつかまえないと、セットプレーで致命的失点という場面も大いにあり得る。

◎中南米勢の厳しい守備にどう対応するか

中南米勢との試合では、彼らの堅い守備が日本の前に立ち塞がる。日本は中南米勢を苦手としているのだが、その理由の一つが相手の厳しい守備だと思われる。

2013年、日本はブラジル(コンフェデ杯)、メキシコ(同)、ウルグアイ(親善試合)に負けて、グアテマラ(親善試合)に勝った。4戦1勝3敗の成績だが、グアテマラ戦は参考にならないと筆者は思っている。

2012年はベネズエラ(親善試合)と引分、2011年はペルー(親善試合)と引分で、どちらも日本ホーム。日本ホームの親善試合でも、グアテマラ以外は負けか引分という苦しい結果に終わっている。W杯はブラジル開催だから当然南米大陸。日本が中南米勢と厳しい試合経験が少ないのが気がかりだが、もうこの段階では中南米遠征を敢行するのは無理。本番前に、できれば、アウエーでチリ、コロンビアあたりと試合を組みたかった。

W杯に出てくる中南米勢は守備が固く、ボール扱いは日本より上手。組織性に難があるものの、日本の攻撃陣が機能しにくい試合をしてくる。W杯グループリーグでは欧州勢、アフリカ勢よりも、中南米勢をより警戒しなければなるまい。そのあたりの対応策がとられていないことも、日本の課題となろう。



2013年11月19日(火) マー君はMLBに行けるのか

日本プロ野球(NPB)楽天の田中将大投手(マー君/25歳)の米大リーグ(MLB)移籍に暗雲が立ち込めている。MLB側が日本プロ野球機構(NPB)といったん合意した新ポスティングシステム(入札制度)案を白紙に戻し、新たに修正案を日本側に提出することを発表したからだ。いまのところ、MLB側の修正案の内容についてはわかっていない。日米で合意していた新制度案では、旧制度で最高入札額を得ていた日本の球団が、最高額と2番目の間となる金額を得る点などが変更されたていた。ところが、米側は、14日午前の時点で日本からの通知がなく、同日開かれた30球団のオーナー会議で修正案を提出することが決まったという。つまり、日本側の返答がMLBオーナー会議開催に間に合わなかったことが修正案再提出に至った理由だとしている。

だが、それは表向きの理由だろう。というのも、MLBのオーナー会議において、MLBの球団の多数が、新制度案に反対したためだとの推測があるからだ。MLB一部球団の反対理由は、MLBの中の資金が潤沢な球団だけがポスティングに参加できること、ポスティングの入札額が年々多額になりすぎていること――などが挙げられている。ポスティングにより、MLBのなかの資金の潤沢な一部球団に戦力が偏りすぎることを危惧する勢力が存在しているということか。

◎マー君のMLB移籍を支持する日本の野球ファン

ポスティングは、現行案・修正案を問わず、選手を受け入れる側(MLB球団)よりも放出する側(NPB)にとってメリットの多い制度。もちろん、選手は落札した球団しか交渉できないが、そこまで言うならば、FA制度を使うまでだ。選手がFA権を取得できるのはMLB6年、NPBは9年。MLBがNPBのFA期限まで待てずに必要とする選手――つまり特別な選手に限って、ポスティングが使われると言っていい。特別とは、MLBの球団が、保有権をもつNPB球団に高額な移籍金を払ってまでして、保有権を獲得したいということを意味する。

日本の野球関係者の中には、ポスティングそのものを廃止しろと主張する者もいる。野球評論家の張本勲氏がその代表だ。NPB→MLBは、FAに限定せよという。一見、この主張は筋が通っているかのようにみえる。がしかし、日本の野球ファンの考え方の変化を無視した意見だと言わざるを得ない。というのは、マー君のMLB移籍を支持するファンのほうが、日本球界にとどまれ、というファンの数よりも多いことだ。日本の野球ファンは、マー君が日本にとどまって好成績を上げ続けることよりも、海をわたって、MLBでどれだけの成績を上げられるかに期待を寄せている。ダルビッシュは父親がイラン人ということもあり、「純国産」投手とはいかなかった。だが、マー君の場合は、純国産、しかも、甲子園のヒーローであり、シーズン無敗で、弱小球団だった東北楽天を日本一に導いた東北復興の星でもある。つまり、マー君(のMLB移籍)は、日本国民の総意と言ったら大げさだが、日本球界の実力を計るべく、他に例を見ない絶好の素材なのだと皆が思っている。だから、マー君のMLB移籍は、「いま」でなければならない。そんなときにポスティング制度が利用されるわけだ。まさに、ポスティングの利が生かされた好事例になるはずだった。

◎ポスティングは日米の球団・選手・ファンに好都合の制度

MLBにしても、ダルビッシュ、岩隈の今シーズンの活躍をみればその実力・戦力という意味において、加えて、日本人観光客増加や関連グッズの売上増、放映権料等を勘案すれば、マー君は採算が合う素材――金の卵を産むアヒルにほかならない。米国の野球ファンも期待しているという。楽天も多額な移籍金を得ることができる。当のマー君にとっても、MLB移籍は希望どおりだし、初年度、楽天以上の契約金・年俸を見込めるうえ、活躍次第では、日本では考えられない契約金・年俸を見込める。

ポスティングは(旧制度、新案を問わず)、▽MLB(の球団)、▽NPBの(楽天)球団、▽日本の野球ファン、▽マー君、▽MLBの野球ファン――の5者がウイン・ウインの関係で落ちつける制度だったはずだ。

ところが、それに横やりを入れたきっかけが、日本の選手会だったというから話にならない。ポスティングでは、選手が希望球団に入れないというのが、反対の論拠だったというから愚かだ。常識から言って、なにからなにまで選手の言うとおりの贅沢な制度を望む方がまちがっている。世界中の野球選手がMLBに入ることを望んでいるなか、なにからなにまで日本人選手の思うようになるわけがない。

日本の選手会は現行、NPBにとってメリットの大きいポスティングに触れるべきではなかった。日本の選手会が第一に闘うべき相手は、NPBである。闘争の第一の課題は、NPBが日本人選手を縛る日本のFA期限9年の短縮だ。MLBと同じ6年にするよう、NPBと交渉すべきなのだ。ポスティングが選手を縛るというならばFAまで待て、という前出の張本氏の主張に理論上、日本の選手会は屈服してしまう。現行のポスティング制度がいかにNPBと日本人選手に有利かは、すでに述べたので繰り返さない。

◎マー君はMLBで活躍できるか、否、松坂の二の舞になる!

MLB側がポスティングの修正案提出で合意した背景には、前出のとおり、大多数のMLB球団の反対があったからだと言われるが、もうひとつ、MLBにおける、マー君の評価に係る変化が影響しているように思える。つまり、マー君がMLBでどれくらい活躍できるのかということだ。MLBは、マー君に懸念を示し始めたように思う。なお以下の論旨は筆者の推測であり、取材しての話ではないので、信憑性はない。

筆者は、マー君は松坂大輔投手の二の舞になると思っている。MLBの多数の関係者もそう考えているように思う。なぜならば、マー君がアマチュア時代から投球数過剰だったことによる。MLBがマー君の評価を変えたのは、日本シリーズ第7戦の9回裏の登板だったような気がする。前日160球以上投げた投手が翌日登板するというのは、日本でも非常識。いくら日本シリーズが短期戦とはいえ、あり得ない。それを知ったMLBのスカウト陣の頭の中に、日本の投手の異常な投球過多がよぎったのではないか。日本シリーズ第7戦は、MLBにそう確信させる象徴的「事件」だったのではないか。

MLBで実績を残したスターターといえば野茂英雄(1995−2008)だけ。黒田博樹(2008−)、ダルビッシュ有(2012−)、岩隈久志(2012−)が続こうとしているが、先は未知数だ。鳴り物入りで2007年、ポスティングで6年契約でボストンに入団した松坂は、その年と翌年のわずか2シーズンで故障した。2013シーズン末にメッツに移籍し来シーズン契約に至りそうなので、2014シーズン以降、彼の活躍が絶無とは言えないが、かなり厳しい。ほかには、マック鈴木(1996−2002)、石井久(2002−2005)、伊良部秀輝(1997−2002)、大家友和(1999−2009)、川上憲伸(2009−2010)といった具合で、大家、鈴木以外は5年もたない。FAの場合、30才近くでの入団だから、5年もてば“よし”という評価もあろうが、井川慶、和田毅のようにまったく戦力にならなかった先発投手もいる。

ブルペンだと、上原浩二(2009−)、田沢純一(2009−)、岡島秀樹(2007−2013)、木田優夫(1998−2005)、斉藤隆(2006−2012)あたりが思い浮かぶがいずれも短命。MLBで大活躍した印象の強い佐々木主浩(2000−2003)だが、たったの4シーズンだ。つまり、FAを使ってMLBに移籍を果たしても概ね3年程度で退団する投手ばかり。ならば、旬を狙ったはずの松坂だったが、入札金、契約金、年俸に見合った活躍はわずか2シーズンという惨憺たる結果に終わっている。黒田、ダルビッシュがその汚名返上で頑張っているが、まだわからない。

日本人投手の短命の理由は、FA権行使の場合は年齢の問題、ポスティングの場合は、松坂の事例として、アマ時代を含んだ投球数過剰の問題と総括できるのではないか。MLBで比較的長くプレーしている日本人投手は、概ね、甲子園大会経験のない者が多い。ダルビッシュは甲子園大会に4度出場しているので、MLBでこの先どのくらいプレーできるかに筆者は大いに注目している。

ポスティングの修正案がどんな内容になるかわからないが、2014シーズン、マー君がMLBで活躍する姿をみたいものだ。



2013年11月17日(日) イロジカルな試合(オランダ−日本)

<国際親善試合:日本2−2オランダ>◇16日◇ベルギー・ゲンク

サッカー日本代表がベルギーでオランダと引き分けた。この試合の開催地はオランダに近いとはいえ、ベルギーである。両国ともホームではない。サポーターの数は日本人のほうが多かったという。もちろん移動距離は日本の方が長く時間がかかっているが、両代表の選手にとって、戦うモチベーションが保ちにくいことにかわりなかろう。

◎イロジカルな試合

この試合を一言で表現するならば、イロジカル(illogical/非論理的)というほかない。前半10分くらいまでは日本がプレスをかけて主導権を握った。ところが、日本の動きに慣れたオランダが圧力をかけ日本が引き気味になり、13分にDF内田のミスをついたMFファンデルファールトが楽々と得点する。そして、39分にまさにワールドクラスの一瞬のサイドチェンジからFWロッベンがこらまたワールドクラスのミドル・シュートでオランダが加点。ここまでは、ブラジルW杯優勝候補といわれるオランダの一方的展開だった。つまり、戦前、多くの人が思い描いた日本の負けパターンだった。

しかし、その5分後、MF長谷部の持ち上がりから、FW大迫のワンタッチシュートが決まり、日本に希望が出た。そしてその流れの影響なのかどうかは不明だが、後半開始直後から、オランダ守備陣が混乱をしはじめ、しかも足が止まりだした。後半開始から、MFデヨングがアウトとなり、MFビレムスが交代ではいってきたからかもしれない。いずれにしても、日本のチャンスである。しかも、徐々にだが、後半から交代で入ったFW香川、FW柿谷、MF遠藤と、日本の中心選手・MF本田のコンビネーションが良くなり、後半15分にMF本田の同点弾が決まった。これもワンタッチシュートで、悪くないかたちだ。

同点後は日本が圧倒的に優位に試合を支配し、得点チャンスをつくったが、決めきれずにドロー。記録上、日本はFIFAランキング8位のオランダとの親善試合をベルギーで行い、引き分けたことになる。

結果からみればそのとおりなのだが、なんとも不思議な試合展開というほかない。冒頭に書いた通り、不思議というよりも非論理的である。後半、オランダはなぜ、守備を放棄したのか。なぜ、日本の自由な展開を許したのか。この試合に臨んだオランダ選手の▽コンディション、▽モチベーション――はどのような状態だったのか。そのことがわからない限り、非論理的試合内容と展開を分析する手立てがない。

◎日本のTV局は真の意味での解説者を用意してほしい

筆者が苦言を呈したいのは、この試合を中継した日本のTV局にである。中継アナ、解説者(コメンテーター)を合わせて4人もの中継スタッフがいながら、オランダ代表選手の事前の情況をまったく視聴者に伝えようとしない。彼らが喋る内容といえば、個々のプレーを追うコメントばかり。最悪なのは、声がでかいばかりで聞き苦しいM氏。「それ!」とか「おう!」とか「ひゃー!」という類の掛け声ばかりで、M氏の「解説」は、素人がスポーツバーで酒を飲みながら興奮して声を上げているのと差異がない。

プレーは映像を見ていれば概ねわかる。視聴者が知りたいのは、自分たちが知らないことだ。たとえば、オランダ代表のそれぞれの選手は、この試合の直前、いつどこでどのような試合をしたのか。ロッベンはバイエルンで何日前にどこと試合をして、どういう状態でこの試合に臨んだのか。後半足がとまったDF陣についても同様である。オランダ代表の各選手は欧州の各リーグでどのような状態にあり、その後、どのような準備をしてこの試合に臨んだのか――そのことがわからなければ、遠征してきたとはいえ合宿をはった日本代表のほうが、コンディションがいい可能性もある。

事前合宿をして周到に準備をしたうえで試合に臨んだ日本代表と、なんの準備もしないで欧州リーグのそれぞれの試合を終えたまま、ベルギーに集合して試合に臨んだオランダ代表との(第三国での)試合だったら、アウエーの洗礼も“へちま”もない。場所がかわった日本ホームではないのか。そのあたりを事前の取材で視聴者に伝えてこそ、解説者ではないのか。試合を観戦して、印象や感想や奇声を発しての応援ならば、どこかのスポーツバーでやってもらいたいものだ。こういう中継を続ける限り、日本のサッカーは強くならない。



2013年11月15日(金) 資金力で戦力独占を謀る読売のFA戦略は異常

オフシーズン、来季に向けてNPB各球団は戦力増強に必死。ドラフト会議が終了したこの時期はなんといっても、FA宣言をした選手に注目が集まる。NPBはMLBと違って、大型のトレードは実現しにくいからだ。

そんななか、金満・読売が、戦略なき戦力補強に邁進している。今シーズン前、筆者が順位予想をしたときに書いたけれど、読売の戦力は12球団で群を抜いたもの。

この戦力で日本一を取れなかったのは、読売打線、とりわけ、主砲の阿部(34)が極度の不振にあえいだこと。投手陣は、杉内以外はふんばったし、長野(29)、ロペス(30)、寺内(30)、高橋(38)、村田(33)らは調子が悪いなりに好機で打った。とはいえ、4番の不振を補うほどのできではなかった。主砲が打率1割に満たないのだから、勝てるわけがない。加えて、楽天が被災地復興のシンボルとなり、読売は戦う前から日本シリーズの主役の座から降ろされていた。読売が「ヒール」にまわる日本シリーズというのは、筆者の記憶にない。

そんな読売である。これ以上のFA選手獲得という、高年齢選手よる補強は意味がないと思う方が自然だろう。とりわけ、今年のFAの目玉といわれる、広島からFAの大竹寛投手(30)、中日からの中田賢一投手(31)、西武からの片岡治大内野手(30)の3選手の力量ならば、敢えて戦力がだぶついている読売が獲得を目指す必要はない。

とはいえ、読売の戦力に翳りが見えてきたことも事実。以前当コラムに欠いた通り、著しく力が落ちているのが、投手では杉内(33)、ホールトン(34)、内海(31)、野手では阿部(34)を筆頭に、超ベテランの域に入った高橋(38)、今年好調だった村田(33)、亀井(31)、ロペス(30)もオーバー30Sだから、来季以降はどうだろうか。

だが、結論を先に言えば、読売に必要なのは若手の台頭である。FA(=オーバー30Sの選手)で一過性の補強をしても、チーム力は長続きしない。早ければ1シーズンの経過で、力の衰えを見せてしまう。そして、チームは一挙にガタがくる。

そればかりではない。FAによる上からの補強は、チームの世代交代を阻害する。30代の選手は数年でピークアウトを迎えるが、フィジカルの強い若手が順調に伸びればチームに活気が生まれる。レギュラーを獲得した若手選手が他の若手選手に刺激を与え、競争が激化し、シネジー効果が期待できる。強さが長持ちする。

読売が楽天に負けた原因として、楽天にあって読売になかったのが、フィジカル面で優れた若手選手=田中投手(25)、則本投手(23)、美馬投手(27)、辛島投手(23)、岡島野手(24)、銀次野手(25)らの存在だろう。楽天は彼ら若手の牽引力で、「絶対エース田中」が負けても、読売を圧倒することができた。逆に言えば、読売には、牽引すべき若手は坂本(25)しかいないし、その坂本も本調子ではなかった。圧倒的に分厚い戦力をもつ読売だが、短期7試合の日本シリーズでは、戦力よりも、勢い、調子によって勝敗が決することがある。

そんなことは読売の首脳陣でもわかっているはず。それでもカネに糸目を付けず読売がFA選手を漁りまくるのは、他球団の戦力補強を邪魔するため。つまり読売の場合、FA宣言をした選手を放置して他球団にもっていかれるよりは、とりあえず読売に入団させておいて、悪ければ塩漬けにしてもいい、という考え方なのだ。

読売は既存戦力の台頭に期待するものの、「巨人」に入団したがっているFA選手を豊富な資金にものを言わせて獲得しておいて、他球団には渡さないことで保険とする。獲得した選手が活躍すれば補強は成功したことになるし、活躍しなければベンチでも二軍にでも置いておけばいい、という考え方なのだ。自軍のベンチや二軍にいれば、絶対に自軍に脅威にはならない。

そんな犠牲者としては今シーズンならば、谷、小笠原が代表だろう。「元巨人」という肩書は引退後の生活に有利な看板という面もあり、ベテラン選手にとっては、読売に入団してしまったら他球団に移りにくい事情もある。

プロフェッショナル野球なのだから、球団の資金力を抑制することは難しい。カネがあるヤツは、野球界に限らずどんな世界でも強い。だが「巨人」人気で読売が突出しすぎているNPBは異常な世界。FA宣言した選手は読売に入団してほしくないが、もちろん、止めることはできない。なすすべがない。筆者にできることは、「巨人」(=読売)を嫌う以外にない。



2013年11月08日(金) 日本シリーズ(NPB)から見えてきたもの

◎則本・田中、各2勝で優勝(4勝)?

日本シリーズ、楽天−読売は、楽天が4勝3敗で優勝した。戦力的に見て圧倒的に優位にあるはずの読売が負けたのは意外だった。とりわけ、マシソン、山口、西村に沢村を加えた読売のリリーフ陣は盤石に近く、短期シリーズでは優位だと思われた。

楽天は先発投手としては絶対エースの田中と新人の則本以外は頼りにできず、しかも、リリーフ陣の読売に対する劣位はだれが見ても明らか。おそらく星野楽天監督は、1・2戦(ホーム仙台)を田中、則本でとり、よしんば、3・4・5戦をアウエーの東京ドームで落としたとしても、仙台で田中、則本でとれば4勝(優勝)できると読んだのではないか。ところが、意外にも、初戦の楽天の先発は則本で、しかも、負けてしまった。これで、読売がシリーズを楽勝で制すると思われた。2戦目は予想どおり楽天が田中でとった。

◎杉内は楽天に通用しない?

さて、移動日を挟んだ3戦目の東京ドーム、楽天が美馬で勝った。この試合がシリーズの最大のポイント。3戦目を楽天がとったことは、このシリーズが当初の予想とはまったく異なる展開を示すことを示唆していた。3戦目の読売の先発は杉内で、杉内は2回途中6安打4失点でKO。杉内は楽天に通用しなかった。3戦目の先発とは、つまり、第7戦の先発である。7戦までシリーズが長引けば、読売は杉内で試合を落とす可能性が高くなった。

次なるハプニングは第5試合。楽天の先発は辛島、読売は内海で、実績、経験からみて、読売の楽勝かと思われたが、その辛島を読売打線が打てずにロースコアの接戦にもちこまれ、延長10回、読売のクローザー西村が打たれて2−4で読売が負けてしまった。5試合で楽天が3勝2敗、しかも、アウエーの東京で2勝1敗の勝ち越しである。田中・則本で4勝を目論んだ楽天が、田中、美馬、辛島(リリーフに則本)で3勝を挙げて仙台に帰れたわけだから、勝負というのは分からないもの。

仙台の6戦は、楽天が田中で負け(読売が菅野で勝ち)、7戦は楽天が美馬で勝って(読売が杉内で負け)楽天の優勝が決まった。つまり、星野楽天監督の目論みは外れたが、美馬が2勝(防御率0.0)を挙げて、楽天を優勝に導いた。

◎阿部の絶不調は力の衰え?

戦力的に圧倒しているはずの読売がシリーズを落とした理由は簡単で、読売の打線が低調だったこと(チーム打率.182、楽天が同.267)。とりわけ阿部が1割を切る低打率で終わったことに尽きる。もうひとつは、前出のとおり、3戦、7戦の先発である杉内が楽天に通用しなかったこと。第6戦で読売は楽天の絶対エース田中を打ち崩しただけに、杉内の不調が読売には惜しまれる。

◎2014シーズン、読売は苦戦する?

このシリーズから2014シーズンの行方を占うならば、読売はベテラン勢がいよいよ本格的な下り坂に突入したことが明らかで、来シーズンは苦戦する。投では、シーズン中から陰りを見せていた杉内、ホールトン、内海の力の低下が顕著に。つまり、頼れる先発は菅野ただ一人という心細さである。若手の小山、沢村、笠原、宮国(右腕)、今村、阿南、高木京(左腕)らが一軍で安定した力を発揮できなければ、読売の先発投手陣は崩壊である。

打では、阿部の不調がシリーズ限定の一過性なのかどうか。ロペス、村田、長野、坂本に力の衰えは見えないものの、内野手では藤村、脇谷、中井、外野手では松本、橋本が非力で、しかも伸び悩み、高橋由、亀井、ボウカー(退団?)のベテラン勢が、もはや、現役続行不可能寸前の状態。代打陣では、2012シーズンに大ブレークした左の石井が衰えをみせ、右の矢野しかいない状態(谷は退団?)。

読売の戦力は2013シーズンが頂点。来シーズン、リリーフの山口、マシソン、西村はいまの力を維持できるかもしれないが、山口、西村にはここ2シーズンの過剰登板の翳りが見えないとは言えない。西村がつぶれた場合は、マシソンをクローザーにして、沢村、山口の3枚となることもあり得る。そうなると、ますます、先発陣が不足するので、若手の台頭もしくは外国人で補充をしなければ立ち行かない。

◎読売はヒール役?

日本シリーズに話を戻すと、このシリーズは、大震災の復興のシンボルを背負った楽天が主役で、読売がいわばヒール役である。かつて日本中が「巨人ファン」だった時代は終わりを告げたのだ。とりわけ、仙台ではMLB同様、球場全体が楽天ファンで埋まり、読売は完全アウエーの状態だった。

「巨人」一極集中のプロ野球体制はすでに崩壊している。地域に密着した地元チームが地元の応援を得て、興行収入を上げていく図式が見えてきている。既得権で頃固まった12球団体制を一掃し、地元密着の球団を育ててチーム数を増やし、親会社の広告収入に依存しない健全な球団運営の下で、プロ野球(NPB)の新体制を構築してほしい。


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