妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2007年06月26日(火) 『作家の手紙』(他)

【有栖川有栖 他 角川書店】

誰かに宛てる架空の手紙をテーマに36人の作家が書いています。
完全なフィクションもあれば、作家自身が誰か宛に書いたものだと思われるものもあります。
どういうお題の出され方をしてるのかは、知りませんが、どちらかと言えばせっかくこういうテーマなので、完全なフィクションよりも、どこか真実実を感じる、作家自身の手紙のように読める手紙の方がおもしろく感じました。

例えば「人間でないことがばれて出て行く女の置手紙」とか、「亡き兄を送る手紙」なんてのは、完全にショートショートでした。
面白い内容ではあるけれど、それなら普通にその作家が普段書いている小説と変わらない、と思うのです。

印象的だったのは、五條瑛の「エイリアンさまへの手紙」、菊地秀行の「霧の流れる何処かの都市へ」、北方謙三の「亡き友への手紙」あたりです。
まあ、結局普段から好きな作家に偏ってしまう結果ですけれど。
有栖川有栖のや、日向蓬、楡周平もおもしろかったです。

それぞれの、作家の性格や個性が如実に出た、面白いアンソロジーでした。


2007年06月25日(月) 『うしおととら 全19巻』(漫)

【藤田和日朗 小学館文庫】

一巻一巻感想書くのもどうだろうという気分だったので、まとめて書きます。

うーん・・・。
なんのコメントも出てこない、驚異の完成度。
よもやここまで、傑作だとは思っていなかったです。
いやぁすごかったすごかった。

何がどう凄いって、全部凄いのですが、やっぱりこのストレートさでしょうか。
お前のパンチ、効いたぜ、と読み終わった後に爽やかに言いたくなる感じ。
うん、伝わらない。これじゃ、全然伝わらない。

キャラクターの魅力とか、絵の力強さとか、ストーリーの緻密さとかも十分凄いのですが、言葉の選び方がかっこいい。
うしおの「男って一生のうちに何人の女の子の涙を止めてやれるんだろう」ってのにきゅんとしたり、「お前は其処で乾いてゆけ」という章タイトル(セリフでもあるけれど)にしびれたり、とらの「もう喰ったさ」に泣き、と、まあ隅から隅まで凄かったです。

いやぁ漫画ってよいものですねぇ(急に淀川先生風)


2007年06月17日(日) 『プレステージ』(映)

【監督:クリストファー・ノーラン アメリカ】

『シックス・センス』以来の、「この映画の結末は決して誰にも言わないでください」メッセージが冒頭に出る映画でした。
そのメッセージが出た時点で、ある種の予想が立ってしまう・・・のだけれど、言わずにはいられないのだろうなぁ。
しかし、正直なところ、言わないで欲しいのはいったいどの結末のこと?と思いますけれど。私としては。

最後のネタを予測されないために、複雑なシナリオを練り上げた、という印象が強かった。
まあ、でもこの映画のキモは「一瞬でも騙せればいい」という部分に集約されているのかもしれない。
前半があまりに混沌としすぎて、メインの謎はいったいなんなの?となっていたとは思いますけれど。
普通に考えて、最初の溺死事件がメインの謎だと思うのですが、過去に遡ると、ダントンの妻の死の真相はなんなのかとか、プロフェッサーのトリックはなんなのか、手記の真相は、という話しが混ざってきて、焦点がぶれた感が。

以下はネタバレです。

どちらかと言えば、プロフェッサーの瞬間移動のトリックが隠したいメインの謎、だったのだろうと思うのですが、ダントンの瞬間移動トリックがありえなさすぎて、いまさら、双子とか言われても、そんな普通な!と思ってしまう。

見終わって思ったのは、テスラって凄いね・・・という。

でも、ひょっとしたら、これはトリックがなんであるかが重要な映画ではないのではないか、とも思えるんですよね。
ダントンが瞬間移動で毎回毎回、犠牲をはらい続ける様はかなりぞっとする。
だから何もここまで、凝ったシナリオにしなくても、面白い話しになったんじゃないのか、と私は思うのだけれど。


2007年06月05日(火) 『ふたたびの、荒野』(小)

【北方謙三 角川文庫】

ブラディ・ドールシリーズも完結です。
タイトルからおわかりのように、ふたたび、川中社長の視点で物語りは進みます。

ストーリーというものは、なんとも説明しがたい話しなのですが、社長がふたたび愛せる女性が登場し、そしてやっぱり再び死んでいく、という話しでした。
そして、死んでいく男達。
今までどおりと言えばそうなのですが・・・。

以下ネタバレ。

あ、秋山さーん!!
ここまで、がんばったのに死ぬなんて!!
下村も短かったな。
でも、やっぱり、社長視点なので、ふとした時に思い出される藤木の思い出が、切ない。

とはいえ、絶対死ぬ、絶対!と思い続けていた、キドニーが生きていてくれて本当によかった。
ずっと、キドニー無茶はするな!と思っていたものだから、ラスト付近は本当にハラハラし続けていました。

何が終わったってわけではないのですが、ここはやはり社長が言うように
「俺たちが、生き続けなきゃならんというだけの話だな」
ということなのでしょう。

解説に
日本中の男たちが、このシリーズを読んでくれたら、世の中はずっとよくなるだろう。
いや、血まみれになるかもしれないか。

とあったのですが、よくはならないだろうけれど、読んでおいて損はなしだと思いますよ。
男性諸氏。
女の目から見ると、迷惑千万な男達でしたが、素敵なんだな。これが。


2007年06月01日(金) 『パイレーツオブカリビアン ワールドエンド』(映)

【監督:ゴア・ヴァービンスキー アメリカ】

三部作の最後でしたが、なんだろうなぁ。
完結に述べるならば、つまらない。
身も蓋もない言い方になるが、面白みが感じられないんだなぁ。
1の頃からストーリーが凝っているってわけではなかったので、その辺への期待はなかったのですが、でも盛り上げどころというのは押さえていたと思うんだなぁ。1と2は。

エリザベスもウィルも勝手すぎるし、ジャックはなんか、もう、飄々を通り越して、オカシイ人になってるし。
まあ、ジャックは一度死んでるので、死んだらやっぱり元には戻らないよね、みたいな気持ちで見てましたけど。

広げた風呂敷をうまくたためなかった典型と言えるかと。

唯一見所は、ジャックのお父さんが、えらい渋かったというところですか。
素敵でした。



蒼子 |MAILHomePage

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