長い間続きました、GA日替わり連載小説も これにて終了となります いろいろ、思うところもありますが とりあえずは、本編をお楽しみください(ぺこり)
最終話「ギャラクシーエンジェルどん」
…それは、遥か未来
絶望で漆黒に塗りつぶされた銀河を駆け抜ける 6人の天使と1組の恋人たちの物語
「はぁ…はぁ…はぁ…」
闇よりも深い夜の下を、一人の少女がかけていく
「はぁっ…はぁっ…」
息を切らせながら少女はひた走る もうどのくらい走っているのだろう? わからない そのくらいには、走った 追跡者はまだ追いかけてきているのだろうか? わからない 後ろを振り返って確かめたいが、そんなことをする時間があるなら 一歩でも遠くへ 少女は走った
「はっ…」
逃げる少女は、まだ幼い 歳の頃は10歳ほどであろうか? 夜の暗さの中でも目立つレタス色のショートヘア 今にも零れ落ちそうな程おおきいモスグリーンの瞳 フリルたっぷりの服 白い帽子 頭と胸元につけられたアクセサリー その全てが、汗でぐっしょりと濡れ、重い おもい… おも…
「重いにょーッ!!」
少女は、キレた
「どーして、このショコラ様が逃げなくちゃならないにょーっ ちょーっと、触っただけにょーっ壊れてしまったのは、あれがヤワだからにょー ものには耐久性というものが大事にょー、これを教訓に作り直せばいいにょーっ そしたらもっといいものができるにょ、感謝されてもおかしくないくらいだにょ」
叫びながらも、少女…ショコラというらしい…は逃げる足を止めない むしろ、スピードアップされている ショコラは、更にいろいろと並べ立て ならべたて… 結局、なにがいいたいのか?というと
「だから、ショコラは悪くないんだにょーっ!」
ということらしい だが
「うるせーっ!人がせっかく苦労して見つけたロストテクノロジーを粉々にしやがって!」 「弁償しやがれーっ」 「まて、こらーっ」
バタバタバタ
後ろから、不思議な猫の被り物をした3人組みが追いかけてくる 背が高いのが二人、低いのが一人
「怖いにょーっ、誰か助けてにょーっ人攫いにょー ショコラがあんまりにも可愛いから捕まえて、およそ口ではいえない男性向け18禁な内容をしたうえで どこかの大金持ちに売り飛ばす気にょーっ」
ショコラの頭の中では、ここではとても書けない想像が目まぐるしく回っている だが、悲しいかな あたりには助けてくれるモノは愚か、その言葉を聞く生物すらいない ばたばたばた 深夜の鬼ごっこは続く しかし、いつまでも走っているわけにはいかない …というか 彼女はただ、ただ、やられるのを待つほど大人しい性格ではないのだ 悪人に因縁をつけられ(すでに彼女自身が原因だというのは忘れられている) 囚われ、陵辱され、売り飛ばされる…絶世の美少女 それはそれで、美味しい役どころではある (もしかしたら、白馬に乗った皇子さまが助けてくれるかもしれないしにょv) だからこそ、反撃もせずにただ逃げ回っているだけなのだが いい加減、疲れてきた 明日もバイトがある ちっぽけだが、蒼く美しいこの星の、とある電脳街の、黄色い看板が目印のお店で 住み込みで働く自分には、帰りをまっているカプチーノという妹分もいるのだ … ショコラは、最期の力でダッシュをかけ 立ち止まる 「観念したかっ!」 振り返り 「さぁ、年貢の納めどきだっ!」 一つ深呼吸 「大人しくしやがれ、猫耳娘!」 追いついてくる3人組 だが、ショコラは慌てず騒がず3人を見据えた きらーん モスグリーンの瞳が、凶悪に輝いたかとおもうと 次の瞬間…
「目からビーム!!」
ちゅどーんっ 2本の光線が、夜の闇を切り裂いた だが 「なににょ?!」 その光が、3人組に届くことは、なく かわりに
「すいませーん、お怪我はありませんでしたか?」
声 ショコラの目からビームが標的を抹殺するよりも先に 宇宙から3人組の上に落ちてきた、モノ 「宇宙船にょ?」 ピンクのカラーリングが施されたその機体は みたことの無い形ではあるが、たぶん、宇宙船のようなものだろう トランスバール皇国暦415年 星間文明が発達し、別の惑星へいくのも”ちょっとそこまで”感覚の現在 宇宙船の墜落事故も日常茶飯事 あえていうなら、今のこのタイミングは、ショコラにとってとてもラッキーで 三人組にとっては、泣きっ面に蜂…といったところだ 宇宙船からは、ピンクの髪に白い花のカチェーシャがよく似合う少女が現われ 機体のチェックを始めている ショコラが呆然とその光景をみつめていると
「ちょっとミルフィー、なにやってるのよ!」 呆れた声が、空から聞こえた 見上げる、と 「ごめーん、ランファ〜」 赤いカラーの機体が降りてくる 中からは、手入れの行き届いた自慢の長い金髪をさらりとかきあげる少女 彼女は少し怒ったような表情をしながら、ピンクの髪の少女に近寄り 二人で何か話を…
「大丈夫ですか?ミルフィーさん」 「あはははは、仕方ない子だねぇ、ミルフィーは」 続いて、青と紫の機体が着陸 出てきたのは、これまた対照的な二人組み 短くそろえた青い髪に生やしたクリーム色の耳が特徴的な背の低い少女 「ミントさーん、助けてください〜」 赤い髪に黒い軍帽、照準あわせのためのモノクル…と、他の少女たちにはない大人の色気を振りまく女性 「フォルテさん、これどけてもらっていいですか?」 がやがや だんだん、騒がしくなっていく ふと (あれ?この人たち、どっかでみたことあるにょ…) ショコラはふいに、そんな既視感に囚われる
「ミルフィーさん、お怪我は?」 「ないよ、ありがとうヴァニラ」 翠の機体から降りてきた大人しそうな少女が、小さな、それでいて不思議と通る声で一言 ピンクの髪の少女…ミルフィーというようだ…は心配そうな彼女に笑顔を返した 「はい…ですが、もう少しゆっくり着陸されたほうが良いかと思います」 「着陸というか、あれは墜落だと思うんですがヴァニラさん…」 「そうともいいます」 少女の持っているピンク色の物体がツッコミをいれる そこからさらに、1テンポ遅れて 「大丈夫ですか?ミルフィー先輩!」 「うん、平気平気。大丈夫だよ、ちとせ」 紺色の機体が現われ、長い黒髪をなびかせて、おろおろと取り乱す少女が一人 計6人 全員が白い、トランスバール皇国軍の軍服を着ている (軍人さんかにょ…) だが、それ以上に、自分は確かに彼女たちを知っている気がして仕方ない 誰だったか… どこでだったか… そんなことを思っていると
「あー!」 ミルフィーが大きな声をあげた 「どーしたの?」 「見て下さい、これ、探していたロストテクノロジーですよ!」 「あら、本当ですわ」 ショコラが追いかけられる原因となった代物 「あいかわらずミルフィーの運はすごいねぇ」 「ですが、壊れています…」 よしよしと、ミルフィーの頭をなでるフォルテ その隣で、ヴァニラが冷静なコメント と 「それに、そのロストテクノロジー、あそこにいらっしゃる方のものではないのですか?」 ちとせがショコラを指差した 「え、そうなんですか?」 全員の視線がショコラに向く ショコラはちょっとびっくりしながら しながらも、冷静を装うと 「ち、違うにょ!それは…そう、落し物だったんだにょ」 「落し物?」 「そうにょ!そこに落ちてたんだにょ…あと、そう、壊れてたんだにょ、最初から、そうだったにょ ショコラが壊したんじゃないにょ、ショコラ嘘ついてないにょー」 かなりたどたどしい言い訳であった が 「なんだぁ、そうだったんですかぁ」 ミルフィーはにっこりと笑顔で返した 「…にょ」 ショコラは精一杯、冷静を装ったたどたどしい態度でうなづき まるで太陽のような彼女の笑顔に、少し良心を痛めた そんな彼女の内情など、知る由もなく、6人は話をすすめる 「まぁいっか。そういうことにしておきましょう」 「そうですね、いろいろ面倒ですし」 「最初から壊れてたっていうなら問題ないだろー」 「…はい」 「早く終わってよかったです」 結論はすんなりとまとまった そこへ
光…
『おーい、ミルフィー』 「タクトさん」 『大丈夫?なんか、凄い勢いで落ちていったけど』 「ミルフィーなら大丈夫よ。タクト」 『そっかぁ、ありがとうランファ』 ガガッ 通信が少し乱れ 『おい、ロストテクノロジーはどうなった?』 「無事に確保いたしましたわ。ご安心を。レスターさん」 『そうか』 「あいかわらずタクトの旦那は心配性だねぇ」 『あはははは』 『誰が旦那だ、誰が!』 「レスターさんです」 『…』 「っていうか、ここで他の男の名前がでると困るのはレスターさんじゃないんですか?」 『…おい、ノーマッドの自爆装置はどこにあった?』 『えっと、その4っつ目のドクロマークがついた赤いボタンだよ』 「え?!ちょ、ちょっと!あんたたち、なに勝手に人のボディに自爆装置なんてつけてるんですか! っていうか、いつのまにそんなものを?!」 「すいませんノーマッドさん、この間、ノーマッドさんがメンテを受けていらっしゃる間に…」 「そ、そんな…ひどい…酷いですよ、ちとせさん」
宇宙から光が降ってきて、ショコラは空を見上げた 白い光 酷く懐かしい 優しい光を湛えた純白の艦が浮いている 「あれは…」 普段は自分のこと意外にはあまり興味のないショコラでも知っている 否 この銀河中で、その白い艦を知らない人間はいない ということは 彼女たちは…
ショコラが慌てて視線を6人に戻すと、そこに彼女たちの姿はなかった ピンク、赤、青、紫、翠、紺 6色の機体が輝く まぶしい けれど、優しい光 その光を、知っている 夜、闇と戦う人々につねに頭上で優しく微笑んでいた”白き月” 地上を照らす 泣きたくなるような優しい輝き おなじ…ヒカリ
バサァッ
翼が広がる 光で出来た天使の翼 力強い輝き だが、その光は決して強いものではなくて… どこか、不思議な柔らかさと優しさをもった まるで、月灯りのように穏やかな光
光の粒子で出来た羽を撒き散らしながら、6色の機体は宇宙へと還っていく 全ての機体には、翼を広げた天使を象った紋章が描かれている この広い宇宙で、わずか6つの機体だけがつけることを許されたエンブレム
紋章機
そして… あの皇国の英雄が搭乗する、白銀の儀礼艦
エルシオール
7色の輝きが、彗星のように光の尾を引きながら銀河を渡る 漆黒だった宇宙は、いつのまにか、綺麗な星空へと変わっていた
「サイン、もらえばよかったにょー」
ショコラは、その光を見送りながら、ふとそのことに気づいた だが、時すでに遅し… 見上げる 頭上には、いつまでも優しく柔らかく 綺麗な夜空が広がっている
「銀河を護る最強の天使たち…その名は………」
…それは、遥か未来
絶望で漆黒に塗りつぶされた銀河を駆け抜けた 6人の天使と1組の恋人たちの物語
お祭りのような騒がしくて楽しい日常 地上(ここ)から、銀河中をまきこんで はちゃめちゃで刺激的で でも、どこか優しさと暖かさに満ちた そんな毎日が地上より永遠に続く物語
その名は…
GALAXY ANGEL
Fin
25話後編です 泣いても笑っても次回で最期ッス>< 全力でがんばります!!
Angels Song…
その歌を最初に歌ったのは誰だったろう? その歌を最初に聞いたのは誰だったろう?
聞こえるはずのない、翼の音を撒き散らし 光の粒子の羽を降らせながら 6色の紋章機が銀河を駆け抜ける 何の打ち合わせも、計算もない だが、不思議と…自分以外の全員も同じことをしているのだという自信があった その証拠に、6機は乱れることなく、同じ軌跡を描く それは、背中を預けているような安心感へとつながっている みんな一緒だ 想いも 願いも
あいたい
ただ、もう一度 その笑顔にあいたい たったそれだけの、祈り そのために飛び続ける 長い戦闘で、飛んでいるのが不思議なくらいの紋章機 光の翼も、バラバラと崩れ、雪のように抜け落ちていく それでもこうして飛び続けていられるのは みんな一緒だから 自分は一人じゃないから 一人ならきっと諦めてしまった だけど… ランファがいる ミントがいる フォルテがいる ヴァニラがいる ちとせがいる シヴァが、ノアが、シャトヤーンが、ルシャーティが エルシオールのみんなが 全ての想いが、形になって、この翼になった たくさんの人たちのチカラで、自分たちは飛んでいる この翼は御伽噺のように、なくなることはない 大丈夫 そう、信じている 戦うのは嫌いだ それでも、今日まで戦ってこれたのは 『あきらめるな』 彼がそういって、自分たちを信じてくれたから だから、今度は 自分たちが、彼を信じる番なのだ 彼は、いや…彼らはたぶん、今、この瞬間も、自分たちを信じてまってくれているはずだから 想い返すと、それは最初からだった気がする エオニアのクーデターのとき なんの説明もなしにいきなり戦闘に巻き込んだときも 黒き月で紋章機が動かなくなったときも 半年前 ネフェーリアとの戦いの時だって いつだって、それは最初から変わることなく 絶対に揺るがない 自分たちを信じてくれる、瞳 そんな彼が大好きだった けんかや、すれ違いもあった でも、その何倍も、楽しい時間を過ごしてきた いつだって、笑顔でいてもらいたいと思った いつだって、幸せになって欲しかった 幸せ それは いつだって みんなと、同じところにあるから 単純で、簡単で、それでも何よりも大きい幸せ 本当の幸せは、そこ 幸せってそんなものだとおもう 私が一番、いたい場所、私が一番、好きなもの 私が一番いたい、この場所。ここが私の幸せ そして、ずっとそばにいたい人たち
辿り着く 幸せを迎えにいける場所へ 他の誰でもない 自分自身のために、この場所に、立つ
「バーンとやっちゃいます!」
合図もなにも、ない だが、直感でココだと、わかった ラッキースターのトリガーに手を伸ばす ぎゅっ 祈るように、力をこめて、握り締め そして
「ハイパーキャノンッ!」
ミルフィーの言葉とともに、光の路が走りぬけた ラッキースターから放たれた、ピンクの光に真っ赤な閃光が加わる 「ブッ飛べぇ!アンカークローッ!!」 それは、カンフーファイターの2本のワイヤーアンカー さらに 「私におまかせをっ、フライヤーダンスっ!」 トリックマスターから蒼い輝きが一つにまとまりながらあわさる 「いくよぉ!ストライクバースト!!」 紫の高エネルギーの塊は、ハッピートリガーから 「力を貸してっ、ナノマシン」 4色の光に、ヴァニラの祈りとともに放たれた翠のナノマシンが追いつき 「いきますっ、フェイタルアローっ!」 紺色に輝く光の矢が、全ての光を導くように、その一点に命中した
銀河が揺れる
「くぅっ」 衝撃に手を離しそうになった だが 「負けません…」 ぐっ 握りなおす 血が沸騰しそうになる ギシギシと骨が悲鳴をあげる それでも この手だけは、離さずに 重い だが、この重さは、大切なものの重さだ ピッ 皮膚が裂け、血が吹き出る 重圧が、増す 意識が遠く、とおく… 手放すな! 自分を叱咤し、両手で、包み込むように、握り締める 爪が食い込んで、新たな血が雫となって飛んできた 手放すな! 重いのは当たり前だ これは、大切なものの重さだから 苦しいのは当然だ これは、幸せの苦しみだから 負けるわけにはいかない 自分の大好きな人たちが そして、自分を大切にしてくれる人たちが みんなが笑って過ごせる明日のために それ以上の何も望まない みんなと同じ時間を生きたいだけ 願い たったひとつの、純粋な、そして、酷くわがままな
Eternal love… ♪
歌が聞こえる ”…♪軌道、はずれる…こと、さえ…” ミルフィーは朦朧とする意識の中、確かに、その歌を聞いた 歌っているのは… 「ラッキースター?」 答えるようにラッキースターの輝きが増す 心なしかかかっていた重圧が、軽くなった気がして 「力を…かしてくれるの?ラッキースター?」 つぶやき その問いに答えるように、ラッキースターの輝きが、増す まぶしい けれど、優しい光 歌は途切れることなく、聞こえる ラッキースターから そして…
カンフーファイターの中で、ランファもその光に包まれていた 同じ歌が聞こえる いつかと、同じ ”恐れぬっ勇気!あつくっ、ゲッタァウェイ!” 歌 「全然うまくなってないじゃないっ、オンチ!」 ”なんだとぉ?!ランファ・フランボワーズ!” 「せっかくのカンフーファイターの歌が台無しじゃないっ」 ランファが拳を握り締めかけ ”馬鹿野郎!その手を離すと終わりなんだろうがっ!” 「っと、いけないっ」 ギネスに言われ、思い出す 慌てて握り締めた ”ったく、しっかりしろ。それでもこの俺の永遠のライバルか” 「あんたのライバルになんて、なった覚えないわよっ!」 ”なんだとぉ” 二人は操縦桿を握り締めたまま、器用にケンカを始めた
同じ頃、ミントのトリックマスターでも 「永久の…静寂の…なか、で〜♪」 歌声が聞こえた ”心、目覚めて…向かう、世界〜♪” 二人分 その響きはコックピットを満たし トリックマスター全体を包み込む柔らかい光に変わっていく 「あら、ランファさんったら…こんなときにまでケンカしてらっしゃいますわ」 ピクリと自慢の耳を動かして、ミントは小さく笑った ”ふん、ギネスは熱血バカだからな” リセルヴァは諦めたような声で溜息を一つ
「♪月にぃみちーびかーれてー 神秘のぅやみーを抜けるぅぅぅ」 ハッピートリガーのコックピットでは、演歌調 ”あいかわらず、だな” やれやれと、呟くのは 「悪かったねぇ」 レッド・アイにむかって、フォルテは笑いながら 「だけど、気持ちの良いもんさ。ほら、あんたのお仲間も歌ってるよ」 ”あぁ…” 同じ歌が聞こえる ”♪深いうみのように…So…つつみーこんで…” 彼が歌うのを確認すると、フォルテは満足そうに笑い 「♪えたーなるっらぶ」 歌い続ける
歌い続けよう この歌が この声が この想いが 貴方に届きますように 「♪君ぃの声が…響くぅ、この…銀河で…」 ハーベスターがヴァニラの歌にあわせて、輝きを増す 「あぁ、ヴァニラさん…素晴らしい歌声だ…微力ながら私も…」 ”♪ほらっかがやーくー未来の天使ぃ〜” ノーマッドよりも先にヴァニラとハモったのは 「なんてことを、私のヴァニラさんと一緒に歌おうなんて恐れ多いにも程がありますよっ、ベルモットさん!」 ”面白いなぁ、このピンクの物体。体があったら分解して構造とか調べるところなのに、惜しいなぁ” ぐるぐるの瓶底眼鏡をキラリと光らせて、ベルモットは楽しげに笑う 「ちょっとー、ピンクってなんですか、ピンクって!うわーん、ヴァニラさ〜ん」 「歌って。今日はみんなに合わせて歌わないと、ご飯の食べられない日です」 「…はい…♪エターナル…ドリームッ」
光と歌に溢れるシャープシューター ”ちとせ” ボロボロのちとせの手を、優しく包み込んだ、大きな手 大好きだった 大好きで 嫌われたくなくて いつだって良い子にしていた ぬいぐるみを 私が欲しいといってねだった犬のぬいぐるみを 届けてくれた 責任感の強かった、ひと… 自分が死んでも わたしに、ぬいぐるみを… 優しい 大好きな わたしにぬいぐるみを渡してくれる、大きくて、優しい手 「父さま」 ”がんばれ、ちとせ” 涙が溢れた それでも ちとせは、涙を拭わない そのかわりに、笑う 最高の笑顔 「♪胸にだいて…翼…ひろげたなら…」 答える代わりに、ちとせは歌う 「♪きっと…歴史が…生まれる」 大丈夫 自分は、一人では、ないのだから
何度でも 翼を広げ 宇宙に歌う
そして 「カミュさんっ」 ”やぁ、ハニー。元気かい?” 「どうして…」 ”そうだね、いうならば、紋章機の力…かな” 「ラッキースターが…」 ”そう。ノアがね僕たちのデータをそれぞれの紋章機に戦闘データとして加えてくれたのさ 君たちの役に少しでも立つように、とね” 「ノアさん…」 ”光の翼と、空間すら切り開こうとするエネルギーが、こうして僕たちを実態化させてくれた” ポタリッ 涙がこぼれる カミュは、彼にしては珍しく、少し困ったように笑うと ”泣かないでおくれハニー…どんな形にしろ、僕は…僕たちは君たちと再び出会えてとても嬉しいのだから さぁ、前をむいて…もうすぐだ…君になら、君たちになら聞こえるはずだよ” 「…はいっ」 ミルフィーは笑顔で、涙を吹き飛ばすと 歌いながら真正面を見据えた 6色の光の道 彼へと続く路 「♪エンジェル…in…まい・はーと!」
歌は歌を呼び そして いつしか、銀河中が歌っている
Eternal love… ♪
歌う… 「っ!」 ミルフィーは宇宙を見た 生まれたばかりの星空 閉ざされた世界 だが それは宇宙から聞こえたのだ かすかに でも、たしかに 「♪月に、みまもられて…気高く…生きて…ゆける… 時間は…砂のように…So…ながれる、けど…」 きこえるもの 聞こえる 漆黒の銀河を駆け抜け 絶望の空間を超えて 届く 君のために歌う 「Eternal love…♪」
Angels Song…
何度でも 翼を広げ 宇宙に歌う
天使たちのシンフォニー
音もなく 光が溢れた それは、歌にあわせて輝きを増す 白い光 酷く懐かしい
「♪君に逢えた…蒼い、この…銀河で…」
まぶしい けれど、優しい光
「♪いま信じて…飛び立つ…天使〜」
歌声すら、白い光に塗りつぶされていく だが、その光は決して強いものではなくて… どこか、不思議な柔らかさと優しさをもった まるで、月灯りのように穏やかな光
「♪エターナル…ドリーム…」
白く塗りつぶされていくラッキースターのコックピット ミルフィーは、その膨大な輝きの中で歌を聴く その声を その歌を 知っている
「♪光…浴びて…翼…広げたなら〜」
その歌を最初に歌ったのは誰だったろう?
私? ランファ? ミント? フォルテさん? ヴァニラ? ちとせ?
その歌を最初に聞いたのは誰だったろう?
カミュさんたち? エルシオールのみんな? シヴァさまやシャトヤーンさま? ウォルコット中佐たち? 宇宙クジラ? 紋章機?
「♪いつか…軌跡は…始まる〜」
「Angel in my heart…♪」
それは、星空の出会いから始まった物語
「すいません、ちょっとお聞きしてよろしいですか?」
ミルフィーは通信を一つ、入れた
『はい?』
返事が一つ
「そちらはトランスバール皇国軍儀礼艦エルシオールで間違いありませんか?」
『あぁ、間違いないが?』
返事が二つ
「それじゃぁ、タクト・マイヤーズ司令官って方はいらっしゃいますか?」
『マイヤーズは…俺だけど…』
タクト・マイヤーズはいつもと変わらない笑顔で
『ミルフィー』
名前を呼んでくれた
「タクトさんっ」
『ただいま』
「お帰りなさい、タクトさん」
銀河の片隅 星空の下で出会った一人の青年と、6人の天使たち
Angels Song…
何度でも 翼を広げ 宇宙に歌う
天使たちのシンフォニー
Eternal Love…♪
永遠の愛をこめて 光の天使より…
| 2005年04月15日(金) |
おまたせしました…の日 |
すいません、お待たせしましたっ 25話をお届けいたします><! (日記上では翌日ですが、どうしておまたせしました。なのかは 深く追求しないで下さい><ノシ) そしていつもどおり、真っ二つです…(面目ない;)
第25話「EternalLoveピューレジュレ」
Angels Song…
何度でも 翼を広げ 宇宙に歌う
天使たちのシンフォニー
人々は空を見上げていた その優しい白光が消えた後も、ずっと ずっと…
誰も口にはださなかったが、心のどこかで理解していた 銀河が救われたことを そして その代償として、地上より永遠にいなくなった人たちがいるということを 素直に喜ぶことはできなかった だから 未練がましく空を見上げる 彼らの姿を探すように だが、無情にも、空は宇宙… かわることのない星の光だけが瞬くだけで 不安で心が押しつぶされそうになる それでも 瞳を反らすことなく、宇宙を見上げていられたのは
「あきらめるなっ!」
最初に叫んだのは 「アルモ…」 ココが隣にいる相方を見る アルモは瞳に涙をためながら、空を見上げ続けていた 「あきらめないもん、クールダラス副司令は、絶対に還ってくるもん…」 反らされない瞳 「…うん、そうだね」 ココは一つうなづく 「きっと帰ってくるよね、クールダラス副司令も、マイヤーズ司令も」 そして、アルモと同じように空を見上げなおした 二人の姿に 「そう、だよなぁ」 パトリックが呟く 「あの人のことだもんなぁ、へらへら笑って”ごめんごめん”とかいいながら戻ってくるよな」 ジョナサンがうなづく 「そうだな!だって、あの二人は、俺たちの司令官で、あの連中の副司令なんだぜ!」 ガストが少し大きめの声をあげた それは、音や光よりも早くその場にいた全ての人々の心に広がっていく 自分一人では信じ抜けなかった だが 自分たちは一人ではないのだ 「そうですねぇ〜」 コンビニ店員が三人のことばにうなづく その隣では、クレータ班長が空を見上げた 「えぇ、お二人はきっと、かえってきますよね」 「あんたたちも、たまにはいいこというじゃないか!」 バンッと、ガストの背中を叩くのは食堂のおばちゃん 他のクルーたちも、同様にうなづき、空を見上げる 「それに…」 パトリック、ジョナサン、ガスト 三人が空を見上げる みんなも、つられて、空を見上げた
「それに、あそこにいる連中は…絶対にあきらめねぇ!」
連中のいくところ、かならずといっていい程、この三人の影があり 敵だったり、敵だったり、ごくたまに味方だったり、敵だったり、ただの野次馬だったりしながら 今日もこりずに悪巧みを繰り返し 意識、無意識かかわらず連中に邪魔をされては、玉砕する日々を暮らしてきた3人の言葉 その言葉が聞こえたのか…
『はいっ!』
返事は空から いまだ、その光の翼を広げる、6人の天使たちから
「あきらめません」 「そうよ!諦めてたまるもんですかっ」 「えぇ、お二人にだけ良い格好はさせませんわ」 「そういうことだねぇ」 「…はい」 「必ず、タクトさんもクールダラス副司令も、連れ戻してみせます!」
彼女たちの気持ちに応えるように 紋章機の光の翼が輝きを増す そこへ
『みなさんっ!』
息をはずませた通信がひとつ それは 「ルシャーティ?」 モニターに移っているのは、淡い金色の髪の少女が 「ノアさん」 二人 ルシャーティを軽く押しのけて、ノアがモニターの中心に移動する そして 『時間が惜しいから、簡単に手順だけ説明するわ、一回しかいわないから心して聞きなさい』 「え?」 『今、エルシオールの消失ポイントを検索しているの、場所が確定次第、全機でそこを集中攻撃して』 「エルシオールの…」 「消失ポイント?」 ノアの言葉に、全員が宇宙に視線をむける むけられたのは、かつてクロノ・クェイク爆弾のあった場所 『そこには、まだ閉じきっていない”次元の切れ目”があるはずよ』 「次元の切れ目…」 『そ。空間と空間の境…私たちのいる銀河と、エルシオールが新しく作った宇宙を繋げる、ね』 「それって…」 「タクトさんたちを、助けられるってことですか?!」 『まだ閉じきっていないその次元の切れ目をこじあけられれば、ね』 ノアは溜息を一つ 続きをルシャーティが受け継いだ 『ただ、エルシオールの作った次元の切れ目は、ある特定のエネルギーでしか衝撃をあたえられないんです』 「特定の…エネルギー…それは、つまり」 『はい。エルシオールと同じクロノ・ストリング・エンジンから生み出される、エネルギー…』 「紋章機!」 『そうです。ただ…』 そこまでいって、ルシャーティの表情が曇る だが、彼女は一瞬言葉をきっただけで、改めて視線をあげると まっすぐに全員をみながら 『ただ、空間を再び開くエネルギーがどれほどのものかは…』 想像も、つかない、と だが 「だいじょーぶだよ」 『フォルテさん…』 「あの二人を連れ戻せるんなら、なにがあろうと、あたしゃ、この手を離さない」 「そのとおりです!」 『…それも、問題なのよ』 「え?」 『これはつまり、エネルギーとエネルギーのぶつかりあい。もちろんその衝撃は、紋章機にもある程度返ってくるわ 衝撃に負けて手を離せば、エネルギーの放出は止まる。仮にあんたたちが手を離さなくても、途中で紋章機が大破する可能性もあるわ …もし、大破しなかったとしても、その後…紋章機は使い物にならなくなる可能性が高い…』 「ノアさん、心配してくださってありがとうございます」 ノアの言葉を、ミルフィーユが遮った ノアが顔をあげる 笑顔とぶつかった 「でも、大丈夫です!わたし、運がいいんです!」 「そーよ、ミルフィーの運は凄いんだから」 ミルフィーの言葉に ランファが太鼓判を、押す と、そこに一つの通信が、割り込んだ
『エンジェル隊!』
それは 「シヴァさま!?」 6人、そしてノアとルシャーティも驚く 『話は聞かせてもらった』 シヴァは、であったときからかわらない、皇族たる表情で全員を見回す そして 『私からも頼む、タクトを…あの二人を連れ戻してくれ!』 叫ぶように、その言葉を口にする ノアが釘を刺した 『シヴァ、いいの?…成功しても、失敗しても、紋章機はもう二度と使い物にならないっていってるのよ?』 シヴァは、迷うこともせず 『かまわぬ!それに、紋章機はお前たちの願いを叶えることを望んでいる』 言葉に、6色の紋章機が頷くように光を増した シヴァはそれを確認すると、微笑んで 『この1年間、人々のために戦ってくれたお前たちだ…最後にお前たち自身の願いを叶えて何の悪いことがある? たとえ、この銀河中が許さなくても…この私が許す』 「シヴァさま…」 「ありがとうございます!」 『タクトとクールダラス…そして、エルシオールを頼む』 「はいっ!」 はぁ 溜息が、ひとつ 『ほんと、あんたたちって…』 ノアが呆れた顔をしていた しかし、その表情はどこか優しい 彼女はもう一度、溜息をつくと 『さぁ、時間がないわ、今のうちに、いつでも最高の一撃が出せるようテンションの調整をしなさい』 「ノア…」 『あいつらを助けたいんなら、早くっ!』 それは それは、ノア自身の言葉に聞こえた だから 「了解っ」 6人はなにもいわずに、笑顔を返し、銀河を駆ける ノアはそれを確認すると 一言だけ 『帰ったら、ルシャーティに感謝しなさいよ。ほとんど一人で、あいつらを助ける方法を見つけてくれたんだから』 付け加え、通信を切った
空を見上げる 翼を広げた6色の光 ピンク、赤、青、紫、翠、紺… 遠くからでも、誰が誰なのか、わかってしまうほど まるで太陽のような輝きを放つ、光たち 「頼んだわよ…」 ノアはその光を見つめながら、呟いた 「きっと、彼女たちなら大丈夫です」 そのノアの背中に、声 言葉は力強く聞こえて 「…そうね」 ノアはうなづく そして 「さぁ、もう一つしなきゃいけないことがあるわ」 気を取り直すと、再びルシャーティと作業に取り掛かった
「くそっ、どれがその”消失ポイント”なんだよ!」 ココモがコンソールパネルを叩く と 「ココモ、落ち着いてよく探すんだ」 マリブの言葉に ココモはぎゅっと拳を握り締めると 「わかってるけどよ!」 『ココモ、マリブ!こんなときにまで口論しないの』 二人の間に、通信が一つ 「メアリー少佐…だけど…」 『だけどじゃありません。いい?貴方たち二人は、今まで、あのエンジェル隊と互角に張り合ってきたのよ』 「…」 『そんな貴方たちに、できないことがあって?』 「メアリー少佐…」 「そう、ですよね…あの人たちのフォローができるのは、どんなに宇宙が広くたって、僕たちだけですよね」 『そういうことよ』 にっこりと、メアリー少佐は彼女にしてめずらしく、優しい笑顔を浮かべた ココモとマリブが、互いに笑いあう そして 「よっしゃ!必ず見つけてやるぜ!」 「うん!ツインスター隊の名にかけてね!」 双子は再び、宇宙を駆け出す
艦橋でウォルコットは自慢の髭をいじりながら 勢いを取り戻し、飛び出していった双子機を見送った と、そこに 『ウォルコット…すまん…わしは……』 それはルフトからの通信であった ウォルコット・O・ヒューイはルフトが口を開く前に 「知っていたんですよ」 一言 「知っていたんです。あの子を…あの人からお預かりしたときに言われましたから」 その表情は、遠くを見つめる優しい眼差しで 思い出すのは、優しい人 ”タクトをお願いね、ヒューイ君” 彼女は、年老いて、病の床に伏せながらも 出逢った頃と、なに一つ変わらない、花が咲くような明るい笑顔で ”あの子は…なにか大きな運命を背負っている…そんな気がするの” 超新星の白き狼…そう呼ばれる以前、まだ新人のときに出逢ったときから ”私ね、人を見る目は確かなの。ヒューイ君はきっと凄い軍人さんになるわ” そういって、自分を信じてくれた、人 そんな彼女の言葉だから、なんの根拠もなく、そう信じていた 信じてきた 彼女はもう、地上より永遠にいなくなってしまったけれど 人をまっすぐに見てくれた眼差しと、花が咲いたような笑顔 それは、受け継がれたのだ…彼に 自分に残された…否…託されたモノ 逝ってしまった彼女の代わりに見届ける 彼の運命を… それは、自分の役目なのだから 「親という字は、木の上に立って、見ると書きます…親はただ、子供を見守る者…」 辛いこともあるだろう 苦しむこともあるだろう だが、転んだ子供を抱き起こすようなことはせず 信じて待つ 自分の力で立ち上がり、再び、自分の足で歩き出すのを そして自分に追いついたその時は、精一杯の力でほめてやる その時を… ただ、信じて 『ウォルコット…』 呟かれる名前に、ウォルコットは笑顔を返す 「ルフト…私は信じているんですよ、彼らの絆を…そして、彼女たちと彼の運命を」 何度も辛い試練を乗り越えた、その力を それは、きっと、偶然だけではないのだから 『そうじゃな…ならば、わしも信じよう』 ルフトもついに観念したように、笑った 通信をきり、空を見上げる どこまでも続く、無限の、大宇宙 光り輝く翼が、駆ける…
その歌を最初に聞いたのは誰だったろう?
キュォオオオオオオオオッ 銀河中に響き渡る、咆哮 だが、それは決して耳に痛いものではなく… 「うた?」 ラッキースターの中から、ミルフィーは首を小さくかしげ その音の発生源を探した 漆黒の空 群青の闇の中を、何かが光の尾を引きながら泳いでいる 優しい歌とともに… 「宇宙クジラ!」 何万年という刻を、真空の宇宙空間で生きてきた、完全生命体 普段は、エルシオールのクジラルームでしか見なかったその巨大な体が、ゆっくりと空を飛ぶ 太陽の光エネルギーを受け、あまったエネルギーを時々、潮の変わりに頭上から吹いて きらきら 光の潮は、七色に輝きながら、宇宙を舞う キュォォオオオオオオッ 優しく歌いながら ふいに ミルフィーは気づいた 光が渦をまく ぐるぐる きらきら ぐるぐる… きらり まるで台風の目のように、宇宙クジラは、そこを中心に飛ぶ 光は渦をまき、その真ん中を形作って 「そこに…タクトさんがいるの?」 ミルフィーの呟きとともに 通信がはいる 『そうです、ミルフィーユさん!』 「クロミエ!」 『宇宙クジラの指す場所が、路です』 宇宙クジラのパートナー、クロミエはいつもの穏やかな笑顔 だから ミルフィーも、いつものように笑顔で応えた 「はい、あとはまかせてください!」
通信を閉じる 聞こえるのは、宇宙クジラの歌う唄だけ ミルフィーは一つ深呼吸 そして 「タクトさん、レスターさん…エルシオール、かならず助けます!」 決意とともに、歌の中心へと向け、翼を広げた
この話の夜ver(笑)をかきたくて仕方ないので、そのうち描きます。 なんにせよ、エオニア×タクトLOVEということで(レスターごめん) そうです。今回はエオタクなんです。(ちゃんとレスタクもありますが) まぁ、もともとこの日替わり連載事態、突発読みきりだったエオタクから 始まったものなので。原点回帰といえば、そう。 それにしたって、本当にこのシリーズはなんでもありですね
第24話「Final dish AngelicSymphony (後編)」
夢を見た…
懐かしい夢 青年は優しい人だった その優しさ故に非情であった そして愚かでもあった 好き、だったのだろうか? …少なくとも 嫌いではなかったのだと思う 運命は二人を残酷に出会わせはしたが きらいにはなれなかったのだ
『タクト…』
夢の中 彼の人は優しく微笑む ”あぁ、これは夢だ” 意識のある夢というのはよくあることだ だからこれも夢なんだ 見知った顔がいる 手を伸ばされて 冷たい手がひんやりと…心地よい 『…タクト』 彼は、低い、よく通る綺麗な声で、俺の名前を呼ぶ 冷たくて優しい声 その声に聞き覚えがあった いや、忘れることなんて、きっとできない 黒き月で、それでも自分を思ってくれていた優しい声 夢 これは、夢だ そんなことはわかってた けれど… 俺はその冷たい手をとる 彼は少し驚きの表情をみせ 漆黒の礼服 滑らかな黒肌 流れる金の髪 そして…瞳 意志の強い綺麗な… それは、生前となんら変わることなく 残された人間のわがまま 俺は弱いから…きっと、本当に貴方を失うことには耐えられなくて みることはできなくても、傍にいてくれると安心したいだけで これは俺のわがままだ なぜなら、今こうして、俺のそばにいてくれる その人は… …いや、今だけじゃない、ずっと…ずっと、俺のそばにいてくれた そのひとは…
「エオニアさま…」
呟きとともに、軽いキスが落ち 夢は掻き消え、眠りの終りを告げた
だが 「捕まえましたよ」 タクトはにっこりと微笑んだ 『…知って、いたのか?』 掴んだ手は離さないまま 「はい…知ってましたよ?…ずっと、貴方が俺のそばにいてくれたこと」 あのクーデターのあと その優しい視線は、変わることなく自分に注がれていたことを 半年の辺境惑星調査の帰りにみた夢… 黒き月のコアを拾ったとき… ちとせに気絶させられた自分を起こしてくれて… エンジェル・スラップのときには護ってくれた 「確信が持てたのは、ヴァインに連れて行かれそうになった時ですけれど」 ”去れ” 目の前で弾かれたヴァインの手 ”去れ、タクトに近づくな” ヴァインの手を弾き、俺のそばにいてくれる そのひと… 『そう、か』 エオニア・トランスバールは、諦めたように小さく笑った タクトはその笑顔に笑顔をかえしながら 「誕生日プレゼント…ありがとうございました」 『いや…大したことをしてやれなくてすまない…』 「いいえ、あれは…なによりの贈り物です」 『…タクト』 「さっき…エルシオールから手が離れそうになった、その最後の一瞬… 離れないように上から握りこんで下さったのもエオニア様ですよね?」 『…あぁ』 「そんな風に姿は見せてもらえませんでしたけれど…あなたがずっと傍にいてくださってるって知ってましたから それがどんなに、心強かったか…特別なものなんていらないんです、ただ…ただ俺は…一緒にいられるだけで…」 他には何も望まないから そらされない瞳 と、そこに
「みゅーっ」
飛び込んできた一匹の黒い物体 「子宇宙クジラ!」 「みゅーみゅみゅーみゅぅ〜」 ぱたぱたぱたっ 子宇宙クジラは、勢いよくタクトの腕のなかにもぐりこむと 「みゅーっ!」 目の前にいるエオニアにむかって威嚇をはじめた その姿はさながら、悪い竜からお姫様を護る騎士のようで… 『なんだ、このボールのような生物は』 あからさまに気に入らないという表情でエオニアが一言 「みゅ!」 その言葉に怒りながら子宇宙クジラ タクトが笑う と 「しかし、まさかこうも堂々と浮気をされるとは思わなかったな」 背後から溜息とともに、あきれた声 「レスター!」 タクトが名前を呼ぶのと同時に 「うわっ」 長い腕が、タクトを抱き寄せた 「まったく、油断もすきもない」 「お、おいレスター!俺、浮気なんてしてないぞっ」 じたばた がっちり抱きしめられた姿勢で、苦しげにタクトが抗議する レスターはその言葉には耳をかさず エオニアを睨みつけると 「まだ成仏されていなかったんですか?エオニアさま」 嫌味たっぷりに一言 『…タクトが心配でね。おちおち成仏もできないのだよ』 だが、エオニアもそこは慣れたもので、負け時と言い返す 「タクトには俺がついているのでご心配なく」 『それが心配だといっているのさ、現に今回も随分と辛い想いをさせたろう』 ぐいっ 「うわぁっ」 今度はエオニアがタクトを抱き寄せた 『タクト、こんな心の狭い男が相手だと、これからも苦労するよ?』 「タクトッ!戻って来い!」 ぐいっ 「っ痛…レスター、ちょっ…」 『酷い男だな、タクトが痛がっているじゃないか』 「貴様が離せば問題ない!タクトっ、お前まさかそのままその男と地獄まで一緒にいくつもりじゃないだろうな?」 ぐいっ 「…うわっ、エ、エオニアさまっ…」 『誰が地獄落ちだ、誰が!』 「貴様だ、貴様!他に誰がいるって言うんだ?!」 ぐいっ 「…っ…っ〜っ」 「みゅ、みゅー…」 右に左に綱引きされるタクトを、子宇宙クジラが心配そうに覗き込む ぐいっ 『タクトっ!』 「タクトッ!」 二人の声が重なった それと、同時に
「うるさーいっ!!」
怒り爆発 「二人とも大人げなさすぎ!っていうか、痛いって俺さっきからずっといってるのに!」 ふたり、正座させられ、延々と説教されること、数十分 「まったく…!」 「…悪かった」 『…すまない』 不幸中の幸いといおうか この光景をみたら卒倒しそうな人間がいあわせなかったことだけが救いというか うなだれた二人の様子に、タクトは一つ溜息をつくと 「怒ったらお腹すいたなぁ…食堂にいけばなにか食べ物あるかな」 「きゅー」 「子宇宙クジラはなにがたべたい?」 子宇宙クジラをつれて、ブリッジをあとに、した
食堂 ずるずるずる… タクトは自分で作ったインスタントの宇宙塩ラーメンを食べながら 「やっぱり、エルシオールに残されているのは俺たちだけかぁ」 「あぁ、生体反応では人間が2人、動物が1匹となってる」 この短時間でレスターがまとめた報告を聞いていた レスターの目の前には、同じく自分で作った宇宙エビチャーハンが湯気をたてている 「生体反応なし…ってことは…」 『私は、このエルシオールに残ったデータの幽霊のようなものだ』 「エオニアさま…」 小さく呟き、タクトはエオニアをみる その顔には変わらない微笑が 『私は何度かこの艦に人としではない形でアクセスしたからね、それがデータとして残っているのだろう 司令席に座っている者のテンションによってこの艦の中でのみ干渉が可能になる』 「H.A.L.Oシステム…か」 『光の翼と、別の空間を作り出すほどのエネルギーがこうして私を実態化させた 今はまだエネルギーが残っているのだろうが、なくなれば、消える…』 エオニアはそこまでいうと 手を伸ばし、タクトの頭をゆっくりと撫でた 『そんな悲しそうな顔をしなくてもいいよ、タクト…これは、軌跡のオマケのようなものだ 君が私に逢いたいと願ってくれたから…私はこうして再び君に触れられる…これ以上の喜びはない』 優しく、ゆっくり、愛しく… 流石のレスターも、それを止めるようなことはしないで 「さてと、問題はこのあとどうするか、だな」 「まぁ、俺たち二人と子宇宙クジラだけならなんとか生きていけるんだろうけれど…」 「自給自足でもしながら、帰る方法を探すか…」 溜息をつきながら、レスターが宇宙エビチャーハンを口に運んだ 『それならば、心配はいらない』 「え?」 宇宙塩ラーメンの残りスープにご飯をいれながら、タクトの視線はエオニアへ 彼は小さく笑うと 『だいじょうぶ、その時がくれば、タクトにはわかるはずだから』 「俺、ですか?」 タクトの疑問に、エオニアはただただ、おもしろそうな笑顔を返すだけで
食料のチェックや、艦内の見回り、生活品の確保… 二日ほどかけて、とりあえず生きていくうえで必要最低限のモノの確認を済ます その作業が一段落つくと、タクトは数日振りに銀河展望公園へと足を運んだ いつもなら、周辺宙域のデータを星空として写す立体フォログラフも 新しくできた宇宙のデータはないらしく、臨時に本星トランスバールの夜空をうつしている 『タクト』 しばらく星空にみとれていると、声 「エオニアさま…」 『ここにいたのか』 数日 ゆっくりとだが、エオニアの姿も次第に薄くなり始め いまでは、若干だが向こう側が透けて見えるほどになっていた 「…ここで、エオニアさまにお会いしたんですよね」 『そうだな』
”あなたは…”
”タクト・マイヤーズ…か?”
『君は泣いていた』 「…それは、忘れてください」 くっくっくっと、エオニアは笑いを噛み締め 『あれから、色々なことがあったな』 「…はい」 そうして 二人でしばらく夜空をみあげ 少し考えてから、エオニアは一つの疑問を口にした 『タクト、君がこの状況でも慌てずにいるのは…彼女たちがいるからかい?』 「…」 いや、それは疑問ではなく確認 タクトはすこしだけ間を置いてから 「そうですね、そう考えていなかったか?といわれれば…」 循環のための風が吹く サワサワ それは、木々や草花を揺らして 『本当に、君たちが羨ましい』 「そうですか?」 『?』 「信じてる、っていえば聞こえはいいけれど、結局…俺は彼女たちの負担を大きくしただけかもしれない」 空を見上げる 上をむくその姿から、表情は読み取れない 「彼女たちは強い、強いけれど…本当はただの優しい女の子たちなんです」 いつも笑顔のミルフィーユ 明るく元気なランファ 知的で優雅なミント 姉御肌で面倒見のいいフォルテ 優しいヴァニラ 控えめでおとなしいちとせ 「俺は彼女たちが好きで、他の誰よりも大切で…だけど、戦ってほしいとも思う」 信じてるから その言葉ひとつで 「皇国の英雄だとかいわれたって、俺のしたことは彼女たちを戦わせただけで… 実際に誰かを倒す痛みを背負っているのは彼女たちなんです」 『タクト…』 「彼女たちは優しい、だから…誰かのために命をかけて戦える… でも人間で、女の子で…疲れたり、傷ついたりする、本当はやめてしまうことだってできたはずなのに…」 そんな彼女たちの背中を押したのは自分だ と 『君でもそんな馬鹿なことを考えるのだな』 「…」 『タクト、私はね後悔しているのだよ』 「後悔、ですか?」 エオニアの言葉は優しくなく 『そうだ、たとえば…クーデターなど起こさなければ』 だが、それは決して冷たくも無い 『黒き月と…ノアと出会わなければ…あのときの戦いではこうするべきだった、こうすれば良かった』 「エオニアさま…」 『それは、私が途中で諦めてしまったからだ』 諦めた 腐敗した血族を立て直すことも 正統な手段で奪われた皇王の座を取り戻すことも 白き月を護ることも そして クーデターを成功させることでさえ 諦めたのは、自分自身の可能性だ 『自分を諦めたものは、死んだ後で後悔する…死んだ後で後悔しないのは…』 悔いなく死を迎えることの出来るもの それは 『死んだ後で後悔しないのは、その死の瞬間まで諦めなかったモノだけだ』 精一杯やったのだ そう、胸をはることが出来るのは 最後の最後 その一瞬の刹那まで 自分を信じきれたものだけなのだと 『しかし…人間は弱い。一人の力では限界がある…人は有限の生き物なのだよ』 有限… 黒き月 完璧であるが故に、データどおりの結果しか生み出さない 限りの有る存在 『だが、時として人は無限の可能性もしめす…なぜなら、人は一人ではないから』 「…ひとりじゃない」 呟くようにその言葉を繰り返す 『一人で出来ないことも二人でならできる、二人でできないことも三人でならできる… 彼女たちは諦めなかった、確かに彼女たちは強い、銀河最強の天使たち…それでも限界はある』 あった それは、何度もあったのだ 黒き月のネガティブフィールド ネフェーリアのネガティブ・クロノ・フィールド そして、先のヴァル・ファスクとの戦いのときだって 『だが彼女たちは勝ち残った、どうして?…それは、君がいたからだよ、タクト』 くじけそうになった 負けそうになった 自分を諦めかけたことだって そのたびに 『自分一人では自分を信じぬけなかった、だが二人なら?自分が信じられなくても、誰かが信じてくれるなら? それはやはり、彼女たちの力になる。…なったんだよ、タクト』 その証として 銀河は救われ 彼女たちも生き残った 今はいっしょにいられないけれど タクトもレスターも…そして、他のみんなも無事だ 「…はい」 溢れてくる涙をぬぐいながら、タクトはひとつうなづく 「ありがとうございます…」 涙とともに心が軽くなっていく気がした この一年間 彼女たちとともに戦いながら ずっと、ずっと…足かせのように重く心をひっぱってきたもの その最後のひとつが音をたてて外れていく エオニアはゆっくりとそのタクトの頭を撫で… 「きゅーっ!」 どんっ 飛び込んできたのは 『またお前かっ!』 「子宇宙クジラ」 「きゅーぅきゅーきゅー」 子宇宙クジラは自分も悲しそうに泣きながら、必死でタクトの涙を舐める 「く、くすぐったいよ子宇宙クジラ…」 「きゅー」 タクトがとめるが、子宇宙クジラは離れようとしない そこに 「よくやった、子宇宙クジラ!」 声 「レスター」 入り口から足早にかけてくるのはエプロン姿も似合う副官がひとり 「タクト、夕飯だ」 「うん、わかった」 「で、皇子さまはタクトを呼びにいくのにどれだけ時間をかけていらっしゃるんですかね?」 『ふん…食事より大切なものなど、いくらでもあるんだよ』 「ほーぅ?タクト…」 「な、なんだよ?!浮気なんてしてないぞっ」 びくっと後ずさり 『そうだ、なぜならタクトの本命は私なのだからな』 「エオニアさま〜」 「あー、もうどうでもいい、さっさと夕飯にしろ。後片付けができんだろうが!」 「きゅー」
ここ数日、何度も繰り返される収拾のつかないその事態を 夜空はいつまでも優しく照らしていた
そんな日々があって エオニアの姿が、もうほとんど見えなくなりかけた ある日…
「あぁ、だが…そうだな。私も知っていたよ」
唐突なエオニアの言葉 「え?」 タクトとレスター、そして子宇宙クジラの視線がエオニアに注がれる その視線に、彼は優しく笑いながら 「君がどれだけ彼女たちを愛しているのか、そして彼女たちがどれだけ君たちを愛しているのかを」 「…彼女たち?それは」 タクトがその名前を確認するより早く 「♪きゅーっ」 子宇宙クジラが鳴いた まるで、何かに反応するように 「♪きゅきゅきゅーきゅー」 「子宇宙クジラ?」 小さな物体は、嬉しそうに空間を飛び回る まるで歌うように鳴きながら 歌? 『夢の時間は終わりだよ、タクト』 見上げれば寂しい微笑み 自信に満ち溢れたようなエオニアが、時折みせた、その表情 そうだ 彼を嫌いになれなかったのは それが彼の本当の表情だったからだ そして、たぶん 自分も同じような表情をどこかに持っている 一方的で、しかし、確かな、シンパシー だから、自分は彼に惹かれるたのだ 「エオニアさま…」 名前を呼ぶ 彼は改めて、優しく微笑むと 『さぁ、タクト…耳を済ませてごらん?君になら、いや…』 そこまでいって、エオニアは珍しくレスターをみた ここ数日繰り返された、幼稚な喧嘩 それとはまったく別の表情で 言い直す 『君たち二人になら聞こえるはずだよ』 「♪きゅーっ」 エオニアの言葉にあわさるように、子宇宙クジラが歌う 歌う… 「っ!」 タクトは宇宙を見た 生まれたばかりの星空 閉ざされた世界 だが それは宇宙から聞こえたのだ かすかに でも、たしかに 「まさか…」 レスターも同じような反応を示す きこえるもの 聞こえる 漆黒の銀河を駆け抜け 絶望の空間を超えて 届く 君のために歌う 「天使の歌…」
Angels Song…
何度でも 翼を広げ 宇宙に歌う
天使たちのシンフォニー
| 2005年04月13日(水) |
今週のマガジンは…の日 |
幸村×京四郎!激萌え!すげぇ萌え! そんな俺の心情とは裏腹に、日替わりは昨日の続きです
「なんですか、今のは?!」 ノーマッドがヴァニラの膝からずり落ちそうになりつつ叫ぶ ヴァニラは無言で周囲を見渡した 「今のは…」 ミントも同様にあたりを見渡す そこへ通信がひとつ 『今のいったいなんなのよ、ミント』 「わかりませんわ」 ランファの質問に答えながら、銀河を揺らした正体を探す 「なんだっていうんだい」 『フォルテ先輩、今のがもしかしたらクロノ・クェイク爆弾だったのでは…』 「だったら、この通信だって使えないはずだよ」 ちとせの言葉に、フォルテは前方にある物体を確認しながら応える 銀河を壊すモノに変化は見られない ならば… 「あーっ!」 全員の思考をかきけしたのは、ミルフィーユのそんな声だった
艦は、人間を護りたかった
「エルシオール…」 白銀の艦が、銀河を渡る
「そんな、どうしてエルシオールが?」 「みんな降りたんじゃなかったの?!」 ちとせとランファが同時に叫ぶ と 『えぇ、エルシオールに生体反応はみられませんわ』 通信からミントの冷静な声がきこえた 「誰も乗ってないってこと?じゃぁ、誰が動かしてるのよ!?」 「タクトっ?タクト、どうなってるんだい?」 フォルテがタクトと通信をつなげる が 「っち、つながらないか」 クロノ・クリスタルは反応をかえさず 「エルシオールは…もしかして…」 ミルフィーはポツリと呟いた と、その呟きに応えるように 「護りたいんですよ…あなたたちを…」 「ノーマッド…」 ヴァニラが膝の上のノーマッドを抱きしめた 「私も同じロストテクノロジーですから…その気持ち、なんとなくわかるんです…」
艦は、人間が好きだった 自分に乗る人間たちはいつだって楽しそうで いつだって幸せそうで そんな人々を乗せていられることが幸せで 自分は幸せな艦だったのだ 戦艦として作られながら こんなに こんなに、幸せな艦は他にない 幸せだった だから… 護りたかった 艦は、人間を護りたかった 自分の幸せは 今日まで自分を大切にしてくれた人々の幸せなのだから
「エルシオール…」 白き月 あわただしく駆け回っていたエルシオールクルーたちが呆然と自分たちの艦を見守る と 「ノア?」 黒き月の少女が歩き出す シャトヤーンがその背中に声をかけた ノアは振り返らずに 「エンジェル隊は自分の役目を果たすために戦っている エルシオールは自分の役目を果たしにいった だったら、あたしはあたしの役目を果たすわ」 「…ノア」 「スカイパレスにいってくる、あとはよろしく」 「…」 シャトヤーンがなんと応えようか迷う そこに 「たのんだぞ、ノア」 宇宙から、視線を外さないまま、シヴァが応えた ノアは少しだけ驚いた顔をしたが すぐにあきれた顔をすると 「わかってるわよ。あんたこそ、しっかりそこで自分の役目を果たしなさい …あの連中を信じて待つのは私の仕事じゃないんだから」 「わかっている」 二人の言葉の掛け合い それは、酷く優しいやりとりで シャトヤーンは微笑みを浮かべながら 「いってらっしゃい、ノア」 去っていくノアの後姿に、ひとつ、頭をさげた
艦は、人間が好きだった 艦は、人間を護りたかった だが…
絶望で漆黒に塗りつぶされた銀河を白銀の艦が駆ける その優しい光であたりを照らすように
だが、艦は忘れていた 自分に乗っている人間たちが あきらめることを知らない 一筋縄ではいかない人間だということを
「おいてきぼりは酷いよ、エルシオール」 エルシオールのブリッジに人影 「お前の性格がエルシオールにもうつったんじゃないのか」 二人分 「どういう意味だよ…」 しくしく… タクトは恋人の毒舌に傷つきながら、座りなれた自分の席に座る 「ま、ともかく、間に合ってよかった」 ほっと一息 実際、エルシオールが目の前で飛び出したときは流石のタクトも呆然としてしまった レスターがとっさに近くにあったシャトルで飛び出さなかったら追いつけなかったかもしれない こんなときはつくづく、機転の利く副官をありがたく思う 「まったくだ」 レスターも珍しく安堵の溜息 そんな風に二人が、いつもの調子で会話をしていると 通信が、ひとつ
『タクトっ!』
「あ、フォルテ」 パッとモニターが浮かぶ 『あ、フォルテ。じゃない!あんたいったいなにしてるんだい?!』 「なにって、やっとエルシオールにおいついて一息ついたところだよ」 タクトは普段となにもかわらない調子で応える 『あんた馬鹿じゃないの?!』 次にあらわれたのはランファ 「馬鹿って…」 「その通りだろうが」 容赦のないつっこみは隣から 『クールダラス副司令?!』 ちとせがタクトの隣にいるレスターの姿に驚く 『レスターさんもご一緒なんですか?』 1テンポ遅れて、ランファの隣にミルフィーユ 「あぁ、俺たちはいつも一緒だから」 その問いに、タクトが当然のように返す 『…はい』 ヴァニラがこっくりとうなづいた 最後にはいるのはミントからの通信 『お二人とも、まさか…最初からそのつもりで…』 「そういうこと。…ごめんね、みんな」 タクトはエンジェル隊全員を見渡して一言 だが、返事はかえってこなかった なぜなら
タクトとレスターも忘れていたからだ エルシオールに乗っている人間たちが あきらめることを知らない そして、なにより 自分たちと同じくらい もしかしたら、それ以上に エルシオールのことを大切に想っている人間ばかりだということを
人々は、艦が好きだった
ざわっ 騒がしくなる 「?」 タクトとレスターは同時に後ろを振り向いた その瞬間、ブリッジの扉が開く 現われたのは 「きゅーっ!!」 「子宇宙クジラ?!」 泣きながら子宇宙クジラがタクトに体当たりをかました 「お前、どうして…」 「きゅーきゅーきゅきゅーっ!」 子宇宙クジラはバタバタとタクトにすがりついて泣く タクトは仕方なく子宇宙クジラの頭を撫でる と、そこに 「まにあったー」 「つ、疲れた」 子宇宙クジラの後ろに続いてブリッジに姿をあらわしたのは 「ココ?アルモ?!」 ブリッジクルーの中でも、とりわけ接する機会の多いオペレーター2人組 「お前たち、どうして…」 「どうしてもこうしてもないですよ!」 「そうですよ、なんで私たちを置いていっちゃうんですか!」 レスターの言葉をさえぎって、二人がつめよる 「う…」 流石の副官も、一歩あとずさり 「ほんと、ほんと」 更にパトリックが続く ざわざわ 「みんな…」 一人、ふたり… そんな風に、どんどんとブリッジにクルーが戻ってくる 全員は置いていかれた文句を口々にいいながら、表情は穏やかで 「ってことは、他の連中も…」 呆然とレスターがつぶやく 「あたりまえじゃないですか」 「エルシオールには誰が欠けたって駄目なんですから」 「言って置きますけど、もう誰も降りたりなんてしませんよ」 自分の席に座りながら、ココ、アルモ、パトリックが釘をさす 「お前ら…」 「無駄だよ、レスター」 言い返そうとした副官を、タクトがとめた 「タクト、だが…」 「みんな、エルシオールが大好きなんだ」 タクトの言葉に 「はいっ」 ブリッジクルーの声がひとつとなって、返ってきた
『いい気味よ』 ランファがふふんと髪をかきあげながら一言 『私たちを出し抜こうとなんてするからですわ』 ミントはいつもの微笑みで、辛口コメント 『その通りだよ』 フォルテもうなづく 『…隠し事はいけません。神の教えです』 『はい、先輩』 手を組んだお祈りポーズのヴァニラの言葉に、ちとせが答え 『タクトさん、戦うときは、みんないっしょですよ』 ミルフィーがにっこりと笑う タクトはその笑顔に、笑顔をかえしながら 「そうだね、俺が悪かったよ。ごめんね」 あやまった 「まったく、どいつもこいつも…」 その隣で、レスターは深く溜息 『レスターさんはタクトさんと二人っきりになりそこなったのがそんなに悔しいんですか』 プププッと笑いながらノーマッド 「…殺すぞ、ピンク」 『スミマセン…』
人々は、艦が好きだった だから、人々は艦を大切にし 艦とともに、最後まで戦うことを望み 帰ってきたのだ
「ねぇ、レスター」 「ん?」 いつもの活気に戻ったブリッジをみながらタクトは恋人を呼ぶ 「俺…もしかしたら…こうなることを知ってたのかもしれない」 「…タクト」 「だって、俺は知ってたんだ。みんながエルシオールのこと大好きだ、って…」 「そうだな」 タクトの言葉に、レスターも微笑をかえす
それはそんなに難しいことじゃないと想う エルシオールは人々が好きで そして、人々もエルシオールが好きだった それだけのこと 好きだ だから、一緒に戦いたい 最後の最期、その一瞬まで それはあたりまえのことだと思う みんな、同じ願いで、同じ想い
「前方、クロノ・クェイク爆弾から高エネルギー反応!」 モニターを確認したアルモの声がブリッジに響き 「くるぞっ、全員ショックに備えろ!」 レスターの指示が飛び、それぞれがそれぞれの場所で迫りくる衝撃に身を構える タクトは 「みんな、あとはよろしく」 微笑みながら最後にそう言うと、答えを待たずにエンジェル隊との通信を切った そして 「タクト」 名前を呼ばれ 顔をあげて、恋人をみる 手を伸ばしたのはどちらが先だったのか 力強く、お互いの手を握る 離れることはないよう、ぎゅっと…
次の瞬間
ピシィッ
氷が張るような音が銀河中に響き渡る 音もなく、光が、爆発、した この世のものとは思えない色の光が走り それは、瞬きする間もなく、全てを飲み込む のみこんで 残されたのは…
バサッ
レスターの腕の中で、タクトが最初にその音をきいた 「翼が開く、おと?」 たしかに、そんな音がした ありえない話だ、なぜならもうすでに紋章機の光の翼は開いているのだから けれど、それはたしかになにかが開く音だった
ピー
「な、なんだ?」 司令席が淡い光に包まれ、それは共鳴を起こしながら広がっていく そして
ピーガガッ…ガー…
音をたてて、エルシオールの中を新しいなにかが塗り替えていき
「エルシオール?」 光は、まるで歌うように、広がって 白い光 酷く懐かしい 泣きたくなるような優しい輝き 「そんな…まさか、これは」 そんなことを思っているあいだも、光はますます増えエルシオール全体を包み込み 一瞬だけ塊となり収縮すると、刹那
バサァッ
今度こそ音をたてて、爆発する いや、正しくは開いたのだ 「ひかりの…つばさ…」
光の翼が軌跡を描きながら銀河を翔ける
「エルシオールに光の翼が…」 ハッピートリガーの中で、フォルテは呆然と呟いた そして、きづく 「クロノ・クェイクが起こったのに、動ける?」 気づいた瞬間、通信がひとつ 『フォルテさん!』 「ミルフィー」 『エルシオールがっ…タクトさんたちが…』 「あぁ、わかってるよ…」 フォルテは小さく応えて、再びエルシオールに視線を戻した 光の翼は羽ばたくたびに クロノ・クェイクの影響をかき消していく その光景をみながら 「…いつだって、護られているのはあたしたちの方だったんだ」 呟き それとともに ぽたり 涙が、おちた フォルテは愛用の軍帽を深く被りなおす そして… 「レスター、タクトを頼んだよ」
いつもそばに…
漆黒の宇宙に、柔らかい白光の翼を広げるエルシオール 「大変ですっ!」 「どうした?」 そのブリッジに、ココの声が響き渡った 「それが…エルシオール内の生体反応が次々と転送されていってるんです」 「なんだって?!」 報告に、タクトとレスターは同時に司令席のモニターを開いた と ピー 電子の警告音とともに、表示されたのは ”緊急脱出装置作動中” それとともに、艦内の生体反応確認数がどんどんと数を減らしていく 「緊急脱出装置…そんなものが…」 「転送先は?!」 レスターの声に 「…白き月です!」 クロノ・ドライブ反応を示すモニターをみていたパトリックがかえす 騒然とするブリッジ 「エルシオール…」 タクトは一つ呟くと、艦内放送のスイッチを入れた 『みんな、落ち着いてきいてくれ』 「マイヤーズ司令…」 ざわつく艦内に、タクトの声が響く 『エルシオールの緊急脱出装置が発動した、これはエルシオールの意志によるものだ』 「司令…」 ブリッジクルーの視線があつまる 『エルシオールは俺たちを護ろうとしている…』 タクトはそこまでいって、一つ深呼吸をすると 『だけど、みんなエルシオールを降りたいか?!』 「降りたくないですっ!」 アルモが叫ぶ 「降りたくない、だって、私たちはエルシオールのクルーなんですから!」 「そうだ!なんのために俺たちが帰ってきたとおもうんだよっ」 「最後までいっしょにいたいです!」 ブリッジのあちことから声が続く 艦内に残っている他のクルーたちも同じ事を叫んだ 全員の願いは一緒だというように タクトはその声を確認すると 『と、いうわけで…全員、エルシオールにしがみつけっ!』 いつもの調子で高らかに、一言 ずるっ タクトの隣でレスターが盛大に、コケた… 「タクトっ、お前には緊張感ってものが…」 抗議しようとしたレスターの声とかぶるように 「はいっ!」 ブリッジクルーから良い返事がかえってくる 「は?!」 レスターが驚いて、タクトからブリッジへ視線をむけるとそこには 必死で自分の席にしがみついているクルーたちの姿が… 「お前らまで…」 はぁ、とレスターは大きく溜息 「きゅーっ」 子宇宙クジラがタクトにしがみついた タクトは子宇宙クジラの頭を撫でながら、いつもとかわらない副官の姿にクスクスと笑いをこぼすと 「レスター」 名前を呼んだ 「…ったく」 呼ばれた恋人は、もう一度だけ溜息をつくとタクトのほうを振り向いた …っぷ どちらからともなく笑いがこぼれて あとは笑顔 二人は互いに笑い会うと、言葉のかわりに、手をつなぐ 絶対に切れることの無い絆 まるで、それを確認するかのように、力強く…
輝く翼を広げ、光の粒子で出来た羽を撒き散らしながらエルシオールが進む 漆黒の銀河を照らし出すように その白い光に宇宙が共鳴する そして クロノ・クェイク爆弾に到達したエルシオールから放たれた白い光が、漆黒の空間を走り抜けた だが、その光は決して強いものではなくて… どこか、不思議な柔らかさと優しさをもった まるで、月灯りのように穏やかな光 「きゃぁっ」 「うわっ」 光に包まれるエルシオール ブリッジのあちこちで、クルーたちの声が聞こえた 「くそぅっ」 次々と、転送されていく 「タクトっ」 「レスター!」 ふわっ 二人の体も宙に浮く 互いに呼ぶ名前すらも、光の中に消えて… それでも
繋いだ手だけは離さずに…
星空の下でかわされた、永遠の誓い ”ずっと一緒にいたい” その願いのままに 離れることはないよう、祈りをこめて ふたり、いっしょ、いつまでも、どこまでも そう… たとえ地上より永遠にいなくなることになろうとも
ほんっとーに、このシリーズではやりたいことばかりをやりました…v そのメインのひとつは今回のお話です というわけで、まいど書き込みすぎで、まっぷたつ(前後編のくせに;)
第23話「Final dish AngelicSymphony (前編)」
艦は、人間が好きだった
「ありがとう、エルシオール」
エルシオールから外されたクロノ・ブレイク・キャノン それは、永遠の平和を願ってのことだったろう 人々はその美しい白銀の艦に戦場が似合わないということを知っていた だからこそ、あえて主砲を取り外し 争いを避けるように、白き月を象徴する儀礼艦としたのである
人々は、艦が好きだった
「アンカークローッ!」 ドンッ ドドンッ カンフーファイターからの攻撃がクロノ・クェイク爆弾を襲う しかし… 「うそっ、今の絶妙な攻撃が効いてないの?!」 戻ってきたワイヤーアンカーを回収して、ランファが信じられないといった声をあげた 戦艦でさえ時には粉砕する必殺技も、その装甲に傷ひとつつけることが出来ない だが 「ま、だったら壊れるまで、やればいいのよね!」 そういいながら、ランファはさっさと次の攻撃に切り替えた
「ハイパーキャノン!」 膨大な量の光が、一直線に凝縮されて伸びる 光は周囲の敵を巻き込みながら、クロノ・クェイク爆弾に真正面からぶつかった すさまじい熱量が、侵食するようにめりこむ それでも 「あの攻撃が効いてないなんて…」 エネルギーがなくなり、光が霧散する クロノ・クェイク爆弾はその跡に無傷で横たわっていた ミルフィーは残念そうにしながらも 「よし、もう一度!」 笑顔をたやさず、再びラッキースターを駆る
「リペアウェーブ!」 ナノマシンで出来た光の輪がハーベスターを取り囲み それは、2重、3重と幾重も輪を重ね 次の瞬間、爆発的に全方位に広がっていく その光を見送りながら 「どうか、みなさんに力を」 祈るヴァニラの膝の上にはノーマッドが 最後の戦い 二人はずっと一緒であることを望んだ 「大丈夫ですよ、ヴァニラさんの治療は最高です。あなたは私の天使ですから」 饒舌にしゃべるピンクの物体の言葉に、ヴァニラはいつもの調子を取り戻す
だから、人々は艦を大切にし
「?」 ふいに呼び止められたような気がして、タクトは後ろを振り返った 白き月最深部、そのドッグには傷ついた翼を休めるように沈黙するエルシオールが留まっている 「タクト」 そこに、レスターの声がして現実に引き戻された 「こっちはOKだ。全員の避難を確認した」 「わかった」 「けっこう時間がかかったな」 「仕方ないよ…」 タクトは少し困ったように笑うと 「みんな、エルシオールが大好きなんだ」 感情をこめて、一言 「大好きなんだよ…」 「そうだな」 二人、エルシオールを見上げる と 「…?」 「タクト、どうした…?」 「いや…なんでもない」 小さく首を横に振る (きのせい、だよな) 自分にいいきかせ 気を取り直すと 一つ深呼吸 顔をあげてタクトはまっすぐにレスターをみた レスターは柔らかく微笑んで、うなづく その笑顔に押されるように 「いこう、レスター!」 「あぁ、タクト」
艦は…
「ストライクバースト!」 紋章機中最強を誇るその全ての砲門が開かれる それは膨大な出力を食い物に、一筋の光となって目標まで飛んだ ドドドドドッ 爆発が爆発を呼び、空間を振るわせる 「っち、やっぱり効いてないか…」 舌打ち だが、フォルテは操縦桿を握る手を緩めることなく 再び狙いを定めると 「じゃぁ、これならどうだい?!」 考えるよりも先に、ハッピートリガーが次の閃光を放つ
「フェイタルアロー!」 光の渦があちこちで爆発する そのわずかばかりの隙間から、狙いを定め ひとつ、ひとつ、ひとつ 計3発の光の矢を、確実に命中させていく 「そんな、傷一つつかないなんて…」 呆然と、その物体を、見る だがあきらめない ちとせは、あきらめるということをやめたのだ 「お願い、力を貸して…」 その呟きに、シャープシューターが答えるように出力を増す
「フライヤーダンス!」 トリックマスターの遠隔操作ユニット・フライヤーがクロノ・クェイク爆弾をとりかこむ ミントの言葉とともに、それはまるで花が咲くように一斉に開き あとには、光の雨が降り注ぐ しかし 「駄目ですわ…」 攻撃はあたっている、確実に だが効いている様子はみられない それでも 「では、これでしたら?」 それでも、ミントは微笑を絶やさず戦い続ける
艦は、人間が好きだった 人々は、艦が好きだった だから、人々は艦を大切にし 艦は…
”…姉さん” ふいに 「ヴァイン?」 呼ばれた気がして、ルシャーティはあたりを見渡した もちろん、周りには誰もいない しかし 確かに、声が と ”姉さん” 「ヴァイン、なの?」 声が聞こえる 怖い、とは思わなかった ”ねぇ、姉さん…” 声はどこからともなく聞こえる 空から 隣から そして… 自分の心から ”姉さんは、どうしたい?” なにを… とは、言わなかった 今、その質問の答えを、ルシャーティはひとつしか、しらない 「私は…みなさんの力になりたい…」 ”そうだね” 戦いたい たとえなんの力になれなくても だが 彼女たちの足を引っ張ってしまうということも解っていて 解っているから どんなに戦いたくても、それはできない だから、せめて、自分はここで待つのだ 彼女たちの戦いから目をそらすことなく 彼女たちを信じて と ”姉さん…人にはそれぞれ役割があるんだよ” 「役割?」 ”そう、そして…今、姉さんにしかできないことがあるんだ” 「わたしにしかできないこと?」 言葉を反芻し、意味を理解しようと思考を巡らせた そして たったひとつのその考えにいきつく そのとき…
銀河が揺れた
泣いても笑ってもあと4話でラスト!! 最後の最後まで全力疾走がんばりますとも!
第22話「銀河天使の最終決戦納豆」
それは、星空の出会いから…
『すいません、ちょっとお聞きしてよろしいですか?』
「はい?」
銀河の片隅 星空の下で出会った一人の青年と、5人の天使たち 「よし!」 タクトは気持ちを落ち着けると 宇宙に浮かぶ、6色の翼と向き合う そして…
「…ミルフィー」 『はいっ!タクトさん』 ミルフィーユ・桜葉 ピンクの髪に白い花のカチェーシャがよく似合う17歳 料理が上手でエンジェル隊のごはん・おやつ係でもある いつもマイペースで明るく優しく、紋章機”ラッキー・スター”を自在に操る彼女はどこでも人気者 「ミルフィーの最強の武器は、その笑顔だ」 『タクトさん…』 ぎゅっ ミルフィーの手の中には、赤い薔薇の押し花 「どんな強運も、ミルフィーの笑顔には敵わないよ…最後まで、笑っていて欲しい」 『はいっ!バーンとやっちゃいます!』 最強の笑顔でミルフィーが答えた
「…蘭花」 『なに、タクト』 蘭花・フランボワーズ 紋章機”カンフー・ファイター”をのりこなす天使 強気で押しが強く、運動神経に優れ、とくにカンフーという格闘技は達人クラス そのわりに、占い好きという女の子らしい一面を持っていたりもする 「ランファの元気でみんなを引っ張ってくれ」 『わかってるわよ』 ランファは頼もしく胸をはる タクトは先日もらったお手製の御守りをみせながら 「ランファが護ってくれるなら安心だ…よろしく!」 『まかせなさいよ』 最高の笑顔でランファが答える
「…ミント」 『はい…タクトさん』 ミント・ブラマンシュ おっとりしていて人当たりはよいが、少ししたたかなエンジェル隊きっての知性派 遠距離専門の紋章機”トリック・マスター”のパイロット ブラマンシュ財団の一人娘であり、俗に言うテレパシストで人の考えたこと、おもったことを読む能力をもつ 「ミントがいつも冷静でいてくれたから、俺はここまでこれたのだと思う」 『お褒めいただき光栄ですわ』 ミントが優雅に微笑む その笑顔に、どこか救われる 「ありがとう、ミント…帰ったら、みんなで注文した駄菓子を食べよう」 『えぇ、楽しみですわね』 ミントの答えは嬉しそうな笑顔とともに
「…フォルテ」 『なんだい、司令官殿』 フォルテ・シュトーレン 赤い髪に黒い軍帽、照準あわせのためのモノクル…と、他の少女たちにはない大人の色気を振りまくエンジェル隊の隊長 姉御肌のさっぱりとした気質をもち、面倒見が良く、他の隊員を実の妹のように可愛がっている 銃火器のコレクションを趣味にもち、彼女の愛機”ハッピートリガー”も攻撃専門の機体 「フォルテがエンジェル隊のリーダーで本当に良かった」 『おやおや、おだててもなにもでないよ?』 嬉しそうに笑いながら 愛銃を構える仕草 「だって俺、フォルテほど彼女たちのことを思ってる人間を他にしらないからさ…みんなをよろしく」 『あぁ…このフォルテ様にまかせておきな!』 フォルテの答えと笑顔はどこまでも優しく
「…ヴァニラ」 『…はい、タクトさん』 ヴァニラ・H エンジェル隊最年少で13歳という年齢ではあるがナノマシンを使った治療・医療技術は抜群で欠かせない存在 彼女のあやつる紋章機”ハーベスター”は唯一の回復能力を持つ 地方の宗教惑星出身の彼女は、あまり表情を表に出すようなことはしないが 「ヴァニラがまるで自分のことのように傷を治してくれたから、俺たちはここまでくることができた」 『タクトさん…』 感情をあまり表にださないヴァニラが微かに笑顔になる タクトはその笑顔をみつめると 「俺はそんなヴァニラの笑顔をみていると、自分が救われた気がするんだ…本当にありがとう」 『はい』 笑顔で返すヴァニラの膝の上では 『あたりまえです!ヴァニラさんは天使ですから』 いつも一緒にいるピンクのぬいぐるみ(一応ロストテクノロジー)ノーマッドが…
5人の天使たちと出逢い そして、力と心をあわせて戦ったクーデター終結から半年 辺境惑星の調査から帰ってきたタクトをまっていた 月の下での出逢い
『こちらMoonAngel隊所属、GA-006”シャープシューター” 搭乗者、烏丸ちとせ少尉です』
6人目の天使
「…ちとせ」 『はい!タクトさん!』 烏丸ちとせ エオニアのクーデター後、白き月で新たに発見された6番目の紋章機”シャープシューター”との相性を認められ 新人としてエンジェル隊へ配属された礼儀正しく控えめな、大和撫子 「ちとせを強くしたのは、君自身の向上心だ」 『…はい』 引き締められた表情 タクトは最初こそ真剣にそれをみつめたが、肩の力をぬき 「あせっちゃ駄目だよ、ちとせ…ちとせは、ちとせのペースでね」 『わかりました』 ちとせは笑ってこたえる。柔らかい笑顔だ
「いこう、みんな!…これで、終わりにしよう」 銀河の片隅 星空の下で出会った一人の青年と、6人の天使たち 「頼んだよ、エンジェル隊…いや………」 タクトはもう一度、気持ちを落ち着けると 全員の笑顔を確かめる そして… 星空の出逢いから、一年
「ギャラクシーエンジェルっ!」
『了解っ』×6
タクトとエンジェル隊、最後の戦いが いま、はじまる
♪Eternal Love…
「♪とおく、かぎりない、そらへ…ゆめをさがしてまよう…ファーラウェイ」 ラッキースターのコックピットでミルフィーは笑顔で歌う 歌う…ひたすらに 心を占めるのは、たった一つの願い ”みんなを護りたい” ただ、それだけ たった一つの純粋な祈り まるで、その想いに答えるように ラッキースターが輝きを増す 「いきますっ!ハイパーキャノン」 光がミルフィーの前に道を作った
「♪とわの、せいじゃくのなかで…こころみだれて、みちをまよう…」 カンフーファイターのコックピット、蘭花も元気よく歌っていた 歌声はあたりに響く 空間に、銀河に、心に… ”あたしがみんなを護るんだから” それは他の誰のためでもない 自分のための願いであり、誓い 誰ともあえなくなるのが一番嫌なのは自分なのだから カンフーファイターがそれに答える 「鉄拳制裁!アンカークローッ!」 自分の手で、自分が進むための道を作る
「♪つきに…みちびかれて…けだかく…いきていける…」 トリックマスター内部、ミントが歌う 歌いながら、銀河を駆ける 宇宙は広い ”護ってみせますわ” 欲張りな、願い 新しい宇宙は心を躍らせる まるで、駄菓子のおまけのように、なにがでるのかわからない楽しみ トリックマスターがご機嫌にエネルギーを放出し 「ごめんあそばせ。フライヤーダンス!」 新しい宇宙の道をどこまでも…
集中攻撃の嵐 それは、強固な要塞すらも、まきこんで 一際大きな爆発がおこる 「やったか?!」 エルシオールの艦橋で、タクトは破壊される要塞に注目した だが 「いや、あれは…」 驚愕の声は、隣にいる副官が 崩れ落ちていく…その中からあらわれるもの それは…
「あれが、クロノ・クェイク爆弾…」
ゾクッ 背筋を冷たいものが滑り落ちた まるで背骨が氷になってしまったかのような、悪寒 禍々しいそのシルエットに なんともいえない、嫌な予感が駆け抜けた そのとき 通信が、ひとつ
『我が名はゲルン…ヴァル・ファスクの…この宇宙の王』
パパパパパッ モニターに、いっせいに映し出される強面の顔 「これが、ヴァル・ファスクの…王」 『降伏せよ』 ゲルンは下卑た笑いを浮かべ 『降伏せよ、さすれば命ばかりは助けてやろう いや、お前たちの強さならば我が下に加わるのも許してつかわす』 「ッ!?何様のつもりだ」 その態度に、レスターがあからさまに不快な感想を タクトは… 「断る」 静かに、一言で、それをかえした と 『もったいない、今ならちょうど、犬死したヴァインの席があいているというのにな』 「犬死…だって?」 ゲルンは愉快そうに笑い 『アレは死んだのだろう?それが犬死ではなくてなんだというのだ? 心など、くだらんものに迷わされた、ヴァル・ファスクのクズが………』 「なるほど…」 タクトはひとつうなづいた そして 「わかったよ」 にっこりと、笑顔をむける 『ほぅ…人間にも理解力のあるやつがいるようじゃの』 「勘違いしないで欲しいな。俺がわかったといったのは どうしてヴァル・ファスクが俺たちに負けるのか。という敗因についてさ」 『…』 「あなたのような奴が、何千年も王として君臨できるようじゃヴァル・ファスクもたかがしれてる ヴァル・ファスクは王であるあなたの愚かさによって滅ぶんだ」 『言いおるわい』 ゲタゲタゲタ… ゲルンは、不快な笑いを振り撒くと 『ならば小僧、いいことを一つ教えてやろう… クロノ・クェイク爆弾とわしの脳波は直結しておる…わしが死ねば自動的にアレは起動するのだ』 「…」 『仮にお前たちが勝ち、わしを殺したところで、クロノ・クェイク爆弾はとめられぬ』 トントン 軽く指でこめかみを叩く 『破壊と征服こそがわれらの全て…わしが滅ぶときは、全て道連れじゃ』 「…遠慮しますよ。あなたは、ひとりで滅べばいい」 『…』 「…」 沈黙が支配する 『後悔するがいい、あの世でな』 にやりと、ゲルンは不気味な笑みを残して、モニターを切った タクトは一つ深呼吸を そして… 「みんなは?!」 さっさと思考をきりかえて、空にまう翼へ視線を戻した
「♪ときはすなのように…そぅっながれるーけどー!」 ハッピートリガーの中でフォルテが拳のきいた熱唱をしていた 力強く、優しく、そして愛しく、歌う 歌う、心のかぎり ”護ってやるよ” 誰よりも大切な、妹のような仲間たち 家族のない自分にとっては、家族以上に大切な それと、手間のかかる弟も その全てを護るために、ハッピートリガーの引鉄を、ひく 「いくよっ、ストライクバースト!」 立ちはだかる敵は全てなぎ倒して、わが道を
「♪えたーなる…らぶ」 ハーベスターでヴァニラも小さく歌う それは小さいが、しかしはっきりと 歌いながら ”護りたい” 今までも そして、これからも 自分はみんなといっしょに生きていたいから ハーベスターはまるで頷くように 「ナノマシン全方位発動…リペアウェーブ」 その祈りは、道半ばに傷ついた翼に力を与えて
「♪きみにあえた〜…あおい、このぎんがで」 シャープシューターにもちとせの歌が響く 柔らかく、暖かく、穏やかな まるで今のちとせの心をあらわすかのような、歌声 ”わたしが、護りたいもの” 心は澄んでいた 不思議なほどに 護りたいもの、その答えに、迷いはないから シャープシューターがそんな想いに力を貸してくれる 「そこまでです!フェイタルアロー!」 道は続く、どこまでも、はるか…
天使たちが道をつくる その道をエルシオールが進む 煙をふき、炎をあげ、それでも前へと 繰り返される爆発の中 白き月を象徴するような美しさは、もうほとんど原型をとどめておらず しかし 留まる事を知らずに 「砲手っ、どこを狙っている!」 「消化班いそいでっ」 バァッ ドンッ 閃光がかけるたびに衝撃が容赦なく襲い掛かる
「エルシオールが…」 白き月 一際大きな爆煙をあげて、グラリと傾いた白銀の船 シャトヤーンの心配そうな声とともに 「流石に、一筋縄じゃいかないわね」 その隣にいたノアも、悔しそうに宇宙をみつめる そこに 「♪いま…しんじて…とびたつ天使」 歌声は 「シヴァ?」 「あんた…」 シヴァは、二人ににっこりと微笑み返し 歌い続ける 瞳には揺るがない信頼 そらされること無く、宇宙を、見つめ続ける その姿に シャトヤーンとノアも歌いだす
歌は歌を呼び
「「♪エターナル…ラブ…!」」 光線の雨霰をかいくぐり 螺旋状に軌跡を描きながら飛ぶのは 「いくぜぇ、マリブ!」 「了解!ココモ」 双子の星 対照的な二人は、それでも、まるで互いが互いをカバーするかのように 飛びながら、敵を叩き落していく
そして、いつしか…
「♪ひかり、あびて…」 ツインスターの後方から、増援を集中砲火するのはウォルコットとルフトが率いる皇国軍艦隊 タクトとエンジェル隊を除けば 皇国最強といっても過言ではない、双璧 「♪つばさ…ひろげたなら…」 老軍人ふたりは、まるでしめしあわせたかのように歌いながら指揮をとる 遠い日々に想いをはせながら その戦いは、いま、戦場にたって戦う 娘のような6人の天使と、息子のような一人の青年のために
クジラルーム 「♪きっと…軌跡は…はじまる〜」 クロミエが宇宙クジラに手をそえて歌っている それはクロミエの歌のようであり また、宇宙クジラの歌でもあった 小宇宙クジラもあわせて歌う
「♪エンジェル…イン、マイハート…」 スカイパレス その夕焼けに染まる、そのテラスでルシャーティも宇宙を見上げていた 閃光が煌いては、消えていく その輝きを見つめながら 歌い続ける うたいつづける 彼女たちが歌い続ける限り
いつしか、銀河が歌っている
ドンッ 「うわぁっ」 エルシオールを一際大きな衝撃が襲った 「敵旗艦…エルシオールを射程距離に収めました!」 被害状況を確認した、アルモが、そう、告げる モニターに映し出されるのは、巨大なシルエット 特別戦闘艦…ギア・ゲルン だが、それもエルシオールに負けるとも劣らず傷ついていた 爆炎があがる 航行しているのが不思議なほどに それでも、攻撃の手を緩めることはなく ドドンッ ドン 続けざまに、二度、三度とエルシオールが揺れる 「タクト」 あわただしくブリッジスタッフが駆け回る中 レスターは静かにその名を呼ぶ タクトは、補給指示のために開いたミントとの回線をきると 「…あぁ」 小さく頷いて、レスターと視線をあわせた 言葉はいらない くすっ 二人は小さく笑いあう そして…
『みんな、聞いて欲しい』
その声は、エルシオール中に響いた ざわっ 一瞬のざわめきのあと 『これから、エルシオールは白き月に降りる』 「マイヤーズ司令?」 ココとアルモが不思議そうにタクトをみつめた 他のブリッジクルーたちも同様だ 『そのとき…』 ブリッジだけではなく、エルシオールのクルー全てが、タクトの言葉に耳を傾けた タクトは言葉をとめず まっすぐに、天使たちが戦う宇宙をみつめたまま
『エルシオールクルーはすべて、白き月へ避難すること』
誰もが、その、言葉の意味を理解する前に 『これは、俺の最初で最後の命令だ。みんな…あわてず騒がず迅速に避難してほしい 詳しい避難経路などはレスターから指示がある』 そこまでいって、タクトはちらりとレスターを見た レスターはひとつ頷く 「どういうことだよ?!」 ジョナサンが叫んだ 「俺たちにエルシオールを降りろって…そんな…」 「そうです!それに、エンジェル隊のみなさんはまだ戦っているんですよ」 アルモが続く 「そうですよ、司令ッ!俺たちはエルシオールに残ります」 「残ります、たとえ…最後になろうとも!」 「そうだ!そうだ!」 更に、他のブリッジクルーたちも同様に騒ぎ出す きっと艦内にいる人間すべてがおなじだろう 「みんなの気持ちはわかる、だけど…」 タクトは静かに しかし、はっきりと
「だけど、俺は認めない」
静寂 誰も、その言葉に逆らうことはできず 時間にしてはわずかだが、長く長く感じる沈黙が、あって 「だいじょうぶ」 タクトはにっこりと笑う 全てを溶かす微笑で 「マイヤーズ…司令…」 「それに、エルシオールから降りるといったって…戦わないわけじゃない エルシオールが飛べなくなったら、紋章機の補給は白き月でしか行えないからね みんなには白き月でやってもらうことが山ほどあるよ」 ざわざわ… 和んだ空気に、ざわめきが戻り 「みんながいてくれるなら、エルシオールは何度だって宇宙を飛べるから そのためにも、今、ここで、みんなを失うわけにはいかないんだ」 タクトの言葉がエルシオール中に届く 届く 心に…
「わかりました」 最初に答えたのは誰だったのか 「またエルシオールに乗るために、今は降りることに、します」 「そう…ですよね」 「これで、終わりじゃないんだもん」 希望が タクトの言葉とともに エルシオールにのっている者すべてに広がっていく 「あぁ!みんな、よろしく頼む」 その言葉に 全員が答えた 「はいっ!」
活気が一瞬にして、戻る タクトは安堵の溜息をひとつついて、司令席に座りなおした そして (…ごめん、エルシオール…だけど、一人にはさせないから) 心の中で、つぶやく と 「ご苦労さん」 ねぎらいの言葉が、ひとつ 「…レスター」 見上げる先には、優しい表情の副官が タクトは手を伸ばして 自分より幾分か大きめのレスターの手に触れる その手を握り返して 「あとは、全員を無事…白き月に送り届けるだけだな」 「あぁ」 ぎゅっ 心細くなって、握り締める手に力をこめた そうすると、不思議と、勇気がわいてくる気がして (しっかりしろ、自分で、決めたことじゃないか) 言い聞かせる 決めたことだ みんなを傷つけることになろうとも それでも、救いたい ここで終わりにはさせない 今日は無理でも明日 明日は無理でも明後日 …いつかくる、平和な日々のために その日々のなかで、みんなが笑っていられるように お祭りのような騒がしくて楽しい日常 地上(ここ)から、銀河中をまきこんで はちゃめちゃで刺激的で でも、どこか優しさと暖かさに満ちた そんな毎日がずっと続くことを、願っている そう… たとえ、その日々に二人がいられないとしても 地上より永遠に…俺とレスターがいなくなることになろうとも
「敵旗艦から、攻撃、きますっ!」 モニターを確認したココの声 「タクトっ」 名前をよばれ、思考を振り払う そして 「だいじょうぶだよ」 力強く一言 そのまま、にっこりと笑顔で立ち上がる 絶妙のタイミング まるで、最初から打ち合わせていたかのように
6色の光の翼が、エルシオールを護るように舞い降りた
「参りますわよ!フライヤーダンス」 トリックマスターから3基のフライヤーが踊り出る それは、ミントの言葉と共に一斉に開くと エルシオールに向かう攻撃をすべて相殺した その隣では 「ナノマシン…全方位発動、リペアウェーブ」 ヴァニラの祈りとともに、ハーベスターから淡い光が広がる まるで雪のようにキラキラと輝く柔らかい光 宇宙に降る雪は、傷を癒し
銀河を駆ける翼
「いっけぇ!アンカークロー!」 時間差で2つのワイヤーアンカーが敵旗艦に向かう 敵の攻撃をかいくぐって、ランファのカンフーファイターが宙を舞う 華麗に、そして力強く そのランファに向かう敵を 「退きなさいっ!フェイタルアロー」 シャープシューターからの3連続光速弾が打ち落とす ちとせは視線を反らさない 前を見据え、戦い続ける
美しく…最強の天使たち
「バーンとやっちゃいます!」 「これで終わりにするよっ!」 敵旗艦まで一直線 その空間に舞い降りる、二つの翼 ラッキースターとハッピートリガー 「ハイパーキャノンッ!」 「ストライクバースト!」
光の路が銀河を真っ二つに…
ドンッ その衝撃に、ゲルンは自分の最期を悟る 「ふはははははは…わしは、ヴァル・ファスクの王」 だが、その態度はかわることなく 「わしが死ぬときは、宇宙の終わり」 両手を広げる 全てを飲み込むかのように 「せいぜい、華々しく散るがいいわ!」 高らかな笑い声は 最期のその一瞬まで途切れることはなかった
ヴァル・ファスク その最期をタクトは見届けると 6っつのモニターと向かい合う 「みんな、ありがとう」 銀河の片隅 星空の下で出会った一人の青年と、6人の天使たち 『こちらこそ、ですわ。タクトさん』 『はい…タクトさんがいてくださるから、私たちは今日まで戦ってこれました』 ミントとヴァニラの笑顔を確認する 『礼をいうのはまだ早いんじゃないかい?司令官殿』 『そうよ、タクト。本番はこれからなんだから!』 フォルテとランファの言葉で、気持ちを落ち着けて 『タクトさん、最後のご指示を』 『いきましょう、タクトさん!』 ちとせとミルフィーユに笑顔をかえした
それは、星空の出会いからはじまった物語
| 2005年04月10日(日) |
今日は21話なんですが…の日 |
本日は21話なんですが、あとあと書き直すかもしれません…
第21話「星空の誓い 鯛づくし」
…それは、遥か未来 星空の下でかわされる、永遠の誓い
「…タクト?」 レスターは足をとめてつぶやく 彼はそこでぼんやりと星空をみていた 「レスター…。ブリッジはもういいのか?」 声をかけられたことに気がついて、タクトが振り返る 「あぁ、まぁ最後のクロノ・ドライブにはいったからな。正直…もうすることもそんなにない」 「ご苦労様」 「いや…。それより、話っていうのはなんだ?」 「…うん」 タクトはあいまいな返事をかえすと、再び星空を見上げる 見えるのは 「なんか、ずいぶんと遠いところにきたんだな…」 「…あぁ………」 言葉は続かなかった 何か考えているのかもしれない いや、ちがう 夜の銀河展望公園 星と月の光をうけるその姿はまるで… まるで 「…なにを考えている?タクト」 「ん?」 「お前が静かなときは、ろくなことを考えていない時だからな」 答えは無い レスターはため息をつくと 手を伸ばす 長い指が届いてタクトの手首を掴んだ そのまま引き寄せる 透き通るような月灯りに、その細い輪郭が溶けて消えてしまいそうだったから 抱きしめて、静かに、次の言葉をまつ しばらくそうやって、互いの暖かさをわけあって 二人の体温が同じくらいになったころ
「クーデターの時にね、高い理想をもっている人がいたんだ」
それは、まるで独り言のようなつぶやき 「その人は、その理想の高さゆえに、決してやってはいけないことをやってしまった」 (…それは) 思わず言葉にしかけた想いを寸前で止める 「酷い人だった…でも、優しい人でもあった…優しいからこそ、時には非情で、そして愚かだった」 「…タクト」 「好きだった…俺は、あの人のことが…彼はどこか俺とおなじモノをもっていたから… 共鳴というか、惹かれたんだよ…言い方があるとしたらそれくらいしかないけれど………」 (…それは) その人物の名前にこころあたりがある だが、それを口にするこはできなかった 「彼の理想は高くて…高すぎて、そのせいで”黒き月”に利用されるかたちになってしまったけれど… 彼は最後まで、自分の気持ちには正直だった…本当はね、本当は………俺は、彼を救ってあげたかった」 耳が痛い 「救ってあげたかった…救えなかったけれど…本当は、みんな救いたかった…高い理想をもつ彼も、 その理想に命をかけた人も…そして、力のために自ら人間を捨てた彼らも…もちろん、犠牲になった人たちも」 ちがう 痛むのは、心だ その刹那さが、心に染みて痛く 「救いたかった人たち、救えなかった人たち、かわりに、俺が選んだモノ…俺が選んだ人たち… そんなことを、最終決戦前に、再確認しておきたかったんだ」 言葉が でなかった なにか喋らなくちゃいけない だが、言葉がみつからない 形にならない 気持ちだけが、胸のなかに、どろどろと、渦巻く ただ、抱きしめることしかできない自分に、タクトは申し訳なさそうに微笑んで 「ありがとう…レスター」 一言 その言葉で、気づく… それは、自分に向けられた言葉ではなかったことに タクトは名残惜しそうに、レスターの腕をはなれると 少し離れた草の茂みに近寄る そして
「ごめん、みんな。今日だけはレスターと二人っきりにしてくれるかな?」
がさっ 風もなく草木が揺れた がさがさ がさ… それは、しばらく続いたが やがて沈黙
「よし、おっけー」 「まったく、あいつらは…」 レスターがやれやれとため息 「今日の話ばかりは、聞かれるわけにはいかないからね」 その呟きに はた、と思い当たったことをきいてみる 「タクト、まさか…さっきの話はそのための前置きだったのか?」 タクトはあっさりと 「そうだよ。最初っから”二人っきりにしてくれ”って言ったって、みんな納得してくれないだろうから」 「…あいつらもあいつらだが、お前もお前だ」 彼女たちも一筋縄ではいかないが、この恋人も一筋縄ではいかないということを 改めて思い知る、レスターであった… 「ひどい言われようだなぁ」 しくしくと泣きながら、タクトは視線を空へもどす
二人の頭上には、いつまでも優しく柔らかく 綺麗な夜空が広がっている
「綺麗だよな」 「まぁな」 「でも…こんな綺麗な空も見上げず、宇宙を壊す準備をしている奴もいるんだよな」 不安そうなタクトの言葉 いつか、スカイパレスのテラスでかわされたのと同じもの レスターは… 「俺たちには銀河最強の天使がいるから、大丈夫なんだろ?」 そのときのタクトの言葉をなぞってみる だが、タクトの表情は晴れないまま 「…そう、彼女たちは強い…強くて、優しい…銀河を護る、最強の天使………」 「タクト?」 「彼女たちならきっと…」 そして言葉は同じところで途切れた タクトの瞳がレスターを見上げる レスターは瞳を反らさない ただ、ただ静かに言葉を、まつ タクトはそれを確認すると
「彼女たちならきっと、この銀河を救ってくれる」 たとえ、それが…自分の命を犠牲にすることになったとしても」
風が吹いた 「命をかけて」 声が響く 「だけど、俺は嫌だ!…そんなのは、いや、なんだ」 響く あたりに 星空に 心に 「世界が平和になったって、ミルフィーが、ランファが、ミントが、フォルテが、ヴァニラが、ちとせが… エンジェル隊のみんながいないなんて…そんなのは、嫌だ!」 「タクト…」 手を伸ばそうとして、やめる タクトの告白はまだ終わらない 抱きしめてやるには、まだ、はやい 「1年前…クーデターの、あの日…あの星空の出逢いから、俺の世界は広がった 暗黒時代だった人類に白き月が天恵を与えて、世界を広げたように レスターやウォルコット中佐たちだけだった俺の世界を広げてくれたのは彼女たちなんだ」 にぎりしめられた拳が震える 「彼女たちがいなければ、お前と…こうして、向き合うことも…きっと、なかった」 「…あぁ、そうだな」 自分の気持ちに正直に そういって、本心を押し殺す癖のあるタクトと 気持ちに不器用な自分の背中を押してくれるのは、いつだって彼女たちだった 「これは、俺のわがままだ…世界は救いたい、だけど…彼女たちを失うのは嫌で… 俺は弱い…目の前で、彼女たちを失うのが耐え切れないんだ…」 心の弱さ たとえ、最悪の結末になろうと そのとき、その一瞬の刹那まで 彼女たちを信じ、見守ることのできる強さが…ない 無い その命の重さを、背負う自信さえ… 「…俺には選べない、世界の運命か…彼女たちの命か…その両方を天秤にかけることはできないよ」 命をかけて護りたいものがありますか? それとも… やはり、命より大切なものなんてないのでしょうか? 答えは、たぶん、でない… 人間が人間である限り、永遠に 「でも、レスター」 タクトはそこで、やっとレスターの顔をみた 優しくて でも、どこか悲しい そのくせ 決意に満ちた眼差し 「俺に、選べるものが、ひとつだけ…ある」 その答えを、自分は、知っている レスターはそんなことを、思った 天秤にかける、もの
「世界の運命と、俺の命…それだったら俺にも選べるんだ」
クロノ・クェイクへの唯一の対抗策 そのために必要なもの…無限の可能性を秘めた特殊なクロノ・ストリング・エンジンとH.A.L.Oシステム 銀河広しといえど、それが使われている戦闘機は7機(そのうち1機は大破してしまった) だが…戦闘機以外で、一隻…同じものが使われている船がある 紋章機が白き月で発掘された時、同じように発掘された「動く宮殿」 この宇宙で唯一、紋章機を収納することができるロストテクノロジーの結晶 儀礼艦エルシオール
「タクト、お前…自分がいってることを理解してるだろうな?」 「わかってる。もちろん、その時は、他のみんなには降りてもらう」 「…それが、逆にエンジェル隊のやつらを苦しめる結果になると知っててか?」 「そうだ」 答えに迷いは、ない あぁ… あぁ、そうか… そういうものなのかもしれない、人間なんて 弱くて 脆くて でも… 自ら、別れを選ぶ強さも持っている 本当は、彼女たちと、一番離れたくないのは自分だろうに 憎まれることになるだろうに それでも…彼は選んだのだ だったら俺も迷うことは無い 「わかった」 言葉は、ひとつ それを確認すると 一つ深呼吸 顔をあげる まなざしを、かえす そして 言葉をまつ 今日、今、ここに… 俺が呼ばれた、本当の、理由 その言葉を 「それで…レスター」 タクトは震える手を、前で組む まるで祈るように 「お願いが…あるんだ…」 震えている だが、まだ抱きしめるには、早い ”わかってるから、なにもいうな” そういってしまうのは簡単だけれど 「俺は…」 タクトをまつ ただ、ただ静かにその言葉を、まつ それは、彼の口から直接聞かなければ、意味のないものだから たったひとつの願い…
「レスターとずっと一緒にいたい…」
ふたり、いっしょ、いつまでも、どこまでも そう… たとえ二度とこの世界に戻ってこられなくても 「俺、死ぬのは怖くない…だけど、一人は怖いんだ…レスターと一緒にいられないのが何より怖い… だから…だから、最後のその一瞬まで、どうか一緒にいてほしい」 答えの… 言葉のかわりに、手を伸ばす 捕まえて、抱きしめてやる、やっと 随分と長いあいだ、お預けを食らっていた気分で 「レスター?」 「俺は…」 抱きしめる腕に願いをこめるように、力をこめながら
「俺はいつだってタクトのそばにいたし、これからだってずっとそばにいてやりたい… タクトの望むことはなんだって叶えてやりたい…俺は、タクトが幸せでいてくれればそれでいいんだ」
星空の下でかわされる、永遠の誓い その証として、キスをひとつ…贈った
俺の幸せは、タクトの幸せ タクトの幸せは、俺の幸せ 俺たちは今までそうやって生きてきたし これからだってそうやって生きていく 二人の願いはいつだって同じだった ずっと… たぶん、出逢ったあの日から、なにひとつ、かわることなく 「ごめん…ごめん、レスター…俺、おれ…お前になにもかえせない…」 タクトが子供のように泣き出す 「いつも迷惑かけてばっかりで、命まで欲しいなんて…そんな風に願うのに… 俺から…お前にしてやれることなんて…ないんだ」 「なにいってるんだか」 その涙をぬぐってやりながら 「お前、俺を愛してくれてるんだろ?それ以上があるっていうなら俺が知りたい」 それはそんなに難しいことじゃないと想う 俺はタクトが好きで そして、タクトも俺を好きだといってくれる それだけのことなんじゃないかと… 好きだ だから、一緒にいて欲しい どうか傍にいて欲しい それはあたりまえのことだと思う 二人とも、同じ願いで、同じ想い
いつもそばに…
だったら、なにを悩む必要があるんだろう? 「ごめん…ありがとう…レスター…でも、俺の命は…お前のものだよ」 「タクト…」 「俺の全部はお前のものだ…俺にできることは、それくらいしかないけど…」 「それは、まぁ…なんというか…」 コホン 咳払いが、ひとつ 「お前…俺のこと誘ってるのか?」 今のは、かなり、きた 少しやばいくらい 「…え?…ぁっ」 その意味を理解して、タクトの頬が真っ赤に …っぷ どちらからともなく笑いがこぼれて あとは笑顔 タクトが笑ってくれるなら もう、俺は他になにも望まないから
「あ、流れ星だ」 「んー?」 銀河の運命を背負って立つその尊い姿を 俺はただ抱きしめてやることしかできないけれど それでも それが、それだけが俺にできることだというのなら この命が続く限り…最後の一瞬まで タクトの望みどおり ずっと一緒に… 「なにを願うんだ?」 「そうだなぁ、やっぱりみんなのことかな」 「…今までの流れだと…普通、そこは俺とのことじゃないのか?」 「あははは、やだなぁレスター」 タクトはひとしきり、笑うと 「だって、わざわざ流れ星に願わなくても、お前は俺といっしょにいてくれるんだろ?」 「…それも、そうか」 なにかに叶えて貰うのでは、それは確かに意味がない 願いはひとつ 永遠の誓いは、タクトのために ならば祈りは、戦う彼女たちのために 「そういえばレスター…今、この銀河で彼女たちがなんて呼ばれてるか知ってるか?」 「いや…?」 タクトは小さく笑うと 「銀河を護る最強の天使たち…その名は………」
…それは、遥か未来 絶望で漆黒に塗りつぶされた銀河を駆け抜ける 6人の天使と1組の恋人たちの物語
その名は…
長くお届けしていたこのEL編も、残すところあと6話となりました 全力投球で最後までつっぱしりたいとおもわれます。えぇ。 そんな20話。いってみよう!
第20話「月の艦ソーセージ」
艦は、人間が好きだった
白き月宮殿 ステンドグラスの中心にノアがたつ、その隣にはシャトヤーン、反対側にシヴァとルフト 「じゃぁ、説明するわよ」 ノアの説明役も随分板についてきたなと思いながら その話に耳を傾ける 「クロノ・クエイクっていうのは、簡単に言えば空間を使えなくする力なの」 「空間を?」 「そ。だから、一度それが起きれば影響が収まるまでクロノ・ドライブどころか、クロノ通信すら不可能になるわ」 「それってつまり、ネガティブ・クロノ・フィールドみたいなものですか?」 「上手いこと言うじゃない。そうね、あれはクロノ・クエイクの縮小版みたいなものね」 ノアは感心したようにうなづき 「まず違うのは規模。ここで起きればトランスバールはおろか他の外宇宙にも影響する」 「ということは、私たちは生きてるうちにトランスバールには帰れない、ということですのね?」 「もし起きればね…そしてもうひとつ、ネガティブ・クロノ・フィールドは止めることはできるけれど クロノ・クエイクは止めれないってことよ。それこそ起動させたヴァル・ファスクにもね」 「…で、もしも起動した場合の対抗策は?」 フォルテが先を促した ノアはしばらく考え そして、モニターをだす 真中に目印がひとつ 「これがクロノ・クエイク爆弾…」 手を振る パッ 消滅し かわりに波紋状になにかが広がる 「起動すると、こんな感じで空間を破壊していくんだけど…」 そこに現れる新しい印 それは 「…紋章機?」 それは、6色の紋章機 ノアはそのうちの一つ…ミルフィーのラッキースターを記す記号を波紋にちかづけ パッ 再び手をふる すると、ラッキースターを中心に黒い円が浮かぶ それは一瞬のうちにクロノ・クエイクの波紋とぶつかり 同時に消滅する 「クロノ・クエイクへの対処法は一つ…影響が広がっている間にその範囲内で、小宇宙を作り出すの。 水が高いところから低いところに流れるように、その影響はすべて新しい空間に注ぎ込まれるはずよ」 「宇宙を…」 「作る?」 「ラ,ラッキースターはどうなったんですか?」 うるうるとミルフィーの訴え ノアはあえてそれを無視して 「知ってのとおり、小さいとはいえ宇宙を作るには膨大なエネルギーがいるわ。運の良いことに 私たちにはそれに相当するエネルギーを生み出すことができる原動力が、ある」 「…クロノ・ストリング・エンジンですか?」 ちとせの問いにノアはうなづきをひとつ そして 「でも、ただのクロノ・ストリング・エンジンじゃだめ。制御できるエネルギーじゃたかが知れてるわ そのためには、無限の可能性を秘めた特殊なクロノ・ストリング・エンジンがいるの」 「紋章機に使われているクロノ・ストリング・エンジン…ということですね」 ヴァニラが確認する 「そうよ。さらに紋章機にはH,A,L.Oシステムが使われている…パイロットの精神とリンクするシステムがね それによってクロノ・ストリング・エンジンを暴走させることで計算上は小宇宙を作り出すことも可能になるはず」 ノアが手をかざす モニターが消えた 「まて、ノア!」 口をはさんだのはシヴァ 「クロノ・ストリング・エンジンを暴走させた紋章機はどうなる?!」 シヴァの視線と、ノアの視線がぶつかる 誰もが二人を静かに見守った ノアはひとつため息をつき そして… 彼女にはめずらしく、言葉を選ぶように…
「隠しても意味のないことだからいってしまうけれど… 小宇宙の中心となる紋章機は、こちらの世界に戻ってくることはできないわ」
緊張がはしる だが、その答えをある程度予想していのか、タクトとエンジェル隊はなにもいわなかった 口をひらいたのは、シヴァ 「駄目だ、そんなことは…そんなことは認めぬ!」 「あんたが認めようと認めなかろうと、事実なんだから仕方ないでしょう?」 「他に方法はないのか?!」 「あたしだって必死で探したの、だけど、これしかないのよっ」 「だが、だがっ…」 悔しげに言葉を捜す、シヴァ その肩には、自分の命の恩人であり友人でもあるエンジェル隊の命と トランスバール女皇としての指命が、かけられぬ天秤としてのしかかっている 「だが…」
「だいじょうぶ、ですよ」
続かないシヴァの言葉をフォローしたのは 「タクト…」 「大丈夫ですよ、シヴァさま。クロノ・クエイク爆弾が起動する前に破壊してしまえばいいんです」 「ま、そうなんだけどね」 タクトのものいいに、ノアがあきれた返事 「はい、バーンとやっちゃいます」 「宇宙が平和になったって、帰ってこれなきゃ意味ないもんね」 「えぇ、そのとおりですわ」 「必ず帰ってきますよ、全員でね」 「はい」 「だから、心配なさらないで下さい」 全員が口々に同じことをいう 「シヴァさま、俺たちが一度だって約束を破ったことがありますか?」 「…いや」 小さく首をふる 「ない、な…お前たちはいつだって私との約束を護って、くれた…」 「今度も同じですよ」 「…あぁ」 シヴァはうなづく そして顔をあげたとき 彼女の表情には笑顔がもどっていた 「タクト・マイヤーズ、そしてエンジェル隊…この宇宙を頼む」 その言葉に 「はい、おまかせ下さい」 7人の返事が重なった
人々は、艦が好きだった
「あれ?」 タクトがそこの光景に出会うのは、本日4度目であった 最初はブリッジ 次に銀河展望公園 先ほどまでクジラルーム そして、いま ティーラウンジで 「あ、マイヤーズ司令。すいません…いま、掃除中なんです」 ウェイターが申し訳なさそうに頭をさげる 「いや、いいんだ…ってことはエンジェル隊のみんなはきてないんだよね?」 「えぇ、今日はお見えになっていませんが…」 ふむ タクトは考え そして 「ところで、今日はエルシオール清掃キャンペーンかなんか?」 「は?」 聞きかえされる ということは、意図的ではないようだ 無理も無い ここにくるまで立ち寄ったところは、すべて掃除中だったのだ 一箇所,二箇所なら偶然ですますのだが、4箇所目となると… うーん… タクトは考えたが、答えはでず そして 「なにか手伝おうか?」 今日4度目となる言葉を口にした
その後… 宇宙コンビニ、食堂、エレベーターホール、トレーニングルームetc エンジェル隊がいそうなところをまわっては、それぞれの場所で掃除を手伝う 「ほんと、どーなってるんだろう」 そんなことをいいながら、タクトは格納庫にやってくる ここで最期だ 結果、はからずもエルシオール掃除巡回となってしまったが たぶん… ぷしゅっ 扉をあける 目的の人物たちは 「みんなも掃除してるの?」 紋章機を洗っていた 「あ、タクトさん」 ミルフィーが大きく手をふった すると他のみんなも気がついたらしく 「タクトじゃない」 「こんにちわ、タクトさん」 「よぅ、司令官殿」 「…」(ぺこり) 「タクトさん、どうかされたんですか?」 そのいつもと変わらない様子に (やっぱ、心配する必要はなかったみたいだ…) ほっと胸を撫で下ろす ノアから聞かされたクロノ・クエイクを止める方法 彼女たちがそのことでなにか悩んだりしていないかどうかが気になったのだが (よかったよかった) とりあえず一安心 そして 「はい、日頃の感謝の気持ちをこめて」 「そっか」 タクトがうなづく そしてあたりをみまわすと 「って、もしかして格納庫も掃除?」 慌しくかけまわる整備班にきづく すると 「はい!エンジェル隊のみなさんに影響されちゃって」 クレーター班長が少し手を止めて解説してくれた ということは 「ということは、もしかして艦内の清掃ブームの火付け役はここ?」 「そういうことです」 タクトは視線を6色の翼にうつした そこでは 「気持ちいい?ラッキースター。いつも、本当にありがとうね」 ミルフィーがそういいながら、ラッキースターをブラシで優しくこする 「綺麗よカンフーファイター。でも、もっと綺麗にしてあげるわ」 ワックスをかけながら、うっとりとランファの呟き 「これでよろしいですわ。トリックマスター…さぁ次は」 きゅっと吹き掃除をおわらせて、次の作業準備をはじめるミント 「おーばっちりじゃないか、その調子でよろしくたのむよ、ハッピートリガー」 簡単に火器の管制をみながらフォルテが満足そうに微笑む 「いつもありがとう、ハーベスタ-…」 ヴァニラはそっと、ハーベスタ-をなでた。 「シャープシューター…どうか、私に力をかして」 願うようにちとせはシャープシューターに仕上げ剤を塗り広げて 「なるほど、ね」 やっと納得 「みなさんが紋章機を大事にされるのと同じくらい、私たちもエルシオールが好きですから」 クレーターが誇らしげにいった 「そうだね」 うなづき 「よし!俺も手伝うぞ、クレーター班長!」 「いいんですか?」 「あぁ、ここにくるまでもいっぱい手伝ったからね、こうなりゃ全部徹底的に磨き上げよう」 腕をまくる ついでに、ブリッジにいるレスターに連絡を取って放送をひとつ ”エルシオール乗組員で手の空いているものは、清掃活動に参加すること”
艦は、人間が好きだった 人々は、艦が好きだった だから、人々は艦を大切にし 艦は…
白き月で、ノアと少し打合せをした帰り 寄り道をした銀河展望公園で、タクトは意外な人物をみつけた 「シヴァさま?」 名前を呼ぶ と 「タクトか」 幼い女皇はゆっくりとふりかえった 「こんな時間になにをしている?」 「えっとノアに頼んでいた資料が届いたのでうけとりに… シヴァさまこそ、こんな時間にどうしたんですか?」 「とくに意味はない、ただ、この艦にのっていた時のことを思い出していた」 シヴァは目をつぶる それはちょうど一年前の日々 「私は…あのときからなにもかわっていないのかもしれないな」 呟きは小さく 「そんなことはありませんよ」 「だが…今回も結局私はなにもできずお前たちを戦いにむかわせることとなった… ネフェーリアとの戦いで、お前とちとせを決戦兵器にのせ命をかけさせたとき あれほど後悔したというのに…わたしは…わたし、は………」 映像ではあるが、綺麗な空をながめ、途方にくれるシヴァ タクトは 「シヴァさま、人にはそれぞれ役割があるんですよ」 それはまるで 兄が妹に昔話を聞かせるような優しい響きで だが、真ん中に一本、しっかりとした芯のある言葉 そして、瞳 優しくて でも、どこか悲しい そのくせ 決意に満ちた眼差し 「役割…」 「はい、たとえば…ミルフィーの役割は美味しいお菓子と、あの笑顔で元気をわけてくれること」 タクトは自慢気にひとつ 「ランファの役割は前向きな明るさでぐいぐいみんなを引っ張ってくれること。 ミントは、少々暴走気味のエンジェル隊全員に冷静なツッコミを」 ふたつ、みっつ 「リーダーとして彼女たち全員に目を配るのはフォルテの仕事 彼女たちがいつも安心して戦えるのは、ヴァニラがいてくれるから」 よっつ、いつつ 「ちとせは一歩引いたところから全体をみて、みんなのフォローを」 むっつ 「そして、戦いに赴くみんなを信じてまつのが司令官である俺の役目で 俺がみんなのことに専念できるように助けてくれるのがレスターの仕事です」 「…ふむ」 「紋章機もそれぞれに役割が。ラッキースターはオールマイティーに、 カンフーファイターは切り込み役、トリックマスターは全体攻撃 ハッピートリガーは集中攻撃専門、ハーベスターは救護支援 シャープシューターは遠距離支援…」 銀河を駆ける、6色の翼 「紋章機を整備するのは整備班、傷ついたみんなを助けてくれるのは救護班、 おなかがすいたときは食堂のおばちゃん、なにか欲しいときは宇宙コンビニ… 戦闘や航行の要はブリッジクルーのみんな… なにより、そんな風に快適に過ごせる空間を作るのはエルシオールの役目です」 「では…」 タクトの言葉を シヴァが、さえぎる 「では…私の役目は?私の役目はなんだというのだ、タクト・マイヤーズ」 真摯なまなざし 「私にはノアのように作戦をたてることも、母上のようにみなを慈しむことも… ルフトやウォルコット、あの双子のように戦闘でおまえたちを助けてやることも、できぬ」 悔しそうに拳をにぎりしめる タクトは、その小さな手に、そっと手をかさね 「シヴァさまのお役目は…立派な皇になられること」 「…」 「クーデターの時、俺が頑張ろうとおもったのは、謁見の間でお会いしたあなたが皇族としての使命を果たそうとなさっていたから」
”皇国の臣民と、月の聖母シャトヤーン様を御守りすることこそ、皇族の使命である”
「あれは…」 「どんなに平和な世界がこようとも、皇が愚かでは意味がありません。先代ジェラール皇王のように… いつかそれは戦乱の火種をまくでしょう…奪うこと、壊すことは簡単です。でも、育てること、作ることは難しい 国を創るのは皇の仕事…住み良い国をつくる…それは、シヴァさまにしかできないことです」 そこまでいって、タクトは膝をおった 小さな女皇にかしづく 「どうか、良き皇におなりください。俺が…皆が、貴方様を御守りできることを誇りと思えるような」 シヴァは少しばかり不安そうに 「わたしに、できる、だろうか…?」 「はい、もちろんです」 タクトは笑顔で、それに答えた
すっ
手をはなす シヴァは…タクトに背をむけ 「わかった。では、私は立派な皇を目指そう」 空を見上げる 「この宇宙一の皇だ!」 「その意気です」 高らかな宣言をききながら、タクトはたちあがる ぱんぱん 足についた砂や草をはらっていると 「タクト…」 「はい?」 「ひとつだけ、聞いても良いか?」 「…なんでしょう」 背を向けたまま シヴァはしばらく迷い それでも 「お前は…」 タクトは静かに、その言葉の続きをまった
「お前は、エオニアのことを…好いておったか?」
ザァ 風が、吹いた 「………」 タクトが答えにつまる 背をむけていたせいで、その表情はシヴァにはわからなかったが その沈黙がまるで答えであるかのように ながい 長い、静寂を、破って 「いや、悪かった…変なことを、聞いたな」 「シヴァ、さま…」 「忘れろタクト、忘れてくれ…今のは無しだ」 「…」 「変なことをきいた詫びといってはなんだが、タクト、お前この戦いが終わった後、したいことはないか?」 くるっ 振り返る 「したいこと、ですか?」 シヴァはすでに、いつもの表情で 「そうだ、なんでもいい。今までの礼も兼ねて、なんだって望みをかなえてやるぞ」 「そうですね…えっと」 タクトはしばし考え 考え…そして
「エルシオールで旅がしたいです」
一言 「エルシオールで?」 「はい」 タクトはにっこり笑うと、いつかレスターにした話と同じ話をシヴァにした この白銀の艦にのって どこまでもどこまでも 星の海を旅したいのだと シヴァはしばらく、あっけにとられたようにその話をきき そして 「それは、エルシオールがシャトヤーン様のための船であることを知ったうえでか?」 「そうなんですけど…あはは、やっぱり、駄目ですよね?」 タクトは困り笑い と 「…お前と同じことをいった人物が、過去…皇族と白き月にいた」 「え?」 「初代トランスバール皇王と、当時の月の聖母シャトヤーンさまだ」 くすくす シヴァは楽しげに笑った
かつて暗黒時代と呼ばれていた人類に現われた救世主 ポジティブ・ムーン…”白き月” 夜、闇と戦う人々につねに頭上で優しく微笑んでいた”白き月” それは失われたEDENのテクノロジー(今でいうロストテクノロジー)の結晶体であり そこには聖母が住むという伝説だけがあった 伝説が史実となり、人類に手をさしのばしたのが600年ほど前 聖母シャトヤーンは、白き月のロストテクノロジーを天恵(ギフト)としょうして人類に提供した 宇宙すら制覇していたEDENのソレからくらべれば、微々たるものではあったが 爆発的な進化をとげるには十分すぎるほどの贈り物
「二人は互いの理想のために人類の復興に力を注がれた 白き月はロストテクノロジーの普及と、平和利用… 初代皇王は、かつての栄光をとりもどすために…」 「…」 「そして、恋人同士でもあった二人は、いつか自分たちの務めが終わった日に エルシオールでさらに皇国をひろげるための旅へでようと約束していたそうだ」
エルシオールから外された、クロノ・ブレイク・キャノン それは、永遠の平和を願ってのことだったろう
「残念ながら、その約束が果たされることはなかったのだが」 二人が結ばれることはなく、かわりに、エルシオールは儀礼艦となり 600年の間、ずっと、白き月と本星トランスバールを航海しつづけてきた 「素敵なお話です」 ハッピーエンドではないけれど、優しい物語 タクトは素直に感想をのべる と 「あぁ、私も…この話が一番好きだ」 シヴァは満面の笑顔で、それに答え
「タクト・マイヤーズ」
皇王としての表情で、一言 「はいっ」 タクトは姿勢をただす 「初代トランスバール皇王の末裔として、初代月の聖母の子孫として… 二人の意志を受け継ぐ者として、お前の願い、聞き届ける」 「…ありがとうございます」 「そして私からも願おう、エルシオールを、たのむ」 「はい」 かわされる笑顔 二人だけの神聖な儀式 空には満天の星 そして… かつて叶うことのなかった600年前の約束 それが、果たされる日はすぐそこまできている…
| 2005年04月08日(金) |
今年もいろいろと…の日 |
楽しみな映画が多いですv というわけで、昨日の続き
アイスを食べたら、なんだか他にも食べたくなって宇宙コンビニによってみる と 「ミント…」 「タクトさん。こんにちわ」 優雅に挨拶をくれた彼女に、タクトもあわてて挨拶をかえし 「やぁ、ミント…なにか買うのかい?」 ついでに聞いてみる かえってきたのは 「えぇ。いろいろと」 含み笑い そして 「それは?」 彼女が手に持っている本に気づく 「月刊駄菓子の友、ですわ。ちょっと入荷の難しい駄菓子がありまして取り寄せていただこうかと」 「ふぅん」 中身をみせてもらう いろとりどりの、駄菓子の写真 「美味しそうだね」 「えぇ…目移りしてしまいますわ」 ミントはうっとりと呟く 「ミントが欲しいのはどれ?」 「これですわ」 「へぇ…」 「でも、少し取り寄せに時間がかかるそうですの」 「え、どのくらい?」 その答えはミントではなく、宇宙コンビニの店員から 「だいたい〜…2週間ほど…ですねぇ〜」 「2週間も?」 銀河の果てから果てまで、1日で届けることのできる光速通販がある時代に珍しい話だとおもった だが、ミントは 「仕方ありませんわ。それに、待つのも楽しみのうちですし」 「はは…ミントはあいかわらず冷静だね」 「えぇ。あせっても仕方のないことですし」 「…うーん、そうだね、それに2週間後だったらもう全部片付いたあとだから、ゆっくり楽しめるし」 そのタクトの言葉に ミントは少しだけ驚いたような表情のあとで、にっこりといつもの笑顔 「…えぇ、そうですわね」 「きたら、俺にも少しわけてほしいな」 「あら。タクトさんったらそれがねらいですか?」 「うん!」 悪びれもなくうなづく ミントは呆れたように微笑んで 「仕方ありませんわね。いいですわ、みなさんでいただきましょう」 「楽しみだなぁ」 「ところで、タクトさんはなんの御用でしたの?」 不思議そうに尋ねられて、タクトは正気にもどると 「そうだ、なにか食べようとおもって…」 当初の目的に戻った しばらく、あたりをきょろきょろとみまわし そして 「あ、宇宙メロンパンが新発売になってる」 レジにはってる美味しそうな広告に目を止めた と… 「あ、すいません。それはミントさんが買われたので最期っす」 ジョナサンが申し訳なさそうに頭をさげる 「えー」 「残念ですわね、タクトさん」 後ろからおかしそうな笑い声 そして 「はい」 「え?」 差し出されたのは 「半分差し上げますわ」 「いいの?」 「えぇ。食べ物は一人で食べるより、誰かと食べたほうが美味しいですから」 「ありがとう、ミント」 嬉しそうに半分になったメロンパンを受け取る そのタクトの表情をみて、ミントも嬉しそうに微笑むのだった
ミントとわかれると、ちょうどお昼を少し過ぎたばかりの時間 その足で食堂に向かう と、先客が… 「あら、タクトじゃない」 「ランファもお昼?」 「まぁね」 何を食べてるんだろう?と、ランファの目の前におかれた昼食にめをむけると 「…なんか、異様に赤が目立つのは俺の気のせい?」 「なにいってるのよ。これは、ランファスペシャルなの!赤くてあたりまえ!」 「ふ、ふぅん」 力説する彼女に生返事をかえしながら 再び”ランファスペシャル”をみている、と 「タクトも同じものにする?」 「え?!」 少しの沈黙 だが ランファの悪気ゼロの視線にたえることはできず 「じゃ、じゃぁ…お願いするよ」 一人激辛我慢大会へ突入する運びとなった…(合掌) 「おばちゃーん、ランファスペシャルもう一つ!」 「あいよっ」 食堂のおばちゃんの心地よい返事 しばらくして、ガストがお盆をひとつタクトの前においた 去り際… 「がんばってください」 ぽむっ と、タクトの肩をひとつたたく タクトは ごくっ 音をたてて、喉をならし 「いただきます!」 自棄にはりきってそういうと、箸を手にとり戦闘開始 ぱくっ まず、一口 (あ、でも…味はいい………) そんなことを思ったのは、口に含んだわずかの間 次の瞬間には (か、辛っ…辛っ…っていうか、痛いー) 際限なく上昇する辛さに汗がふきでる が 「美味しいでしょ?」 目の前にはランファのきたいのまなざし タクトは、熱々の砂浜を裸足で歩くような気分になりながらも 「う、うん…美味しいよ」 答えた その答えにランファは満足そうに笑うと、自分の分をすすめる 「辛いものはいいわよ、なんか元気がみなぎってくるのよね」 コクコク しゃべると口がヒリヒリいたむので、うなづきだけをかえす 「ランファが元気だと、俺まで元気になるよ」 「そりゃそうよ、後ろ見てたって仕方ないもん」 手入れの行き届いた自慢の金髪をかきあげて、自身満々の答え 「そうだね」 なんとか食べ終わる 「どうぞ…」 見かねたガストが御冷のおかわりをくれた 「ありがと」 ごくごくごく 一杯目をいっきにのみほし 二杯目でまだヒリヒリする口をひやす と 「あ、そうだ。あんたにいいものあげるわ」 ランファは思い出したように自分の服をごそごそとあさる そして、軍服の上着のポケットから、巾着のようなものをとりだした 「はい、お守り」 「え…」 受け取る (お守り?に、しては…大きい、ような…) 「あたしの生写真入りよ!」 「あ、ありがとう」 「みんなにも渡してるの、みんなのことをあたしが護れるようにね」 「ランファが護ってくれるなら安心だ」 「まかせなさいよ」 ランファは頼もしく胸をひとつ、叩いた
「あー、食べた食べた」 食後の腹ごなしに、タクトは銀河展望公園に足をのばす すると、カフカフの木の下で一人の少女をみつけた 「ミルフィー」 「あ、タクトさん」 声をかけると、ミルフィーはふりむきお辞儀をひとつ タクトはそれに応えながら 「なにしてるんだい?」 「お祈りしてました。みんなが無事に帰ってこれるように」 「そっか」 タクトも習って、ミルフィーの隣でお祈りする 「カフカフのつぼみ、少し、大きくなりましたね」 「あ、ほんとだ」 1000年に一度だけ咲くという、カフカフの花 みんなでお花見をしたのはクーデターのとき だが、不思議なことにネフェーリアとの戦いのあと、その花は再びつぼみをつけた 「ミルフィーのおかげかな」 「だと、嬉しいです」 照れ笑い 「また、みんなでお花見できたらいいですね」 「そうだね。お花見だけじゃなくて、ピクニックもしたいけど」 「流星祭も、今度は白き月で、映像じゃない本物の空を見上げてしたいです」 「あぁ」 しばらく嬉しそうに今後の予定をたて ふぁ あくびをひとつ 「タクトさん?」 「あぁごめん。今日は朝、はやくてさ…おなかもいっぱいだし、天気もいいしね」 ばさっ 前触れもなく、ミルフィーはその場にすわりこむ 「?」 タクトは首をかしげつつ と 「タクトさん、膝枕してあげます」 「え?」 「はやく!」 ぽんぽん 自分の膝をたたきつつ、ミルフィー タクトはしばらく迷い、考え、そして そして… 「じゃぁ、ちょっとだけ」 誘惑に負けた 少しの風と、あったかい日差し、カフカフの木がつくる木陰 柔らかい膝枕 (うーん、しあわせだなぁ) そんなことを思っていると 「タクトさん、がんばりましょう」 「うん、そうだね。でも、ほら…エルシオールにはミルフィーっていう幸運の女神がいるし」 「え、でも…私の運は…」 いいかけた言葉を遮る そして、笑って 「俺ね、ミルフィーの笑顔をみてると、もっとがんばらなきゃ。って思うんだ」 「笑顔、ですか?」 「きっとみんなも同じだと思う。どんなときもミルフィーの笑顔をみれば、つられて笑顔になっちゃう」 ざわっ 風が優しく二人の間をぬけていく 「どんな強運も、ミルフィーの笑顔には敵わないよ」 「はいっ」
そんな風に時間をすごし 少し予定を送れて、夕方 スカイパレスの発着場に、全員の影
「みなさん…お気をつけて」 夕陽で橙にそまるスカイパレス ルシャーティはペコリと頭をさげた 「ルシャーティも、元気で」 タクトが笑ってかえす その後ろから 「お世話になりました、ルシャーティさん」 「またね、ルシャーティ」 「もどってきましたら、ゆっくりとEDENを案内してくださいね。ルシャーティさん」 「達者でな、ルシャーティ」 「また、お会いしましょう…ルシャーティさん」 「ルシャーティさん、本当にありがとうございました」 エンジェル隊が口々に、別れを惜しんだ 「こちらこそ、わたし…私、みなさんに出会えて本当によかった…どうか、ご無事でお帰りください…」 いつまでも名残を惜しんでいると
「タクト、それにお前ら、そろそろいくぞ!」
いいかげん、痺れを切らしたレスターがやってくる 「いつまでやってるんだ、もう充分挨拶はすませたんだろう?」 たしなめた 「うん、なんか名残惜しくてさ」 タクトが笑う みんなもつられて笑った それにふぅと、飽きれたため息をもらすと 「まったく。あとはお前らを待つだけなんだからな」 「わかってるよ」 そんないつものやりとりが繰り返されて 「あの…タクトさん、クールダラス副司令」 ルシャーティが二人を呼ぶ 「ん?」×2 同時に視線がルシャーティにいき 「どうか、お幸せに…あの子も、ヴァインも…それを望んでいるとおもいます」 「ルシャーティ…」 「すいません、あの子のしたことを忘れたわけではないんです…でも…」 沈黙 やぶったのは 「あのね、ルシャーティ…俺はヴァインのこと、許すよ」 タクトの優しい、声 「タクト…さん」 見上げれば、笑顔 酷く優しい タクトはもう一度くりかえした 「許すよ」 レスターは、その言葉をかみ締める かつて、エオニアを許せなかった自分にクロミエがいった ”人にとって一番難しい感情というのは”ゆるす”ということなんですよ。 眼をそむけるのでなく、憎むのでなく、悲しむのでなく…ただ許すこと” 許す… なんて、重くて、優しい、言葉 その罪に目をつぶらず 全て受け止めた上で それでも 許す、と… 「な、レスター」 「あぁ…」 尋ねられてうなづく 「ありがとう、ございます…」 「それに、ヴァインは俺たちに教えてくれた…ヴァル・ファスクにだって心はあるんだってことを」 「そうですよね」 ミルフィーがうなづく 「心があるってことは」 「いつか、わかりあえる…ということですわ」 ランファ、ミント… 「あぁ。今はまだ小さい希望だけどね」 フォルテの呟き 「ですが、未来へつながる希望です」 「はい!かならず」 ヴァニラとちとせもうなづく ルシャーティは涙をこらえながら 「あの子のしたことは、無駄ではなかったのですね…」 微笑む 「幸せな子、あの子は、本当に幸せでした」 そのとき
「あっ」
声をあげたのはミルフィーだった 「どしたの、ミルフィー…って」 「まぁ」 「おぉ」 「…」 「すごい…」 全員が同じ光景をみつめる 沈む夕日 絵の具が混ざるような空 永遠の時間のひとかけら 夕陽の温かい色が、世界に広がっていく 「綺麗だなぁ」 タクトが感嘆のため息とともに呟き
「はい、わたしの…宝物です」
ルシャーティは誇らしげに、そう、いった
| 2005年04月07日(木) |
そういえば、今年のコナン映画は…の日 |
今年のコナンはたぶん見に行きます 小五郎ちゃんが大活躍らしいので(うっとり) まぁ、そんなこんなで 今回もまっぷたつ ほんと、1話に詰め込みすぎだ;
第19話「とにかくオールキャストモーニングセット」
「なんか、ずいぶんと遠いところにきたんだな…」
スカイパレスのテラスから、ぼんやりと夜空をみあげつつタクトはつぶやいた 綺麗な星空… 手を伸ばしてみる つかめそうで、つかめない 「なにを馬鹿やってるんだ?」 そんなことをしていると、声 「レスター」 「まったく。明日は早いんだぞ?」 「わかってるよ」 仕方なく笑って、背伸びを、ひとつ 「艦隊総司令官が寝坊じゃ示しがつかん」 重い溜息 タクトはそれに笑いを返しながら 「なんか、どんどん肩書きばかりが増えていくなぁ」 一年間で昇進した階級は、片手だけでは足りなくなってしまった 「中身も伴ってくれればいいんだがな。タクト・マイヤーズ元帥閣下」 「うーん、実感湧かないんだけどなぁ」 「そもそも、お前…治ったとはいえ病み上がりなんだから、気をつけろ」 「…うん」 視線を宇宙へもどす 冷たい夜の大気は、星の輝きを割増してみせる効果があるんだろう 綺麗な夜空だ 「なぁ、レスター」 「ん?」 ばさっ 後ろからやってきたレスターが、上着をかけた 「人間ってさ、死ぬとどうなるんだろうな?」 「なんだ、いきなり…」 突然の話題に、あきれた声 「天国にいくのかな、それとも生まれ変わるのかな…ただ無に還るだけなんだろうか?」 「…タクト?」 名前を呼んでみるが返事は、なく しばらく考え 考え…そして 「お前は、どう、思うんだ?」 「え?…そうだな」 空を見上げる 透き通るような星空 「こんな空を見上げるとさ、泣きたくなることがあるだろう? 俺は…人は死んだら天国にいって、こっちをみていてくれるんだと思ってた だから、天気のいい日はむこうからこっちが良く見えて…それで泣きたくなるんじゃないかなって」 「ふぅん」 「でもさ…天国なんてけっきょくは、残された人間のわがままだよな… 人間は弱いからさ…きっと、本当に誰かを失うことには耐えられないんだよ みることはできなくても、そこにいてくれるって安心したいだけなのかもしれない」 「…」 どれだけ見上げようと、空は空… どこまでも いつまでも ふいに、レスターが呟く 「それで、いいんじゃないか?」 「…え?」 「残された人間ばかりが辛いとは限らないだろ…俺たちが死んだ奴らに傍にいてほしいと願うのと同じくらい 死んだ奴らだって俺たちの傍にいたいんじゃないか」 「…そっか…そう、だよな」 二人の頭上には、いつまでも優しく柔らかく 綺麗な夜空が広がっている 「綺麗だよな」 「まぁな」 「でも…こんな綺麗な空も見上げず、宇宙を壊す準備をしている奴もいるんだよな」 明日… 二度目のクロノ・クエイクをとめるため なにより、もう二度とこんな悲しい戦いをしないために ヴァル・ファスクとの最終決戦にたつ… 「クロノ・クエイク…か」 EDENとトランスバールを分けた、宇宙規模の大災害 おとぎ話だと思っていたソレが、いま、再び起ころうとしてる 「心配か?」 「…いや」 微かに首を横に降る 「俺たちには銀河最強の天使たちがいるからね。彼女たちならきっと…」 「タクト?」 言葉は続かなかった 不思議におもって、レスターがタクトを覗き見る 「…レスター、話があるんだ」 タクトが顔をあげた そして 「まだ…心の準備ができてないから、今は言えないけれど」 「なんの話かはわからんが、お前がそれでいいのなら俺はかまわん」 「…うん、ありがとう」 安堵したように、笑みをこぼすと タクトはレスターの上着を翻しながら、振り返った 「さ、寝るか!」 「あぁ」
いつもより心持ち、早めにおこされたタクトは散歩がてら艦内を歩いていた 「ふぁ…まだ眠いな…」 すると 「あれ?ちとせ」 「タクトさん。おはようございます」 「おはよう。ちとせ、早いね」 タクトはそういいながら 「あれ?足…どうしたの?」 その足首に巻かれていた包帯に気づく と 「その、先ほどのトレーニングで捻挫してしまいまして」 真っ赤になりながら 「軽い捻挫ですので、あとでヴァニラ先輩に見ていただこうと思って」 「そうだね、それがいいね」 しどろもどろで説明するちとせに、ひとつうなづいてみせる ちとせは最初、照れたように笑っていたが 次第に、表情を暗くすると 「しかし、決戦前のこの大事なときに怪我をしてしまうなんて…気が緩んでいる証拠ですね…」 落ち込む (うーん…) タクトはしばらく考え、考え、そして 「そうだ、ちとせ。なんか俺にしてほしいことはないかい?」 「え?」 「シンキングタイムは10秒!9、8、7、6…」 「え?え?えぇー?」 「5,4,3…」 「あ、あの…でしたら!」 慌てふためきつつ ちとせは 「リ、リボンっ、リボンを結びなおしていただきたいのですがっ」 「リボン?」 「はい、気合をいれるために」 「うん、いーよ」 タクトはにっこり笑顔で答えると、ちとせとロッカールームへ移動した しゅるっ 微かな音をたてて、リボンが解かれる ちとせのチャームポイントでもある、赤いリボン それを器用に、結いなおす 「ありがとうございます」 「いやいや…」 タクトは答えながら 「ねぇ、ちとせ」 「はい?」 「怪我をする理由って、一つじゃないんだよ」 「え?」 「気が緩むと確かに怪我はおおくなるけど、実は、緊張しすぎていても怪我は多くなるんだ」 きゅっ よし、綺麗に結えた 「リラックス、リラックス」 「ですが…私は………」 「あせっちゃ駄目だよ、ちとせ」 それは、いつかと同じ言葉 「みんなになくて、ちとせにないもの…それは向上心だ。 みんなに早く追いつきたいと願う、君の気持ち…それが、今日のちとせの強さになってる だけど、焦っちゃいけない」 「…」 「急いで積み上げたものは崩れやすい、ちとせは、ちとせのペースで確実に進んでいけばいいと思うよ」 「…私のペース」 噛み締めるように、ちとせは呟いた
ちとせの足をみてもらおうとおもって、艦内を探索 目的の人物は医務室にいた 「ヴァニラ」 「タクトさん…おはようございます」 「おはよう。ねぇ、ヴァニラお願いがあるんだけど…」 「はい、なんでしょう?」 「ちとせが足を捻挫したんだ、あとでみてやってもらえるかな」 「では、ここの掃除が終わりましたら…」 そういわれてはじめて タクトはヴァニラが掃除姿であることにきづいた 「うん、ありがとう」 お礼をいいながら 「ヴァニラ、俺も手伝おうか?」 「いえ…だいじょうぶ、です」 ヴァニラは丁寧に断ると、掃除を再開する タクトはしばらくその様子をみていたが ガタガタッ 彼女が椅子を持ち出したところで もう一度 「ヴァニラ、そこは危なそうだから俺がやるよ」 「…だいじょうぶ、です」 がたっ 椅子を棚の下につけ、ヴァニラは上へ だが、ぎりぎりのせいか、上手くふけないでいるようで 「あっ」 ガタッ 椅子がゆれた 「あぶないっ」 あわててかけよる ガタタ… 椅子は倒れることなく、バランスを保った そして 「やっぱりかわるよ」 「…お願いします」 今度は素直にうなづいたヴァニラに微笑をかえして 掃除再開 棚の上に手を伸ばして拭き作業 と… 「すみません、タクトさん」 ヴァニラが申し訳なさそうに、つぶやいた 「え?だいじょうぶ、だいじょうぶ。俺が好きでやってることだから」 「ですが…」 「きにしない、きにしない」 歌うように答える、と 「…はい」 呟くような、返事 (うーん…) タクトは、すこし考え 「あのさ、ヴァニラ。お医者さんで一番大切なものってなにかしってる?」 「…え?」 突然かわった話題に、素直に疑問符 ヴァニラが興味を示したのを確認すると、続ける 「それはね、人を癒すこと」 「…」 「といっても、怪我をなおすとか、病気を治療するとかじゃないよ」 「ちがうのですか?」 「うん」 タクトはうなづき 「前にもいったと思うけど…ヴァニラはさ、誰かの傷を癒してくれたとき、その人が治ったとき、 まるで自分が救われたように笑ってくれる」 「…」 「俺はそんなヴァニラの笑顔をみていると、自分が救われた気がするんだ」 きゅっ 拭き終わる ガタガタ 椅子から降りた ヴァニラをみる にっこりと、笑いかけて 「病は気から、っていうだろ?どんなに軽い怪我や病気でも、それを診てくれる人が深刻な顔をしていたら不安になってくる。 逆に、どんなに重い怪我や病気でも、診てくれる人が笑顔だと心が軽くなる」 「…」 「ほら、ケーラ先生はいつも笑顔だろ?」 「はい」 ヴァニラはこっくりとうなづいた その表情が微かにゆるむ 「うん。それと、ヴァニラはもう少しみんなに手伝ってもらってもいいとおもうよ」 「…ですが」 「嬉しいことは2倍、悲しいことは半分、どんなことでも、みんなとわかちあう」 タクトは祈るように手を組むと 笑いをこらえながら、神妙に… 「神の教えです」 しばらくの沈黙 (は、はずした?) たらりとタクトの背中を冷や汗が伝ったとき クスクス 小さく,ヴァニラが、笑う そして 「はい。タクトさん」 良い笑顔と、良い返事 「あの、タクトさん、あとで…宇宙クジラを洗うのですが、お手伝いしてもらってもよろしいですか?」 柔らかい声でたずねられ タクトは 「うん、喜んで」 負けないくらい,笑顔で、かえした
ティーラウンジの前を通ろうとしたとき、声をかけられる 「おー、タクトじゃないか」 「フォルテ?」 誘われるまま、中に入った 「…珍しいね、フォルテが一人で射撃場以外にいるなんて」 正直に感想 と あはははは 豪快に笑って 「まぁ、たまにはいいじゃないか」 「ところで、なにを食べてるんだい?」 のぞきこむ そこには 「…アイス?」 それもかわいいピンク色をしたストロベリー味 「ときどき食べたくなるんだよねぇ」 フォルテはそういいながら、ちびちびと ちびちび … 「俺も食べよーっと」 彼女が凄く美味しそうに食べるので、タクトもカウンターに向かった しばらくして、焦げ茶色のチョコレートアイスをうけとり戻る と 「お、チョコかい?」 「あぁ」 ちびちび 二人でしばらく、アイスを食べ … 「ちょいとタクト」 「ん?」 「あたしはさ、イチゴも好きだけど、チョコも嫌いじゃないよ」 「ふぅん」 「…」 「…」 「鈍い男だねぇ、あんたのチョコアイスをあたしに少しおくれって意味さ!」 逆切れされる 仕方なしにタクトはフォルテにチョコアイスをさしだす 「はいよ、ありがとう」 ご満悦顔でフォルテはそれを受け取った それを幸せそうに食べるフォルテを見ながら 「でもさ、フォルテとアイスって意外かも」 「そうかい?」 「うん」 「そーだねぇ、あえていうなら、この一気に食べれないところがお気に入りだけどねぇ」 ちびちび ちび… 「こうやって少しずつ食べてると、いろいろと頭の中で整理もできるしね」 「たとえば?」 「たとえば…これからの戦いのこととか、かねぇ」 そういうフォルテの表情は少し寂しそうだ ちびちび 「っと、いけないいけない。あたしが弱気じゃ駄目だね」 「まぁ、戦闘じゃない時くらいはそういうのもいいと思うけどね」 「お、いうじゃないか。タクト」 フォルテが意外そうな顔 「そりゃー戦闘中は、俺よりもフォルテのほうが頼りになるの知ってるし」 「やれやれ、司令官殿がそれでどーするんだい?ほんと、お気楽だねぇ」 「いやいや、君たちには負けるから…。それに、エンジェル隊にはフォルテ・シュトーレンってリーダーもいるし」 「買いかぶられたもんだねぇ、あたしも」 「だって俺、フォルテほど彼女たちのことを思ってる人間を他にしらないからさ」 「…あぁ」 「よろしくお願いします!姉御」 「フォルテ様、だろぉ?」 「じゃぁ、フォルテさま」 二人は顔を見合わせる そして ぷっ あははははは 同時に大笑い それは、ティーラウンジを優しい空気で満たして そして 「って、あー、フォルテ!俺のチョコアイス…」 「っと、いけない。全部食べちまったね」 すっかりなくなったアイスを発見して、タクトは泣いた(しくしく) フォルテはやれやれと笑いながら 「仕方ないねぇ、ほら、あたしのアイスを食べな」 そういって、少しばかりとけかけたストロベリーアイスをさしだした
| 2005年04月06日(水) |
代休も終わって…の日 |
今日からお仕事がんばります
第18話「干物兄妹帰還」
沈む夕日 絵の具が混ざるような空 永遠の時間のひとかけら つないだ小さな手と手 伸びる影はどこまでもどこまでも一緒で
「………」 ヴァインは、ゆっくりとルシャーティの髪をすく 優しく、優しく、愛しく、優しく それは酷く、大切なものを扱う手で どれくらいそうしていただろう ヴァインはゆっくりと口を開いた 「…ゲルン様からお前を処分するよう命令が下った」 呟き 「EDENは解放され、我らヴァル・ファスクも随分と痛手をおった かくなる上は、クロノ・クエイク爆弾を使用する… だが…ライブラリに奴らがアクセスすれば、それすらも攻略してしまう可能性がある」 ありえないことだ そう、おもう だが、確信はもてない (心の力…) 認めたくは無いが、現にまだ彼らは生き残っていて… 「だが、お前を処分すればその可能性すら、消えるのだ」 …さら ヴァインはルシャーティの髪から、手をはなした そのまま、握り締める そして …そして
キイィィ…ィィイン サークレットが光を増し
ビービービーッ スカイパレスに警報が鳴り響く 「なんだ?」 タクトが首をかしげたところに 通信 『タクト、すぐにエルシオールへ戻れ』 「レスター?どうしたんだよ」 『スカイパレス前方にクロノドライブしてきた機体がある』 「なんだって?」 とりあえず駆け出しながら、タクトは状況を確認する 「ヴァル・ファスクか?」 『いや、あれは…7番機だ!』 クロノ通信のむこうで、レスターの驚いた声 (7番機ということは…) 思い出すのは、金髪の美しい姉弟
「…ヴァイン?」
その輝きが消えたとき、ルシャーティは不思議そうに一言 ヴァインはそれを確認すると 「ねぇ、姉さん…」 しゃべりかけた ルシャーティはいつもとかわらない微笑みで 「なぁに?」 「エルシオールでの日々は、楽しかった?」 「どうしたの?急に…」 「姉さん…答えて」 ルシャーティは少し驚いたが 「えぇ。とても楽しかったわ…貴方がいて私がいて…タクトさんとクールダラス副司令がいて、ミルフィーさんのお料理を頂いて… ランファさんに占いをしてもらったり、ミントさんとお菓子を食べたり…フォルテさんの射撃を拝見して… ヴァニラさんと一緒にクジラルームの動物たちと遊んで、ちとせさんにあやとりも見せてもらったわね」 ルシャーティは微笑む ヴァインがそんなルシャーティをみつめていると 「ヴァインは?」 今度は逆に尋ねられる ヴァインはしばらく考え…
エルシオール・ブリッジ タクトはエンジェル隊との通信を開いた 「みんな、準備はいいか?」 『ラッキースター、おっけーです』 『カンフーファイター、いつでもいいわよ』 『トリックマスター、準備完了ですわ』 『ハッピートリガー、出撃準備完了』 『ハーベスタ-、システムオールグリーン』 『シャープシューター、だいじょうぶです』 6人の返事と表情を確認し 「よし、それじゃぁ…」 出撃の合図をとろうとした、そのとき 「タクト、まて…おかしい」 「え?」 レーダーをみていたレスターから声がかかった もう一度確認をとると 「7番機だけだ…それも、かなりの損傷をうけているぞ」 「えぇ?!」 「モニターに移します」 パトリックの声がして、メインモニターに艦影が映し出される それはたしかに、7番目の紋章機 「なんだって、こんな…」 しかも、それは動いているのが不思議なくらいボロボロであった 「罠か?」 「いや、違うみたいだ…エンジェル隊、悪いんだけど回収してやってくれないか」 タクトの言葉に 『了解』×6 天使たちから返事 タクトはしばらく考えてから 「レスター、医療班に連絡をとってくれ」 「あ、あぁ…」 「機体があれだとすると、中の人間ももしかしたら…」 「わかった」 うなづいて、レスターはアルモに指示をだす タクトはモニターに映る7番機をみつめつつ 「…中にいるのは、ヴァインなのか、ルシャーティなのか…それとも」 全員が注目するなか、紋章機に牽引され、7番機はエルシオールへ回収された
ヴァインはしばらく考え… そして、その答えしかないのを確認すると ゆっくりとルシャーティの問いに答える
「…僕も楽しかったよ。はちゃめちゃで刺激的で、お祭りのような日々だった」
返す言葉は、いつか、白き月でかわしたのとおなじもの たぶん…あのとき 答えはすでに、自分の中で出ていたのだ
お祭りのような騒がしくて楽しい日常 地上(ここ)から、銀河中をまきこんで はちゃめちゃで刺激的で でも、どこか優しさと暖かさに満ちた そんな毎日がずっと続くことを、願っている
「あんな楽しい毎日がずっと続くといいわね」 「そうだね、姉さん…続くよ、これからはずっと」 ルシャーティの言葉に、ヴァインが笑顔でかえす だが 「…ヴァイン?どうしたの?」 「なんでもないよ」 「でも…」 ルシャーティの手がのびる それは優しく、ヴァインの頬をなで 「帰ろう、姉さん、エルシオールへ」 その手をとって、ヴァインは一言 「…ここは、エルシオールじゃないの?」 ルシャーティは確認するようにあたりを見渡す 「だいじょうぶ、僕が、かならず連れて帰ってあげるから」 「…ヴァインといっしょなら大丈夫ね」 方向音痴の自分を、いつも手をひいて連れて歩いてくれた弟 「帰してあげるよ…地上から銀河中をまきこんで、はちゃめちゃで刺激的で…でも、どこか優しさと暖かさに満ちた… そんな毎日がこれからはずっと続く場所へ…」 「…ヴァイン?どうして、そんな悲しそうな顔をするの」 ルシャーティが心配そうにたずねる ヴァインはそれには答えずに 「もう、僕の望む理想の姉を演じる必要もない…あの日、僕が出逢った少女に君をかえすよ」 「ヴァイン…」
キイィィ…ィィイン サークレットが再び光る 残されたのは静寂
「帰ろう、エルシオールへ…あの楽しい毎日に…僕は、気づくのが遅すぎた…その日々に僕はいられないけれど 姉さんだけは、帰してあげる…たとえ、地上より永遠に僕がいなくなることになろうとも」
7番機のハッチが開く 中を覗き込んだタクトが叫んだ 「…ヴァイン?!ルシャーティっ!」 「救護班、担架だ!」 コックピットからひきづりだされる二人の影 ヴァインは血だらけで、ルシャーティは一見、眠っているようにみえる 「いったいなにが…」 「ヴァインさんの治療をします」 担架に寝かされたヴァインにヴァニラが近づく 「頼む、ヴァニラ」 「タクト、あたしたちはルシャーティに付き添うよ」 ルシャーティは外見に怪我はないが、とりあえず医務室へ運ばれることになった フォルテとミルフィー、そしてちとせが付き添うナノマシンが輝いた と 「…ぅ」 「ヴァイン!」 「ここは…?」 目を覚ましたヴァインは、あたりを見回し そして、タクトとエンジェル隊をみつけると ほっと、安堵の表情を浮かべた 「エルシオール、か…」 「ヴァイン、いったいなにがあったんだ?」 「…うるさいな、大声ださないでくれ」 うっとうしそうにヴァインが呟くと ヴァニラのほうをむいて 「治療はいらない」 「ですが…」 「自分の体だ、もう駄目だってことくらいは、わかる…」 弱弱しく微笑む 「ヴァイン…」 「姉さんは…ルシャーティは…?」 尋ねる言葉に 「ルシャーティは無事だよ、怪我一つ、ないって」 答えたのは、もどってきたフォルテだった 「そうか…よかった…」 「ヴァインさん…」 「あんた…」 満足そうに微笑むヴァインに、全員が言葉を無くす 沈黙を破ったのは、ヴァインから
「…ヴァル・ファスクに一人の男がいた」
呟き ヴァインは懐かしむような視線を誰にむけるともなくむけ続ける 「その男は、EDENのスカイパレスに降りたとき一人の少女と出逢った 管理者の一族は、ヴァル・ファスクにライブラリが利用されるのを恐れて全員が自殺していたが まだ幼子だったその少女を殺すのは忍びなかったんだろう…その女の子だけが残されていた 男は少女を引き取った…もちろんただ利用するためだけに………」 ふぅ そこまでいってヴァインは大きく深呼吸を 息苦しいのだろう だが、言葉をとめることはしないで 「最初は、ほんとうに、利用するためだけだった…ヴァル・ファスクと人間は時間の流れが違う……… 現に少女はあっというまに男と同じ年頃になり、そしてついには男を追い越してしまった… 男は少女に催眠を施して、彼女を姉と呼び、弟を装った…」 ヴァインは笑う 自嘲気味に 「姉弟は調査のために一つの艦にのった、そこでは馬鹿がつくほどお人よしな人間ばかりが集まっていて はちゃめちゃで刺激的で、お祭りのような毎日があって…楽しかったよ…気づくのが遅すぎたけれど あれが楽しいということなんだと、男はヴァル・ファスクに戻ってから理解した…感情を持たない完璧な存在ヴァル・ファスク… だが、その男は心なんていう不完全なもののためにヴァル・ファスクではなくなっていた 少女を処分しろと命令されて…逃げ出し、かつて自分が裏切った艦にみっともなく助けられて… …馬鹿だ。本当に愚かな男だよ…そんな1人のヴァル・ファスクの男がいたんだ」 ごほっごほっ そこまでいって、ヴァインは咳き込む 血がとんだ 「だけど、ヴァイン…そのヴァル・ファスクは今、ひどく満足そうな顔をしているよ」 タクトが話し掛ける ヴァインはその声に耳を傾け 「…そうか、なら…その男は幸せだったんだろう」 満足そうに笑った 「ヴァル・ファスクはクロノ・クエイク爆弾を使うつもりだ…君たちに勝ち目はない… たとえ、ライブラリにあるたった一つの攻略法を見つけようとも、実行することはできないだろう 僕は先に逝く…最後の最期、その瞬間まであがくだけあがけばいいさ」 「…ヴァイン」 「さぁ、もう放っておいてくれ…それと、姉さんに僕のことは………」
「ヴァイン!」
声 全員が振り返る 「ルシャーティ…」 金の髪をなびかせた一人の少女 彼女はふらつくあしどりで しかし、まっすぐにヴァインのところへ来る 「どうして…」 ヴァインは信じられないものをみる目で彼女をみた 「もう、洗脳はといたはずだ…君はもう、僕の姉じゃない」 「…えぇ、すべて、おもいだしました」 ルシャーティはゆっくりと言葉にする その言葉に、ヴァインは 「…じゃぁ、どうして?…僕の最期を見届けにきたのか?」 「ヴァイン…」 彼は諦めたように笑う そして 「僕はもう動けない…罵るなり、復讐するなり、好きにすればいいさ」 目を閉じた
夕暮れのスカイパレス そこに取り残されていた、幼い少女 出来ることなら、彼女には知られずに逝きたかったが …これは、罰だ そんなことを、思う 神様はこんなことばかりに平等なんだろう 罪には罰を だが、それでいいと思った むしろ、これでいいと思う どうせ罰が与えられるというのなら 彼女の手で直接あたえられるのも…
だから、ヴァインは静かにルシャーティを待つ ルシャーティは 「たしかに…記憶が戻ったいま、私には貴方を恨む理由がある」 「ルシャーティ…ヴァインは…」 「でも…恨もうと思っても、思い出すのは…あの日、スカイパレスで私を拾ってくれた男の人の大きな手… いつだってそばにいてくれて、優しく私を見守ってくれたその人の瞳… いつのまにかその人を追い抜いてしまった私を見つめる、その人の寂しそうな表情…」 ぽたっ 雫がひとつ こぼれて、ヴァインの頬をぬらした 「…」 「その人は…忙しい中,機会をみつけては私の手をひいてスカイパレスを連れて行ってくれた… 暖かいオレンジと優しい夜の色がゆっくりと混ざるあの時間…私は、それが大好きだった」 ぽたぽた 涙が落ちる 「うらんだり、憎んだりできたら楽なのかもしれない…でも、思い出すとそれは優しい記憶ばかりで… わたし…私に貴方を恨むことはできないの…ヴァイン…だって、貴方は私の弟なんですもの」 沈む夕日 絵の具が混ざるような空 永遠の時間のひとかけら つないだ小さな手と手 伸びる影はどこまでもどこまでも一緒… ずっと、ずっと いつまでも…
「…馬鹿だな」 小さな呟き 「馬鹿だ、君たちは本当に…僕がしたことを忘れたわけじゃないだろうに…それでも…こんな僕のために泣いてくれる… 本当に………馬鹿だ」 全員の顔を見渡す タクトも、ミルフィーも、ランファも、ミントも、フォルテも、ヴァニラも、ちとせも… ルシャーティだけじゃなく、その場にいる全員が泣いていた 「ヴァル・ファスクは…涙なんか流さないよ…ここにいるのは、ルシャーティの弟のヴァインだ」 「詭弁だな、タクト・マイヤーズ」 ヴァインは呆れたように笑う その目にも、涙が溢れていた そして 「あぁ、でも…そうか、涙っていうのは、こんなにもあったかいものなんだな… 僕たちは…ヴァル・ファスクは、きっとこの温かさに負けるんだろう」 「ヴァイン…」 ヴァインはルシャーティを見た 優しいまなざしで 「大好きだよ姉さん…どうか、幸せになってほしい…僕の大好きな、姉さんだから…」 「私も、わたしも…あなたが大好きよ、ヴァイン…貴方は私の大好きな、弟だもの」 姉弟は微笑みあう 今までで、一番、幸せな微笑みで
「あったかい…心があるっていうのはいいものだな…こんなに、あったかい気持ちのまま………」
「ヴァイン?」 答えのかわりに、そこには、笑顔で眠る彼がいて 静寂
そして…
| 2005年04月05日(火) |
GAが好き好き好き、GAが好き、好き…の日 |
EL編はやりたいことばっかり詰め込んであります そんなわけで、17話後半。どうぞ。
「あれ?エンジェル隊のみんなは?」 EDEN解放祝賀パーティー会場 タクトはあたりをキョロキョロ見回して、目的の6人がいないのを確認すると 「少し遅れるそうだ、女はなにかと準備に手間取るからな…おい、タクト」 名前をよび、レスターはタクトの前にたつと 「歪んでるぞ、ったく、せめて身だしなみくらいは整えろ」 「あはははは、ごめーん…でも、ほら俺には世話女房がいてくれるし」 「…誰が世話女房だ」 (あれ?) ボソリと呟くように返されたツッコミに少々拍子抜け (うーん、今の確実に殴られると思ったんだけどな、一年でレスターも性格かわったのかなぁ) そんなことを思うが、口にはださない 「ほら、これでいい」 「ありがとう、レスター」 「で、どうするんだ?」 「そうだな…もう挨拶も終わったし」 それは、歴史に残る言葉だった ”伝説の英雄”、”救世主様”とEDENの民から羨望のまなざしを一身に集めたタクトは 『EDEN解放おめでとうございます』 という一言を、いつもの笑顔で 3秒かからないスピーチは、一瞬の静寂と、次に大爆笑をまきおこしたのだった 「エンジェル隊のみんなにあってから…」
言葉は続かなかった
ドンッ
爆音が響く ビービービーッ そして、警報 「な、なんだ?なんだ???」 「どうしたっ?」 いきなりの事態にタクトはおろおろ レスターはその隣で、冷静に状況を確認する 「攻撃が…!!」 誰かが叫ぶ 「なんだって?!」 「ヴァル・ファスクか…っ」 宇宙をみあげた 漆黒の夜空に、漆黒の軍艦がみえる 「タクトっ、出撃だ!エルシオールへいくぞ」 「あ、あぁ!」 バタバタバタ あわてて二人はその場から駆け出した
「マイヤーズ司令、クールダラス副司令!」 駆け込んできた二人を、アルモとココが出迎える 「なにがあった?」 「ヴァル・ファスクの艦隊が前方にクロノドライブを…」 「通信は?」 「送っていますが、応答なしです」 「第一種戦闘配備をしく、全乗組員に伝達」 「は、はいっ」 テキパキと繰り出される指示に、あわただしく全員が動き出す 「前方、謎の艦隊から攻撃、きますっ」 「ピンポイントに集中して、シールド展開っ!」 「は、はい…っ」 全員が次にくるであろう衝撃に身構える
ドンッ
大きな爆音が艦内に響き渡った が、しかし 「あ、あれ?」 爆音は、した しかし、予想された衝撃はいつまでたってもやってこない 不信に思って、スクリーンを見る そのとき
「光が、くる」
タクトが呆然と、宇宙を見上げて呟いた つられてレスターも視線を送る 謎の真っ黒な戦軍の中 「未確認大型機接近!モニターうつします!!」 オペレーターの声も聞こえない タクトは逸らさないまっすぐな瞳でそれを見つめ続けている 映されたのは、紋章 この広い宇宙で、わずか5つの機体だけがつけることを許されたエンブレム (あれって…) タクトがそんなことを思ったそのとき、通信がひとつ、舞い込んだ
『すいません、ちょっとお聞きしてよろしいですか?』
可愛らしい女の子の声 「え?はい」 タクトは思わず返事をかえす (あれ?この声って…たしか…それに、あれは紋章機…ということは…どういうことだ?) 急な展開に頭がついていかない しかし、そんなタクトにはおかまいなしに彼女はマイペースに喋り続ける 『そちらはトランスバール皇国軍儀礼艦エルシオールで間違いありませんか?』 拍子抜けするタクト その隣でレスターが 「あぁ、間違いないが貴艦は?」 「って、レスター?」 真面目な表情で、その通信に応答する副官に視線をむける パッ そのとき、メインスクリーンに映像が送られてきた ピンクの髪に白い花のカチェーシャがよく似合う女の子が一人 にこにこと最高の笑顔 (彼女は確か…) 教えてもらった名前を思い出そうとするのと、彼女の言葉が重なった 『それじゃぁ、タクト・マイヤーズ司令官って方はいらっしゃいますか?』 わけがわからない 聞いた話なら、彼女は自分のことを知っているはずだ と… トンッ レスターが、背中を押した よくよく、ブリッジ中を見回すと、ブリッジクルーも全員がこちらに注目している (えーい、考えても仕方ない!) 毒を食わらば皿まで そんな勢いで、タクトは返事をかえした 「マイヤーズは…俺だけど…きみは」 誰だ…というタクトの言葉よりもはやく
パンパンパパンッ
鳴り響くのはクラッカーの、音 そして
『タクトさん、22歳のお誕生日おめでとうございます!』
パパパパパッ 続けざま、モニターに5つの映像が増えた 6っつのウィンドウには、個性豊かな6人の天使たち 『おめでとう、タクト』 『おめでとうございます。タクトさん』 『タクト、おめでとさん』 『タクトさん、お誕生日、おめでとうございます』 『お誕生日おめでとうございます!タクトさん』 彼女たちの言葉を中心に、ブリッジ中のクルーからもおめでとうコール 「おめでとうございます、マイヤーズ司令!」 「おめでとうございますっ」 「おめでとー」 「おめでとう!」 降り注ぐ祝いの言葉 「え?え?えぇ…???」 事態がいまだに飲み込めず、タクトはおもわず隣にいるレスターを、みた 「これって…」 だが、疑問への答えは天使たちから 『エルシオール恒例、誕生日のサプライズ・パーティです』 「誕生日…え、きょ、今日って」 『ちょっとあんた、いくら記憶がないからって自分の誕生日まで忘れたの?』 『今日は3月26日ですわ』 「うそ、え…て、敵は…」 『すみません、あれは立体フォログラフのダミーです』 『さてと、じゃぁあたしらも会場へ移動するかねぇ』 『はーい、タクトさん、ちょっと待っててくださいね』
映像が一度、途切れた
「び、びっくり…したぁ」 へたへたへた〜 彼女たちとの通信がとぎれたことで、一気に緊張がぬけ、タクトは司令席に座り込む その、瞬間…
「っ」
それは、今朝の、夢
夢を見た… 懐かしい夢 青年は優しい人だった その優しさ故に非情であった そして愚かでもあった 『タクト…』 名前を呼ぶ 『私の記憶を君に贈ろう』 「あなたは…」 彼の人は、たしかに、そういったのだ
『君の22歳の誕生日プレゼントとして』
「エオニアさま…」
『誕生日おめでとう、タクト』 タクトが名前を呼ぶのと同時に、エオニアは優しく微笑む 『愛しているよ…』 呟きとともに、軽いキスが落ち 夢は掻き消え、眠りの終りを告げた
「いま、のは…」 気がつくと、そこは、先ほどとなにもかわらないブリッジだった いや いつのまにか、エルシオール中のクルーたちでごったがえしている 「夢?でも…」 そこに一番はじめに駆け込んできたのは
「タクトさーん、お誕生日おめでとうございます!」 「ミルフィー、ありがとう!」 「私、超特大のマロンケーキ焼いたんですよ」 「やったね、ミルフィーのケーキは美味しいからな」 タクトは素直に喜びつつ 「あ、でも前みたいにロストテクノロジーの栗とかじゃないだろうね?」 「だいじょうぶです。ガストさんに手伝ってもらって宇宙栗をとってきてもらったんです」 自信満々にミルフィーは言い はたっと 「…あれ?」 そのことに気づきかけたのだが 「ハッピーバースデー、タクト!」 「ありがとう!ランファ」 次にやってきたランファによってかきけされる 「今回の会場の飾りつけもランファが担当かい?」 「わかってるじゃない!そのとおりよ」 タクトは、ブリッジの後ろにでかでかとかざられた ”はっぴーばーすでー”の看板をみつつ 「特にあの立て看板なんて力作だね!」 「そーよ、あれが一番苦労したんだから」 胸をはってランファは言い はたっと 「…って」 そのことに気づきかけたのだが 「タクトさん、おめでとうございます」 「嬉しいよミント、ありがとう」 ミントが現われて流れがかわった 「これは私からですわ」 彼女は綺麗にラッピングされたシャンパンを一本 「ミントが選んだんなら期待しちゃうな」 「えぇ、もちろんですわ」 ピクピク ミントの耳が嬉しそうに動く そのとき はたっと 「…タクトさん?もしかして」 そのことに気づきかけたのだが 「よっおめでとう司令官殿!」 「ありがとう!フォルテ」 豪快にタクトの肩をバンバンと叩きつつフォルテ 「フォルテはもちろん、余興担当なんだろ?」 「あぁそうさ。楽しみにしておいで」 「なんだろうなぁ、楽しみだなぁ」 ウキウキと 「お楽しみは一番最後ってきまってるだろ…」 フォルテはお預けをするような口ぶりでいいかけ はたっと 「タクト?あんた…」 そのことに気づきかけたのだが 「お誕生日おめでとうございます、タクトさん」 「とりあえず、おめでとうございます」 「ヴァニラ、ノーマッド!ありがとう」 ピンクの物体をかかえたヴァニラ 「これはエンジェル隊みんなでお金をだしあって買ったお誕生日プレゼントです」 「ヴァニラさんに誕生日プレゼントを選んでもらえるなんて、あなた幸せものですよ」 「ありがとうヴァニラ。ありがとう皆」 ヴァニラから差し出された包みを受け取る 「なんだろう?ヴァニラ、今回も青猫超光速通販で買ったのかい?」 「はい」 がさがさがさ タクトは包みを丁寧にあける でてきたのは 「ヒゲ盤だ」 「たまにはチェス以外のホードゲームもいいかと思いまして」 「ありがとう、嬉しいよヴァニラ。今度一局相手してほしいな」 「はい、喜んで」 ヴァニラがにっこりと笑顔でうなづいた そのとき、ノーマッドが はたっと 「…?あれ。タクトさん、あなた、もしかして」 そのことに気づきかけたのだが 「22歳のお誕生日、おめでとうございます、タクトさん」 緊張した面持ちでちとせがはいってくる 「ありがとう、嬉しいよ、ちとせ」 「サプライズの内容、お気に召していただけましたか?」 「ということは、これはちとせが考えてくれたの?」 「はい!みなさんからお話をお聞きして1年前の再現をしてみました」 「そっかぁ、ありがとう。もう凄くびっくりしたよ」 「私の誕生日のときのお返しの意味もこめて、派手にやらせていただきました」 「ちとせは気持ちいいくらいにひっかかってくれたもんな。浮浪宇宙人」 タクトは喉を叩きながらしゃべり、宇宙人の声音 「お恥ずかしいかぎりです」 ちとせは真っ赤になってうつむく そして はたっと 「…え?」 そのことに気づきかけたのだが
エンジェル隊全員がタクトをみる にこにこ その視線にタクトは笑顔で返す 天使たちが口を開きかけた しかし、それよりも、一瞬だけ、早く
「タクトッ!お前…まさか記憶が………!!」
ずっと傍でその様子をみていた人物が叫んだ タクトは、士官学校時代からの親友で 今は副官として、それ以上に恋人としてタクトの側にいる青年のほうをむくと 「あぁ、全部思い出したよ…レスター」 その名前を、呼んだ
刹那 ブリッジが静まり返る そのあとのことは、あまりにも大騒ぎすぎてよく覚えていない みんなでミルフィーのケーキをたべて ランファが歌いだし ミントのくれたシャンパンで乾杯を フォルテが悪乗りして タクトとヴァニラのヒゲ大局はかなりの名勝負となり ちとせはせっせと進行役を努める
うきゅうきゅうきゅー 食堂のおばちゃんが気合をいれて作ってくれた料理を食べていると飛び込んできたのは 「子宇宙クジラ、おまえもお祝いしてくれるのかい?」 ありがとう、とタクトは小さな生き物を抱きしめる うきゅー 子宇宙クジラも大満足そうだ そこに 「タクトさん、お誕生日おめでとうございます」 クロミエがあらわれた 「ありがとう、クロミエ」 「記憶…いただけてよかったですね」 くすくす クロミエは小さく笑う 「ク、クロミエ…知って?」 「僕は宇宙クジラのパートナーですから」 油断できない タクトがそんなことを思うと 「タクトさん、お誕生日おめでとうございます」 「おめでとう!タクト」 「おめでとうございます、タクトさん」 「おめでとうございます、マイヤーズ司令」 パパンッ 新しくクラッカーの音 「ウォルコット中佐、ココモ、マリブ、メアリー少佐まで」 すこし遅れてやってきたのは4人 「すっげぇな、食っても食ってもくいきれねぇぜ」 ココモは皿にいっぱいのデザートをのせながらまだ、あっちこっちにめがいくようだ マリブがそんなココモをやれやれとみながら 「タクトさん、これ、ぼくたちからです」 プレゼントの包みをひとつ 「ありがとう、ふたりとも」 「タクトさんももう22歳ですか…いやはや月日のたつのははやいものですなぁ」 ウォルコットはしみじみと遠くをみつめるまなざしで 「ウォルコット中佐のおかげです。本当に、ありがとうございます」 タクトは涙がにじむのを感じながら、頭をひとつさげた 「ココモ、あとでちゃんと歯磨きするのよ」 「わーってるって、もうメアリー少佐はこんなときまでうるさいんだから」
「マイヤーズ司令〜おめでとうございます〜」 「あ、コンビニの…」 間の抜けた声で現われるのは、コンビニ店員 彼は 「いま、当宇宙コンビニでは”マイヤーズ司令お誕生日おめでとうキャンペーン”をやっていますので〜 ぜひご利用ください〜」 「は、はぁ…あ、ありがとう」 そこに 「あーもう、まだまだ仕事は山積みっすよ!」 手にビールケースを抱えた、ジョナサンが現われる 「では、これで〜」 二人がいくのを見計らったように 「ちょっと司令さん!」 「食堂のおばちゃん」 「ほら、まだまだ料理はいっぱいあるよ。どんどん食べとくれ」 「そうっすよ、超力作なんですから!」 食堂のおばちゃんとガストが、タクトの皿に、料理をもっていく 「あ、ありがとうございます」 (つーか、おれ、がんばれ) その量にタクトは心の中でファイティングポーズ
さらにしばらくたってから到着したのは 「タクト、誕生日おめでとう」 「シヴァさま、ありがとうございます」 「…おめでと」 「ノア…ありがとう」 シヴァとノア、対照的な二人 「シヴァさま、でも、EDENの祝賀パーティーのほうはよろしいんですか?」 「あぁ、ルフトが気を利かせてかわってくれた」 「先生が…」 「まったく、いつだってこの艦の人間は浮かれすぎなんだから」 「あはははは」 「ま、嫌いじゃないけどね」 ノアは小さく、そうつけたす そして 「タクト、お兄様からもらったもの、大事にしなさいよ」 「え?」 タクトがその言葉の意味を理解しようとした、そのとき
「では、最後に…クールダラス副司令から、タクトさんに花束の贈呈です」
わぁっ 「ほらタクト、こっちにおいで」 「こっちですー」 「え。え?」 がしっ ズルズルズル ミルフィーとフォルテにがっちりと両腕をつかまれて、タクトは会場の中心へ そこでは 「レスター…」 彼が待っていた
手には
「それ…」 それは、見たことのある花束だった もちろん、あのときの花束はすでにないが だが、それは確かに ココとアルモにもらった、あの日の
「誕生日おめでとう、タクト」
バサリッ 花束が渡される 「あ、ありがとう…レスター」 思い出せば 全ては、その花束から始まった気がする 花束をみる 下をむいたら、涙がこぼれた ポタッ 「あ、れぇ?」 ポタポタ 涙ばかりが毀れる スッっとソレをレスターが指で拭い取った 「お、かしいな…嬉しい、のに…涙が………」 ポタポタポタ 「とま、んない…や…あは、ははは…は…」
ガサッ
花束を手にとる 懐かしい感触
「さ!それじゃぁみんないくよ」 フォルテの声が、ブリッジに響いた 顔をあげる 涙はまだ流れていた だが、ぬぐうことはしない とめようとも思わない だって、俺の涙はレスターがぬぐってくれるから
♪…ワン、トゥ、ワン、トゥ、スリ………
フォルテの小さな合図とともに
「♪ハッピバースデートゥユー ハッピバースデートゥユー ハッピーバースデー ディア タクト〜… ハッピーバースデー…トゥ…ユー」
優しい歌 聞きなれた、定番の、なんの変哲もない、誕生日の歌 だが、それが自分を大切にしてくれる人たちから贈られることが こんなに…嬉しい
パチパチパチパチパチ 「おめでとう!」 そして再びおめでとうと拍手の嵐 その言葉の重さを噛み締める ただ、ただ、嬉しくて、うれしくて…
震える俺の手をレスターが握り締めてくれた その力強さに勇気をもらう 俺は、顔をあげると
「ありがとう、みんな…本当に、ありがとう!」
お祭りのような騒がしくて楽しい日常 地上(ここ)から、銀河中をまきこんで はちゃめちゃで刺激的で でも、どこか優しさと暖かさに満ちた そんな毎日がずっと続くことを、願っている
「こんな毎日が、ずっと続けばいいのにな」
まだまだ覚めない宴の中で呟く …と
「続くさ、これからもずっとな」
俺の手を離さないでレスターはそういった
「うん…」
終わることなく、続く、日々 月日がながれ、たとえみんながそれぞれの道を歩もうと 今、この瞬間の気持ちだけは永遠に変わらない 俺とともに生き そして…
「地上より永遠に…俺やレスターがいなくなったとしても…ずっと」 「あぁ、そうだな」
そんなことを考えていると 「ところでタクト、お前…本当に記憶が戻ったんだな」 「あー、うん、たぶん」 「じゃぁ、一つ確かめてもいいか」 「え?…いいけど」 レスターは珍しくそっぽをむきながらそんなことをいう 変な奴 「EDEN解放戦前夜、お前…俺になにを覚えていて欲しいっていった?」 「…?」 解放戦前夜というと たしか (白き月の宮殿庭園…) 「って、あ、アレ?」 「あぁ」 「ま、まてよ。今、ここで?」 「そうだ」 クックック レスターのシニカルな笑みが、酷く意地悪く見えた 「ってか、あれは、レスターが覚えていてくれるんだろ?!」 「俺は覚えてるさ。いったろ?確認だって」 「…」 俺はキョロキョロとあたりを見渡す うーん、どうしようかなぁ、うーん… うなる そして 「タクト、あと30秒でいわなければ書類地獄の刑な」 「うわ、ま、まった…わかった、いうよ。いうよ…」 俺はしぶしぶとレスターを手招きして、その形のよい耳にこっそりと、もう一度…
”愛してる”
告白 レスターは満足そうに笑うと ご褒美のつもりなのか、抱き寄せて、抱きしめて、キスをひとつ、くれた
代休消化中 火曜日までお休みです そんなわけで、悟空の大冒険をみてました うちにあるビデオは、最終巻がないんですけどね 最後、どうなったのかな(・・) まぁ昔から、純粋に西遊記はすきだったりします 幼稚園の頃、必死で本読んだりしてましたし… ところで… 悟空の大冒険の三蔵さまって、なぜか色っぽい感じがするのは俺だけですかね? どっちにしろ、おいら、三蔵様好きっぽいです
というわけで、17話なんですが 今回も微妙にはいらないのでまっぷたつ。 まずは前半。どうぞ。
第17話「地上より永遠に…こぶじめ」
夢を見た…
懐かしい夢 青年は優しい人だった その優しさ故に非情であった そして愚かでもあった 好き、だったのだろうか? …少なくとも 嫌いではなかったのだと思う 運命は二人を残酷に出会わせはしたが きらいにはなれなかったのだ
『タクト…』
夢の中 彼の人は優しく微笑む
「あなたは…?」 だが、そんな風に思うことはあっても 今のタクトには彼がどこの誰で、自分にとってどんな存在だったのかが思い出せない 胸が痛んだ 彼のことだけは思い出さなければいけない そんな風に思うのに…
彼は少しだけ寂しく微笑むと ゆっくりとその手を伸ばした そして、冷たいくせにどこか優しい声で 『私の記憶を…』 「え?」 『君の…』 「…聞こえない、あなたは、いったい」 言葉は断片的で、単語ばかりで意味をなさない それでも、彼がなにかを伝えようとしてることだけは伝わってきて だから、なんとか聞き取ろうとするのだが、近いくせに遠すぎてわからない 『タクト…』 もう一度、名前を呼ばれる 見上げれば寂しい微笑み 自信に満ち溢れたような彼が、時折みせた、その表情 そうだ 彼を嫌いになれなかったのは それが彼の本当の表情だったからだ そして、たぶん 自分も同じような表情をどこかに持っている 一方的で、しかし、確かな、シンパシー だから、自分は彼に惹かれた
『愛しているよ…』
呟きとともに、軽いキスが落ち 夢は掻き消え、眠りの終りを告げた
「…ト、タクト」 「…んー?」 光 目覚めたばかりの自分には、少しばかり、目に痛いほどの量のヒカリ そして 「だいじょうぶか?」 「え?…って、シヴァさま?!」 自分の顔を心配そうに覗き込んでいた人物が誰かを理解して タクトは勢い良く跳ね起きた 「どうやら、大丈夫のようだな」 シヴァはほぅっとため息をつく 「えっと…」 なんのことでしょう、とタクトが聞く前に シヴァは持っていたハンカチでタクトの涙をぬぐう 泣いていたらしい 「それとも、どこか具合が悪いのか?」 「い、いえ…平気、です」 心配そうな声に、なんとか返事をかえす 「…そうか」 シヴァはタクトの涙を気がすむまでぬぐうと ハンカチをしまいながら、ポツリと… 「記憶は、戻らなかったそうだな」 「…はい」 その少しだけ寂しげな表情に 胸が痛んだ… (あれ?) 不思議なデ・ジャ・ビュ… いつだったのか どこでだったのか それは、思い出せなかったけれど 今のシヴァの表情を、タクトはどこかで見た気がした だめもとで思い出そうとしてはみる だが、シヴァ自身の言葉が思考を中断させた 「しかし、病の方はもういいのだろう?」 黙り込んだ自分に気を使っているのか、笑顔をつくって、話題をかえる だから、タクトも 「はい。それにこれからは記憶が消えることもないそうです」 「ならば、良い」 満足そうに、笑う その笑顔 (あぁ、そうか…) 思い出した 彼女は、今朝の夢にでてきた、青年に似ている 髪の色も、肌の色も、瞳の色も…外見的な特徴はないに等しいが その雰囲気… そして、括弧たる意志をもつ、王者のまなざしが…
「ところでタクト、お前…今日の祝賀パーティには参加するのか?」 「あ、えーと…」 タクトは少し考え 考えて 「出来たら挨拶だけでお暇しようかと…」 結論をだした EDENの首都星ジュノーがヴァル・ファスクから解放されて3日 タクトは解放と同時に、病気の治療にあたった 1日治療に専念し、2日は検査 そして、今日晴れて退院となる 副作用であった”記憶喪失”については、病気の治療とともに解消された だが、その間に失われた記憶が戻ることはなく… 記憶の退行は、クーデター直前まで進んでいた 幸いなことに、ここ数日、あちこちで催される会談、パーティー、会議…etc EDEN解放艦隊の指揮官として顔をださなければいけないところには 病気を理由にレスターやエンジェル隊が代役として駆けずり回っている (エンジェル隊かぁ…) ここ3日、EDENは自分と彼女たちのニュースで持ちきりなのだ (はやくあいたいなぁ)
エンジェル隊
月の聖母直属の”ムーン・エンジェル隊”に所属する6人の少女 彼女たちは敵から、また味方からも畏怖と尊敬をこめてそう呼ばれていた ロスト・テクノロジーの結晶である”紋章機”(エンブレム・フレーム)に乗り 月の聖母シャトヤーンの護衛と、ロストテクノロジーの調査・回収をするために銀河中を飛び回る 美しく最強の天使たち…
昨日、副官のレスターから、自分が彼女たちの司令官で クーデターから今日まで一緒に戦ってきたのだと聞かされたときは信じられなかった だが (まぁ、いっか) さっさと気持ちを切り替えるのは、自分の十八番 今では、他のなによりも彼女たちと会えるのが楽しみなのである しかし、そのためには (今度レスターがきたら、彼女たちのこと詳しくきいておかないと) 自分の記憶がクーデター前まで戻っていると知ったときの、レスターの表情 酷く、寂しく、悲しそうな、笑顔 胸が痛んだ 今、目の前にいるシヴァ女王も同じ クーデター以降に自分とであった人たちは、やはり、同じ表情を、した (彼女たちにそんな表情はさせられないからな) なぜかはわからないけれど、そんなことを、思う しかし… (でも、なんでレスターがあんな顔するんだろ、別にあいつのこと忘れたわけじゃないのに) そこが納得いかなかったが… 士官学校時代からの親友で、今では優秀な副官としてずっと一緒にいてくれるレスター 今回のことも、レスターの説明でなければ、流石の自分も理解できなかったかもしれない (記憶、か…) ぽっかりとあいた1年分の空洞に、まるで見知らぬ道を歩いているような不安に襲われる (でも…) そんなことをつらつら考えながら、タクトは傍らで自分のためにりんごをむいてくれるシヴァをみた (でも、一番わからないのは…あの時のレスターの顔が一番見ていて辛かったってことだよな) うーん… まぁ、でも 考えても仕方のないことだし 思いなおしたところに 「タクト、本当に大丈夫か?…無理なら今日の祝賀パーティーも欠席すればいいのだぞ」 「あ、いえ…ちょっと考え事をしていただけですよ。シヴァさま それに今回の祝賀パーティーは政府主催でEDENのみなさんへの挨拶もあるのでしょう? 流石に俺がいないと駄目だって、レスターもいってましたし…」 「…そうか」 それでも、心配そうなシヴァの顔に タクトはにっこりと微笑むと 「ところで、シヴァさま。まだ時間がおありならチェスでもしませんか?」 「…チェス?」 「ルフト先生から、シヴァさまがチェスがお好きだと聞いたので」 「お前は…そ、そんなことのほかにもすることがあるだろう…」 シヴァは嬉しいのを無理やり押し殺したような声で、いう 「シヴァさまを御護りするのも俺の役目と聞かされました 貴方のことを知らずに、仕事をすることはできませんよ」 タクトはチェス盤の用意をはじめる と 「シヴァ…さま?」 ポタリ 涙が シヴァの頬を、涙が、一筋 「し、シヴァさま?!」 慌てる、やばい、まずい、と大混乱 だが、右往左往するタクトをみてシヴァは袖で涙をぬぐう 「…すまぬ、安心した」 「へ?」 「お前は、クーデターの時、部屋に閉じこもっていた私に同じことを言ったのだ」 そして、笑顔 「安心した、記憶がなくなろうと、お前という人間が変わったわけではないのだな」 シヴァは、キングの駒に手を伸ばした そして 「さぁ、勝負だタクト・マイヤーズ!」
| 2005年04月03日(日) |
おやすみっていいなの日 |
今日の日記は珍しく本文が少ないです といっても、そんな日にかぎって、ここに書くこともないんですが まぁ、そういうこともあります。
第16話「諦めてはいけないお供え物」
後日 タクトの記憶の件は、本人の口からエルシオールクルー全てに伝えられた 驚きはあった しかし、そこは、なんでもかんでもお祭りにしてしまうエルシオールのこと 「じゃぁ、タクトさんのために名札を作りましょう」 というミルフィーユの提案のもと、それぞれがお手製の名札を作っては掲げる エルシオール・名札ブームの到来であった
皇国暦412年 エルシオールを旗艦としたトランスバール皇国軍EDEN解放艦隊は惑星ジュノーに到着 ヴァル・ファスクの駐留艦隊と対決の運びとなる
エルシオール艦橋 タクトは立ち上がり、その通信を開く 現われたのは金の髪が美しい2人の姉弟 少年は、開いたその先にタクトの姿をみつけると、少し驚いたような顔をして
『こんにちわ、いや…はじめましてといったほうがいいんでしょうか?タクトさん』
「…ヴァイン」 名前を呼ぶと 『僕のこと、覚えていてくれたんですか?』 嬉しいな、とヴァインは笑う 綺麗な笑顔 「いや、残念だけど覚えていないんだ…みんなに教えてもらってね」 タクトは正直に、そういった 『それは、残念…』 タクトの記憶は、すでにクーデター当初のものまで退化している 毎朝、レスターとエンジェル隊によって行われる勉強会も 最初は30分や1時間だったものが、今では3時間程度にまで伸びていた 『…どうして、そんな顔をしているんです?』 「え?」 イライラとした、ヴァインの、言葉 『病魔におかされて、記憶もないというのに…不安には思わないんですか?』 「…うーん、なんというか、記憶がないから病気をしているって実感がないんだよね」 のほほんとしたいつもの表情でタクトはそんなことをいった そして 「それに、俺にはエンジェル隊とエルシオールのみんながいてくれる」 絶対に揺るがない 信頼の瞳
『まかせてください!』 ラッキースターの中から、ミルフィーユが元気よく返事をした 『バーンとやっちゃうんだから』 『あ、ランファー、それ私の台詞なのにぃ』 『おまかせください』 そんなランファとミルフィーの様子を微笑ましくながめてミント 『やられたら倍返しがあたしらの鉄則だからねぇ』 豪快に笑ってフォルテ 『負けません』 『はい!』 ヴァニラの意志の強い言葉と、ちとせの決意されたまなざし
『…っ』 ヴァインは、あからさまにおもしろくないという表情をした 「…ヴァイン、俺には君のほうが不安そうに見えるよ」 タクトはまるで、彼を労わる様な声音で呟く それは酷く悲しげで 同じくらい優しくあった 確かにタクトは、ヴァインのことを覚えていない だが、心のどこかで、それを感じる 感情をもたないはずの、ヴァル・ファスク 『…馬鹿馬鹿しい!』 ヴァインははき捨てるように、いった 『僕を動揺させようとしても無駄ですよ。僕はヴァル・ファスク 感情をもたない僕たちの心は揺らぐことがない』 自嘲気味に、笑う タクトは負けずにいいかえす 「そうかな?君のいうとおり本当に君たちに心がないのなら そんなに必死に否定する必要はないんじゃないのか? 今、そこにいるルシャーティのように… いや、君ならいつものように笑ってはぐらかすことだってできるたろう」 『…っ』 「君は今、自分で認めたんだ…心を持たないはずの自分が動揺していることを」 沈黙が二人の間を支配する … それは短くもあり、また永遠と見間違うほど長くもあって ヴァインがさきに行動を起こすまで、続いた 『そう、ですね。少しペースを狂わされてしまいました』 笑う その顔に、いつもの綺麗な微笑が戻り 『おしゃべりがすぎた、さっさと決着をつけてしまおう タクト・マイヤーズ、エンジェル隊…これで本当に最後だ!』 「ヴァインっ!」 映像はそこで途切れた タクトはしばらく、なにもうつさなくなったモニタをながめ そして、笑顔を取り戻すと 「…よし、いこう。みんなの力をみせてやれ!」
『はいっ!』×6
6人の返事が、心地よく、宇宙に響いた
ヴァインは7番機のコックピットでその光景を見つめる 「なぜだ…」 言葉は、すこしばかり、震えていた 完全に制御された7番機 そして、ヴァル・ファスクの中でも最強のひとつとされる艦隊 それが それが… 「なぜあんなやつらに押されるんだ!」 絶叫はコックピットに木霊した 応えはない
ドンッ
7番機を衝撃が襲う 「ぐっ」 モニターにはトリックマスターが移っている 「くそっ」 『逃しませんわっ』 ギュンッ トリックマスターのフライヤーがレーザーを放つ 『これはタクトさんの分』 ザンッ 右翼を光の粒子がかする 『これが、ルシャーティさんの分!』 ドンッ 削れた部分を、さらに大量の光線が貫通した バランスが崩れる 「しまった」 『そしてこれは、私たちの分ですわ』 テンションゲージがMAXなのを確認し ミントは、点滅するボタンを力強く叩いた 瞬間 3基のフライヤーが同時に口をあけ、今までとはくらべものにならない光の雨となる 『いきますわよっ、フライヤーダンス!』 「うわぁぁぁ」 ドドンッ 7番機を中心に、援護にむかっていた敵艦隊をも巻き込んで 大爆発が連鎖していく
光と音と爆発が混在するなか、なんとか体制をたてなおしたヴァインは7番機を撤退させた そして
「僕は、みとめない」 呟き 「みとめるものかっ!」 それは、感情的になり、一気に爆発する その彼の目前で、駐留艦隊は全滅した
『ヴァイン!もうやめるんだ』
「タクト・マイヤーズ…っ」 通信 そこには、タクトと、その傍にレスターの姿 『これ以上、無駄な争いはやめよう…7番機だけじゃ俺たちには勝てない』 「だまれっ!」 しかし、現実として駐留艦隊は敗れた 実働、たった6機の紋章機と戦力としては数にもならない1隻の白い艦に こちらには、さらに最強の7番機と完全無欠のパイロットまでいて (僕の戦略ミスだとでもいうのか?だが、計算上は負ける要素なんて) いや 一つ たった、一つだけ どうしても最後まで、気になって仕方なかったことが 『ヴァイン、これが心の力だよ』 考えを見透かしたように、タクトがその言葉を口にした 『かつて黒き月も同じ理由で敗れた、完全ということはそれ以上はないということなんだ』 「…っく」 (違う、完全ということは、完璧ということだ、それ以上なんて…あるはずが) 100%しかないものは100%以上でもなければそれ以下でもない だが、もしも…それ以上があるとしたら? それ以上を求めるならば … (僕は…僕は、なにを、馬鹿なことを) わずかに芽生えた考えをうちけす (馬鹿馬鹿しい!) 心の中で、自分をののしりながら 「そう、ですね。戦略的に間違いがあったことは認めましょう。僕はあなた方を過小評価しすぎた」 『ヴァイン』 「撤退します。だが、ただでひくわけにはいかない」 言葉とともに キィィィイイインッ 「きゃぁぁぁぁぁっ」 ルシャーティのサークレットが光、絶叫がコックピットを支配する 『ルシャーティっ?!』 「EDENはお渡しします」 にっこりと ヴァインは精一杯の笑顔をむけ 「仲良く、一緒に、消えてしまえっ!!」
「高エネルギー反応!クロノ・ブレイク・キャノンきます!!」 ココが振り返りながら声を張り上げた 「か、回避を…」 「駄目だ、エルシオールの後方には惑星ジュノーがある!」 レスターから一喝 「で、ですが」 うろたえるアルモ しかし
「だいじょうぶだよ」
騒然とするブリッジをタクトの声が納めた その一言で、静寂がもどる タクトはブリッジクルー全員をみわたし にっこりと、いつもの笑顔で笑いかけると
「エンジェル隊!」
6っつの映像回線を開いた
『はい、タクトさん!』 『まかせなさいよ、タクト』 『えぇ。おまかせ下さい。タクトさん』 『タクト、あたしらがエルシオールも、EDENも護ってやるよ』 『かならず。今度こそ、おまもりします…タクトさん』 『タクトさん、待っていてください』 タクトは笑顔で一言 「みんな、よろしく!」 その言葉に、彼女たちも笑顔で返す 『了解っ!』×6
言葉とともに、6色の翼が光を、増して
バサッ
ラッキースターの中で、ミルフィーが最初にその音をきいた 「あたしたちが護りますっ」 それは他の5機も同じ 柔らかい、純白の、光 光が増し、それはいつのまにかコックピット全体を包んだ 白い光 酷く懐かしい 泣きたくなるような優しい輝き 光はますます増えラッキースター全体を包み込み 一瞬だけ塊となり収縮すると、刹那
バサァッ
今度こそ音をたてて、爆発する 正しくは、開く
最初にこの翼を広げたのは、クーデターのとき あのときは、黒き月のネガティブ・フィールドでさすがの自分も諦めかけた それを一喝した、タクトの言葉 ”あきらめるな”と 彼はその言葉のとおり、あきらめず そして一度として、自分たちを疑うことはなく どんなにそれが、嬉しかったか どんなにそれが、自分たちに力をくれたのか タクトはきっとわからないだろう 彼にとってそれは、あたりまえのこと、だから
戦うのは嫌いだ クーデターのとき 半年前 そして、もちろん、今も だが、それでも戦わなくてはいけない時 こんなとき、ミルフィーはタクトの顔を思い浮かべる エンジェル隊の、みんなの顔を思い出す そうすると、不思議と元気がでた 自分はそのために戦っている だから だから…
「護ってみせます!!」
エルシオールにむかって、クロノ・ブレイク・キャノンの閃光が伸びる その間に割ってはいる、6色の光の翼 それは共鳴し 輪を作り まるで歌うように、広がって
音もなく、攻撃を、飲み込んで、いく
ドドドッ コックピットの内部が揺れた 「くっ」 歯を食いしばる そして、真正面を見据えた 7番機 乗っているのは、ヴァインとルシャーティ まだ、信じられない エルシオールでの二人との生活はとても楽しかったから 「…まけません」 だが、ここで負ければ全てが終わる 確かめることもできない 「まけませんっ、絶対に!」 ミルフィーの光の翼が、その輝きを増す
バンッ
衝撃は、波紋のように、宇宙を駆け
「そんな…馬鹿な」
光が消えた場所を、ヴァインは呆然とみつめた クロノ・ブレイク・キャノンはとめられた エルシオールも、その背後にある惑星ジュノーも無傷だ そこには、光の翼を広げる6色の紋章機だけで
「くそっ」
ヴァインは旋回すると、スピードをあげ、その場をあとにした
「やった、のか」 「あぁ!」 レスターの呟きに、タクトが力強く返事をかえす 「マイヤーズ司令!7番機が宙域を離脱します…おいかけますか?」 「いや、深追いは禁物だよ」 タクトは首をふって、そう伝えた そこに 「タクト!」 「ん?」 「エンジェル隊を迎えに行ってやれ」 レスターは、戦闘の事後処理をはじめながら声をかける タクトは「え、でも…」といいかけたが 「今回の一番の功労者だ、ねぎらってやれよ」 「そうだな」 その言葉に、納得するといつもと代わらないノリで 「じゃあ、あとよろしく〜♪」 にこやかに手をふって、ブリッジをあとにした その、あまりの、変化のなさに 「マイヤーズ司令、あれで本当に記憶がないのかなぁ」 「ってことはつまり、マイヤーズ司令ってなにもかわってないってことなんじゃない」 「そっか、そうだよね」 ブリッジクルーからあきれた様な会話 「はぁ…」 やれやれとレスターはため息をついた だが、その雰囲気はどこまでもどこまでも優しく空間を埋めていく
「心の力…」 ヴァインの呟き 考えに煮詰まり、視線を流す ルシャーティの後ろ頭がみえた 金色の長い髪 手を、のばす さらさら さらさら… …さらっ 「お前は、どう、思う?」 問いかけ それは自分に問い掛けるようでもあり ルシャーティにたずねるようでもあって しかし、もちろん彼女からの返事は、なく 「なにをいっているんだ、僕は」 当たり前のことに気づいて、笑う 笑う それは、ひどく、悲しい笑顔で… 「…姉さん」 零れ落ちるように呟かれたその言葉は ヴァイン自身にも届かなかった
1日1話UPできないのでは、日替わり連載とはいえないので 二つに分けた分は、1日としてカウントします というわけで、日記がかなり前借状態となるんですが まぁ、もうほとんど日記としての役割をはたしてないので無問題 では、15話後編
地上より永遠に…俺がいなくなったとしても
白き月・宮殿庭園 「あいかわらず、ここは凄いな」 感嘆の声とともに、タクトは宮殿庭園を歩く 「タクト…クーデターの決戦前、俺がここでいったこと、覚えているか?」 「え?」 その数歩あとを歩きながら,レスターがそんなことを、いった 振り返る いつものクールな表情の副官から、その意図は汲めない だから 「えーっと、ごめん…忘れちゃったよ」 正直にかえした レスターは、その表情をみながら… はぁ ため息を、ひとつ 「なんか、大事なこと、だっけ?」 「いや、大したことじゃない」 レスターはそういうと その長い腕をのばして タクトを捕まえる そのまま、ひきよせた 「レスター?」 「”あんまり遠くにいくなよ”あのとき、俺はそういった」 はしゃいでずんずん置くへいこうとするタクトにかけた言葉 タクトは、一瞬、納得したような顔になると 「あ、そうか。そうだったな…で、俺は"エオニア軍がたどり着くのは明日だし、ちょっとくらいは平気だって"って言ったんだっけ」 「…なんだ、憶えてるじゃないか」 ほっと レスターは安堵のため息 「憶えてるよ…それが、どうかしたのか?」 タクトは不思議そうに首をかしげる
その光景をみつめる視線が多数 がさがさ (ちょっと、押すんじゃないよ…きづかれちまうだろ) (みえませーん) (いたっ、ランファさん足をふまないでくださいまし) (みえませーん…) (ちょっと、ヴァニラ、あんたそのピンクの粗大ゴミ邪魔!) (失礼な!だーれがピンクの粗大ゴミですか) (燃えるゴミ) (ヴァ、ヴァニラさーん) (しっしずかに)
お約束の光景に、きづいているのかいないのか レスターは言葉を続ける 「あのとき、俺はもっと別の意味でお前にそういった」 「…え」 別の意味? それこそ、意味がわからなかった 疑問符をあげるタクトに、レスターは少し呆れた顔をすると 「お前が、俺のところから、離れていくと思ったよ」 その手をとって、頬にあてる 暖かい 「えーっと、それって…」 「士官学校からずっと一緒で、軍にはいって、お前の副官になれたとき…俺はこれでもうお前とはずっと離れないんだと思った」 握り締める いつだって手を伸ばせば掴むことが出来た、優しい手 「ずっと、一緒じゃないか」 「あぁ。だが、この1年間で俺は何度もお前を手放しかけた…エオニアに攫われた時、お前を傷つけた時、俺がちとせを庇った時、 そして今も…俺は恋人というだけで、お前の隣にいる努力をいつの間にかしなくなっていた」 「レスター…」 「エンジェル隊と出会って、お前がいつの間にか”皇国の英雄”なんて呼ばれるようになっていたときに気づくべきだったな。 あの決戦前夜…俺はすでにどこかでは理解していたくせに、認めたくなかったんだ…だから、そんな言葉しか言えなかった」 「そんなこと、ないよ。俺はレスターがいるからどこにだっていけるんだ…お前が俺のことを待っていてくれるから… この1年間、どんなことがあったって前をむいて戦ってこれた…レスターが悪いことなんてなにひとつ、ない」 つかまれた手が、あつい 涙がでそうな、体温 「…エオニアに攫われたのは俺が油断したからだ、そのあともあの人を見捨てられなくて何度もお前を傷つけたのは俺のほうだ、 俺のためにちとせを庇ってくれて…そして、お前は帰ってきてくれたじゃないか。いったろ?俺はレスターのそばにいるだけで 幸せなんだって、こうして腕をのばせばお前がいてくれる。それ以上はなにも望まないって」 違う あついのは、涙がでるからだ いつのまにか、頬を雫が伝っていく
がさっがささ (あのやろうっ、タクトを泣かせやがって!) (フォ、フォルテさん、おちついて、おちついて) (静かにしてくださいまし) (泣いてるタクトさんもかーわいい) (はい!先輩) (酷い人たちだ、その点、ヴァニラさんは…) (ちょー萌え) (ヴァ、ヴァニラさ…)
「タクト…悪い、泣かせるつもりじゃなかったんだ」 空いている片方の手で、レスターはタクトの涙をぬぐってやる タクトはしばらく泣きつづけた 「なぁ、タクト…俺もお前のそばにずっといたい」 「…ん」 「だが、ただ傍にいるだけじゃ意味がないんだ。傍にいたってお前を傷つけるだけじゃいないほうがいい」 「そんなことは…」 否定しようとした言葉を、さえぎる 譲れないものがあるのだ 「お前になくても俺にはある、俺は俺といることでお前が傷つくのが嫌なんだよ。 俺は、俺の手でお前を幸せにしてやりたい」 「レスタァ…」 「いったろ?一人でなんでも抱え込むなって。俺はお前が苦しんでいるのを見るほうが辛い」 「…」 「それとも、タクト。お前…俺になんて話しても仕方ないとかおもってるのか?」 「そんなことあるわけないだろっ」 「じゃぁ、もう隠し事はなしだ」 ビクリッ 手を伝わって、震えが、はしった
(えっ?)×6人+1匹 茂みで聞き耳をたてていた全員も驚く
タクトの怯えた瞳が自分を見上げる レスターは瞳を反らさない ただ、ただ静かに言葉を、まつ タクトは… タクトは、一度目をとじて涙を払うと 「どこまで知ってるんだ?」 「ノアから一通りはきいてる、だが、お前の口から直接聞きたい」 「………」
一つ深呼吸 顔をあげる まなざしを、かえす そして
「エルシオールの司令席には、H.A.L.O.システムが使われていた」 「…」 「知ってのとおり、H.A.L.O.システムは脳に直結している…俺が倒れたのはあの時、エルシオールが暴走したときの影響が 負荷としてかかったせいでもあるらしい…そして」 タクトはそこで言葉をひとつ、きる 少し迷う それでも 「そして…負荷の影響の副作用として」 握られていた手を、握り返した ちからをこめる
「記憶がなくなっていくって」
ざわっ… 風が吹いた
(なっ…) (うそ…) (タクトさん) (あの馬鹿、またあたしたちに内緒で…) (おちついてください、ランファ先輩) (静かに…) (続きがあるみたいですよ) ごくりっ 息を飲んだのは誰だったのか
「ケーラ先生の話だと、新しい記憶からどんどん日を追うごとに消えていってるらしいんだ…」 「タクト…」 「本当をいうと…俺、倒れたときのこと覚えてない…目を覚ましたらいきなり白き月で、お前がいなくて… エンジェル隊のみんなもいなくて…ヴァインとルシャーティを追っていったって聞かされたけれど、信じられなかった だって、俺の中ではまだ二人とあってから数日しかたっていなかったんだ」 正直に打ち明ける レスターはタクトを抱きしめた 肩ごしに、宇宙が、見え それはあまりにも綺麗な夜空で、タクトの涙を更に誘う 「ごめん…ごめん…っ、お前を信じてないわけじゃないんだ…ただ、知らずにすめばいいと思ったんだよ」 深い考えは、ない ただ、ただ、そこにあったのは、大切なひとたちに心配をかけたくないという、純粋な気持ちだけ 「馬鹿だな、本当に…いつまでも隠しとおせるわけないだろう?俺だけじゃない、エンジェル隊のやつらにも」 言っておくが、あいつらは俺より、タクトのことに詳しい、タクトマニアなんだ と、つけたす
(そのとおり!)×6人+1匹
タクトは、少しだけ笑った 「ごめん…ありがとう、レスター…でも、お前にこうして抱きしめられて嬉しいって思うことも きっと明日には忘れてしまうんだろうな…ごめん、ごめんなレスター」 「馬鹿だな、そんなものはいくら忘れたっていいんだ」 「…え?」 レスターの言葉に、タクトは驚く おそるおそる、その表情をみた レスターは微かに笑うと 「いったろ?ずっと一緒だと。だったら俺は毎日、毎日、お前を抱くよ…お前が忘れたら、忘れた分 いや、それ以上に抱きしめてやる」 「レスター…」 「好きだと伝えてそれを忘れるなら、毎日、好きだといってやる 愛しているといってそれを忘れるなら、何度だって、愛しているというさ たとえお前が俺のことを忘れても…だ。いったろ?俺からお前を手放すようなことはしないって」 あふれる涙をぬぐう 何度でも 何度も その涙が乾くまで その涙が乾いても 夜空を見上げる 1年前、決戦前夜に見上げたのとは違う宇宙 だが、その美しさだけは変わることなく どこまでも続く、星の海 「レスター…」 名前を、よぶ タクトの腕に力がこもる 精一杯の力で、レスターを抱きしめ返す 「記憶がなくなるのは、正直、怖い…昔と同じように、きっと俺はどんどん”からっぽ”になっていく 俺はいる、だけど今ここにいる俺という存在とは、それはやはり別の人間で… 死ぬわけじゃないけれど、ここから、今の俺という存在は、永遠に消えてしまうってことだと思う 昔は…あの頃は我慢できた…けど、今はもう駄目だよ、俺には絶えられない、みんなのことがわからなくなるのも そして…俺が記憶をなくすことで、みんなが傷つくのも」 抱きしめる腕に力をこめる 痛いくらいに だが、その痛みは心地よく 心地よさに目をつぶり その強さの分、勇気をもらう 「俺は…全力で解放戦に挑むよ。俺の全てをかけてEDENをヴァル・ファスクから救ってみせる たとえ記憶が戻らなかったとしても、平和になったEDENが、いまの俺がいた証として残るように」 「タクト…」 名前を呼ばれて、タクトは少しだけ悲しそうに微笑んだ しばらく何かを考えるように、沈黙する
ぽろっ 最初に泣いたのは誰だったか (ちょっと、ミルフィー、泣くんじゃないよ) (だ、だって…) (そうよ、きづかれちゃうじゃない) (そういうランファさんも、ですわ) (あ、あたしのは違うわよ、これは、汗よ!汗!) (涙は心の汗) (タクトさん…クールダラス副司令…) (あの、ちとせさん、私で涙ふくのはやめてほしいんですが…あぁ、ぐちょぐちょ)
考えがまとまったのか、決心したのか、タクトはゆっくりと、口をひらいた 「レスター、甘え次いでに、ひとつだけお願いしてもいいか?」 抱きしめていた手を、少しだけ移動させる まだ微かに青痣が残る顔を、大切なもののように触れ 視線を合わせる レスターは微かに頷いた だから、タクトは笑う 自分にできる、精一杯の笑顔
「覚えていて欲しいんだ。俺はお前のこと…タクト・マイヤーズはレスター・クールダラスを愛してるって お前が覚えていてくれるなら、俺は何度だってお前を好きになる、何十回何百回だって恋をする 永遠に、愛してみせる…だから、それだけは忘れないでいて欲しい」
たとえ 地上より永遠に、俺という存在がなくなったとしても… 「タクト」 唇が重なる 「忘れねぇよ」 何度も、何度も、数え切れないほど 「忘れるものか…」 「ありがとう、レスター…愛してる、愛してるよ」
二人の頭上には、いつまでも優しく柔らかく 綺麗な夜空が広がっている
「地上より永遠に…俺がいなくなったとしても…この気持ちだけはお前のものだから」
今日から、代休消化のための連休にはいりますv そして、今日もまっぷたつ…すまんこってす
15話前半
第15話「パーペチュアルライス」
地上より永遠に…
その姿を、一番最初に見つけたのは自他共に認めるラッキーガールのミルフィーユだった 「あっ!!」 「なによ、ミルフィー…い?」 「う…」 「えぇっ!?」 「…おー」 「…!」 全員がミルフィーユと同じ方向をむき、同じように驚いた表情 そして、見事に次の行動が重なった
ドタドタバタンドタンッドタッバタッガンッ!
降りる、というよりも、ほとんど落ちるようにタラップを下る 全員が我先にと競い合うように地面に足をつけるのと
「みんなお帰り、おつかれさま」
その言葉が、重なった
「タクトさんっ」×2 ミルフィーとちとせが同時に抱きつく 「うわぁっ」 バターンッ 勢い良く飛び掛られて、そのまま、後ろに押し倒された 「あっちゃー、だいじょうぶかい?」 フォルテがかけよる 「び、びっくりしたぁ…」 目を回しながら、タクト 「ったく、しょーがないねぇ…ほら、つかまりな」 やれやれと、フォルテがタクトを起こした 「ごめん、ありがとうフォルテ」 「えへへへ、すいません。バーンとやっちゃいました」 「す、すいません」 ミルフィーとちとせも立ち上がる 「いやいや、両手に華で大歓迎だよ。ミルフィー、ちとせ」 「タクトさん、もうよろしいんですの?」 「やぁミント。心配かけたね、もう大丈夫だよ」 心配そうにそばによってきたミントに笑顔をかえし それは、たしかにいつものタクトで 「よかった、です」 ヴァニラはほぅっと胸を撫で下ろした 「ヴァニラのおかげだよ。ありがとう」 そこへ 「………」 「ランファ?」 すっとタクトの前にランファが立つ ランファは無言でタクトを見詰め 「えっと…ら,ランファ…な、に?」 その沈黙にそろそろ耐え切れなくなって、タクトが口を開くと 「馬鹿っ、ばかばか、この馬鹿タクト!」 ぽかぽかぽかぽかぽかっ 「ら、ランファ…」 「心配したんだから、この、ばかぁっ!」 「ごめん、ランファ」 早口にまくしたてるランファに、タクトは申し訳なさそうに謝った と…
「タクトっ」
声がして、タクトは顔をあげる 駆けてくる、人影 タクトは…
「レスター?おまえ、その顔…どーしたんだよ?」
真っ青な痣のできている、副官の顔をみて、正直に一言 だが、レスターはなにもいわずに 「…っうわ、レ、レスター?」 抱きしめた 「まて、まてって、みんな見てるったら、レスター」 じたばた 事態の飲み込めないタクトは必死で抵抗するのだが、レスターは手放すどころか、ますます腕に力をこめる 「痛っ、やたらめったら痛いって」 「タクト…タクトっ………タクト…」 いつまでも自分を離そうとしないレスターから、なんとか顔をだす 「もう、なんだよ…みんなし、てぇえ?!」 その肩越し、タクトは、信じられない光景を、見た
「マイヤーズ司令!」 「タクトさーん」 「もうだいじょうぶなんですかー?」 「司令さーんっ」 「おあついっすー」 「無理しないでくださいよ、司令ー」 「おかえりなさい、マイヤーズ司令」 「おかえりなさいっ」 「タクトさん、おっかえりー」
エルシオールの窓という窓、出入り口という出入り口から覗く、ひと、ヒト、人の山 そして、おかえりなさいの大合唱 「な、なに?え?みんなどうしたんだよ?」 「みなさん、タクトさんが帰ってきてくださって嬉しいんですわ」 「はいっ」 「え?」 ミントとちとせが笑いながらいうが、タクトにはなんのことかよくわからない と 「ほら、レスター。気持ちはわかるけど、タクトの帰りをまってたのはあんただけじゃないんだよ」 「そうですよ。独り占めはずるいですよ」 フォルテとミルフィーがレスターの肩をたたく そこでやっと、レスターはタクトを手放した 解放されて、タクトはまず一呼吸 「タクトッ、さっさとみんなに顔みせてあげなさいよ」 「はい、みなさんお待ちです」 追い討ちをかけるように、ランファとヴァニラ タクトは疑問符をだしながらも 「あ、あぁ…」 なんのことかわからないけれど、と顔には書いてあったが口にはださず エルシオールにむかう そして 「ただいま、みんなー」 叫ぶ
「おかえりなさいっ」
声は、まわりから7人分、そしてエルシオールから一つとなって帰ってきた
「え?じゃぁタクトさんの病気は完治したわけじゃないんですか?」 白き月の医療施設 その一室に、ミルフィーの声が響く 「えぇ。完治するためには病原体から血清を作る必要があるの けれど、残念ながらこの病原体はトランスバールでは未発見なのよ」 「具体的に、どのような病気なんですの?」 ミントが興味深そうに質問する 「進行性の神経麻痺ね。じょじょに体が動かなくなったり、頭が働かなくなったりするの」 ケーラ女医はわかりやすく説明する 「とはいっても、進行はきわめてゆっくりとしたものだから明日、明後日でどうにかなるものでもないわ」 「よかったぁ」 ランファが安堵のため息 それを、優しい微笑みでみつめると 「あなたたちの話が本当だとするなら、病原体はEDENまたはヴァル・ファスクにある可能性が高いわね」 「ってことは、EDENを解放すればタクトは完治するんだね?ケーラ先生」 「理論上ではそういうこと」 パタンッ ケーラ女医は、カルテを閉じる そしてにっこりと笑うと 「貴方たちならきっとできるわ、がんばって」 太鼓判を、押した
「じゃぁ、レスターのあの青痣はココモが?」 恋人の顔にあった痛そうな青痣を思い出しつつ、タクト 「あったりまえじゃん!ホントはあと2,3発なぐってやろうとおもったんだけどよ」 「メアリー少佐にとめられたんだよね」 クスクス、マリブが笑いながら言う 「仕方ねーだろ、それに中佐が我慢してるのに、俺がそうバカスカ殴るのも悪いしさ」 「ココモさーん、暴力はいけませんよ」 自慢の髭をいじりながら、ウォルコットの呟き すっかりいつもの、冴えない老人に戻っている 「ところで、そのクールダラス副司令はどこにいかれたんでしょう?」 ちとせはあたりを少し見回しながら、レスターがいないのを確認し 「あぁ、なんでもノアと少し相談があるとかいって」 「ノアさんに、ですか?」 「ったく、またタクトほったらかしかよ!タクト、悪いこといわねぇって別れちゃえよ」 「コ,ココモ;」 「俺だってでっかくなれば、あいつなんかよりもっともーっといい男になるぜ」 「将来性でいうなら、僕もありますよ。タクトさん」 「マリブまで」 はぁとタクトはため息ひとつ そして 「気持ちはありがたいけど、俺、レスターが好きだから駄目だよ」 にっこりと笑顔でお断り (二人とも兄離れができないなんて、まだまだ子供だなぁ) とは、兄代わりとしてのほのぼのとした意見なのだが 実は、双子はタクトが考えるよりもずっと真剣だったりするのだが、気づく気配はまるでなし 「ちぇー」 「残念」 ココモとマリブは同時に肩をおとしつつ (ほんと、鈍いんだから) (…そこが魅力的っていうと否定できないけど) (まぁ、まだまだ先は長いし…)×2 それでもめげずに同じことを、考えた 性格がまるで正反対とはいっても、やはり双子、根っこの部分は同じなのである そんな双子はさておいて 「しかし、流石の私も今回ばかりは生きた心地がしませんでしたな」 「すいません、中佐…」 「…タクトさん、子供の一番の親孝行は、親よりも長生きすることなんですよ」 「…」 「私の夢は、老衰で死ぬときにタクトさんやエンジェル隊のみなさんに看取ってもらうことなんです 老いぼれのささやかな夢のために、どうか無茶はしないでください…」 そこまでいうと、老軍人は静かにお茶をすする タクトはその姿に、若干、涙をうかべながら 「…はい、中佐」 はっきりと返事をかえした
「?」 ヴァニラはふと、足をとめた 「どーしました?ヴァニラさん」 ノーマッドがたずねる と 「話し声が…」 「そういえば、なんかレスターさんがノアさんたちにお話があるとかないとか」 「…」 すす… ヴァニラは扉に近づく 「あぁ,ヴァニラさん…盗み聞きするお姿もなんてお美しい… 他の人たちがやればただの出歯亀なその行為も、あなたがするなら天使の所業です」 「静かに」 「…はい」 ノーマッドがだまる が 「…ききとれない」 「それは残念です…どうします?なんなら私がちょこちょこっと内部にアクセスすることも可能ですが ヴァニラさんのためなら火の中、水の中、この私に不可能はありません」 「駄目」 「お優しい、なんてお優しいんでしょう、そのヴァニラさんの優しさを他の人たちも見習うべきですね もう感動の涙で前がみれません!…ぬいぐるみなんで涙ながせませんけど」 「自分で直接聞かないとおもしろくないから」 「…そ、そうですよねー。やっぱり盗み聞きというのは自分の耳で聞いてこそ意味がありますよね 事の大小を問わず、全てにおいて全力投球、自分の力でやらないと気がすまないというその気高い精神 すばらしいです、ヴァニラさーん」
ヴァニラとノーマッドが馬鹿なやりとりをしているころ 白き月の謁見の間では、ノア、シャトヤーン、シヴァ,ルフト…そして、レスターがいた 「では、タクトは…」 レスターの呟き それはどこか、悔しさを含んでいた ノアは呆れたように目を閉じると 「まぁ、あいつの性格だから言わないとは思ったけどね、いちおう、あんたにだけは教えておこうとおもって」 「…あぁ」 「教えたことをどうするかは、あんたの自由よ。ただし知ったからには何かしら役にたててよね」 「わかっている」 レスターは顔をあげ そして 「このことを他に知っているのは?」 「ケーラ女医じゃ、だがもちろん口止めはしてある」 「クールダラス」 会話に、シヴァの声が割り込む レスターは、シャトヤーンのとなりにいる幼い女皇に視線をむけた 真摯なまなざしとぶつかる だが、どちらも目は離さずに 「タクトを、たのむ」 「おまかせ下さい」 「タクトは今回の一件、全ては自分の責任だと報告書をだした。もちろんわしのところで止めはしたがの…」 「ルフト先生…」 「心配そうな顔をするでない、軍部の連中も最初はいろいろわめきちらしおったが、タクトの代理の話になると 顔色をかえたわい。お前とタクト以外にエルシオールとエンジェル隊を率いて前線に立とうという者などおらんよ」 「そうですね、エルシオールはともかく、タクト以外にエンジェル隊の司令がつとまるのはウォルコット中佐くらいのものでしょう」 レスターの顔にいつものクールな笑みが戻る そして 「しかし、まさかエルシオールにH.A.L.Oシステムが組み込まれているなんて」 「紋章機ほど直接影響するものではないけどね、司令席に座っている人間のテンションが艦全体に影響するのよ タクトのテンションが常に一定値以上だったから今回の件がなければずっと発見できなかったかも」 ノアはなにかを考えるように手を組む そして、しばらくしてから考えがまとまったのか 「タクトの病状が急激に悪化したのも、ヴァインがクロノ・ストリング・エンジンの制御系統に細工したせいで負荷がかかったのね そして、思わぬ副作用まで生んでしまった…」 「治療方法は?」 「こればかりはわからないわ、どのみちはやくEDENを解放して本来の病気を治療してみないことには… そのとき副作用も治るかもしれないし、別の治療法があるのかもしれないし…最悪、治らないって事も…」 「…わかった」 ノアの言葉を、レスターはさえぎった そして、改めて全員を見渡すと 「お心遣い感謝します。あとのことはお任せください」 敬礼を一つ 全員を代表して、シヴァが口を開いた 「頼んだぞ、クールダラス」 「はい」
15話後半に続く
|