妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2008年08月31日(日) 『ラックスティーラー 1』(漫)

【かずはじめ 集英社スクエアジャンプコミックス】

久しぶりに読むなあ。かずはじめ。
またも殺し屋の話しで、マインドアサシンを思い出しますが、雰囲気はがらっと違います。
対象者の運を盗んで殺すなんて、なんだか伊坂の『グラスホッパー』にでも出てきそうな殺し屋だなぁ。
伊坂のグラスホッパーを漫画化するときはかずはじめにお願いしたらいいんじゃないかなぁ。

淡白な絵柄ながらも、意外とえげつない悪人やらえげつない暴力描写がさらっと登場するのは相変わらずです。
なんて言うか、こう・・・がんばって欲しいなぁ。かずはじめ。余計なお世話なんだけど。


2008年08月30日(土) 『鴨川ホルモー』(小)『エンドレスワールド』(漫)

【万城目学 産業編集センター】

今度映画化も決まったマキメ君のデビュー作。
マキメ君以来、ボイルドエッグから新人がデビューしないけれど、確かにこれくらいのレベルの新人はなかなか出てこないかもな〜というかボイルドエッグに送らないかも。

しかし、どうしてもその作風から森見登美彦と比べざるを得ないマキメ君。
デビューも近いし、お互い仲もよさそうだし。
作風もモテない京都の学生とちょっと不思議なエピソード。
並べちゃうとモリミーの方がやっぱ上手いんだよなぁ。
あんまり比べるのも悪いのでこの作品だけの話しをしますが。

ホルモーは京都の4つの大学の学生サークルが、式神のようなオニを使って対戦する話し、です。
ホルモーという言葉の滑稽さと競技内容が微妙に合ってないような気がする。
負けるとホルモーって叫ばないといけないという馬鹿馬鹿しさはいいと思うのだけれど、意外と怖いことが終盤判明してくるし、案外いい話しに終着するのも予定調和な感じがした。
まあ、悪いわけじゃないのだけれど。

凡ちゃんは可愛かったのだけれど、その分、なぜ安倍に・・・と思ってしまうあたりが主人公のキャラの弱さという気がします。

ホントに先にモリミーを読んでるからマキメ君には分が悪いのだけれど、同じ路線を歩み続けるのならば私はモリミーがいればいいな、と思わざるを得ない。
でも映画化したら楽しそうな小説でした。

++++++++
【蛇龍どくろ 東京漫画社】

2ndコミックですね。
今回は短編ではなく、一冊で一つの話。
デビューコミックを読んだとき、この人はBLじゃない方向に行きそうだなぁ〜と思ってたのだけれど、2冊目にしてBLのカテゴリから半歩くらい出た感じがしました。
意欲作でしたが、薬物中毒じゃないと駄目だったのかな〜とか自殺じゃないと駄目だったのかな〜と思いました。
でもどうせならこれからも人間臭さを追求してくれるといいな、と。

こういう話しを一冊にまとめて出せるのって、BLのいいところだと思うんだよな〜。


2008年08月25日(月) 『雪沼とその周辺』(小)

【堀江敏幸 新潮社】

雪沼という架空の町とその周辺を舞台にした連作短編集。
ひじょうに上品で落ち着いた、上質な小説で、人生で一冊は読んでおきたい本という気がしました。
どの話しもこつこつと何かをしてきた人の話しで、人情っぽくなるわけでもなく、説教くさくなることもなく、静々と語られます。
私は「スタンス・ドット」が好きでした。

読み終わると、この素っ気なくもそのままのタイトルがとても上品で的確に感じられます。


2008年08月18日(月) 『薔薇色の人生』(小)

【木原音瀬 B−Boyノベルス】

自暴自棄になって自殺をしようとしていた前科三犯元ヤク中のモモ×自殺を止めた生真面目な警官ロンちゃんの話し。
たいていのBLがカップリングを説明したら概ねあらすじの紹介になるのにたいして、木原さんのはそれだけだとやや説明不足になる。

モモは木原さんのキャラらしく前半は本当に駄目な奴なのだけれど、じわじわと非常に気弱で流されやすいだけで、いい奴なのかもと思えてきます。
ロンちゃんはモモ視点だと、いまいち把握し切れなかったのだけれど、「年上の恋人」では生真面目なだけではなく、強情でやや鈍いということがわかってくる。

んで、まあ、相変わらず上手いんだけど、だけど私としてはもっと脱線すればいいのになぁと思ってしまう。
そしてもう少し笑えるようになるといいのになぁと、私の好みではそう思う。
いっつも生真面目な人だなぁと読んでて感じる。悪いことではないんだけど。

モモのところの社長が妙に気になった。
キャラ立ってるわりにあまり出番がなかったのが余計に気になったのかも。


2008年08月17日(日) 『ダークナイト』(映)

【監督:クリストファー・ノーラン アメリカ】

ビギンズは、テレビでやっていたのを前半部分だけ見ただけなので、予備知識としては不十分なまま観てきました。
ただ、ビギンズの時に感じた、なんか鈍重な話し運びだなぁという印象は今作も同様。
まあ、よく言えば重厚、ともいえるかもしれませんけれど、いかんせん話しが長いのです。

アメコミヒーローの中では、バットマンは好きなほうで、特にジョーカーが好きなので期待しつつ観にいってきました。
ジャック・ニコルソンがひたすら躁なジョーカーだったのに対し、ヒース・レジャーは陰鬱な印象。
笑えないジョーカーです。
世間の評判通りと言えると思いますが、なんか北野武みたいなジョーカーだなぁとも思いました。
いやそれが悪いわけじゃないのですが。

冒頭の銀行強盗シーンがすばらしい。

ヒーロー物らしからぬ絶望感たっぷりのラストは、ハリウッド映画も大人な話を作るようになったんだなぁと。

バットマンはダークな世界観もさることながら、執事がいるということが私的高評価ポイントです。
ブルースとアルフレッドの掛け合いがすごく好き。
ルーシャスももちろん。
そして、ゴードン刑事も好きなので、中盤ではかなり意気消沈してました。
ヒーロー物なのになんか、オッサン率高いよな。このバットマン。


2008年08月13日(水) 『狼王ロボ シートン動物記』(小)

【シートン 訳:藤原英司 集英社文庫】

子どもの頃によくシートン動物記の絵本を読んでいたので懐かしいなぁ、表紙の狼可愛いなと思い読んでみました。
で、改めて読んでみたら、これはファーブル昆虫記みたいに観察記じゃなくて、あくまで創作だったんだなぁと気がつきました。
いや何しろ就学前に読んでたので、全部ノンフィクションだと思ってた。
動物視点の話しはなんでそんなことまでわかるんだろう、と思ってた記憶はあるんですけど。

そして野生動物の話しではあるのだけれど、ここに収録されている3話は人と野生動物の対峙の物語りです。

「狼王ロボ」
前半のロボの狡猾さと、終盤の妻を求めてついに捕らえられてしまう様が対照的で悲しみを誘います。
これはほぼ実話のようで、写真も載っています。

「灰色グマの伝記」
短いながらも骨太な灰色グマの一生を描いたものです。
不思議とも数奇ともいえる巡り会わせで、死に至る様が感動的。

「カンガルーネズミ」
野生動物との出会いの感動が隅々まで感じられる話し。

「サンドヒルの雄ジカ」
この話しだけはちょっと偽善を感じる。

それにしても解説の人は動物園に否定的なんだろうか。


2008年08月10日(日) 『図書館危機』(小)

【有川浩 メディアワークス】

前回王子様の正体が判明してどうなるかと思ったけれど、それなりに折り合いをつけたようで。

今回は、痴漢騒動、昇任試験(児童サービス)、“床屋”は差別用語か、そして郁の初大規模戦闘へ参加、と盛りだくさん、というか構成としては短編とか連作短編集に近い。
いずれにしても、ネタの作り方が上手いなぁと。よく調べてるなぁと。
普通の人が思ってる以上に、図書館ってこんなもんですよ、と。
個人的に人生で遭遇した痴漢の9割が本屋だった身としては、そうそうそう!と思いました。小牧じゃないけど死ねばいいのに。

郁が昇任試験でやったのはアニマシオンっぽいな〜と思いつつ、子どもの頃に読み聞かせされるのが苦手だった私なのですが、このなかで一番聞けるのは手塚の下手な読み聞かせだろうな、と思いました。
うーん、なというか誇張されすぎてもいまいち聞けないんですよねぇ。気恥ずかしくて。
堂上の読み聞かせがどんなのか見てみたいー。
何を読むのかも気になるなぁ。

3章のねじれた言葉で、訴訟に持ち込むという解決法は一見、無茶に見えるけどけっこう正当な方法だったと思う。
身近でこれに近い発想をする人がいたからかもしれませんが。
床屋や魚屋の何が悪いんかな〜と。

で、最後は1巻以来の本格的な戦闘。
嫌だなぁ。
いろんな近未来物や戦争物はあるけれど、このシリーズの世界が一番嫌だな。
もっと飢餓や貧困や圧政に苦しむ近未来物もあれば、もっとひどい戦争物もあるのだけれど、私にとってはこれが一番リアルに嫌だ。
で、嫌だなと思うついでなので、どうせならやっぱりちゃんとメディア良化法サイドの人間も書いて欲しいんだけど、ここまで来ると出てこないだろうな。
郁がだいぶ成長したのが慰めと言えば慰めなのだけれど、結果はかなり苦い。

次で完結なので、どう終わるのか気になります。


2008年08月05日(火) 『NOW HERE』(小)

【木原音瀬 蒼竜社ホリーノベルズ】

男前寝る相手には事欠かないゲイ(30歳)×別部署の女とも男とも付き合ったことが無い童貞(50歳)です。
です、と毎度カップリングを説明すると概ねあらすじの説明になってしまうBLっていったいなんだろう、と思わないでもないですが。

オヤジ受に追い風が吹いている、そんな気がする昨今です。ありがたいことです。

主人公の福山はなかなか嫌な奴です。
嫌な奴というか、標準的なそこらにいそうなちょっと嫌な奴なのですが、ハイスペックな人間に心底飽き飽きしている私には好ましい。
冒頭に酔っ払って記憶の無い福山の隣に仁賀奈がいて、その後ずっと仁賀奈を苦々しくイライラしながら見てて、その一挙手一投足に向ける視線も非常に容赦がなくて好きです。
今まで顔のいい若い子が好きだったのに、急に50の冴えないおっさんが家にいたらそういうリアクションが当然。
当然なんだけど、BLってなかなか相手を悪く書けないんですよねぇ。

また、一方のおっさん仁賀奈の方も、すごく可愛いおっさんというよりは、やっぱり若干イラっとくるとろくささがあって、そこを美点として書いていないのが上手いなぁと。
50歳のはずなのに、その枯れ具合は60に近いんじゃ・・・と思いましたけど。

以降ややネタバレを。

中盤以降、仁賀奈がどういうつもりでいたのかがはっきりわかり、衝撃的かつ唐突に別れが訪れて以降の、ぺしゃんこの福山がいいなぁと。
自信とかプライドはやっぱり一度ぽっきりへし折れてからがよい、というのが私の持論なので、終盤のみっともなさは痛ましいながらも好きでした。

しかしここまできっぱり振っといて、いったいどういう着地点に着くのだろうと思っていたのですが、風邪ネタできたか、と。
まあ、風邪は一種お約束ネタですからこれが出てくると、もう以降はベタ甘展開もやむなしと思ってしまう、甘い読者・・・。
この甘さがよくないとはわかっていても、お約束ネタはやっぱ好きなんだよな〜。

晴れて正式にラブラブになった二人のその後とか、仁賀奈の初体験の夜の様子とか読みたかったな〜と思います。
そういや結局、童貞は童貞のままなのね。
ナキウサギ級にレアなオッサンです。やさしくしてやって。


2008年08月04日(月) 『文学賞メッタ斬り!受賞作はありません編』(他)

【大森望・豊崎由美 PARCO出版】

2007年版です。
今年も出たことだし、そろそろムック形式にでもして、もう少し一冊の値段が安くなるとお手ごろでいいのに、と思います。

今回は中原昌也が登場。
いつもどおりの芸風です。
二人は絶賛なんですが、この人の小説が大ベストセラーになる世の中もどうだと思う。

直木賞選考委員を引退したツモ爺の特集は、もう少しツモ爺本人の著作にも触れて欲しかったなぁという気がした。
この先、慎太郎とかジュンちゃんが引退して、適正な芥川・直木賞が選ばれるようになったら、メッタコンビも解散なんだろうか。
これを読んでるといろいろ読みたい本が出てくるので私としてはありがたいシリーズです。

『容疑者Xの献身』がそんなにミステリ界で大論争が起こっていたとはな〜。
笠井にしろ二階堂にしろ、そんなこと言えた立場か、と・・・。
と言いながら、東野作品を読むタイミングを逸し続けていまだ読んでいない落伍ミステリファンなのですが。

受賞作がないとメッタ斬りもいまいち盛り上がりきらないのが寂しいですね。
巻末文学賞の値打ちは、『夏光』が高評価でうれしい。二冊目でないのかな〜。



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