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2010年11月28日(日) Jリーグ有望株3選手

サッカーJ1・2010シーズンはすでに名古屋が優勝を決め、湘南、京都の降格、柏、甲府、福岡の昇格が決定した。残り1試合の興味は、ACLの出場権、降格する最後の1チーム――に集約されてきた。そこで、来シーズン以降に期待するニュースターとして、以下の3人について書いておく。

○ダニルソン―開花したコロンビアの逸材

筆者が最も注目する選手は、名古屋グランパスの守備的MFダニルソンだ。コロンビア代表経験もあるという彼は1986年生まれ(24才)、長身185センチの左利き。長いリーチを生かしたボールキープと、パワーのあるシュート力はJ1では群を抜いている。ここのところ、J1に所属する外国人が小粒となり凄みにかけてきているなか、筆者は、現在、Jリーグ外国人選手の中のナンバーワンはダニソンだと思っている。

ダニルソンの日本におけるキャリアのスタートは、2009シーズン、J2札幌からだった。2010シーズンから名古屋に移籍し、レギュラーとして起用され、頭角を現した。彼の活躍が名古屋優勝の主因の1つだった、といって過言でない。

ダニルソンは、実績を見込まれて日本にやってきたというよりも、日本のトップカテゴリーでゲームを重ね、経験を積むことによって、その技量を高めたタイプだ。彼の能力の中で最も進化した部分の1つは、戦術眼だろう。守備における予測能力、攻撃におけるタイミング、すなわち、攻守の“勝負どころ”を見極める能力が、格段に上がったように思われる。

元来身体能力は高かったうえに、接触プレーを恐れなくなり、恵まれた自分の身体を武器にする術(すべ)を心得たようだ。前述のとおり、読み(予測能力)に磨きがかかってきたので、ボールを奪うタイミング、相手をつぶすタイミング、攻撃で前に出るタイミングが的確になった。

強靭な身体能力に、明晰な頭脳が加わった。危機管理能力が高くなり、相手のカウンター攻撃を防ぐシーンも増えた。もともと、中長距離のフリーキック及びシュートの威力はJリーグでは郡を抜いていたのだが、その能力に、高等な戦術眼が加味されたことになる。

ダニルソンが2011シーズン以降も名古屋に所属するかはわからない。筆者は、彼が長く名古屋にとどまることを望まない。彼は欧州のトップリーグ(イングランド、スペイン、イタリア)でプレーすべき選手だと思う。筆者は(彼が戦うための精神力を年間通じて維持するという前提のもとでだが)、ダニルソンには、イングランド・プレミアでプレーしてもらいたいと思っている。所属すべきクラブは、アーセナルであり、そのポジションはいま現在、アレクサンドル・ソングが務めるアンカーだ。筆者の期待しすぎだろうか。

○丸橋祐介――日本代表が必要とするレフティーの左SB

二人目は、セレッソ大阪のDF丸橋祐介(1990年生まれ、20才)だ。ドイツ・ブンデスリーガ1部のボルシア・ドルトムントで大活躍中の香川信司を送り出したセレッソ大阪には、非凡な若手が多い。MF家長昭博、MF乾貴士、MF清武弘嗣らが注目されているが、筆者の“一押し”は丸橋だ。丸橋は左利きの左サイドバック(SB)。ここのところの日本代表においては、左利きの左SBは珍しい存在となっている。2006年ドイツW杯では三都主がこのポジションに配されたが、ジーコ代表監督(当時)の起用が無理筋であったことは、ドイツ大会の結果が証明している。

丸橋祐介の最大の武器はスピードで、JリーグのSBで群を抜いている。レフティーの左SBなので、右利きのように、カットインしてシュートを狙うタイプではない。深く切り込んで、ゴール前にクロスを上げることが第一の役割になっている。ボックス内にドリブルで入り込むことも望まれる。右利きの左SBはカットインしてのシュートという武器をもっているが、早いタイミングのクロスは上げられない。クロスを上げるためには、利き足でない左足であげるか、右足に持ち替えることになるのだが、前者では不正確なクロスとなる確率が高く、後者ではタイミングが遅れる。

筆者は、丸橋が代表に選出され、代表試合において、サイドで相手守備を振り切り、ゴール前に早いクロスを蹴り、自軍のアタッカーがそれに合わせるという、秒殺アシストシーンを何度もつくりだすことを望んでいる。なぜなら、そのシーンこそ、筆者が最も好きなプレーの一瞬だからだ。それを見せてくれる可能性の最も高い選手の一人として、丸橋祐介に期待している。

○平山相太――怪物、復活なるか

平山相太(1985年生まれ、身長190センチ、25才)は、FC東京の長身FW。彼はデビュー当時、「怪物」といわれた逸材だ。まずは、簡単に平山のキャリアを振り返っておこう。
・2004年4月、国見高校卒業後、筑波大学進学
・2005年7月、オランダリーグ・フェイエノールトの練習生として短期留学。
・同年8月、オランダリーグ1部入りしたヘラクレス・アルメロに3年契約で入団。チーム最多の8ゴールを挙げる活躍をした。この活躍が認められ、2006年、FIFAが選出する「ベスト・ヤング・プレーヤー・オブ・ ワールドカップ2006」にノミネート。
・同年9月、所属していたヘラクレスを「ホームシック」を理由に突然退団。
・同年同月、日本に帰国後、FC東京に入団。2006年、Jリーグに初出場。

その後、U21、五輪代表等の若いカテゴリーの日本代表に選出されるも、2006、2007シーズンになると、代表国際試合、FC東京の試合出場は激減する。2009シーズン、FC東京の監督に城福浩が就任すると、先発起用が少なくなり、平山の存在は日本のサッカー界から忘れ去られるに近いくらい薄らいでゆく。

2010シーズン、FC東京の城福監督が更迭され、大熊清が監督に就任すると(第24節以降)、先発メンバーに固定され、第33節終了時点の成績は29試合出場、7得点(※FC東京は残り1試合を残して降格圏にあるが)。

高校卒業後、オランダ一部リーグで活躍をして、「怪物」といわれた平山。当時、A代表レギュラーFW候補として期待されたのだが、FC東京入団後、その成長は止まったまま。高い身体能力が買われる一方で、精神面の弱さが指摘され続けてきた。今シーズン、大熊清がFC東京の監督に就任してから、本来の彼のプレーが戻りつつあるように思われる。

代表チームにおいて、彼のようなタイプの選手に期待される役割は、恵まれた身長を生かした前線のターゲット役だ。攻撃側が後方から蹴りこんだロングボールをターゲット役がボールキープし、攻撃陣の上がりを待つというポストプレーは、モダンサッカーの基本戦術の1つだということは、詳しく説明するまでもない。

日本がW杯アジア地区予選を戦う場合、平均身長が低い東南アジア勢、アラブ勢との対戦では、平山のような「高さ」は強力な武器となる。「高さ」がセットプレー等からの得点機会を増やす確率は高い。

さて、歴代の日本代表の選手では、2006年W杯ドイツ大会の代表FWに選ばれた巻誠一郎(身長184センチ、ロシア・プレミアリーグのアムカル・ペルミ所属。代表当時・千葉)が平山に近いタイプだが、W杯での活躍はなかった。日本サッカー界では、身長の高いポストプレーヤーに適した人材は希少で、現在J1で身長の高い大型FWといえば、神戸のFW都倉賢(1986年生まれ、24才。身長187センチ)、山形のFW長谷川悠(1987年生まれ、23才、身長187センチ)、湘南のFW田原豊(1982年生まれ、28才、身長187センチ)らが思い浮かぶ程度。和製アンリといわれる清水のFW伊藤翔(1988年生まれ、22才、身長184センチ)も期待どおりの活躍はできていない。このなかでは、平山が日本代表に最も近い位置にいる。

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以上3選手に限らず、2014年ブラジルW杯にむけ、若く才能のある選手が数多く出てきて、まず、Jリーグで活躍してくれることを望んでいる。


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