サッカー日本代表は２月２４日、大阪・長居陸上競技場でアイスランド代表と国際親善試合で対戦、日本が３−１でアイスランドに勝利した。

日本代表のスタメンはＧＫ西川、ＤＦ駒野、今野、栗原、槙野、ＭＦ遠藤、増田、柏木、ＦＷ前田、大久保、藤本。親善試合なので海外組は呼べない。

先発メンバーで注目されたのは、ドイツ・ＦＣケルンから浦和に移籍した槙野、Ｗ杯南アフリカ大会以来初の代表招集となった大久保の２選手。

●見せ場はテインソン選手のハンドスプリングスローだけ

試合展開としては、開始直後の前半２分、ＤＦ槙野が左サイドを突破してセンタリング、これをＦＷ前田が頭で合わせて日本が先制し、試合の主導権を握った。それ以降、試合はダラダラと緊張感のない退屈な時間が続き、前半は日本の１−０のまま終了。

後半、日本のメンバーはＭＦ柏木に代わってＭＦ中村憲、ＦＷ大久保に代わってＦＷ田中（柏）が入る。８分　ＭＦ中村憲の縦パスにＦＷ藤本が２列目から飛び出し、左足で蹴り込んで２点目。藤本は代表初ゴール。２−０とした。

１９分　日本はＤＦ駒野に代わってＤＦ伊野波、ＦＷ藤本に代わってＦＷ石川を投入。この時間帯から、消極的だったアイスランドが攻勢に出始める。１９分、２７分と、アイスランドが日本のゴールを脅かす。

３１分　日本はＤＦ栗原に代わってＤＦ近藤（代表初出場）を投入。その直後の３４分、　敵陣右ゴール前でＦＷ前田が倒されてＦＫ獲得。ＭＦ中村憲からのクロスをＤＦ槙野が倒れながら右足で押し込んで３点目。槙野は代表初ゴール。

３７分　ＤＦ今野に代わってＤＦ森脇を投入。日本は交代枠６人をすべて使い切った。

後半４８分　自陣ゴールエリアでＤＦ槙野が相手選手を押さえて倒しＰＫ。アイスランドＦＷスマーラソンに決められ３−１とされたが、その直後、タイムアップ。

内容的には、退屈極まりない試合。新戦力として光った選手も見いだせない。こういうフレンドリーマッチを何試合消化しても日本代表は強くならない。調整・練習の域を出ない。高い入場料をとって見せるものではない。唯一の「見せ場」と言えば、アイスランドのテインソン選手のハンドスプリングスロー。その珍しさにスタンドが何度も沸いた。

欧州各国はリーグ戦の真っただ中にあり、代表チームをアジアに派遣する余裕はない。リーグ戦を行っていないのは、欧州の中でも寒さが厳しいアイスランドくらい。しかも、同国は人口３２万強の小国で、ＦＩＦＡランキング１０３位とその実力は低い。日本代表がいま置かれている状況は、「噛ませ犬」みたいな相手に勝って成長する段階にはない。生ぬるい温室（日本国内）を出て、海外で厳しいアウエー試合を数多く体験すことだ。日本代表サポーター諸氏はこんな興行をボイコットし、チケット不買運動を展開したほうが日本代表強化につながる。

●槙野は稚拙な守備で代表落第

さて、前出の注目選手はどうだったのかといえば、左サイドの大久保は不発のまま、前半で退場。もう一人の左ＳＢの槙野は９０分出場して２得点にからみ、初得点まで上げたその一方、試合終了間際、本職の守備の不手際で相手にＰＫを献上してしまった。得点を評価するのか、それとも守備のミスを咎めるのか――評価が難しいパフォーマンスだった。

そればかりではない。左ＳＢの槙野が高いポジションをとり続けているため、左ＦＷの大久保のスペースが狭まり、中央にはじき出されるような形になったのは大久保にとって気の毒だった。日本の基本システムは４−２−３−１なのだが、槙野の上がり目のポジションにより３−２−４−１のような変形システムになってしまった。この形だと、左ＦＷ大久保が自由に動けるスペースがなくなる。相手がアイスランドではなく、もうちょっと気の利いたチームならば、上がり目の槙野の背後のスペースを狙った攻撃を仕掛けただろう。その場合、槙野がこの試合のように、常に高めの位置をキープできただろうか。

槙野については、彼の攻撃性、積極性を評価するよりも、終了間際の守備のミスを咎めたい。ペナルティーエリア内において、たいして厳しい競り合いでもない局面で相手選手を手で倒してしまうというのは、局面を見極める判断力を欠き、しかも、守備の基本が身についていない証拠であろう。筆者の推測では、槙野はドイツで出場機会に恵まれず実戦から遠ざかっていたため、ゴール前の競り合いで慌てたのではないか。

そればかりではない。己の代表生き残りアピールのためかどうかはわからないが、チーム全体のバランスを壊している点もマイナスである。アイスランド戦は生ぬるい親善試合だったから大事には至らなかったが、公式戦ではこの試合のようにはいくまい。槙野はフィジカルも強く、潜在能力は高いのだから、Ｊリーグで実績を上げてから代表に呼んでも遅くはない。槙野はドイツで何を学んだのか？？？