Sports Enthusiast_1

2005年01月30日(日) 送迎試合を提案する

きのうのカザフスタンがひどすぎたので、日本代表に手ごたえがなく、調整具合はいまひとつ不透明だ。次のシリア戦はバーレーン戦のシミュレーションと位置づけられているので、それはそれでいいと思う。だが、こういう難しい時期、まともな相手と試合をしたければ、前もって、日本B代表と送迎試合を予定するのもアイデアの1つだ。
B代表のメンバーは、FW=田中(浦和)、平本(東京V)、坂田(横浜)、播戸(神戸)、MFには奥(横浜)、羽生(市原)、石川(F東京)、田中隼(横浜)、山田(浦和)、村井(市原)、相馬(東京V)、名波(磐田)、長谷部(浦和)、山田(卓)、DFには、トゥーリオ(浦和)、鈴木(磐田)、土屋(神戸)、茂庭(F東京)、GKは曽ヶ端、高木(東京V)・・・らが、ざっと思い浮かぶ。熟慮すればいろいろな選手がもっと思い浮かぶことだろう。
私はいまのA代表チームの主力選手そのままで、この先、アジア最終予選を戦い終えることはないと思っている。昨年のアジア杯において、確かにA代表チームはピークを極めた。国内組を中心としてコンビネーションが熟成し、それに、運が加わり、さらにモチベーション、気力・体力などなど、大会をとおして、1つのチームが「完成する」過程を私たちはじっくりと、観察することができた。しかし、完成の後に来るものは、もちろん、崩壊だ。生成→発展→没落あるいは崩壊というのが、万物の法則なのだから。サッカーチームと言えども、この法則から逃れることはできない。
代表選手の選考基準はいろいろある。正解はもちろん、1つではない。正解があるとしたら、結果だけだ。ただ言えるのは、選択肢は多いほうがいいということ。若い力が必要だということ。そして、上昇志向を代表の力とすることだ。代表チームのあり方は、英雄待望論と似ている。
B代表を編成することは、かなりの困難を伴う。クラブからすれば、A代表についでB代表に選手をとられたら、チームが機能しなくなる。だから、年がら年中、B代表を組織しろとは言わない。せめて、A代表の節目のときに、AとBが戦うことがあってもいい。もちろん、戦うからには、Bもきちんと調整をしなければいけないから、計画が必要となる。周到な準備の上、AとBの戦いが実現すれば、盛り上がること間違いない。



2005年01月29日(土) こんなものか

カザフスタンとの練習試合は、日本代表が4−0で圧勝。あれこれ批評すべき対象ではない。とにかく相手がひどすぎた。日本の高校チーム程度か。昨日の来日でコンディション云々は言うに及ばず。とりわけDFのコンビネーションが未熟で、ゴール前はザルに近い。日本の仕上がり具合が判断できる相手ではないし、日本の状態を占う試合にならなかった。
目だったのは右サイドの加地の動きだが、相手の左が加地にプレッシャーを与えないのだから、参考にならない。
サッカーは技術だけではない。モチベーションが高ければ、力が下でもやっかいな相手となる。FIFAランキングでは、カザフスタンと北朝鮮とでは大きな差はないが、予選で戦う北朝鮮のモチベーションは、この試合のカザフスタンの比ではない。油断は禁物である。とにかく、きょうは試合勘と90分間戦える体力があるかどうかの判断だろう。ケガもなく、順調な滑り出しと言いたいところだが、ま、こんなものでしょう。



2005年01月28日(金) 親善試合?練習試合!

05年サッカーシーズンは、カザフスタン戦との親善試合で幕を開ける。カザフスタン戦は言うまでもなく、W杯アジア地区最終予選の第一試合・対北朝鮮戦に向けた調整試合だ。この試合の目的は、調整の中でもいわゆる、「試合勘」を取り戻すためのものというのは、常識の範疇だ。
ではなぜカザフスタンなのか、といえば、それはそれで答えに窮する。推測では、欧州各国はリーグ戦の真っ最中だし、南米はシーズンオフ、この時期、極東アジアの日本に遠征してくれる代表チームは数少ない。限られた選択肢の中の1つということか。
リーグ戦が佳境に入った欧州各国のクラブが、代表クラスを代表に手放すはずがない。調整試合の相手として、中央アジアのカザフスタンが悪いというつもりはない。まともな選手で11人の編成ができる代表チームならば、FIFAランキングなど、どうでもいい。だが、私が不満なのは、カザフスタンを呼んだ日本サッカー協会のサービスの悪さだ。カザフスタン代表がどんなチームなのか、どの選手に注目すべきなのか。今回来日するチームの戦術、フォーメーション等々はいかなるものなのか。あるいは、カザフスタンはいつ来日し、どこで練習し、いつか帰国するのか。カザフスタンの国内リーグはどんな制度でどう運営され、いまどんな時期なのか。カザフの選手の中で、欧州リーグで活躍しているのはだれとだれで、その選手は含まれているのかいないのか・・・
私たちは、サッカーを楽しむ上で最も基本的かつ基礎的な情報を与えられないまま、明日のカザフ戦を見ることになる。親善試合なのだから・・・、試合勘さえ取り戻してくれればいい、だから、ムキになって怒ることのほどではない――けれど、カザフスタンが来日して、どんな練習をしたのかくらいは、事前に知りたいものだ。主力選手の練習風景くらいはテレビで見たいものだ。テレビが無理なら、文字情報でもかまわない。
かりに、明日、未調整のカザフと戦って日本がゴールを量産したとしても、景気づけくらいにはなるかもしれないが、意味のある結果ではない。
というわけで、明日のカザフスタン戦は、調整試合・練習試合のレベルを越えることはない。なので、入場料は無料とはいわないけれど、せいぜい1000円程度で十分ということになる。

(追記)
カザフスタン代表は、28日に来日。時差、旅の疲れもあり、コンディションは最悪だろう。報道によると、試合会場でシュート練習を中心に1時間弱の調整。ティモフェーエフ監督は「若い選手、新しい選手を連れてきた」と話したが、戦術練習は一切なし。「自分でも分からない」とフォーメーションすら決めていない状況――とのこと。
また、カザフスタンは、02年にAFC(アジア)からUEFA(ヨーロッパ)に移行。06年ドイツW杯予選は、現在4戦無得点のまま全敗。帰国後にはデンマーク戦を控える。
なお、カザフのサッカー事情については、ウエブでは、日本駐在のカザフスタン大使館員へのインタビュー取材があったので、一読しておこう。
いずれにしても、カザフスタンのモチベーションは高くなさそうだし、向こうもこの試合については、親善・調整試合という位置づけだろう。
カザフスタン相手のこの試合はとにかく調整試合。日本代表選手のコンディショニングをアップさせるためのものだから、勝敗にこだわらず、気楽に応援しようではないか。



2005年01月25日(火) ああ、よかった

退任の噂があったオシム監督(市原)の続投が正式に決まった。正直言ってホッとした。A新聞にオシム監督のコラムが連載中だが、けさ、続投に触れた一文が載った。
このオフシーズン、市原は、村井、茶野、京都にレンタルしていたチェヨンスの3主力選手が磐田に移籍した。さらに、DFリーダーとして最終ラインを統率していたミリノビッチを含めた外国人3選手が退団した。チェは04年シーズン不在だったから除くとしても、主力5選手が消えたことになる。彼らに代わる補強選手については、いまのところ不明だ。このままなら、市原の05年シーズンの順位は押して知るべし、降格候補に挙げてもおかしくない。けれど、オシム監督の続投が決まったと聞くと、なんとなく、期待が高まる。
市原の来シーズンの布陣は不明だが、有望な若手選手が目に付く。レギュラー候補の若手としては、右サイドの水野を挙げておこう。いまの市原で最も有望な若手だと思われる。彼はトルシエ時代の代表だった市川(清水)よりも才能があると思う。FWでポストプレーがうまい巻も期待される。鹿島の鈴木のように、前線で踏ん張れる強靭なFWに成長してほしい。フリーキックの名手・阿部勇樹には、ぜひ代表に定着してほしいし、ボランチで運動量豊富な佐藤も私が好きなタイプだ。
市原のいいところというか、オシム監督が優れている点は、若手をきちんと育て上げることだ。ブラジルでは、レオン、ルシェンブルゴが監督を務めたサントスが有望な若手を欧州のクラブに「輸出」しているけれど、市原もサントスに近い。サントスはブラジルを制覇した。市原もJで優勝してもらいたい。
さて、何度も書いたことだけれど、若手の有望選手の質と量で言えば、磐田がJリーグのクラブの中でダントツだ。かりに、オシム氏が磐田の監督に就任したと仮定したら、市原から、茶野や村井を獲得することはなかっただろう。オシム氏の情熱は、磐田にいる若手の育成に向かったことだろう。育ててこそ監督。監督の実力とは、順位を上げつつ、選手を育てることだ。
今シーズン、市原から目が離せない。私の知らない若手が、いつのまにか、Jリーグで活躍している――新しい才能の発見、力のある監督のプレゼンテーション――若手の成長を認めることは、サッカーの最大の楽しみの1つだと言って過言でない。



2005年01月22日(土) 「球春」のはずだが

いつもなら年が明けると、球春と称して、プロ野球の有名選手の自主トレなどがスポーツニュース等で放送されるはずだが、今年は見かけない。いつもどおり放送されているのかもしれないが、私の目と耳にはとどかない。そもそも、今年のプロ野球は、昨年の騒動がおさまってしまった後、まるで潮が引くように人々の興味の外にいってしまった。話題の新人は・・・新球団は・・・大物外国人は・・・なにもかもが白々しい。
来月になってキャンプに入れば、そこそこテレビも取り上げるのだろうが、昨年でプロ野球は事実上終わってしまったようだ。でもこれが、普通の状態なのだろう。人々が「巨人」に注目し、スポーツマスコミが「巨人」の選手ばかりを取り上げて、1番から8番までホームラン打者だ、メジャー級だ、と虚報を繰り返し、今年も優勝まちがいなし、なんてOB解説者が「球春」を盛り上げていたのが昨年までだったのかもしれない。そうした報道が、プロ野球を不健全にしていたのだ。コミッショナーに権限がないとか、オーナーに経営感覚がないとか素人だとかと言う前に、スポーツマスコミ自らがまずもって、自分達のこれまでのプロ野球報道のあり方を反省すべきなのだ。スポーツマスコミが「巨人」偏重の報道姿勢を是正し、選手の技術・技量、姿勢、そして、試合内容、監督の作戦、選手起用に重点を置いた取材と報道をしておれば、「巨人」人気や「巨人」一極集中も起こらなかった。
スポーツマスコミは、ファンがマスにではなく、ローカルに特化されれば、新聞の販売数は少なくなってしまう。一方、全国区の「巨人」人気に依存すれば、販売数は伸びる。それが、日本のスポーツマスコミの実態だった。日本のスポーツマスコミこそ、「巨人」と一心同体・運命共同体だったのだ。
巨人幻想が消えた今、スポーツマスコミがプロ野球をどう報道するのか。彼等がスポーツの専門家として、スポーツ報道に徹することができるかどうか。スポーツマスコミの見識こそが問われている。



2005年01月15日(土) 最近の話題から

●ロマーリオ引退の真実
ロマーリオの「引退」騒動は、彼の代表引退試合で決着した。彼がセレソンに復帰することは、もうこれであり得ない。彼がどこのクラブで現役最後の試合を迎えるのか興味のあるところだが、おそらく彼自身はバスコを望んでいると思う。

●ビギナーズラック?
C大阪からスペインリーグのマヨ(ジョ)ルカに移籍した大久保が初出場で1得点、1アシストと大活躍した。ビギナーズラックなのか実力なのかはまだ分からないが、ぜひレギュラーを確保してほしい。

●日本の守備がフランスで通じるか
鹿島の中田(浩)がフランスリーグのマルセイユに完全移籍するらしい。マルセイユの監督は、前日本代表監督のトルシエだが、それと別に、この移籍はたいへん興味深い。なぜなら、フランスリーグの特徴は強い当たりを売り物にした守備にあり、なかでも、フランスリーグの名門マルセイユといえば、サポーターを含め激しさが特徴だ。このクラブには暴力の影が付きまとう。もし、中田(浩)がマルセイユで成功すれば、日本の守備の成長を証明することになる。中田(浩)が活躍すれば、日本のDFがヨーロッパの激しさに耐え得ることを実証する。

●Jリーグの戦力移動
Jリーグ04年のアフターシーズンでもっとも精力的なクラブは磐田だ。当コラムで何度も取り上げたけれど、磐田はGK・川口(FCノアシェラン/日本代表)、DF・茶野(市原/日本代表)、MF・村井(市原/日本選抜)、FW・チェ(市原〜京都/元韓国代表)を獲得した。
05年シーズンの磐田の布陣は、GKに川口(日本代表)が入り、DFは田中(日本代表)、茶野(日本代表)、鈴木と固い。MFには、福西(日本代表)、服部(元日本代表)のダブルボランチ、サイドに名波(元日本代表)、西(日本代表)で名波の控えに村井が加わり、トップ下に藤田(日本代表)とタレントぞろいだ。FWは、グラウの契約が未確認だが、チェ(前韓国代表)、前田、ゴン(元日本代表)の3人のうち調子のいい選手が入る――と、豪華そのもの。さらに、若手の有望株が控えているのだから、戦力的にみれば、浦和と大差ない。
磐田以外のクラブでは、V東京が戸田(清水)を獲得したくらいだから、どのクラブも若手の育成に努め、その成長に期待する方向だろうか。もちろん、この先、主力選手の移籍がないとは言えない。

●Jリーグの優勝は
戦力的には、昨シーズン後期優勝の浦和と補強に力を入れた磐田、そして、安定した力を発揮する横浜の3クラブが他を引き離している。おそらく、この3つから優勝チームが出るだろう。05年シーズンから、世界標準の1シーズン制度に切り替わるので、優勝は選手層の厚さ次第だ。
今年は、W杯最終予選があるので、代表選手は合宿、海外遠征でチームを離れる機会が増えるため、外国人選手が優勝のカギを握る。ブラジルと太いパイプをもつ鹿島、名古屋がどんな補強をするかわからないが、よほどの選手が来ない限り、この2クラブが優勝争いに加わることはない。
台風の目は、若手の成長が著しい東京Vだと思われるが、名将・オシム監督率いる市原同様、安定感に欠ける。大黒の活躍で昨年は躍進したG大阪も、05年はピークを越えた感じだ。優勝は、浦和か磐田か・・・

●Jリーグは、「お嬢様サッカー」から脱却できるか
Jリーグの特徴の1つとして、日本独特のレフリングが挙げられる。正当なチャージと反則の基準が不明確なのだ。選手同士の激しいぶつかり合いよりも、華麗なパス交換を好む傾向が審判にあり、パスがうまいチームに判定が甘い。選手は、審判のそうした傾向を踏まえて、チャージされるとすぐに転ぶ。しかも見苦しいことに、とばされた選手が「ファウル」をアピールする大げさなアクションで観客に訴えかける。演技をする暇があるなら奪われたボールを追いかけよ、もっと身体を鍛えよ、と言いたい。
しかし、「お嬢様サッカー」が跋扈する要因は日本のスポーツ風土に帰する。致命的な欠陥は、日本では審判のミスが糾弾されないことだ。審判は「神聖」という信仰が日本にはあり、審判のミスが放置されてしまう。「判定」が神聖なのであって試合中、それが覆ることはないが、審判が判定を誤ったならば、試合後、その審判になんらかの処分があって当然だ。
審判の判定については、TV中継がビデオでフォローし、微妙な判定の正誤を、試合後の「委員会」等で明確にする資料とするようにした方がいい。もちろん、こんなことは既に実施されているとは思うが。もちろん、視聴者には何度も繰り返し、問題のシーンを放映すべきだ。ビデオ映像がすべて正しいとは言わない。あくまでも、参考として使用する。
この問題は、W杯予選等の国際試合を勝ち抜く上で、極めて重要だ。「お嬢様サッカー」に慣れ親しんだJリーガーが国際試合の判定に面食らって、思わぬ相手に星を落とす可能性もあり得るからだ。



2005年01月10日(月) 磐田はオシム氏を呼ぶべきだった

報道によると、磐田は、J1市原から、MF村井、J2京都にレンタル移籍していたFWチェヨンスに続き、日本代表DF茶野隆行(28)を獲得するという。
磐田の新監督は、元五輪代表監督のY氏。私はY新監督が磐田の有望な若手を育て上げ、クラブの構造改革を成し遂げるものと期待していたのだが、裏切られた。自分で育てるより、市原のオシム監督が育て上げた選手を買ってきたほうが楽というわけか。Y監督について、「前代未聞の同一チームから一気に3選手獲得というらつ腕を振るった」と「評価」するスポーツマスコミもあるようだけれど、私の目には、Y監督の「らつ腕」は、苦労して育てるよりもカネで済ませるという、イージーな姿勢に写る。しかも、磐田の若手の出番がますます減るではないか。
豊富な戦力を競争させて結果を出すというチーム運営は、監督ならだれだって一度はやってみたいだろう。いわば「代表型チーム運営」だ。世界選抜を通り越して、「銀河系軍団」とまで呼ばれたレアルマドリードがそうだ。しかし、世界の有名選手を集めたそのレアルが、今季はスペインリーグ優勝が確実ではないばかりか、現在の首位は宿敵バルセロナだ。レアルは、昨シーズンから監督の首を何人かすげかえ、年末にブラジル人で、サントスで監督を務めていたルシェンブルゴ氏に落ちついた。レアルは選手に大金を使ったものの常勝軍団になり得なかったことを悟った一方で、監督の重要性にやっと、気がついたようだ。
磐田(クラブ経営者)は、新監督が「らつ腕」を振るって市原の有力選手を引き抜いたとしても、それがクラブ本来の目的に適っているかどうかを見極めなければいけない。新監督に期待する仕事は、選手の引抜ではない。磐田のクラブ経営者はいまごろ、新監督が市原から3人も選手を引き抜くくらいだったら、市原からオシム監督一人を連れてきたほうがよかった、と思っているんじゃないのかな。



2005年01月02日(日) 磐田、重症か

元旦の天皇杯は、1人少ない東京Vを磐田が攻めきれず、東京Vが優勝したことは既に書いた。数的優位に立った磐田が、終盤は一方的に押し込みながら、攻めの形が整わず、1点を返したにとどまった。もちろん東京VのGKの奇跡的と思える堅守はあったものの、磐田の攻めはどこか単調だった。というよりも、攻め手に迷いというか戸惑いが感じられた。
この試合後、磐田の新監督は「ゴール前を固める相手を崩すのは難しい。シュートまでもっていけたが、決められなかった」と話した。
一方、交代出場した藤田は「ポジションがばらばらだった。慌てる時間ではなかった。もっといろいろな崩し方があったと思う」とコメントした。
指揮官と、磐田の主力でリーダー格の藤田とで、試合後のコメント内容は分裂していた。もちろん、負けた監督が試合後のインタビューで本音を語るはずがないから、コメントの内容が180度違っているからと言って、驚くには当たらない。
新監督と藤田のコメントの背景を分析してみよう。新監督は一人少ない東京Vがワントップ・平本を除いて自陣ゴール前に引く作戦を見て、選手交代とポジションチェンジを敢行した。20分すぎからのシステムは、FWに中山(前田に交代)、藤田(グラウ同)を入れ、福西をトップ下、川口(菊地同)を前目の左SBに入れ、実質2バックをとった。戦法は、引いた東京Vからプレスがかからない、ほぼフリーの名波らが前線の選手の頭めがけてクロスボール、ロングボールをいれ、左サイドから自由ポジションとなった西らがこぼれ球を拾ったり、福西、中山らが折り返したりして決定的チャンスを狙う作戦だった。数的優位にあるチームがとる作戦としては悪くない。けれど、攻めが単調となり、バランスを失うこともある。両刃の剣だ。
ここで先述の新監督と藤田のコメントに戻ろう。新監督の「シュートまでもっていったが、決められなかった」というのは、自分の作戦は正しかったが、選手が決められなかった、という意味だ。
一方の藤田の「もっといろいろな崩し方があったと思う」というコメントは、「個々の選手の基本的役割を重視し、きっちり組み立て、たとえば、サイドからなどの多彩な選択すれば勝てた」ということを意味している。前段の「ポジションがばらばらだった。慌てる時間ではなかった」というのは、監督が指示した作戦のタイミングが早すぎたこと、得意のポジションを外されて不本意なポジションでプレーさせられたこと、への不満だ。藤田のコメントは、新監督の采配批判にほかならない。
新監督が自分の作戦を自画自賛して、負けは選手の責任だと言い、主力選手は監督の作戦と起用法を批判する。天皇杯決勝の磐田の「負け」は、もしかしたら、このクラブが深刻な問題を抱えていることを明らかにしているのかもしれない。
さて、新監督はなぜ、ポジションを無視した大胆な選手交代を伴った作戦を行ったのか――答えは簡単、新監督の経験の浅さからだ。焦りである。“数的優位に立った、相手は引いているし、DFに高さはないし、若い、ゴール前に放り込んでおけば相手は慌ててミスをする・・・早いとこ追いつけば・・・”と思ったかどうかは別として、それに近いゲーム観が感じられた。
結果としては、新監督の作戦は失敗した。この結果は、監督のイメージと選手のそれとが乖離していたことからきたものだ。
藤田を筆頭に、磐田の選手たちは、これまでやってきた自分達のサッカーをやれば、一人少ない東京Vには勝ち越せると思っていたに違いない。ところが、2点リードされた後の後半20分過ぎ、監督の理解できない選手交代が始まって、磐田の攻めは単調になった。後半1点を返したけれど、そこまでだった。
私の観察では、磐田がいいサッカーをした時間帯は、前半1点を先行された直後だった。残念ながら、前半は時間がなくなり追いつけなかったけれど、あの時間帯で選手はやれる、という実感を掴んだに違いない。磐田の混乱は皮肉にも、後半8分、東京Vの小林が退場させられてから起こった。0−1のビハインドで相手が一人少なくなった、時間はたっぷりある、さあ・・・というところで、磐田に異変が起きたのだ。新監督の心の中に、功を急ぐあまり、焦りと試合の流れの読み違いが生じたのだ。しかも、アドバンテージをとったはずの磐田が、平本の強烈なカウンターを食らって差は2点に広がってしまった。そうなると泥沼状態で、焦りはバラバラの攻めの形となり・・・というわけで、詳しい展開は前述の通りなので、繰り返さない。
サッカーはわからない、指揮官の判断ミスで、勝てるゲームを失うこともある。指揮官のゲームプランと選手の抱く戦いのイメージにズレが生ずれば、選手の集中力もなくなる。そして、運からも見放される。
天皇杯決勝から学ぶべき教訓――サッカーの栄光は監督次第。



2005年01月01日(土) 元旦サッカーあれこれ

●「神」の豹変
日本代表監督はある新春インタビューで、「(世界と日本の差は、)人間。ブラジルにはロナウジーニョ、ロナウド、アドリアーノ、カカ、カフー、ロベカルがいる。アルゼンチンもテベス、クレスポ、サビオラ、アイマールがいる。これが(日本と)世界との差だ」と答えた。
また、世界との差を埋める手段について、「欧州選手権のギリシャ優勝を誰が予想した?1人ひとりのコマが歯車として機能するようにトレーニングしたから優勝した。だから日本にも、今のこの時期がチャンス。充実した力を出せばいい成績を収められる」と答えた。
あれあれ、現日本代表監督は前監督の「トルシエ路線」を否定して、一人ひとりの個性を生かすのではなかったのか。間違っても、代表選手を「歯車」なんて表現しなかったはずだが・・・この人のやりたいサッカーは何なのだろうか?日本代表の選手のレベルは、ブラジル代表やアルゼンチン代表と比べることもできない。素人の私にもそのくらいの戦力判断はできる。ならば、どうするのか、個々の選手のレベルを上げるのか?代表チームにそんな芸当はできない。クラブ所属の選手を独占することなどできないからだ。いまになって、「トルシエ路線」に戻ったのだとしたら、日本代表はおよそ3年間を浪費した。
●イエローカードの出しすぎ
東京Vと磐田の天皇杯決勝戦、東京Vが1点リードの前半終了間際、磐田の福西にスライディングタックルにいった東京Vの小林が二枚目のイエローカードで退場。ビデオで見る限り、何であれがイエローなのかわからない。私の目にはファウルですらない。試合中、磐田の福西はダイビング(シミュレーション)気味に倒れるシーンが多かった。きょうの主審はオレたちに有利、という意識が働いた結果だろう。福西という選手は、エルボーが多いし、フェアプレーから遠い。私はこういう選手を好まない。
そもそも、この試合の主審は磐田に有利というよりも、東京Vのチャージを一切かまわず、イエローにしていた。ファウルでいいところがイエロー。これでは、日本のサッカーが「お嬢様サッカー」になってしまう。主審が磐田に遠慮しているようでは、どうしようもない。ま、磐田の監督は有名人ではあるけれど。
結果は、一人少ない東京Vが2−1で競り勝った。前半、いいサッカーをしていた東京Vが主審のミスで負けなくてよかった。一人少なくなった東京Vが守備にまわったのは仕方がない。そのため、天皇杯決勝にふさわしいとは言えない試合になったけれど、試合をつまらなくした責任は、イエローカード連発でしかも誤審でレッドを出した主審にある。
●疑問多い新監督采配
磐田の新監督の采配には疑問が残る。まず、先発した西の左サイドがわからない。さらに、1人多い状態で交代した川口がDFラインの左サイドバックというのも疑問。TV解説のK氏も「川口は右サイドで力が出ます・・・」とコメントしていた。さらに、FWのグラウに代わってMFの藤田というのも分からない。藤田が点を取るパターンと言えば、二列目からの飛び出しか、ゴール前の混戦に二列目から割って入ってというのが常識。
これだけ選手が本来のポジションから外れれば、結果が出ない場合、選手の死活問題になる。新監督氏は磐田を立て直すつもりなのだろうが、破壊に近い。天皇杯決勝は、試行が許される試合ではない。さらに、若手を先発させ、後半20分にベテラン起用という、判で押した采配もスタミナのある東京Vのような若いチームには通じない。昨年のJリーグでは、東京V以上に鍛えられている市原に通じなかった。磐田がパワー不足なのは誰が見ても明らかだ。
選手をポジションチェンジで壊すようだと、磐田にストックされた有望な若手の伸びも止まる。東京Vでは、左サイドで代表の三浦(淳)をベンチに追いやった(三浦は名古屋に移籍)相馬や、きょうも一人少ない状態でワントップで獅子奮迅の活躍をして1点を上げた、FW平本らの若手が着実に台頭してきている。
天皇杯はだから、若手の台頭した東京Vと、ベテラン頼みの磐田の決戦だった。構造改革を済ませたチームとそうでないチームの戦いであり、世代交代の重要性を確認する試合だった。結果については、ご覧の通り。
磐田の才能のある若手が新監督の体制で壊されるようだと、磐田のみならず、日本サッカー界にとってマイナスになる。来シーズンのJリーグ10試合で新監督の選手起用に改善が見られないようならば、ネームバリューにこだわらず、早いとこ解任したほうがいい。


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