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2009年04月13日(月) 大量失点試合の増加を憂える―Jリーグの危機

サッカーJ1リーグは、第5節を終了した。今季の特徴というか、気になる傾向があるので、触れておこう。

今(2009年)シーズン、第1節から第5節まで、1試合中いずれかのチームが3点以上を取った試合が以下のように14試合あった。
[第1節]F東京 1-4 新潟、横浜FM 2-4 広島、名古屋 3-2 大分、千葉 0-3 G大阪、磐田 2-6 山形
[第2節]浦和 3-1 F東京、G大阪 4-1 磐田、広島 2-3 大宮
[第3節]横浜FM 3-3 柏、名古屋 3-1 清水
[第4節]川崎F 3-1 名古屋
[第5節]横浜FM 5-0 神戸、広島 4-1 柏、大宮 3-2 G大阪

一方、昨(2008年)シーズンは、同じく9試合だった。
[第1節]鹿島 4-0札幌
[第2節]磐田 3-0G大阪、神戸 4-1 川崎、新潟 2-3 FC東京
[第3節]FC東京 3-3 京都、浦和 3-0 新潟 、神戸 3-2 磐田
[第4節] 横浜FM 3-0 FC東京
[第5節] 鹿島4-1千葉

今シーズン、4失点以上の試合が6試合、前シーズンの3試合に比べて倍増した。この大量失点傾向を前にして、Jリーグの各チームの得点力=攻撃力が上がったと考えるサポーター、サッカー関係者は存在しない。言うまでもなく、Jリーグの守備力が低下しているのである。あるいは、指揮官のゲームプランの構築力として、各チームが「攻撃的姿勢」という建て前の下、守備を軽視した結果にほかならない。

大量失点で負ける試合が多くなった理由は、筆者の推測にすぎないが、昨年末行われたクラブW杯で、G大阪がマンチェスターユナイテッドに大敗した試合を、マスコミ、サッカー専門ジャーナリズムが絶賛したことではないか。G大阪は「攻撃的」に戦って負け、それが「スタイルを貫いた」潔さとして、賞賛されたからではないか。このことは、既に当コラムでコメントしたので繰り返さないが、絶賛、賞賛の反応は、筆者にとって、驚きだった。プロサッカーにおいて、玉砕が賞賛される風土は、日本独特のものではないか。

G大阪は、国際経験が皆無に近いクラブである。このチームを率いる西野監督は、ドメスティックな経験しか持たない、日本サッカーにおける典型的な指揮官だ。彼が、強豪を相手に自軍が勝てる確率の高いゲームプランを描けなかったことは、いたしかたない。経験がないのだから。

ただ、日本のサッカージャーナリズムは、そのことを指摘すればよかった。そうしないで、「自らのスタイルを貫く」ことが、素晴らしいという価値観の倒錯を行うから、日本のトップリーグに混乱が生じる。

サッカーにおいて攻撃的であることが悪いはずがない。だが、練習試合ではない公式戦において、戦力に差がある場合、自軍のコンディションが悪い場合、自軍に故障者が多数でてしまった場合等々においては、指揮官は複雑なゲームプランをもって、相手に臨むべきであり、それがプロフェッショナルの義務である。

基本的な守備を忘却して点を取りにいくことが、「攻撃的」であるはずがない。点をやらない厳しい守備、組織的守備、ハードな守備を怠れば、Jリーグの質は低下する、いや、すでにもう低下しているのだ。とりわけ、大量失点試合で二度も負けた磐田は、指導者の交代を真剣に考える時期である。派手な点の取り合いを観客が喜ぶというのは嘘である。緊迫した厳しい守備に対して、それを切り崩す攻撃の試行と錯誤がサッカーの醍醐味である。早い話、Jリーグよ、もっと真面目にやれということだ。



2009年04月04日(土) 日本プロ野球開幕

WBCで「世界一」になった日本プロ野球。その興奮も冷めないまま、日本プロ野球が開幕した。「世界一」監督の原が率いる読売はホームで広島に負けた。WBCに選手を送らなかった中日が、開幕戦を飾った。開幕戦の勝ち負けだけで優勝を云々することはもちろん、できない。とにかく、リーグ戦は長い。

しかし、リーグ戦序盤は、各チームまちがいなく、WBCの影響を多少とも受けるだろう。MLBでは、イチローが胃潰瘍で故障者リストに入り、開幕戦不出場が決まった。MLBの各チームは、“だからいわんこっちゃない、WBCがチームの財産(選手)を毀損したではないか”と怒っているのではないか。

世の中というものは、すべてうまくいくことはない。「プラス」を得れば、ほかのところで「マイナス」を被る。WBCで「得たもの」の代わりに、リーグ戦では「失うもの」がある。イチローはWBCを通じて不調だったものの、決勝戦で勝ち越しヒットを打って面目を保った。今思えば、不調のプレッシャーが彼の胃を破壊していたというわけだ。

WBCで日本が優勝したことで「得たもの」とはなにか――日本人選手の場合、MLBのスカウトの目に留まり、大金を得るチャンスを引き寄せたことだ。活躍したダルビッシュ、岩隈、杉内らの日本人の投手陣は、来シーズン、MLBに入団する可能性が高い。選手以外では、なんといっても原代表監督である。原は王に次ぐ世界的実績をつくった。なんといっても、世界一の監督は広い世界を探しても、王、原の2人しかいないのだから。これで、野村、星野の評価は地に落ちた。選手、監督以外では、視聴率を稼いだテレビ局だろうか。

「得たもの」「失ったもの」はさまざまだが、しかし、最大の問題は、日本のプロ野球界がWBCを適正に評価することが出来ていない点だ。日本球界、そして、日本の野球ジャーナリズムは、場当たり的にしか、WBCを評価しない。あるときは、米国民の無関心さ、MLBの非協力ぶりから、WBCはおかしな大会だといい、日本代表が優勝に絡み始めテレビ視聴率が上がると、「世界一」と騒ぎ出す。WBCの本質を見極め、普遍的に評価しないから、損益を確定することもできない。

そのような日本球界にあって、唯一、WBCを否定的に位置づけ、揺るがなかった球団が中日ドラゴンズ(落合監督)だ。中日の姿勢は、MLBの球団と概ね等しく、代表に選手を送らず、リーグ戦に向けて例年通りの準備をしてきた。筆者は、中日の球団としての姿勢を評価するし、中日と筆者は、WBCに対する評価を共有する。

次回のWBC開催が、どのようなかたちで開催されるかはわからない。開催時期が変わり、MLBが全面的に協力するかもしれない。サッカーW杯のように、世界中からのコンセンサスを得た大会に向かう可能性がないわけではない。だが、今回のような大会が再現されるのであれば、日本は、イースタン、ウエスタンレベルの選手を送り込んだほうがよい。サッカーのU23のような年齢制限による選手選考でもよい。ドリームチームは今回の優勝で最後にしたほうが、代表監督の人選における混乱や、リーグ戦へのマイナスの影響を回避できる。

さて、これから続く日本プロ野球のリーグ戦、順位はどうなるのか。筆者はプロ野球をあまり見ていないのでわからないが、セリーグにおいては、WBCに選手を送らなかった、中日に是が非でも優勝してもらいたいものだ。


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