狼森、笊森と盗森

2005年03月31日(木) 今日でふげん勤務は終了です…の日

14話後編!

白き月を衝撃が襲ったのは、タクトが倒れてからちょうど一週間目のこと

「な、なんだ?」
地震のような縦ゆれに、レスターは病室を飛び出す
そこへ、通信がひとつ
『レスターさんっ』
それは、ミントからのものだった
「なにがあった?」
『すぐにエルシオールへ!緊急事態ですわ』
「どういうことだ?」
エルシオールが停泊している、内部ドッグへの道を急ぎながら、レスターは問いただす

『七番機が…奪われましたの』
「なんだとっ?!」

エルシオール艦橋
1週間ぶり
だが、酷く長い間はなれていたようだった
「…」
「副司令…」
心配そうな、ブリッジスタッフの声
レスターは、ひとつ深呼吸をすると
「だいじょうぶ、だ」
応えた
無人の司令席に、手をかける
そして
「通信をこっちにまわせ」
「はいっ」
アルモの返事とともに、モニターが浮かんだ
そこには
『タクトは間に合わなかったのね』
「ノア…」
『クールダラス副司令…だいじょうぶですか』
「お心遣いありがとうございます。シャトヤーンさま」
レスターは二人に向けて、一礼
顔をあげるのをまって、ノアは
『単刀直入にいうわ、7番機が奪われたの。なんとしてでも、奪り還して頂戴』
「犯人は?」
尋ねたが、レスターはその答えを知っている気がした
他の者たちの表情も、同じ
犯人はわかっている
だからそれは、確認、だったのだと思う
ノアは
『ヴァインとルシャーティよ』
「…」
『驚かないのね』
「驚いていますよ、充分にね」
レスターはゆっくりと、ノアの様子をみながら言葉を選んだ
ノアは小さくため息をつく
そして
『二人は、白き月を制御して持ち去ろうとしたの。私とシャトヤーンが気づくのがあと少し遅かったらやばかったわ
 失敗した二人はレストア中だった7番機を奪い逃走…クロノブレイクキャノンのおまけつきでね』
「目的は?」
『さぁね、ルシャーティがEDENの民であることは間違いない。だったら、すでにEDENがヴァル・ファスクの手先なのかも』
「…」
『どちらにしろ、二人をとっ捕まえれば全て片付くわ』
「了解」
レスターは敬礼をひとつ
「儀礼艦エルシオール、奪われた7番機奪還のために出航します」
『たのんだわ』
『マイヤーズ司令のことは、私たちにお任せください…どうか、ご無事で』
「…タクトを、おねがい、します」
そこで、通信は切れた

6色の紋章機が、駆ける
敵を蹴散らしながら
ヴァインとルシャーティの逃走が計画的だったことを裏付けるように
エルシオールと7番機の間に、ヴァル・ファスクの艦隊が立ちはだかった

「くそっ、どきなさいよっ」
ランファのアンカークローが伸びる
「ヴァインっ、ルシャーティ!私は納得しないんだからねっ!」
それは、次々と敵を撃破し

「どいてくださいっ」
ヴァニラのハーベスタ-のレーザー砲が逃げようとしていた敵艦を後ろから貫いた
「はやく、帰らなくては」
呟くと、新たな標的にねらいを定める

「早く追いつかなくてはっ」
トリックマスターのフライヤーが宙を舞う
「いきますわ、フライヤーダンス」
光の幕が、敵を一網打尽にしていく

「わーん、どいてくださーい」
ギュンッと高出力のレーザービームが、敵を一直線になぎ払った
「ヴァインさん、ルシャーティさん…どうしてですか」
泣きたいのをこらえて、必死でラッキースターの操縦桿を握る

「ちくしょうっちくしょうっちくしょう」
ガンッガンッガガンッ、殴りつけるような衝撃
「邪魔をおしでないよっ」
ガガッンッ、ハッピートリガーの引き金が怒声のように響く

「ヴァインさんっ、ルシャーティさんっ、とまってください!」
シャープシューターの、砲門が光る
「お願いですっ、お願いですからっ!」
収束した光は、次の瞬間、まっすぐに飛び、敵戦闘機に命中した

宇宙で爆発がおこる
それは、何度も,何度も繰り返し
そして
7番機以外の機体がなくなってはじめて
その通信は、開いた

『おや、みなさん…そんなに慌ててどうしたんですか?』

「ヴァインっ!」
モニターに、ヴァインの笑顔が浮かぶ
7番機の、オペレーター席
ネフェーリアとの対決の際、タクトが座っていた、その場所に
『こんにちわ、クールダラス副司令、それとエルシオールのみなさん』
ヴァインは、最初からなにひとつ変わらない笑顔でそういうと
少し首をかしげ、不思議そうな顔をして
『あれ?みなさんの大切な人の姿が見当たりませんね…タクトさんはどうかされたんですか?』
呟く
その瞬間、全員の背筋を冷たいなにかが滑り落ちた
「ヴァインさんっ」
耐え切れず、ミルフィーユが叫んだ
「どうしてですか?!どうしてこんなことを…」
『どうして?それは愚問というものでしょう』
「ルシャーティは?」
さえぎるように、ランファが割り込む
「ルシャーティもそこにいるんでしょ?!」
『えぇ、いますよ。姉さんになにか御用ですか?』
ヴァインはそういうと、モニターの視点を切り替えた
コックピット内部が映し出される
7番機のパイロット席
ルシャーティはそこに座っていた
「ルシャーティッ!」
『…』
だが、彼女の瞳はなにもうつさず、ただただ、虚空を見つめるばかりで
「ルシャーティになにをしたんだいっ、ヴァイン」
フォルテが叫んだ

『心外だな、僕が姉さんになにかするわけないじゃないですか?ねぇ』
姉さん、とヴァインがルシャーティに話し掛ける
その刹那、わずかばかり、ルシャーティーのサークレットが光を放ち
彼女はゆっくりと口を開いた
『えぇ、そうね…ヴァイン』
『ほらね』
「今のは…まさか………」
エルシオールのブリッジでレスターが呟く
同じ物を見たことがあるのだ
1年前のクーデターのとき
エオニアに攫われたタクトにも、同じ物が…
「なんてことを…」
ミントが目をそらして、呟く
「…酷い」
ヴァニラも悲しげな表情でこぼした、肩ではナノマシンペットが怒りに震えている
そんなエンジェル隊の反応に、ヴァインはつまらなそうな表情をすると
『お気に召しませんか?そうだなぁ、それじゃぁ』
キィン
耳の痛くなるような金属音がして、サークレットが光る
そして
『笑え』
ヴァインは、冷たい声で、そう、命令した
キィン
サークレットが光を増し
『うふふ、うふふふふふ…』
ルシャーティが微笑む
「やめてくださいっ」
ちとせの叫び声が、笑い声をさえぎった
「やめてください、そんな…こんな、ひどいこと…」
『これも気に入らないんですか?注文が多いなぁ』
ヴァインはやれやれと、ため息をつくと
『もういいよ、姉さん』
『…』
言葉とともに、サークレットが光を失い、ルシャーティの表情も戻る

「ヴァイン、貴様………」
『あぁ、そういえば姉さんは白き月でキチンと自己紹介したけれど、僕はまだでしたね』
にこりと
綺麗な、笑顔
画像が一度、ブレる
そして再びそこに映し出されたのは

『僕はヴァル・ファスク元老院直属特機師団長、ヴァイン』

白い肌
そして、ヴァル・ファスク特有の紋様
感情のない、瞳
「っ!?」
全員が、息をのむ音が、聞こえた
だが、それは、どこか予感めいたものだったのかもしれない
「どうしてよっ、あんた、ルシャーティの弟なんじゃないの?!」
「全部、嘘だったんですか?!」
ランファとちとせの声が、同時に響いた
『全部じゃありませんよ、姉さん…この女が、EDENのライブラリの管理者であることは本当だ』
「…嘘をごまかすために、一番効果的なのは、ほんの少し真実をまぜること」
ミントの呟き
『そういうことだね』
「なんのために…」
『もちろん、ネフェーリアを破ったという君達の調査のため…僕は君たちを高く評価しているんだよ』
「そいつはありがたいねぇ」
ありがたくって涙がでらぁ、とフォルテが自棄になって連呼する
『僕たちヴァル・ファスクには感情がない、存在価値は力できまる。君たちは合格だよ』
「合格…」
『そう。つまり…ヴァル・ファスクとして迎えてやってもいいってことさ』
ザワッ
その言葉に、ブリッジが揺れた

「断る」
ざわめきを切り裂いての、即答
それは
「クールダラス副司令…」
レスターは、モニターから瞳を反らさないまま
『もっとよく考えたほうがいいと思うが…』
「何度聞かれても答えはおなじだ」
『仕方ないな、僕も、この女も、君たちの事…とても気に入っていたのに』
お気に入りのおもちゃを取りそこなった子供のような顔
酷く残念そうで
しかし、本音の部分ではそれがわかっていたのだろう
ヴァインは表情を切り替えると
『じゃぁ残念だけれど、諦めるか…君たちを倒した後で紋章機とエルシオールは有効利用させてもらうけれど』
6色の翼と、白銀の艦を、ヴァインはみつめる
それは、品定めをするような目で
一通り見渡すと、ヴァインは思い出したように
『それと、白き月と…そこで眠っている優秀な司令官もね』
「タ、タクトさんに手を出さないで下さいっ!!」
ギュンッ
ミルフィーのレールガンが火を噴く
だが、それは7番機にあたることなく宇宙へと消えた
「ミルフィー、おちつきなっ!」
「だ、だって…」
『あぶない、あぶない…でも、この紋章機は本当に凄いな。ヴァル・ファスクの艦ならいまので落ちていたかも』
「タクトさんが、了承されるはず、ありませんわ」
ミルフィーユを慰めるミントの言葉
しかし、その応えはヴァインから
『そうでしょうね。でも、意志というのは関係ないものだ、こんな風に』
キィンッ
『あ、あぁ…っ』
サークレットが光り、ルシャーティが苦しげな声をあげた
「ルシャーティさんっ!」
『そうだな、姉がいたから、次は兄っていうのもいいな。彼は面倒見がよさそうだし…あぁ、大丈夫
 その時は、ちゃんとタクトさんの病気も治してあげますから』
「まさか…」
ヴァニラが震えながら、その言葉の先を迷った
ヴァインは笑顔を崩さずに、
『えぇ…タクトさんの病気は僕が仕掛けたんです』
そういうと、レスターに視線をむけて嘲笑う
『あの、キスのときにね。…ごちそうさまでした』
ペロリと、ひとつ、舌なめづり
「なんでタクトなんだいっ?!」
『総合的に見て、一番効果が期待できたからですよ。現実に彼とエンジェル隊の不仲、彼と副司令の不仲は戦闘にも響いた
 …それに彼は僕の正体にきづいているようだったし。あぁ、純粋に彼の才能が欲しかったというのも理由といえば理由ですか』
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうっ」
ランファがカンフーファイターの中で、泣き叫ぶ
レスターは…
レスターは、ブリッジで、いつものクールな表情を崩さずに
「エルシオールに細工をしたのも、貴様だな」
確認を、した

ヴァインは少し拍子抜けしたような表情になったが
あらためて
『そうですよ、ビックリしたでしょう』
「…わかった」
目をつぶる
そして

「エンジェル隊っ!」

掛け声
『はい』
「出撃だ、攻撃目標は7番機!」
『了解いたしました』
「ただし、パイロットは両名とも捕獲する」
『難しいこといってくれるじゃないか』
「できんとはいわせん、お前たちにならできるはずだ」
『…はい』
「7番機は翼のでていない状態だ、クロノ・ブレイク・キャノンも撃てないと思うが気を抜くな」
『わかりました』
「以上だ、作戦開始!」
『やってやるわよっ』

ギュンッ
カンフーファイターが加速する
それは、7番機にむけて一直線に飛び
ワイヤーアンカーが伸びる


『そうだね、遊ぶのもこれくらいにしておこうか』

ヴァインの呟き
それとともに

ドドン

『きゃぁっ』
衝撃が、横から、カンフーファイターを、襲った
「なんだ?!」
「て、敵が…次々と、ドライブアウトしてきますっ」
「なんだと?!」
モニターを確認する
7番機の後方に、敵艦隊
「どんどん増えていきます、数の確認が…」
「うそ、そんな…」
「くっ」
次々と増えていく、敵艦表示をみながらレスターが拳を握り締めた


『迎えもきたので、僕はそろそろお暇します…エンジェル隊、エルシオールのみなさん
 もうお会いすることはないと思いますが…あなた方との日々はそれなりに楽しくもあった』

「ヴァインッ!!」

『これは、ほんの御礼です…受け取ってください』

キィィ…ィインッ
ヴァインの言葉とともに、ルシャーティのサークレットが光を増す
『う、あ…あぁぁぁぁぁっ』
「ルシャーティさんっ」
「あんた、ルシャーティになにするのよっ」
『君たちは強かった、けれど、心なんて不安定なものに頼るから、僕たちに勝てはしない』
キィィィィィ…
『あぁぁぁぁっ』
「やめてくださいましっ」
「やめろっ、ヴァイン、ルシャーティが苦しがってるだろっ」
『こんな女のかわりはいくらでもいる。そうだな、この女が壊れたら、次はタクト・マイヤーズでも使おうか』
「…駄目」
「やめてぇぇぇっ!」
キィィ…ンンッ…

バサッ

紋章機の中で、たしかに、エンジェル隊はその音を聞いた
「うそ…?」
呟きは誰のものだったろう
「7番機に…ひかりの、つばさ…が?」
でも
かつて、その7番機にタクトと乗り、ネフェーリアを打ち破ったちとせは
その真白の翼をみつめ
「なんて…悲しい、光」

レスターもブリッジで、その光景を信じられない瞳で見つめた
優雅に、白い光をはなちながら、7番機が光の翼をひろげて、いる

「しまったっ、エンジェル隊、7番機の直線上から引け!!」
「クールダラス副司令っ」
「エルシオールは前進だ、可能なかぎり斜め前に進めっ、とにかく射程から離れるんだ」
「は、はいっ」

ヴァインは最後に、いつもの綺麗な笑顔でにっこりと微笑む

『クロノ・ブレイク・キャノン…発射』



光の道が銀河を真っ二つに割った



衝撃が、エルシオールを襲う
しばらくの、静寂
そして
「た、助かった…のか」
さすがのレスターも、信じられないという風に、モニターを確認した
そして
「エンジェル隊はっ」
気がつくと、司令席から各紋章機への通信を開く
『ミルフィーユ、な、なんとか無事です〜』
『こちらカンフーファイター…ぎりぎりだけど、よけれました』
『ミント・ブラマンシュ…回避に成功いたしました』
『ハッピートリガー、フォルテ・シュトーレン…無事だよ』
『…問題、ありません』
『烏丸ちとせです、少し余波を受けましたが、損傷は軽微です』
6人の声と姿を確認
ほぅっと、胸をなでおろした

「敵艦隊、こちらにむかってきます!」
ココの言葉に、レスターは舌打ちを
そして
「エンジェル隊!体制を立て直せ」
『で、でも』
『どうするんですか?!』
「エルシオールは後退だ!追ってくる敵のみを紋章機で撃破」
『なんとかやってみますわ…』
『あれだけの数に、どこまでやれるか、わからないけどね』
「だが、やらねばこちらがやられる」
『…はい』
『ちくしょぅっ』

ヴァル・ファスクとエルシオールの一方的な追いかけっこが始まった

じょじょに消耗させられながら進むエルシオール
『もう、エネルギーが底をついちゃう…』
『ナノマシンも、です』
それは、まるで狩りのようでもあった
『フライヤーが1機、打ち落とされましたわ』
『アンカークローもよ、どこか壊れたみたい…』
時間がたてばたつほど、敗色が濃くなり、それは希望をも塗りつぶしていく
『くそっ、弾切れだ』
『…』

「俺じゃ…やはり、駄目なのか…」

レスターは、ブリッジで呟く
司令席に手をかけ
こんなとき、いつもここに座っているアイツならなんというだろう?
(タクトの顔がみたいな)
切実に、そんなことを、願った
腹がたつほど無邪気なあの笑顔で
”だいじょうぶだいじょうぶ、なんとかなるって”
そういってくれるだけで、心は救われるのに
今、必死で戦っている6人の天使たちも同じ気持ちのはずだ
いや…
このエルシオールのクルー、全てが同じことを思っていた

「タクト…」

そう、呟いた次の瞬間


『あきらめちゃだめです!!』


それは、シャープシューターから、聞こえた
「ちとせ?」
ラッキースターの中で、ミルフィーが顔をあげる
『あきらめるなんて、そんな…そんなの、エンジェル隊らしくないですよ!』
「…ちとせ」
カンフーファイターの中で、ランファもその声を聞く
『あのとき、ネフェーリアとの戦いのとき、諦めかけた私に
 ”あきらめるな”っておっしゃったのは先輩たちじゃないですか』
「ちとせさん…」
そんなこともありましたわね、とミントは、トリックマスターの中で微かに微笑んだ
『あきらめたらそこで終わりだって…私たちはいつも全員で帰るつもりで戦うんだって』
「ちとせ」
フォルテも笑った、するとハッピートリガーも心なしか調子を取り戻す
『わたし…死にたくない…死にたくない!…わたしは、帰りたい…みなさんと一緒に、かえりたいんですっ!』
「…ちとせさん」
ハーベスターのコックピットで、ヴァニラは姿勢を、正した

「そうだな、ちとせの言うとおりだ」

レスターが、応える
『クールダラス、副司令…』
「あいつも…タクトもきっと、同じことを言うだろうな」
司令席に視線を流す
何度だって、思い出すことが、できる
そこにあった
絶対に揺るがない
自分たちを信じてくれる、瞳
たとえ、いまは、ここになくても

「さっさと帰るぞ!白き月へ…タクトが、待ってる」

『はいっ!』
6人の声が同時に聞こえた
その、とき


ドドンッ
後方の敵艦隊から、爆音
「どうした?敵の増援か?!」
『大丈夫です、どんだけこようと、バーンとやっつけちゃいます』
「え、エルシオールの後方に…クロノ・ドライブ反応が…」
『挟み撃ちってわけね』
「数の予想は?」
『どれだけこようと、負けませんわ』
「…わ、わかりません」
『よし、二手にわかれるよっ』
「え、あ…で、でも…」
『…どうか、しましたか?』
「これは、この反応は…」
『…え?あ、あぁっ』
「まさか…」

全員が、注目したそこを、光の弾幕が過ぎ去った
それは、ヴァル・ファスクの艦隊に命中する
同時に

『ヴァニラさーん、ご無事ですかー』

通信
「…無事」
ヴァニラは、ぼそりと、応えた
『あぁ?!なんて酷いお姿に…御労しい…でも、もう安心してください、
 この私がきたからにはヴァル・ファスクなんてけっちょんけっちょんにのしてさしあげますよ』
画面いっぱいのピンクの物体の言葉とともに、再び、ワープアウトした艦隊から攻撃が延びる
それは、次々と、エルシオールに群がる敵艦を蹴散らして
『ふはははははは、私のヴァニラさんに手を出した報いをうけるがいい〜』
ノーマッドの攻撃は止むことがない

「あの、ピンクいのがきたということは」
『ピンクいうな!』
「はい、皇国軍の増援です!」
「どうしてこんなところに…?」
「…EDEN解放艦隊か?!」
その考えにいきあたった、レスターが叫ぶ


『そのとおりじゃ』
パッ
通信が、割り込む
見慣れた初老の男
「ルフト先生っ!」
『だいぶこてんぱんにやられたようじゃの、あとはわしらに任せい。レスター』
「…はい」
『まぁ、そうはいっても…わしの出番もなさそうじゃがの』
大見得をきったわりに、ルフトは困ったように頬をかく
「え?」
疑問符をだした、レスターに
『まぁ、あれじゃ…レスター、お前……歯の1,2本は覚悟しておくことじゃ』
ルフトは仕方ない、というふうに呟いた
「…わかっていますよ」

その横を、2機の戦闘機と少数編成の艦隊が抜く

『どこのどいつだっ!タクトをあんな目にあわせやがったのはっ!!』
ココモ・ペイローはそんなことを叫びながら、軽量級の戦闘機を倒し数をかせぐ

『たっぷりとお返しはしてあげないとね!』
普段は冷静なマリブ・ペイローも、ココモにあわせるように飛び回り
取り残した艦隊は、退却しようと反転したところを容赦なく、後ろの旗艦が宇宙の塵へとかえていく
そのブリッジでは人のよさそうな髭の老人がたっていた
名は、ウォルコット・O・ヒューイ
ただ…いつもと少し違うところは
彼のことを知る人間がみれば、思わず別人かと思ってしまうような、その表情
それはかつて”超新星の白き狼”と呼ばれていた全盛期のころのもので



こうして、なんとか窮地を脱出したエルシオールとエンジェル隊は
傷心したまま、白き月へと帰還したのであった



2005年03月30日(水) 今回も…の日

今日は第14話なのですが、やはり容量オーバーとのことなので
二日にわけます(><;)

第14話「裏切りのエンジェル隊、絶体絶命ホットドック」

白き月
封印区間の、内部ドックに、エルシオールが泊まっている
「エルシオールのクロノ・ストリング・エンジンに異常は発見されませんでした」
整備班が慌しく走り回る中、クレーター班長の声がよく通った
「…そう、ですか」
「やっぱり暴走の原因は、他にありそうね」
応えたのはノアとシャトヤーン
二人は、同じように白銀の儀礼艦を見上げる
「エンジンの制御系統になにかあったのかもしれませんが、壊れてしまっていて…」
「撃ち抜いたのはまずかったわね、まぁそれしか方法はなかったんだけれど」
「それに、もともと…エルシオールのクロノ・ストリング・エンジンの解析は紋章機ほど進んでいませんでしたし」
「なにもかもが裏目にでたってわけね」
深いため息
「修理にはどれほどかかりそうですか?」
「ほとんど取り替えですから、修理するよりかは早く仕上がると思います…あと、2日もあれば」
「わかりました、みなさんお疲れで大変でしょうが…がんばってください」
「はいっ」
シャトヤーンの微笑みに、クレーターは元気よく返事をかえした
そして
「あの、ところで…マイヤーズ司令は」
「まだ意識は戻ってないわ。原因も不明よ」
「そう、ですか…あのエンジェル隊のみなさんとクールダラス副司令に
 エルシオールのことはまかせてくださいってお伝えください」
「わかりました。かならず」
「では、失礼します」
頭をさげると、彼女はそのまま駆け足で作業場のほうへと戻っていく

「2日か…。EDEN解放艦隊が到着するのと、果たしてどっちが先かしらね」
ドッグから白き月の宮殿への通路を歩きながら、ノアが自嘲気味に笑った
「ノア…」
「それと、タクトの意識が戻るのもね。…あの、馬鹿」
そこまでいったとき、分かれ道にでる
そして
「私はタクトの様子をみてから戻るわ、じゃあねシャトヤーン」
「今日も、ですか?」
「そ。シヴァと約束してるの。タクトの様子を1日1回報告するって」
(そんなに気になるなら自分から来ればいいのに)
とノアは思ったが、口にはださない
シヴァの女皇としての立場も、十分に理解しているからだ
それになにより、それは自分への口実でもある
(まったく、わたしも人のこと言えないわね…随分と甘くなっちゃったわ)
そんなことを思いながら、でもノアは今の自分が嫌いではない
「ありがとう、ノア」
「できない約束はしない主義なの。ったく、面倒なこと頼まれちゃったわ」
ノアはぶつぶついいながら、医療施設がある右の通路へまがった
シャトヤーンはその後ろ姿をみつめながら
「…ほんとうに、ありがとう」
もう一度、ちいさく、呟く

エルシオールが回収されてから3日
タクトはいまだに眠りつづけたままであった
症状は落ち着いたが、意識は戻らない
それを、レスターとエンジェル隊が交代で看病する日が続いていた

「あの、お見舞いをしてもいいですか?」
ルシャーティが訪れたのは、午後を少し過ぎたばかりの時間
「ルシャーティさん。はい、もちろんです」
ちとせはにこにこと笑って、彼女を中に招き入れた

「あぁ、ヴァインさんも来てくださったんですか?」
「えぇ。なかなかこれなくてすみません」
ルシャーティのうしろから、ヴァインが現れる
ちとせは扉をしめながら
「そんなことありません。それに、どちらにしろ、お見舞いは1日1回だけですから」
そう
白き月に運ばれたあとも、エルシオールクルーをはじめとした見舞い客が絶えることはなかった
最初は喜んでいたエンジェル隊とレスターだったのだが、そのあまりの多さに最後には
”見舞いは1人1日1回まで”
と扉に張り紙をし、完全締め切り状態
「凄い、ですね」
部屋にはいったヴァインは、呆然と呟く
「…これ、全部、お見舞いですか?」
ルシャーティも同じ気持ちだったようだ
部屋の中は、色とりどりの花に、果物籠、さらには本を始めとした様々な見舞いの品で溢れている
ちとせは、二人のために椅子を用意しながら
「そうなんです。これでも、生ものなんかは早めに片付けたりして減らしてはいるんですが…」
「廊下にあったのも…?」
「えぇ。入りきらなくて…比較的大きなものは廊下に…さ、どうぞお座りください」
「ありがとうございます」
ルシャーティが座る
ヴァインは、タクトの隣に立ち、じっとその顔をみていた
「タクトさんは、本当に…みなさんにとって大切な方なんですね」
呟き
それは、なにか考えを整理しているような響きで
だが、ちとせは気づかず
「はい、もちろんです。私は、そんなタクトさんといっしょにいれること、とても誇りにおもいます」
はっきりと返事を返した

「…えぇ、早く目を覚まして欲しいものです」
ヴァインは微笑んで続ける
その笑顔
それは、かつてタクトが恐怖した”綺麗な笑顔”だったのだが
後ろを向いていたせいで、ちとせには見えなかった

しばらくの雑談のあと
「あ、いけない…クールダラス副司令と交代の時間」
「もうそんな時間ですか?」
ルシャーティとちとせが時計を確かめる
「僕たちがついていますから、クールダラス副司令を呼びにいかれてはどうですか?」
ヴァインはにっこりと微笑んで進めた
ちとせは、すこし考えてから
「そう、ですね。ではお二人とも少しの間、タクトさんをお願いいたします」
二人に頭をひとつ下げる
そして、もう一度だけタクトの様子を確認すると、ちとせは部屋をでていった

「ヴァイン?」
扉が閉まるのと同時に、ルシャーティが不思議そうな声をだす
ヴァインは
ベットの隣に、たち
そして
「姉さんも、タクトさんが、好き?」
ルシャーティは、少し、驚きながらも
「え、えぇ…好きよ。とても、優しくしてくださって…もちろん、タクトさんだけじゃなくて、エルシオールのひとたちみんなも…」
「エルシオールでの日々は、楽しかった?」
「えぇ。とても楽しかったわ…貴方がいて私がいて…タクトさんとクールダラス副司令がいて、ミルフィーさんのお料理を頂いて…
 ランファさんに占いをしてもらったり、ミントさんとお菓子を食べたり…フォルテさんの射撃を拝見して…
 ヴァニラさんと一緒にクジラルームの動物たちと遊んで、ちとせさんにあやとりも見せてもらったわね」
ルシャーティは微笑む
ヴァインはその微笑を見つめながら
「…そう、それは、よかった」
「ヴァインは?」
「…僕も楽しかったよ。はちゃめちゃで刺激的で、お祭りのような日々だった」
「そうね」
「僕もタクトさんが気に入った、もちろんあの艦と、その乗組員たちもね」
「…?」
ヴァインはすぅっと目を細める
「…ヴァイン?」
不思議そうにルシャーティが首をかしげた
その表情がゆっくりと…
ゆっくりと
「姉さん」
「…」
ルシャーティの表情が、無くなったのを確認すると、ヴァインは名前をひとつ呼んだ
予想通り返事はかえらない
満足そうに笑う
「だいじょうぶ、寂しくないよ。姉さん…すぐにタクトさんも、エンジェル隊も同じようにしてあげるから」
ふっ
ヴァインの手が伸びる
それは、懇々と眠りつづけるタクトにかざされて…

バンッ

ヴァインが手に力をこめるのと、扉の開く音が重なった
出入り口にいたのは
「なにを、している」
「…少し汗がでていたようなので」
レスターはつかつかと中にはいり
そして
「悪かったな、変わろう」
「………えぇ」
ヴァインはにっこりと笑うと、その場を、離れた
レスターは
「ルシャーティ?」
沈黙したまま、語らないルシャーティにきづく
近寄ろうとしたところに、ヴァインの手がのび
「姉は寝てしまったようで、僕がつれて戻ります」
「そう、か…」
レスターは呟き、二人に背をむけた
「お大事に」
ルシャーティを抱きかかえ、ヴァインはそう呟くと、扉を閉めた

>>明日に続く



2005年03月29日(火) 今月のRUSHの日

今月のコミック版GA
…どうしろと?(いっぱいっぱい)

第13話「うしなわれるもののつぼ焼き」

種を蒔くよ
幸せの種を…

「タクトッ」
悲鳴と動揺で騒ぐブリッジを駆ける
「ゲッ…ホ…ガハッ…グゥッ………」
ビシャビシャ
泡交じりの鮮血が飛び散った
血溜まりに沈んでいる体を抱き起こして
「タクトッ、おい、しっかりしろっ!!」
名前を、呼ぶ
しかし、もうすでに意識はなくなっているらしく返事はない
ぐったりと弛緩した体が、重く
「タクトッ」
何度も何度も、繰り返し、名前をよぶ
「…ハッ…グッ…ゴホッ…」
ビシャッ、バッシャ
言葉のかわりに、血液の塊が溢れ出すだけ
「くそっ」
(おちつけ、おちつけ…)
心の中で繰り返しながら
(色は、赤…鮮血ってことは、肺からの喀血…)
レスターは、タクトの胸元に指をかけると
ビリッ
次の瞬間、横に力いっぱい引きちぎる
服が裂けた
(次は、気道確保…)
「グッ…ゥ…」
指を、口の中に突っ込む
そのまま、届く範囲で、固形物がないのを確認する
ない、大丈夫だ
引き抜く、そのまま、上半身を起こすと、前かがみの姿勢で固定
「…ッ…ェッ…グ…」
バシャバシャ
まだ残っていた血が、重力にしたがって、床に落ちていく
だが、それが最期だったようで、喀血は止まった
(あとは、体温の確保と…)
上着を脱ぐ
そのとき、呆然としているアルモとココの姿が目に映った
周りのクルーたちも同様だ
「なにをしているっ、救護班に連絡は?!」
怒鳴り声
それに
「ハ、ハイッ」
アルモは反射的に返事をかえすと、通信機に手をかけ
「…いや」
その、後姿に、声
レスターは、一瞬、考える
アルモが振り返った
「ふ、副司令?」
「司令室、だ。司令室に呼び出せ」
「え?」
「これ以上の、パニックは避ける。急げっ!」
「は、はいっ」
アルモが通信機をつなげたのを確認する
脱いだ上着でタクトを包みながら
「緘口令をしく、このことは口外禁止だ」
ブリッジ中を見渡して、命令した
その後、一言
「特に…絶対に、エンジェル隊にだけは知られるなっ」
つけたす
シンと、少しばかりの静寂
その後、あちこちから気の抜けた返事
その中に、アルモからの報告も
「ケーラ先生と連絡、つきました」
「わかった、しばらく…ブリッジを頼む」
「はい」
「クールダラス副司令…」
「次の指令があるまで各自待機、いいか、これ以上の混乱はなんとしてでも避けるんだ」
はっきりと告げたあと、タクトの体を抱き上げ
そのままブリッジをあとにした



司令室
「もう、いいわよ」
呼ばれて顔をあげる
寝室のドアから、ケーラ女医がこちらをみていた
その隙間からベットがのぞく
「…タクト」
傍に行く
足取りが自分でもわかるほど、ふらふら、していた
情けない
そんなことを思いながら
「タクト」
名前を呼んで、触れる
冷たい
かろうじて、顔の血はぬぐわれていたが
服や、髪についた血はそのままに
顔色が真っ青で
そんなことを思っていると
「出血の量が多かったから、体温が低くなってるし、顔色も悪いけれど、今のところ命に別状はないわ」
ケーラ女医が、的確な回答をくれた
「原因は?」
「わからないわ。ヴァニラにも診てもらうけれど、詳しいことがわからないかぎり、ナノマシーンでの治療も不可能ね」
彼女はそこまで、いうと
「クールダラス副司令、私は医師としての立場から一刻も早い専門施設での治療を提案します」
軍医としての表情で、こちらをみながら
「わかって、いる」
「白き月の医療施設に連絡をとります、よろしいですね?」
「…あぁ、だが」
「大丈夫です。周りにばれるようなことは避けます」
にっこりと笑う
「それと、あとでヴァニラをよこします。彼女にだけは診てもらわないと」
「あぁ…」
それは仕方ない
そう、答えようとした、そのとき

ダンッ

凄い音とともに、扉が開いた
そして
「タクトッ」

その、声は
「なっ…」
駆け出す
寝室を一歩でたところで、こちらにむかっていた一団とはちあわせした

「タクトが倒れたってのは本当かい?!」

顔をみるなり、フォルテ・シュトーレンの第一声が飛ぶ
それに続くように
「タクトさんは?タクトさんはどこですか?」
「無事なんですかっ、ねぇ、副司令っ」
「どうなんですの?」
「クールダラス副司令っ」
ミルフィー、ランファ、ミント、ちとせ、その後ろにヴァニラ
エンジェル隊全員がそろって、いた
わけがわからない
「どういうことだ、緘口令を、しいたはずだぞ?」
「そんなことは、どうだっていいんだよ、タクトはどこだい?!」
フォルテはそういって、レスターの体を押しのける
ドンッ
壁にぶつかった
そして
「タクトッ」
寝室のほうから、6人の声が沸きあがる
「くそっ」
舌打ちをして、レスターは立ち上がった
(誰が漏らした?それとも、もう漏れていたのか)
あの混乱では、それも仕方ないことなのかも、しれないが
ともかく、いまは
「お前らっ」
「レスターっ!あんたいったいなにをやってたんだい!!」
怒鳴り声と、怒鳴り声が、ぶつかった
「ぐっ」
「タクトがこんな状態になるまで気づかなかったのか?!
 ずっと傍にいたくせに、なんでこんなことになるんだよっ」
「フォルテさんっ」
今にも殴りかかってきそうなフォルテをミルフィーが後ろから羽交い絞めにする
返す言葉も、ない
だ、が

「フォルテさん、静かにしてください!」

その声は、ベットのすぐ脇から
声の持ち主は
「ヴァニラさん…」
「タクトさんの体に障ります」
その厳しい表情に
「…悪かったよ、ヴァニラ」
フォルテもおとなしく従う
ヴァニラに毒気をぬかれたのは、フォルテだけではなく
「とりあえず、移動しましょう」
「えぇ、そうですわね」
「私は残ります、治療が、ありますので」
ヴァニラはそういって、タクトの隣に座りなおすと、目を閉じる
ナノマシンが輝きだす
その光を見ながら
「ヴァニラ…タクトを、頼んだわよ」
ランファはそう呟き、扉を閉めた



「まさか、エルシオールを撃ったのが原因とか言いやしないだろうねぇ」
「フォルテさん、考えすぎですわ」
「だけど…くそっ、タクト」
拳を握り締める
「タクトさん…だいじょうぶ、ですよね」
「大丈夫にきまってるじゃない!」
扉をみながら、泣きそうな声で呟くミルフィーユにランファの声が飛ぶ
それは怒りに満ちていた
「大丈夫にきまってる、だって、タクトなんて殺したって死ななそうだもの!」
「…ランファ」
「クールダラス副司令、タクトさんに、いったいなにがあったんですか?」
「俺は医者じゃない、わかるわけ、ないだろう」
「そんな…」
ちとせの戸惑う顔
目をそらす
そして
「それより、お前たち、どうしてタクトが倒れたことを知ったんだ?」
気になっていたことを、問いただした
すると
「どうしたもこうしたもないよ。あたしらがエルシオールに帰還したときには
 すでにその話題で持ちきりだった」
「…くそ」
「どのみち長く隠しておけることではありませんわ」
「あぁ、その通りさ。気に入らない、あたしは気に入らないよっ!
 みすみすタクトをあんな目にあわせたうえに、あたしらに黙っていようとするなんて!」
「そうですよ。水臭いですよ!クールダラス副司令」
5人分の非難の目
その痛みに耐えながら
「あぁ、これは…俺の責任だ」
認める
「だから、今回は…俺にまかせてもらおう」
そして、いいきった
「そんなっ」
言葉を、さえぎる

「俺は、あのときから…なにひとつ、変わっちゃいない」

あのとき
タクトの気持ちに目をつぶり、聞こえないふりをして
目の前でエオニアに奪われた
そして、憎むことばかりに気をとられて
大切なことを見落として追い詰めた
1年前のクーデター
そのときから、なにも、変わってはいなかったのだ

「泣かさないと誓ったくせに、あいつを一番傷つけていたのは、俺だ」

顔をあげる
「だから、俺は何があろうとも、タクトを救う。救ってみせる…。
 それは俺がやらなければ意味がない、俺以外の誰がやっても駄目なんだ」

エンジェル隊と目があった
「ですが、この状況で…司令と副司令を欠くのは現実問題として不可能ですわ」
ミントが口火を切る
「どうなさるおつもりですの?」
「白き月との合流を急がせる。明日、遅くても明後日には合流できるはずだ
 タクトを医療機関に下ろし、俺も降りる」
「エルシオールとあたしたちを見捨ててタクトをとるのかい?」
「そうだ」
試すようなフォルテの質問に、はっきりと返事
「タクトの容態にもよるが、あいつが司令に復帰できないようなら俺も同じだ。
 あいつのいない場所にいるつもりはない」
ふいに、先日の言葉を思い出す
”副官だからタクトの傍にいるんじゃない。タクトがいるから、俺は軍にいる”
まさか、それがこんなところで実行に移されるとは思ってもいなかったけれど
「アイツは…タクトは反対するだろうがな」
「そうだね、そんで…タクトは自分を責めることになるだろうね」
「あぁ、そうだな。だが、俺にだって譲れないものはあるんだ」
そのことに
気づくのが少し、遅かったけれど

「でも…」
ミルフィーが、少し考えるそぶりをしてから、口を開いた
「でも、タクトさんはきっと…自分のかわりはレスターさんにやってもらいたいって
 思ってるとおもいます」
「…」
「タクトさんが、今まであたしたちのことに気を配ってくれたのは
 いつだってブリッジにレスターさんがいてくれたからじゃないですか
 あたしが、あたしがタクトさんなら、自分がいない穴はレスターさんに任せたいです」
「ミルフィー…」
「職務と看病は、たしかに…一緒にはできないけれど、だったらあたしが手伝います」
「そう、ですよ。クールダラス副司令、二人のいない穴は、あたしたちがなんとかしますよ」
ミルフィーの必死な表情に、ランファも動く
「だから、なんでも一人で背負い込もうとしないでください。レスターさんに譲れないものがあるのはわかりました
 でも、あたしたちにだって持てる荷物くらいあるはずです」
「それに、タクトはあたしたちの司令官だもの」
二人は必死で語る
だが
「駄目だ、君たちに…無理はさせられない」
「そんな…」
「気持ちはありがたい、だが、タクトはお前たちが…本当に大切なんだ
 このまま、お前たちにまでなにかあったら、俺はもうアイツに合わせる顔がない」
「間違ってますよ、そんなの!」
ちとせが叫んだ
「間違ってます!大事にしていただけるのは、嬉しいです。でも…
 でも、同じくらい私たちだって、マイヤーズ司令のことも、クールダラス副司令のことも大事なんです!」
「…ちとせ」
「お二人が辛いときに私たちが助ける、それのどこがいけないんですか?」
「ちとせの言うとおりだ、あんたが責任を取りたいってのはよくわかったよ。
 タクトのことを任せるのもいい。だけど、だったらあたしたちにだって出来ることはさせておくれ」
「フォルテ…」
「二人がいない間、二人の居場所を護る。それくらいのことは、出来るつもりだ」
「そうですよ。事情を話せば…きっとみんな、わかってくれるはずです」

そこに
扉の開く、音

でてきたのは
「ヴァニラっ」
「タクトさんの様子は?」
「ヴァニラさんっ」
「先輩」
ヴァニラは、少しばかり疲れた顔をしていた
そして
「駄目、でした…」
「そうか」
「原因がわからないので対症療法しか」
そういって、ヴァニラは
「ヴァニラ?」
レスターの前に、たった
見上げる
意志の強い、眼差しで

「レスターさん、艦を降りないで下さい」

「ヴァニラ…」
「タクトさんが戻ってくる場所を護るのは、レスターさんの仕事だと思います」
「…」
「タクトさんは、きっと…たとえ病気に侵されていてもこの艦を降りることはしません
 だったら、そのタクトさんの隣に、ずっといてあげて下さい
 …いいえ、それこそがレスターさんの役目だと私は思います」
「俺の、役目…」
俺の、望み
いつだったろう
”俺はいつだってタクトのそばにいたし、これからだってずっとそばにいてやりたい…
 タクトの望むことはなんだって叶えてやりたい…俺は、タクトが幸せでいてくれればそれでいい”
そんなことを、言ったのは
俺は
おれ、は…

「知ってた、さ」
言葉が落ちる
「知ってたさ、アイツの望みくらい。タクトは、ほんとうに…
 この艦とこの艦に乗っている奴みんなが大好きなんだってことくらい」
「レスターさん」
「アイツはたとえ、自分が死ぬことになってもこの艦に乗り続ける
 俺に、それが止められないことくらいは、知ってた…それでも…それでも、俺は…」
失いたくない
タクトだけは
それだけは、失うわけにはいかない
たとえソレが、あいつを傷つける結果になろうとも
「タクトさんは、必ず…助かります」
ヴァニラは、はっきりと、言い切った
「そして、この艦に戻って来れられます。でも、今はちょっと疲れてお休みになっている
 その傍にずっとついて、起きるのをお待ちになるのはレスターさんのお仕事です」
「………あぁ」
「だったら私たちは、お二人のお帰りになる場所を護ります。
 だって、お二人は私たちの司令と副司令なんですから」
そこまでいって、ヴァニラはやっと、小さく笑った
レスター、は
その少女の小さな肩を、ポンッと叩くと

「エルシオールを、頼む…」

一言
その言葉に、6人の声がそろって返ってきた

「はいっ、おまかせください!」



種を蒔こう



レスターとエンジェル隊は一緒に扉をでた
今後の打ち合わせなどをするために
レスターに関しては、ブリッジを放り出したままなのである
扉が開く
そこに…

「え?」

ワッ
音が溢れた
扉の外は
「み、みんな?」
ひと、ヒト、人の大洪水状態
それは、司令室の前から銀河展望公園の方までぎっしりと続いている
あまりの人だかりで、通路が見えないほどに
「なんだ、どうしたっていうんだ?!」
混乱する7人に
「クールダラス副司令!マイヤーズ司令の容態はどうなんですか?!」
「大丈夫なんですか?」
「どうなんだい、ミルフィーユちゃん、大丈夫なのかい?」
「ねぇ、なんとかいってよ」
次々と、質問が押し寄せる
「ちょ、ちょっと、まて…これはいったい…」
なんとか事態を把握しようとするレスターのところに
「みんな、タクトさんが心配で集まったんですよ」
「クロミエ?!」
きゅぅきゅぅきゅううう〜
驚くその横を、宇宙クジラが司令室へとんではいる
「これ、みんな?」
「えぇ、そうです」
クロミエは誇らしく言った
改めて、7人は人だかりをみてみる
エルシオールの全乗組員がいるんじゃないかと思うほどの、人
「ねぇ、どうなのよ!」
「悪いんですか?」
「マイヤーズ司令はー?」
ザワザワザワ
騒動は治まることなく
仕方なく
「タクトなら大丈夫だ。今、眠ってる」
レスターは大声で説明した


ワァッ

更に大音響
「よかったぁ」
「ほんと、もう凄く心配したんですよ」
「大丈夫だってー」
「マイヤーズ司令、大丈夫だってさ」
「よかったー」
「まぁ、タクトさんだしなぁ」
人だかりの多さに、伝言ゲームのように、レスターの言葉が後ろへ伝えられていく
まるで波紋が広がるように、みんなの心配そうな顔に明るさが戻った
そこへ
「みなさんっ」
「クレータ班長?!」
整備主任のクレータが、人垣をかきわけて現われる
そして
「紋章機の整備、終わりました」
「えぇ?!」
「任せてください、ばっちり終わらせましたから。みなさんはマイヤーズ司令についてあげていてください」
「クレータ…あんた…」
「こんなときくらい、お役に立たせてくださいよ」
バンッ
クレータは自信満々の笑みで、胸をたたいた
続くように
「クールダラス副司令!」
「ココ、それにアルモまで」
「すみません、私たちなにもいわなかったんですけど、なんか気がついたらもう艦内中に噂が…」
「いや、いい…それよりもお前たち」
「あ、それなんですけど、ブリッジのほう仕事がもうないんです」
「なんだと?」
「白き月と連絡も取りましたし、ヴァインさんの協力で航路も確保しました」
アルモとココは、クレータと同じように誇らしい笑みで、そういうと
「だから、どうかマイヤーズ司令の傍にいてあげてください」
「あとのことは、私たちに任せて下さいよ」
「…だ、だが」
戸惑うレスター
そこに、あちこちから声
「いてやれよ、副司令」
「そうですよっ!やっぱ司令のそばには副司令がいないと」
「タクトさんもそのほうが、絶対よろこびますって」
「あとのことはまかせてください」
「そうだそうだ、ちょっとは俺たちのことも信用してくれよ」
「エンジェル隊も!」
「そうだよ、ミルフィーユちゃん、こんなときくらい、傍にいてやんな」
「ランファさん!」
「もう白き月と合流するだけだから大した仕事もないし、ねぇ、ミントさん」
「フォルテの姉御ー!頼みますよっ!」
「いつも手伝ってもらってるんです、こんなときくらい恩返しさせてください、ヴァニラさん」
「ちとせさん〜、こっちは〜まかせてください〜」
「わたし、この前、マイヤーズ司令に倉庫整理てつだってもらって」
「当直の時、差し入れもらいました」
「クールダラス副司令に、研究資料の解析みてもらったっす」
「マイヤーズ司令は、エンジェル隊の司令だけどさ、エルシオールの司令でもあるんだ」
「そうですよ、だから…」
ザワザワ
その騒動は治まりそうに、なく
「ほら、みなさんがうんといわないと、ここにいる人たちみんな、仕事に戻りませんよ?」
クロミエが笑った
その言葉に、クレータやアルモたちもうなづく
「そのとおりです」
「はい」
レスターは
一つ深呼吸
そして

「わかった!あとは、まかせる!!」

最奥まで届くよう、精一杯の声で、叫ぶ

「まかせてください」
「マイヤーズ司令を頼みますよ」
「はいっ」
「了解しましたー」
「がんばらなくちゃ」
ワァッ
あちこちから、返事
その声を聞きながら
ききながら…
「あぁ、そういう…ことだったのか」
理解、した

「レスター?」
フォルテが、レスターを振り返った
レスターは
「タクトが言っていたんだ…幸せの種を、蒔くって」
「…たね?」
「こういう、こと、だったんだな…今、わかったよ」



”種を蒔くよ”
ぱらぱら
タクトはかすかに手を広げて、種を蒔く仕草
それは、酷く神聖な儀式のように見えて
”不幸は、たとえば天災や事故のように突然やってきて全て奪っていってしまうものだけれど
幸せは、種のようなものだと思う”
だから、俺はたくさん種を蒔きたいな
ぱらぱら
今はまだ小さいけれど
いずれ大きくなる、幸せの種を
”何度奪われても、何度失っても、俺はきっと繰り返し繰り返し、種を蒔くよ
いつか、こうやって幸せの実を結ぶことを夢見て”
ぱらぱら
ぱらぱら
その意味をレスターは今、理解した
やさしく、やさしく、いとしく、やさしく
種をまくタクトの優しい手
永遠に忘れることはない

「あいつの蒔いた種は、こうして、ちゃんと…実を結んだんだな」

「はい、大きな実を…結びました」
ヴァニラが呟く
「タクトさんは私たちのことが大好きだっておっしゃってくださいました
 私たちは、そんなタクトさんのことが大好きです」
そういったヴァニラの表情は、酷く誇らしげであった



2005年03月28日(月) 収まりませんでした…の日

第12話なんですが、日記にかける容量をオーバーしてしまったので
二つにわけました(しくしく)


その衝撃は、次の瞬間、エルシオールを、襲った



「なんだっ?!」
叫んだのは誰だったのか

フ…ゥォォォオオオオオオオオオオオオッ

唸り声が、銀河中に木霊する
「何が起こったっ」
状況の確認を求める、怒鳴り声に答えたのは
「エルシオールが…」
アルモの、声
震えている
「エルシオールが?なんだ、どうしたんだっ」
会話の間も、ブリッジは揺れた
悲鳴があちこちであがり、物が倒れ、喋ると舌を噛みそうになる
アルモは、震える声のまま、レスターとタクトのほうを振り返り
泣き叫ぶように報告、した

「エルシオールが、暴走していますっ!」

「なんだって?!」
「貸せっ」
タクトの声と、レスターがアルモから通信機を奪う動作が重なる
それは、エンジンルームのクルーとつながっていて
「動力班っ、どうなってる!!」
『わ、わかりませんっ、クロノ・ストリング・エンジンがいきなり…きゃぁっ』
ザッザザ
「おいっ、応答しろ…っ……くそ!」
レスターは、砂嵐の音しかしなくなった通信機を叩きつけた

ォォォオオオオオオオオオオオオッ
エルシオールは咆哮をあげながら銀河を…

『クロノ・ストリング・エンジンの暴走だって?!』
「あぁ、詳しいことは調べてみないとわからないけれど、電磁波やらなんやらが酷くて近寄れないんだ」
モニターのむこうで、フォルテの驚愕の顔
『なんてこった…』
「フォルテ、そっちの様子はどうだ?」
『あらかた片付いたよ、だが、エルシオールの異常で、あの子たちのテンションも下がりつつある』
タクトはコブシを握り締めて、ディスプレイをみつめる
敵の数はずいぶん減っていた、あとは清掃戦だ
しかし、コントロールを受け付けないエルシオールは、とまることなく異常なまでのスピードで前進し続けている
万が一、敵の増援などがあれば袋叩きにあうのは確実で
ゴホッ
タクトは軽く咳払いを、する
そして、ブリッジを一通り見回した
突然のエルシオールの暴走に、一時は騒然としたブリッジだったが
タクトの切り替えの早い方針と、レスターの的確な指示で、なんとか落ち着きをとりもどしつつあった
『タクト…』
不安そうな、フォルテの、声
一つ深呼吸をすると
「こっちはギリギリまでなんとかしてみる、フォルテたちはまず、前方の敵を頼む」
『了解』
通信は切れた

『駄目です、エンジンルームには近寄れませんっ』
『このままじゃ、エネルギーの暴走で、エルシオールが自爆しますっ』
報告が舞い込む
タクトは、目を、閉じた
それは、短い時間だったが、酷く、ひどく…長く、感じる
「レスター」
目を開け、前をむき、副官の名前を、呼ぶ
振り向いたその視線と、視線がぶつかった
「Dブロック後部を閉鎖する」
「…な、に」
「Dブロック後部は閉鎖だ、エルシオール全乗組員は格納庫より前方、A,B,Cブロックへ退避」
レスターはなにかいいかけ、口を開くが
しかし
「わかった。通達を急げ!Dブロック閉鎖。エルシオール全乗組員は格納庫より前方、A,B,Cブロックへ退避」
タクトの命令を、復唱した
それを確かめると、クジラルームへ通信を開く
クロミエが、でた
「タクトさんっ」
「クロミエ、ごめん。凄い衝撃がいくと、おもう」
「…はい」
タクトの意図を汲んだのか
クロミエは小さくうなづく
そして
「宇宙クジラを…クジラルームのみんなを、頼む」
「わかりました」
苦しげなタクトの言葉に
クロミエは、小さく微笑を、返して、通信をきった

ゴホッゴホ
思い返したように、咳が戻る
胸が痛い
だが、そんなことはどうでもよくなっていた
モニターを見る
ハッピートリガーが、最期の敵を粉砕

すぅ
はぁ
深呼吸、そして
「敵は?」
「レーダーに反応は、ありません…」
「Dブロックの閉鎖は?」
「完了、しました。Dブロックはクジラルーム以外は無人です」
胸が痛む
酷く
だが

ォォォオオオオオオオオオオオオッ
エルシオールの叫び声が
その痛みすら、かき消した



「エンジェル隊!」
タクトは、全員の通信をオープンにする
6人の顔が、浮かんだ
『タクトさん、こちらは片付きましたが…』
ミントの報告を、さえぎる
そして
「ご苦労様、次の任務だ…攻撃目標は………」
言葉をさえぎられた、ミントの顔が驚愕で歪む
タクトは、視線を反らさず

「エルシオールの動力部…Dブロックの最後尾だ」

『…?!』
『タクトさんっ!』
声があがる、エンジェル隊から
『うそ…わ、私たちが…エルシオールを、撃つ、んですか?』
『できるわけないじゃないっ』
ブリッジのあちこちからも
「マイヤーズ司令っ!」
「タクトさんっ」
だが、タクトはその決意がかわらないとでもいうように
「このままでは、エルシオールは自滅する、そうなる前に、エンジンを止める」
『…タクト、さん』
「頼む、これは、君たちにしかできないんだ」
真摯な言葉
だが、それは、あまりにも衝撃的すぎて
『できませんっ』
叫んだのはちとせだった
『できません、そんな…エルシオールを、みなさんを…タクトさんを撃つなんてっ』
『そうよ、できるわけないでしょ、あたしたちにっ』
「できなくても、やらなければ、エルシオールは沈む」
はっきりと、言い返す
包むことなく、真実を
「誰か、一機…一撃でいい、エルシオールのエンジンルームを撃ち抜いてくれれば」
『簡単におっしゃらないでくださいましっ』
ミントの声が響く
普段、冷静な彼女には想像もつかない激しさ
タクトは、一瞬だけ言葉をつまらせる
その瞬間



ォォォオオオオオオオオオオオオッ

絶叫が衝撃となり、銀河を駆け抜けた
エルシオールが、泣く
悲しく悲しく哀しく悲しく

「頼むっ、エルシオールを救ってくれ!!」

耐え切れず、タクトも叫んだ
答えたのは

『わかったよ、タクト』

今まで、ずっと沈黙を保っていた
「フォルテ…」

『あんたが、あたしたちなら出来るって信じてるんだ』

フォルテは、今までみたこともない優しい笑みを浮かべ

『あたしはタクトを信じる。あんたが出来るって言うんなら絶対にやってやるよ』

そして、いつものシニカルな笑顔
タクトは
タクトは、泣いた

「ごめん…ごめんっ、エルシオールを、頼む」
泣いた
無力な自分が悔しくて
そして
その信頼が嬉しくて
フォルテは、ひとつうなずくと
タクトの涙に応える様に、ハッピートリガーの照準を、エルシオールにむけた



ハッピートリガー内部
フォルテは小さく深呼吸を
引鉄が、重い
この重さは、命の重さだ
大切なものの重さだ
重すぎる
しかし、今の自分なら、この重さにも耐え切れる気がした
タクトの
一度として、反らされなかった、瞳
その強い信頼が、自分を強くしてくれるのだ

「いま、助けてやるよ…エルシオール」

トリガーを引く
閃光が、駆け抜けた
それは、エルシオールに向けて一直線に伸び
エンジンルームのある、最後尾に、斜め上から貫通する
抜けた光は、尾をひいて、銀河の彼方へ飛び去った

エルシオールは…

「とま、った…」

エルシオールは、静かに、沈黙した
「は、ぁ…」
ドッとフォルテの力が抜けたところに
『フォルテさんっ』
ミルフィーの泣き顔が飛び込んでくる
「あぁ、大丈夫だよ」
フォルテは、やれやれと力なく微笑みながら、目を閉じた



エルシオール内部
思ったほど、衝撃は走らなかった
わずかばかり、揺れ
電気が、消える
そして長い沈黙
非常用の電源が働き、光が戻っても
ブリッジのクルーたちは動くことができなかった
だが、氷が溶けるように、ゆっくり、ゆっくりとあちこちで動きが戻りだす
「た、助かった…の?」
「そう、みたい…」
アルモとココは、互いの席にしがみついたまま、無事を確認する

タクトは
(ごめん、エルシオール…)
そっと、座りなれた、その司令席を撫でた
この艦に乗っていたのは1年にも、満たない
だが、大切なものに時間など関係ないとでもいうように
エルシオールは、自分にとって、大きすぎる存在となっていた
ゴホッ
思い出したように、咳が戻る
緊張、していたせいかもしれない
力が抜けてしまって、体の感覚が麻痺しているようだ
ゴホッゴホッ
口の中に、鉄分の、味
(?)
少し、それを不思議に思ったが、じょじょに戻っていく活気に正気に戻る
これからが、また、大変だ
気を引き締めなくちゃ
どこか、遠くで、そんなことを、おもった
(あれ?)
ゴホッ…
ふいに
ふいに、タクトは自分が立っているのか座っているのかを忘れた
どこにいるのかも、忘れかける
急速に、世界が遠のいていく気が、した
(やらなきゃいけないこと、いっぱい、あるのに…)
しっかりしろ、と思うことすらできなく、なる
ゲホッゴホ…
咳の音だけが、自分の、体内に、響いて
(お、れ…)
どうしたんだろう?
無意識に、タクトは、レスターを探した
その姿をみておかないと、後悔すると、思ったから
探す
目の前にいるレスターを探し出すのに、ずいぶんと時間がかかってしまった
まずは、無事を確認
立ち上がり、冷静さをあっというまに取り戻した優秀な副官は事後処理を開始している
(よかった)
でも、背中しか、みえない
顔が見たかった
最期に…みておきたかった
名前を呼んでみようと思って、手をのばす
届かない
その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた

レスター…

言葉のかわりに、口からこぼれおちたのは………



「タクト?」
名前を、呼ばれた気がした
だから、振り返る
”レスター”
確かに、タクトが、自分の名前を呼んだ、と思った



一面の、赤い絨毯

レスターが振り返るのと、タクトが、その赤い絨毯のようなものに沈むのが重なる

バシャッ

水の、音?
どうして、ブリッジで水音が?
そんなことを思ったブリッジクルーたちも、音の元に視線を向けた

ビシャ…バシャ…ン

零れ落ちる
それは、倒れたタクトを中心に、広がって
ひろがって………

「タ、クト…?」
レスターは名前を呼んだ
返事はない
かわりに



そこには、血まみれでタクトが倒れているだけで………



2005年03月27日(日) おでかけライブin福井14…の日

というわけで、おでかけ福井14終わりました〜。
おつかれさまです


第12話「暴走儀礼艦おこしの詰め合わせ」

その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…レスター)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた

夢を見た…
”あぁ、これは夢だ”
意識のある夢というのはよくあることだ
ヴァインが立っている
「タクトさん」
「?」
「僕といっしょにいきませんか?」
綺麗な笑顔
最初は、酷く…怖い…と思った、その笑顔
ここ数日はそんなこともなかったのに
どうしてだろう?
今も、すこし…
背筋をはしった寒気に、応えるのを一瞬、躊躇した
伸ばされたヴァインの手が
俺に届いて………

バシッ

目の前で弾かれる
「くっ」
「?」
何が起こったか理解できない
俺は、ヴァインの手を弾いたその正体を確かめるために視線を流す

これは、夢だ
「去れ」
彼は、低い、よく通る綺麗な声で、はっきりと告げる
冷たくて優しい声
その声に聞き覚えがあった
いや、忘れることなんて、きっとできない
だから、これは夢なんだ
なぜなら、ヴァインの手を弾き、俺のそばにいてくれる
その人は…
「去れ、タクトに近づくな」


そのひとは…



「マイヤーズ司令?」
「え?」
名前を呼ばれて顔をあげる
心配そうな、アルモとココの顔
「大丈夫ですか?」
「あぁ、平気だよ」
傍らにいたヴァインも、声をかけてくれる
笑ってごまかした
なんとなく、視線をあわせずらくて誤魔化す為にモニターに目をやる
(今朝見た夢のせいだ…)
なんであんな夢をみたのか
自分でもよくわからない
ヴァインがいて
そして…
(ま、夢だからな)
気持ちを切り替えるために、思考にピリオド

「敵戦闘機、こちらに向かってきます」
そこに、レーダーをみていたジョナサンから報告がはいった
モニター画面をたしかめる
そして
「ちとせ」
『はい!』
「向かってくる戦闘機を撃破してくれ。シャープシューターの射程なら届くはずだ!」
『シャープシューター、了解』
「ランファ、ちとせの護衛をたのむ」
『おっけー』
指示をだした
紺にカラーリングされたシャープシューターが留まり狙いを定める
そのまわりに群がる敵機を赤いカンフーファイターが打ち落としていく
『落ちなさいっ』
正面に据えられた長砲身レールガンから光を放つ
それは、1本の光であったが、一寸のブレもなく、エルシオールの方へ方向転換をしていた戦闘機に命中
動力源を貫かれた鉄の塊は、爆発し、後には静寂が戻る

ゴホッゴホ…
「…よし」
タクトはエルシオールの傍で、敵影が消えたのを確認すると、2機に次の指令をだした
自分でも、少しばかり感心してしまう迅速な対応
(慣れって、怖いなぁ)
戦闘が、非日常でなくなったのはいつからだったろう?
クーデター当初、エンジェル隊と初めてであった時には想像もつかないこと
ずいぶんと、遠いところへ、きてしまった気が、する
ゴホッ
『タクトさん。エネルギー残量が半分をきりましたわ…まだ大丈夫そうですが』
ミントからの通信
タクトは少し考えてから
「いや、早めに補給しておこう。敵旗艦は手ごわそうだ。集中攻撃したい」
『了解いたしました』
フライヤーを回収し、ミントのトリックマスターがエルシオールへ進路をかえる
「格納庫に連絡、エネルギー補給の準備」
「はいっ」
レスターからの指示に、アルモが返答
タクトは…
その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…レスター)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた

戦闘に意味なんて、ない
失うものばかりで、得るものはなく
負ければ、護りたいものがなくなってしまう
降りかかった火の粉は払うだけ
だから、戦闘に意味なんてないと本当は思っている
たとえそれが、戦略上重要な戦いであろうとも
トランスバール侵攻艦隊の拠点の奇襲作戦
ロウィルと名乗ったヴァル・ファスクの艦隊を
分艦隊と本隊の間に、クロノドライブで割り込み
分散した片方の戦力が戻ってくる前に、一方を叩き
残りの一方をも叩く
戦略としては負けることは許されない戦いであった
(負けるつもりなんて、ないけどね)
前を見据える
考えていても、はじまらない
ひとつ、ひとつ、目の前の問題を片付けていけば道は開けるはずだから

ピンク、赤、青、紫、翠、紺
6色の紋章機が、軌跡を描きながら、宇宙を駆ける

「ラッキースター、いきますっ!」
ご機嫌な声とともに、ミルフィーユは中距離ビーム砲のトリガーを引いた
敵の戦闘機や巡洋艦の間を縫って、閃光が走る
ラッキースターにも、敵の攻撃や破片があたるがエネルギーシールドが被害を和らげた
「やったぁ、命中v」
ミルフィーユは、自分が放った光が、ロウィルの旗艦オ・ケスラにあたるのをみるとご機嫌な声
実際、彼女は上機嫌だった
タクトと仲直り、というか、前のような関係に戻ることができたから
まだ若干の問題(たとえばタクトとレスターの不仲、とか)も残ってはいる
だが、それもこの戦いに勝てば、なんとかなるような気がした
いや、なんとかしようと企んでいる
侵攻の拠点を占拠すれば、あとはEDEN解放戦へ準備をするだけ
準備期間中というのは、どんな戦場であっても、それなりに時間をとることができる
あまり軍略等に知識のないミルフィーユでもそれくらいのことは理解できていた
(えへへ、みんなに協力してもらっちゃおう。そうだなぁ、やっぱりピクニックかな)
そこまで考えると、あと彼女の思考は”どんな料理を作るか”にかわる
楽しみなことを考えると、ミルフィーユのテンションはさらにあがった
気がつくと、エネルギーゲージがMAXをさしていて
「あ、やったぁvよーし、バーンとうっちゃいます!ハイパーキャノンっ」
絶好調の彼女に、敵は、いない



ミルフィーユの放ったハイパーキャノンの閃光が、宇宙を騒がせた
それは、瀕死であったオ・ケスラに最期の一撃となる
繰り返される、爆発
だが
ブリッジに立つ、ロウィルは、取り乱すこともなく
「…おかしい」
火の手があちこちであがる
迫りくる、死
だが、彼は落ち着いていた
「戦力を二つに分散させたとみせかけ、奇襲をかけてきた奴らを逆に叩く
 そういう、作戦だったのではなかったか…」
静かな呟き
「そうか、裏切ったか」
答えは一つしかなかった
その事実を知った今でも、表情が変わることはなかったが
諦めているのではない
絶望もしていない
だが、同じくらい希望も持ってはいなかったのだろう
ヴァル・ファスクには感情や心といったものがないのだ
「それもいいだろう。踏み越えられる私が愚かであるだけのこと」
宇宙を見据える
白銀の艦
6色の翼
「それが、ヴァル・ファスクであることの証…」
言葉はそこで、途切れた



同じ刻
「…うっ」
エルシオールのクジラルームで、クロミエが耳をふさぐ
苦しげに
宇宙クジラが、鳴いた
悲しく悲しく哀しく悲しく



「?」
悲しい声をきいた気がして、タクトは振り返る
だが、そこにはなにもない
ゴホッ
咳払いをして、視線を戻す
そのとき、ヴァインと目があった
にっこり
綺麗な笑顔
「…ヴァイン?」
声は震えていたと思う
思わず、声を、かけてしまった
その、笑顔が、あまりにも…
「はい?」
ヴァインはその笑顔のまま、タクトのほうをむいた
「あ、その…嬉しそう、だね…」
慌てて言葉を取り繕う
(落ち着け)
心臓は早鐘のように鳴っていた
どうしてかは、わからない
ただ、あまりにも
「えぇ、嬉しいですよ」
動揺するタクトに気づいているのか、いないのか、ヴァインは続ける
表情を崩すことなく
「ロウィルが死にました。こんなに嬉しいことはない」
笑顔
酷く、綺麗な、笑顔で
「………」
「タクトさんは、敵でも、誰かが死ぬのは嫌ですか?」
「そう、だな…俺は、平和が一番好きだから」
ゴホゴホッ
息苦しくて咳を繰り返す
ゴホッゴホッ
ヴァインはそんなタクトをしばらくみつめ
そして
ふっと、先ほどまでの表情にもどると
「だって、あいつはEDENを苦しめていた男なんです。
 喜ぶのはEDENの民として当然のことでしょう?」
もっともらしいことを言う
だが、タクトにはそれが
僕ハ間違ッタコトヲイッテイマスカ?
という風に聞こえたのだ
ゴホッ
咳が、止まらない


「マイヤーズ司令、まだ分艦隊が残っていますが?」
会話を中断させたのは、レスターだった
自分を”マイヤーズ司令”と呼ぶ、冷たい言葉
先日の一件以来、二人の間には、完全な亀裂がはいっている
レスターはタクトを上官として接し
初めは笑ってすまそうとしていたタクトも、その態度の腹いせに
”クールダラス副司令”と、部下として扱ってしまう悪循環
(なお、そんな二人のとばっちりを受けているのは何の罪もないブリッジクルー達である)
だが、この時ばかりは
「…あ、あぁ」
タクトは生返事をかえし、ヴァニラとの通信を開く
助かった
心のどこかでそんなことを思いながら
「ヴァニラ、分艦隊との交戦まで時間がない。全機の修理を頼む」
『わかりました。タクトさん』
翠の髪の少女は、モニターのむこうで小さくうなづくと
『みなさん、修理を開始します…リペアウェーブ』
ハーベスターに積まれていたナノマシンが左右のディスクポットから放出される
それは、ハーベスターを中心に、光の輪を何重にも描くと
爆発するようにエリアの端から端まで届き、傷を癒していく

「分艦隊!レーダーに反応!!」
「よし、あとひとふんばりだ!みんな、頼んだよ」
タクトは、司令席から、エンジェル隊全員に声をかけた
『はい、バーンとやっちゃいます』
『まかせておきなさいよっ』
『了解いたしました』
『エルシオールは頼んだよ、タクト』
『任務了解』
『いってきます、タクトさん』
6人の声が心地よく響いた
彼女たちとのモニターが消えたのを確認すると、タクトは司令席に座りなおす
それを合図に、新しい戦闘へむけて他のクルーたちも動き出した
(本当に、慣れたよな)
ゴホッ
タクトはそんなことを思いながら
ちらり、と…前方で指示をとるレスターに視線をむける
黙々と働く背中
その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…レスター)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた
そして
(いや、いつまでもこんなんじゃ駄目だ)
思い直し、ぐっとコブシを握り締める
ゴホゴホッゴホ
その拍子に、咳がでたが、気にしない
気にしない
(みんなにも心配かけてるわけだし、いいかげん、仲直りしなくちゃ)
視線をモニターにむける
6色の紋章機
ミルフィー、ランファ、ミント、フォルテ、ヴァニラ、ちとせ…
喧嘩だってする、だけど、結局は、自分を信じてくれる彼女たちのためにも
(この戦闘が終われば、時間もできるし)
敵の拠点を占領し、トランスバールからの援軍を待つ
白き月も数日中には到着する
そうすれば、自分たちだけで、戦うということもなくなる
EDEN解放戦の先頭に立つ事にはなるだろうが
それでも、今のように身動きが取れないほど忙しいということもなくなるはずだ
だから
(この戦いが、終われば…)
ゴホッ
また再び、軽く咳を繰り返しながらも
タクトは希望のまなざしを、宇宙で戦う6人の天使たちへと…


容量オーバーのために、続きは明日に繰越!




2005年03月26日(土) お誕生日おめでとう…の日

タっくんお誕生日ー(いぇい)
おっめでとーv(><)ノシ
でも、日替わり連載のためにお誕生日記念SSはないのでした
(ネタかぶっちゃうからね)
残念><ノシ


第11話「なかなか治らない仲オチ」

種を蒔こう

「あれ?タクトは?」
ブリッジにはいって目的の人物がいないので、ランファが最初に口を開いた
「マイヤーズ司令なら先ほど、おやすみになられましたよ」
応えはアルモが
「すれ違ってしまったようですね」
ちとせが残念そうに呟いた
「そのようですわね」
「残念、です」
ミントとヴァニラが仕方ない、という表情
そこに
「なんだ、お前たち。全員そろって」
ブリッジに戻ってきたレスターから不機嫌そうな、声
「あ、クールダラス副司令」
ミルフィーが道をあける
そこから、ブリッジ内にはいると
「タクトならいないぞ」
そう言って、さっさと仕事へ移った
「タクトがいないんなら仕方ないねぇ」
フォルテがやれやれとため息
「マイヤーズ司令に、なにか御用だったんですか?」
なんだったら伝えておきますけれど、とココが
それには全員が首を横にふって
代表してミントが
「いいえ。これからお茶をするのでお誘いしようと思っただけですの」
「そうですか…」
ココはしばらく考えるそぶりをすると
アルモと視線をあわせて、ひとつ、うなづき
「あの、みなさん…」
ひっそりと、耳打ち
視線がちらりと、レスターにながれる
彼は気づかずに、先日ルフトから下された指令書に目を通しているところだった
確認すると続ける
「その、マイヤーズ司令とクールダラス副司令のことなんですけど」
「…えぇ、実は私たちもそれが気になっていたのでここまできたんですわ」
お茶のお誘いは口実のひとつであった

ロウィル艦隊との戦闘で、エンジェル隊とは完全に仲が戻ったタクトだが
レスターとはあいかわらず不仲が続いているのだ

「まぁ、あたしたちにも責任がないわけでもないしね」
ランファがちょっと居心地悪そうにつぶやく
「お二人の喧嘩ははじめてではないんで、時間がくれば解決すると私たちもおもうんですけれど」
「ここ数日、マイヤーズ司令の体調も悪いですし」
「今日も、ずっと咳こまれてて、おやすみになったのも、クールダラス副司令に怒られて、なんです」
「精神的な影響もあるのかも、しれません」
ヴァニラが呟く
「あれ以来、戦闘がないのか救いかねぇ」
「戦闘がなくてもなにかと忙しいですものね」
フォルテとミントの会話に
「そうなんです。特に航路などではヴァインさんに協力を求めることが多くて…」
「入れ違いとか、交代勤務も多いですし」
火に油状態が続いているという
「タクトさん…」
ミルフィーが泣きそうな顔で呟く
全員が同じ気持ちでいるところに

「アルモ、ココ、仕事に戻ってくれ」

レスターから声
「は、はい」
「わかりました」
アルモとココはそろって返事をすると
「みなさん、クールダラス副司令はあたしたちがなんとかしますから」
「マイヤーズ司令のこと、どうかよろしくお願いします」
二人は去り際にそういって戻った
気がつくと、他のクルーたちの視線がこちらに集まっている
どうやら、全員、同じ思いのようで
「はい、わかりました」
ちとせが力強く返事をかえした



ブリッジをでて移動する途中
「タクト!」
ランファがその姿を、みつける
「あれ、みんな」
「みなさん、こんにちわ」
タクトとルシャーティが仲良く歩いていた
「タクトさん、おやすみになられたのでは?」
ヴァニラが心配そうにかけよった

「あぁ、うん。途中でね…」
「その…お恥ずかしいかぎりなのですが、わたし…道に迷ってしまって」
ルシャーティが耳まで真っ赤にしながら告白
「タクトさんがいらしてくれなかったら、ずっと迷ったままでした」
「いや。お役に立ててなによりだよ」
照れたように笑うタクトは、いつもの彼で
エンジェル隊は小さく安堵

ゲホッゴホ
「タクトさん」
「あぁ、大丈夫。なかなか咳がとれなくて」
「大丈夫なのかい?」
「ケーラ先生に診てもらったし大丈夫だよ。ほんと咳だけで熱とかもないしね」
微笑んでかえす
「あまり、無理はなさらないでくださいね」
「ありがとう。ルシャーティ」
穏やかな会話

「そうだ。ちょうどいいわ。タクト、ルシャーティ、あたしたちといっしょにお茶しない?」
「あぁ、みんなはお茶しにいくところだったのか」
「そうですわ。どうでしょう?お二人とも」
「お茶ですか、えっと、そう…ですね、お邪魔でなかったら」
「うん。なんか、みんなでお茶するのも、久しぶりだなぁ」

ティーラウンジ
「ルシャーティさんって、方向音痴なんですか?」
期間限定”宇宙苺ミルフィーユ”を食べながら、ミルフィー
遠慮のない会話
それは、すっかりルシャーティがエルシオールになれた証でもあった
「実はそうなんです…EDENでも、いつも迷ってばかりで」
紅茶をまちながら、ルシャーティ
その表情は、最初とくらべて柔らかく優しい
「じゃぁ移動とか、どうしてたの?」
真っ赤なとうがらし味アイスを食べながらランファ
「移動は、あまりしませんでしたから」
「ライブラリの管理者というのも、大変なお仕事なんですね」
カモミールのハーブティーをおいて、ミント
「…あ、でも。ヴァインがよく、外へ連れ出してくれました」
「ヴァインがかい?」
「はい。機会があるたびに、いつだってあの子は私の手を引いてスカイパレスへ
 夕焼けが本当に綺麗なところなんです」
フォルテの前に、焼き鳥の皿が置かれた
「暖かいオレンジと優しい夜の色がゆっくりと混ざるあの時間は、なによりの宝物です」
「ぜひとも、みてみたいです」
ほぅと、お茶を飲む手を止めてヴァニラ
「はい、是非」
「そのときは、ルシャーティさんが私たちを案内してくださいね」
団子の串をおいて、ちとせが
「喜んで」
「あ、じゃぁ私はそのときお弁当つくっちゃいます」
「それはいいなぁ。みんなで夕焼けピクニック」
タクトがうきうきと同意した
「ミルフィーの強運に巻き込まれて、凄いことになるのがオチよ」
「でも、なんだかんだいいながら、きっと楽しいですわ」
「そうだねぇ」
「はい」
「楽しみです」
その後は、しばらくどうでもいい話が続く

ゴホッゴホ…
タクトは今日、何度目かの咳をした
すると
「タクトさん、大丈夫ですか?」
心配そうな、ルシャーティの声
「あぁ、平気平気」
タクトの言葉に
ルシャーティは少し安心したような表情をすると
次の瞬間、意を決したように
「…タクトさん、その先日はヴァインが失礼なことをして」
「え?」
いきなり話題がかわって、タクトが混乱
ルシャーティは
「その、もしかしたら私たち姉弟のせいでタクトさんとクールダラス副司令の仲が…」
言葉は最後まで続かなかった
「あははは」
タクトが小さく、笑う
ゴホゴホ
咳き込んだ
「タクト、さん?」
「いや。なんか前にも同じ事聞いたからさ。ごめんごめん」
変な意味じゃないんだよ、と
エンジェル隊は、そんな二人の様子をじっと見詰めて
「ヴァインがね、同じ事を前俺にいったんだ。やっぱり姉弟なんだね」
そのときは、エンジェル隊とタクトだったが
「そうなんですか…」
「うん。でもほんと全然平気だからさ。安心してよ」
「…」
「それにしても、ヴァインはほんとルシャーティのことを大事にしてるんだね」
タクトが、話題をかえた
だから
「そうよね、それに働き者だし。もうすっかり整備班の間じゃアイドルだもん」
ランファが意図をくんで、話にのる
「この前、宇宙コンビニでお会いしたときも、ジョナサンさんのお手伝いをしていらっしゃいましたわ」
「あ、私も食堂でガストさんのお手伝いしているの見たことありますよ」
「昨日、医務室のほうのお手伝いをしていただきました」
そこに
追加オーダーをもってきたティーラウンジのウエイトレスも
「つい先日も、うちの掃除を手伝っていただきましたよ。お優しい方ですよね」
「へぇ」
「クジラルームでもお手伝いされていたそうですよ。クロミエさんがおっしゃっていました」
「働き者だねぇ」
全員が感心したように、うなづく
「えぇ、ヴァインは本当に優しい子なんです」
ルシャーティが自分のことのように喜ぶ
「でも、やっぱりヴァインはルシャーティが特別なんだとおもうよ」
ゴホゴホッ
タクトが咳をしながら、感慨深そうに呟く
「え?」
「そうですね。なんというか、雰囲気が特別優しいもののように感じます」
ちとせが同意した
「それになんていったって、顔がいいもの」
「ランファさんったら、そればっかりですのね」
ランファの言葉に、ミントがあきれたように答えると
「ランファらしいや」
ミルフィーが笑う
その笑顔は、全員に感染して

ティーラウンジは、久しぶりに明るい笑い声で満ちている


皇国暦412年
トランスバール皇国は、ヴァル・ファスクに占領されたEDENの解放にむけて
儀礼艦エルシオールを中心に、白き月とEDEN解放艦隊をブリス星系に集結させつつあった


種をまこう
幸せの、種を

「あれ?ヴァイン…」
みんなとティーラウンジでわかれ、部屋に戻ろうとしたタクトが先に気がつく
と、向かい側からやってくる彼も
「タクトさん。おやすみなったのでは?」
にっこりと、いつもの、微笑み
その手には
「?」
「あぁ、これですか」
ヴァインはもっていたものをみせた
それは、色とりどりのキャンディがはいった瓶
「さきほど、エンジンルームのほうのお手伝いをしまして
 お駄賃として頂いたんです」
お一つどうですか?とヴァインはピンク色のキャンディをひとつ
タクトはそれをもらうと
「そっか、ヴァインが手伝ってくれるからみんな本当に助かってるよ。ありがとう」
素直にお礼をした
「いえ、お世話になっているのですから、これくらいは…」
ヴァインは少し戸惑ったような表情
ゴホゴホッ
タクトの咳が、通路に響く
「大丈夫ですか?」
「あぁ、うん」
「お休みになられたほうがいいですよ。部屋までお送りしましょう」
ポンポン
ヴァインはタクトの背中を軽くさすると、司令室まで先立って歩き出した

「でも、タクトさんもよくみなさんのお手伝いをされているんですよね」
「え?」
「みなさんが”前はマイヤーズ司令が手伝ってくれたのに”っておっしゃってましたよ」
「あははは、前回とか前々回とかは結構、暇だったりもしたんだけど」
タクトは申し訳なさそうに笑う
実際、今回は事務仕事などが山積みで、日課でもあったエルシオールの巡回が
あまり行えていない状況であった
「だから、なおさら、ヴァインが手伝ってくれるのは助かる」
「…お役に立てているなら幸いです。でも、タクトさんは司令官なのに
 どうしてそんなに働かれるのですか?」
「へ?」
いつも”もっと働け”とまわりから言われている身としては
聞きなれない言葉に、おもわずききかえしてしまった
「タクトさんだけではなく、エンジェル隊のみなさんもですが
 暇さえあればどなたかのお手伝いをされていますよね」
お仕事、お忙しいでしょうに

「情けは人のためならず。って諺しってる?」
タクトはゆっくりと言葉を選ぶ
「…はい。人のためにした良いことは、必ず自分に返ってくる。という意味でしたか」
「そういうことだよ。ヴァイン、幸せっていうのは種をまくことだと、俺はおもう」
「種、ですか」
「そ。今すぐには結果がみえなくても、いつか実を結ぶときがくるんだよ」
ぱらぱら
タクトはかすかに手を広げて、種を蒔く仕草
それは、酷く神聖な儀式のように見えて
「だから俺は、種をまく。たくさん、ね…それは早かったり、遅かったり
 ときには、芽を出さなかったり、思いがけないところで成長したりする
 でも…いつか、自分に返ってくるんだよ。だからそれは、俺自身のためでもあるんだ」
「なるほど…」
そんな話をしていると、司令室の前につく
ゴホゴホッ
「じゃぁ、ヴァイン。わざわざ送ってくれてありがとう。助かったよ」
「いいえ。タクトさんも、よく姉を送ってくださるでしょう?
 姉は方向音痴なので、僕も助かっていますから」
タクトは、そのヴァインの穏やかな表情に少し考え
「君は本当に、ルシャーティのことが大切なんだね。羨ましいよ」
素直にそう想う
タクトにも兄が二人、いた
もう…名前も顔もよく思い出せないけれど
(いや、もともと覚えていないのかもな)
マイヤーズの家を勘当される前でさえ、顔をあわせる機会が両手分にも満たなかった
「二人っきりの姉弟ですから」
「そうだね…そうだ、ヴァイン。部屋によっていくかい?お茶くらいしかないけど」
きくと
「そう、ですね。でも姉もまっていることですし」
「ルシャーティなら、エンジェル隊とお茶してるはずだよ」
「では…」
お邪魔します、とヴァインの言葉は続かなかった
さえぎったのは

「なにをしているんだ?」


「レスター」
タクトが振り返る
通路の突き当たり、ブリッジの出入り口
そこから、レスターがこちらに歩いてくるところだった
(ブリッジをでたすぐ左側が司令室なのである)
ゴホゴホッ
「タクト、やすめっていったろう」
「わかってるよ」
冷たい言葉に、どうしても返す言葉も冷たくなる
「わかっていたら、なんでまだこんなところにいるんだ」
イライラしているのが手にとるように

「タクトさん、僕…やはりお暇します」
「ヴァイン」
「また誘ってください」
ヴァインはにっこりと笑うと
「では、クールダラス副司令、失礼します。タクトさん、早くよくなってくださいね」
そう頭をひとつさげて、若干足早に、その場をあとにした
後姿を見送りつつ
「あーぁ、レスターが怒るから」
タクトは非難がましくそういうと、司令室の扉をあける
「…あぁ、そりゃぁ悪かったな。お楽しみの邪魔をして」
「なんだよ、それ」
はいりかけたタクトの足が、とまる
ゴホゴホッ

「…別に」
「レスター、言いたいことがあるならはっきり言えばいいだろう」
「自分の胸にきけよ」
「なっ」
ゴホゴホッ
感情が昂ぶるせいか、咳の回数が酷くなって

「エオニアの次は、あのガキか?…ったく、やってられないのはこっちだ」

その一言
そう、それは”禁句”という部類に入るであろう、ソレで
一気に
冷えた

「…レスター」
涙が出ないのが不思議だった
その声の響きに
「…っ」
レスターは、一瞬だけ”しまった”という表情をみせたが
声にしてしまった言葉を取り消すことはできず
だから
苦しそうに、目を、つぶると
「さっさと、その咳、なんとかしろ」
それだけいって、もう二度とタクトをみることはしなかった

去っていく後ろ姿をみつめる
いつまでも
みえなくなっても
だが
ゴホゴホッ
呼吸をするのも忘れていたのか、咳がもどって
はじめて、自分がまだ生きていることを思い出すと
部屋の中にはいって、扉を、しめた

プシュッ

扉がしまり、背後で壁になる
トンッ
軽く、その硬い感触に背中を預けて
ズルズルズル…
そのまま、急に、立っているのも面倒になって
その場に座り込んだ

「ばかやろう…」

眠りにおちる寸前の、その呟きが
レスターに対したものなのか
それとも、自分へのものだったのか
タクト自身にもわからない

しかも、誕生日にこの話かよ…;



2005年03月25日(金) 花束…の日

今日は花束をもらいました(わぁい)

第10話「破壊者来訪紅茶」



想い返すと、それは最初からだった気がする
エオニアのクーデターのとき
なんの説明もなしにいきなり戦闘に巻き込まれたときも
黒き月で紋章機が動かなくなったときも
半年前
ネフェーリアとの戦いの時だって
いつだって、それは最初から変わることなく


宇宙に戦火の花
「きゃぁっ」
「ミルフィーっ」
ラッキースターに群がる敵を、ハッピートリガーが打ち落とす
「だ、大丈夫です〜ありがとうございます。フォルテさん」
目をぐるぐる、ナルトのようにまわしながらもミルフィーが体制をたてなおし

銀河に響く破壊音
「シャープシューターの装甲がっ…あぁっ」
ドッドドッン
たて続けに攻撃をくらったちとせが絶叫を
そこに
「ちとせさんっ」
ミントのトリックマスターのフライヤーが、むかってくるミサイルを相殺
だが
「きゃぁっ」
頭上から、今度はトリックマスターに攻撃が降り注ぐ

死の世界が広がる空
「ヴァニラっ」
ランファのカンフーファイターのアームが、ハーベスターに狙いを定めていた戦闘機を打ち落とす
「…ありがとう、ございます」
「かまわないわ、それより補給に戻ったほうがいいわね」
「はい…」


ゴホッゴホ…
「劣勢だな」
咳を繰り返してから、タクトは困ったように呟いた
今日はこれで、3度目の戦闘となる
ついに現われたヴァル・ファスクは、容赦なくその牙をエルシオールにむけていた
未知の宇宙
未知の艦隊
そして、ここ数日のぎくしゃくとした仲によるエンジェル隊の不調
悪条件が、重なりすぎている


ヴァル・ファスク
旗艦オ・ケスラ
そのブリッジにたつのは一人の男
名をロウィルといった
トランスバール侵攻艦隊総司令官である
ネフェーリアとおなじような白い肌に、ヴァル・ファスク特有の紋様
だが、彼はその優勢とは裏腹に、無表情に宇宙をみつめていた


「ハーベスター、補給完了。戦場に戻りました」
報告と、ともに
「マイヤーズ司令!敵の増援ですっ」
「なんだって?!」
驚愕の声とともに、モニターには新たな艦影の表示
ゴホッゴホ
タクトは咳こみながら、次の指示を
そこ、へ

「失礼します」
一人の青年がブリッジへ姿をあらわした
「ヴァイン?」
タクトが首をかしげるのと
「戦闘中はブリッジへの立ち入りは禁止だぞ!戻れっ!!」
レスターの激昂が重なった
タクトは、その怒鳴り声に顔を若干しかめつつ
「いや、いいよ。レスター」
「…っ」
とめた
レスターは、なにかいいたそうに表情を歪めた、が
「勝手にしろっ!」
一言はき捨てる
ゴホゴホッ
「ヴァイン、なんだい?」
「はい。もしかしたら役にたつのではと、その…これを」
ヴァインは一枚のディスクをさしだす
ゴホッゴホッ
咳をしながら、タクトはそれをうけとり
「これは?」
「宙域のデータです」
「?!」
タクトはそれを、いそいでココに手渡した
「ヴァル・ファスクから逃げ出すときに、なんとかそれだけは『ライブラリ』から」
パッ
画面にあらわれるのは、詳細なまでの宇宙航路図
「すごい、ヴァイン、これは凄いよ」
ゴホッゴホッ
喜びすぎて、再び咳き込む
だが、すぐに復活すると
「お役にたてましたか?」
首をかしげるヴァインに
「あぁ、しかもこの地形…うまくいけば」
タクトはそう呟くと、しばらく考え
そして、エンジェル隊との通信回線を開いた


「みんな、聞いてくれ」

『タクトさん?』
ミルフィーが顔をあげる
「今、ヴァインから周辺宙域の星系データをもらった。転送する」
パッ
ミントはそう聞くと、送られてきたデータを開く
『助かりましたわ、これで地形の不利という条件はなくなりましたわね』
「あぁ、そこで今から作戦を発表する」
タクトは一呼吸、おくと
ゴホゴホッ
咳込む
コホンッ
咳払い、そして

「まずは、全機この迂回路をとおって、逃げろ!」

自信満々の顔で

『あんた、馬鹿じゃないの?!』
ランファの怒鳴り声が舞い込んできた
『逃げてどうするのよっ、逃げて!!』
同じく
「せめて撤退といえ、撤退と!」
レスターからも非難が
それでもタクトはめげずに
「じゃぁ、いいかえる。戦術的撤退だ」
『なにか考えがあるのかい?』
フォルテの問いに
「あぁ。まずは紋章機が先行、エルシオールはぎりぎりまで敵艦隊をひきつけておく」
タクトの言葉にあわせて、ヴァインからもらった新しい星系図にポイントがうかぶ
それは、6っつのマークが迂回路を回り
『あ、わかりました』
ちとせが嬉しそうにいった
「そう、紋章機のスピードなら迂回路をとった先、つまり…敵艦隊の背後をとれるはずだ」
『…はい』
ヴァニラが小さくうなづく
全員の顔に、若干、希望の色
しかし

「タクトさん、ですが…エンジェル隊のみなさんもかなり消耗していますよ」
ヴァインが進言する
「今お渡ししたのは、星系図だけです。それに、その作戦だと紋章機が背後をつけなかった場合
 逆にエルシオールが危険にさらされることになると思いますが…」
全員がタクトに注目、した
表情が明るくなっていたエンジェル隊も不安そうに、タクトをみる
タクトは


「だいじょうぶ」


一言。
「だいじょうぶ、って」
「俺はエンジェル隊を…みんなを信じる。彼女たちなら…いや」
タクトはいいなおして
ヴァインから視線をはずすと、モニターのエンジェル隊全員をみた
「この作戦は、君たちじゃないとできない」
声は不思議な響きをもって伝えられる
「君たちにしか、できないんだ」
それは、ひどく穏やかな表情

想い返すと、それは最初からだった気がする
エオニアのクーデターのとき
なんの説明もなしにいきなり戦闘に巻き込んだときも
黒き月で紋章機が動かなくなったときも
半年前
ネフェーリアとの戦いの時だって
いつだって、それは最初から変わることなく

絶対に揺るがない
自分たちを信じてくれる、瞳

『仕方ないわねぇ』

最初に、応えたのは
「ランファ」
カンフーファイターのコックピットで、ランファは自慢の長い金髪を一度かきあげた

『そうよね、あんたの無謀な作戦ができるのは、あたしたち以外にはいないわよね』
「あぁ」
タクトがうなづく
笑顔で
返されるランファの表情は、いつもの勝気な彼女のもの
「ランファとカンフーファイターのスピードは銀河1だ!」
『わかってるじゃない!さぁ、いくわよっ』

ギュゥゥ…ン

カンフーファイターのクロノ・ストリング・エンジンは、小さく小さく唸ると

ギュッ…ン
音すら置いて、加速、した

「カンフーファイター、出力上昇中!」
ゴホッゴホッ
その報告をきくと、気が抜けたのか、タクトは再び咳こんだ
だが、息をする暇も、なく

『あ、まってよ。ランファ〜』
ミルフィーの声がして、ラッキースターも駆け出す
『早くこないと、あたしが敵を全部やっつけてお手柄にしちゃうんだから』
『タクトさん、いってきます!』
「いってらっしゃい。でも早く帰ってきてくれよ。だって、ミルフィーはエルシオールの幸運の女神なんだからね」
『えへへ。バーンといってバーンとやっつけて戻ってきますから待っててくださいね』
「ラッキースター、出力回復…いえ、同じく上昇していきます」
「あ、ハッピートリガーも」
『仕方ないねぇあの子達は、タクトっちょっとの間、いい子でまってるんだよ!!』
「お願いします、フォルテ様」
光の帯をひきながら、2機をフォルテが追う

「まさか、そんな…」
ヴァインが信じられないものを見るように、呟く
それは、誰にも聞かれることはなかったが

周りのクルーたちは、しかしさすがになれているのか、次々と対応をして
「ハーベスター、シャープシューター、出力戻りました。上昇中です」
『信頼に、お応えします』
「ヴァニラ、みんなを頼むよ。君がいてくれるから彼女たちは安心して戦える」
『…はい』
『いってまいります、タクトさん』
「あぁ。ちとせに狙い撃ちされたらどんな艦でもイチコロさ!」
ハーベスターとシャープシューターが寄り添うように2本の軌跡を描き
「これで全機です。トリックマスター、でます!」
『では、タクトさん。またあとでお会いしましょう』
「みんなのフォロー、よろしくね。ミント」
『えぇ』
最後に、ミントがにっこりと優雅に微笑んで、モニターが全て消えた

ゴホゴホッ
一息つく
苦しそうに咳こむタクトのそばに、ヴァインが
「だいじょうぶですか?タクトさん」
「あ、あぁ…ありがとう、ヴァイン。君のおかげでなんとかなりそうだよ」
「いえ…」
ヴァインは少しだけ戸惑うように視線をながすと
意をけっしたのか
「でも、さすがはタクトさんです。まさかあんな劣勢がこんなにも好転するなんて」
「俺はなにもしてないよ。みんな、彼女たちのおかげだ」
タクトは当たり前のように返した
「いいえ。タクトさんの言葉で彼女たちは調子を取り戻した
 それどころか、まさか紋章機にまで影響があるなんて」
「それは、H.A.L.Oシステムのせいだよ」
「ヘイロウ?」
「Human-brain.and Artificial-brain.Linking Organizationシステム…
 頭文字をとってH.A.L.O。紋章機特有の操縦システムで、脳の一部とリンクして
 電算処理や確率計算なんかを…あー、つまり…彼女たちの調子やテンション…
 心の力によって性能がかわるってことだよ」
「なるほど…ですが、それだとあまりにも不安ではないですか?
 心というのは人間の中で一番不安定なものでしょう」
「確かに安定性には欠けるかもしれない。
 でもね、ヴァイン。だからこそ、彼女たちは時に考えられない力を発揮する」
ヴァインは…

「タクトっ!まだ戦闘は終わってないぞ!」

ヴァインが応えるより先に、レスターの声がブリッジに響いた
ブリッジクルー全員が、その声に、ビビる
「わかったよ。じゃぁ、ヴァイン。本当にありがとう」
タクトはもう一度ヴァインに礼をいうと、指揮にもどった

ゴホッゴホッ
「ったく、エンジェル隊にまかせっきりで、いいご身分だな」
「…悪かったよ。そんな言い方、しなくてもいいだろう?」
コホ…ン
「それと、その咳。本当になんとかしろ」
「わかってるったら」
振り切るようにタクトはいうと、モニターに目を向けた
6色の紋章機が、ロウィルの艦隊を蹴散らしていく
作戦は成功だ
レスターも実務にもどる
ブリッジにも、活気が、もどった

だから
ヴァインがブリッジをでていくときの表情も
「不完全な心…だったら、完全に制御された心で戦えれば…」
小さなその呟きにも
気づいた人間は、誰もいなかったのである





2005年03月24日(木) 今日は友達とご飯を食べに行くので…の日

今日は友達とご飯を食べに行く予定なので
早めに日記をかいてから出かけます
なにたべようかなv


第9話「喧嘩かき揚げ」

コホッコホッ

「風邪ひいたかな…」
コホコホッ
軽い咳を繰り返しながら、目覚ましのベルをとめる
妙な気だるさが、体の芯に残っていた
「慣れない事したからかなぁ」
ため息が、ひとつ
コホコホッ
咳を繰り返す

コホコホッ
「風邪ですか?タクトさん」
ブリッジ
今日も今日と、仕事にはげむタクトに声をかけたのは報告書をもってきたヴァニラであった
「あぁ、うん。ちょっと朝から咳がね」
「治療をしたほうが…」
「ありがと。でも、咳だけだし」
だいじょうぶ、といいたかった
しかし、それよりも早く
「治療してもらえ。うるさくてかなわん」
釘をさされた
「…レスター」
コホコホッ
軽い咳の合間に、その名前を呼ぶ

呼ばれた相手は、こちらを向きもしないで
「体調管理も仕事のうちだ。肝心なときに倒れられでもしたら迷惑するのはこっちなんだからな」
「…わかったよ」
長い付き合いから、ごまかすのは不可能と悟ると
タクトはおとなしく
「じゃ、ヴァニラ。お願いしてもいいかな?」
「はい」
ヴァニラは小さく頷き、ナノマシンを輝かせた
魔法のような光
優しく淡い緑の光は、しばらく輝くと一際大きくなったあと収束する
ゆっくりと目がなれて
名残として残ったのは、ちいさな錠剤
「これで咳は収まるはずです」
「ありがと」
「お水を…」
ヴァニラはタクトに錠剤を手渡すと、水を汲みにその場をいったんはなれた
その姿を見送る


(ねぇ、ねぇ、なんか今日の副司令,不機嫌じゃない?)
(うん、ピリピリしてる…)
アルモとココの会話
(そりゃそうだろ、昨日の今日だしさ)
そこにジョナサンが加わり
(なんせいきなりアレだもんねぇ)
アレとはつまり
(予告なしだったもんね。それも目の前で。ヴァイン君のキス)
昨日、タクトがヴァインにキスされたことについてであって
(恋人だって言った直後だったのに)
(あぁ、それに副司令ってけっこう嫉妬深いところがあるし)
(マイヤーズ司令も、次から次へと、災難だよなぁ)
更に、他のブリッジクルーもまざって話がどんどん広がっていく
(でも、マイヤーズ司令って男運いいよね)
(うんうん、クールダラス副司令にエオニア様でしょ?)
(ペイロー兄弟もね。そのうえで、ヴァイン君までだもん…いいなぁ)
女性クルーが羨ましそうにいうと
(つーか、男が男運よくてどーすんだよ;)
(だよなぁ…)
(ところで、エンジェル隊は女運がいいにはいるのか?)
(どーだろう、俺だったらちょっと自信ないけど…)
ざわざわ
がやがや
好き勝手に言いたい放題
他人の不幸は蜜の味、というか
エルシオールという限られた空間の中での数少ない娯楽、というか
スキャンダラスは飯の種、というか
盛り上がっていると

「お前たち、少し騒がしいぞ」

あからさまに不機嫌な声が一括した
そのとたん
ピタリ…
と、静寂がおとずれる

コホコホッ
タクトの咳だけが、響いた

プシュッ
吹き抜ける空気の音
ヴァニラがコップに水を汲んで戻ってくる
「ありがとう、ヴァニラ」
「いいえ」
薬を飲むのに適温の、ぬるま湯
タクトは大人しく、それで錠剤をのみこんだ
だが
コホコホッ
もう一度、軽く咳こみ
「タクトさん?」
「あぁ、いや大丈夫だよ」
「ですが…」
「本当に大丈夫だから。それに風邪とかいう漠然としたものじゃナノマシンでも治療しにくいだろうし」
「…すみません」
「そんなことないよ。だいぶ楽になった」
ほら、と
落ち込むヴァニラの前でタクトは少しばかり大げさに動いてみる
しかし
コホコホッ
「タクトさん…」
「うーちょっと調子に乗りすぎたかな」
「…では、あとでケーラ先生に診ていただいてください」
「うん、そうするよ」
タクトはもう一度、ヴァニラに礼をいった
それと、ほぼ、同じくして
プシュッ
再び、扉の開く、音
全員の視線が自然と、出入り口にあつまる
そこにいたのは

「ちょいと邪魔するよ」
「お邪魔しまーす」
「お邪魔いたします」
はいってきたのは3っつの人影
フォルテとランファ、そして
「ヴァイン…」
「こんにちわ、タクトさん」
ヴァインは優雅に微笑んだ
「…いいかげんにしろ、お前たち。ブリッジは遊び場じゃないと何度いえば………」
「遊びにきたんじゃないよ。用事があってね」
聞いただけで背筋が寒くなるほど、怒りのこもったレスターの言葉にはっきりと返事をかえしたのはフォルテ
(さすが…)
こんなときになんだが、タクトは素直に感心する
「ヴァニラに用があってきたのよ」
ランファはそういうと、さっさとヴァニラの前へ
「わたしに、ですか?」
「ルシャーティがね、頭痛がするっていうの。だから少しみてあげてほしいんだけど」
ランファのうしろで、ヴァインも頭をさげた
「お願いいたします」
「わかりました」
ヴァニラはひとつ頷く
「今、医務室にいるからいってやっておくれ」
悪いねぇ、ヴァニラとフォルテ
「いいえ。では、失礼します」
ヴァニラは入り口付近でひとつ礼をすると、ブリッジをでていった

「ルシャーティ、大丈夫なのかい?」
タクトは近くにいたランファにきいてみる

「大丈夫でしょ、ヴァニラがみにいったんだし」
タクトのほうを見ることはしないが、ランファは短く答えて
「そっかぁ…」
コホコホッ
「おや、タクト…風邪かい?」
「馬鹿は風邪ひかないっていうけどね」
「うん、ちょっと朝から咳が…」
コホッコホッ
会話は続かなかった

「タクト、お前も医務室いってこい」
「え、大丈夫だよ。レスター」
「お前が大丈夫でも、他の連中に風邪がうつるかもしれないだろうが」
「…」
なにかを訴えるように、レスターをみる
だが、レスターはそんなタクトを無視して作業を再開
コホコホッ
「タクト、副司令のいうとおりだよ」
見かねたフォルテが、やわらかく、そういった
「えぇ。随分と回数も多いようですし、僕たちこれから医務室へいきますから…ね?タクトさん」
ヴァインが心配そうにタクトの顔を覗き込む
そのとたん
ピキッ
気温がさらに、1度ほど、下がった
コホッコホッ
タクトは、もう一度、咳き込むと
「わかったよ。じゃぁしばらくブリッジを頼む…」
諦めたように、一言
だが
「もう帰ってこなくていい」
「…レスター」
それだけ一方的にいいきると、レスターはもうなにもいわなかった
「…」
コホッコホッ
「ほらいくよ、タクト」
ぐいっ
「え、ちょ…フォルテっ」
がっちりと腕をひっつかんで、フォルテは出口へ歩き出す
「ではみなさん、失礼いたしました」
「お邪魔しました-」
ヴァインとランファがそのあとに続いた
ブリッジを一歩外にでるとき
「じゃぁ副司令、タクトは借りてくよ」
レスターを探るように、フォルテが一言
しかし、それに返事が帰ってくることはなく
ため息が、ひとつ

扉が、しまった

「今日のクールダラス副司令、ちょっと迫力〜」
ランファが興味深そうに、つぶやく
タクトをひきづりながら歩くフォルテはあきれたように
「あぁ、ったく。あんた達は1シリーズに1回喧嘩しないと気がすまないのかい?」
「…1シリーズってなんだよ、フォルテ」
タクトが力なく、かえした
「喧嘩?お二人は喧嘩をされてるんですか?」
「はは、いやだなぁヴァイン。喧嘩なんかしてないよ」
「嘘つきなさいよ、あからさまに副司令怒ってたじゃないの」
ランファが笑いながらいった
「そんなこと、ないよ。あいつは不器用だからああいう言い方しかできないだけで
 本当は俺のことを心配してくれてるのさ」
「でも、それにしては言い方がきつすぎるわよ。あんた、また無神経なことやって副司令を怒らせたんでしょ」
コホコホッ
言葉のかわりに咳
「ランファ、やめないか」
「もしかして、昨日のことが原因ですか?」
フォルテの仲裁と、ヴァインの言葉が重なった
「昨日?」
「違うよ、ヴァイン」
タクトがやわらかく否定の言葉
「ヴァイン、なにかしたの?」
しかし、ランファが続きをさとした

「昨日、そのお二人が恋人同士だという話を聞きまして…その、少し興味があったものですから」
「うんうん」
「ランファっ」
「タクトさんにキスを…」
ヴァインは泣きそうな感じに、申し訳ない顔をした
そして
「行動が軽率でしたね、タクトさん、すみませんでした」
頭をさげる
タクトは
「あ、いや…ほんとに違うよ。ヴァイン」
困ったように笑いながら
追い討ちをかけるように
「そうよ、キスくらい」
ランファが続けた
「こいつ、もーっと凄いこといろいろやったんだから、ヴァインがきにしなくていいの」
そういって
「ほら、元気だして。ルシャーティもまってるし。いこいこ」
ぐいぐい
ランファはヴァインの腕をひっぱってさっさと先へ進む
コホコホッ
取り残されたのは、タクトとフォルテ
コホッ
「タクト、本当にだいじょうぶなのかい?」
「うん。ヴァニラにも診てもらったし」
フォルテは心配そうにタクトをみつめ
ふぅ
ため息をつくと
ポンポン
その頭を2,3度撫でて
「ランファのことはあんま気にするんじゃないよ」
「だいじょうぶ。ランファに悪気が無いことくらい俺にだってわかるから」
コホッ
「…さてと、それじゃさっさと医務室へいこうか」
「あぁ」
二人は再び歩き出す
途中、フォルテが空気をかえるように
「そうだ、タクト。暇になったんだから、たまにはあたしらとお茶でもどうだい?」
いつものシニカルな笑みでそういった
コホッ
タクトは、もう一度小さく咳こむと
少し間をおいてから
「いや、今日くらいは大人しく寝ることにするよ」

コホコホッ

(っ痛…)
軽い咳だが、何度も繰り返したためか
胸が痛んだ
鈍い痛み
それは、あまりにも鈍くて
本当に胸がいたむのか、それとも
痛いのは心なのか、区別がつかないほどに
タクトは無意識に、心臓のあたりを掴んだ
胸が痛い…
しかし
「そうだねぇ、あまり…無理をおしでないよ」
心配そうなフォルテの言葉に
「あぁ、だいじょうぶだよ。ありがとう、フォルテ」
小さく微笑みを返すと、その痛みもいつのまにか、わからなくなってしまったのだ

コホッコホッ






2005年03月23日(水) 弟に…の日

車ぶつけられました(涙)


第8話「とらぶるプティング」

「タクト、お前…熱でもあるのか?」
「へ?」
なんの前触れもなく、そういって額に手をあててきたレスターにタクトは驚く
大きな手
(…いいなぁ)
同じ男としては、ちょっと羨ましい
そんなことを思っていると
「熱はないか」
「あるわけないだろ。…なんだよ、いきなり」
「いや、ここ数日…お前がエンジェル隊とお茶もしないで仕事ばっかりしてるから」
そういうレスターの後ろでは、アルモ、ココをはじめとしたブリッジクルーが同意するようにうなづいている
(日頃の行いかなぁ…)
トホホ…とタクトは心の中で泣いてみた
白き月での謁見以来、ヴァインとルシャーティと会話する機会が多くなり
それにともなって、仲直り…とまではいかないが、エンジェル隊との仲も徐々に元に戻りつつあった
一部のいじっぱりな人物(誰とは特定しないが、例えるなら辛いもの大好きな彼女)が
恥ずかしがって顔をあわせれば鉄拳で空の彼方までぶっ飛ばされるのを除けば(笑)
まぁ、それはそれでいつもどおりといえないこともないし
とはいうものの、流石に前と同じように戦闘中以外はいつも一緒…というのも気まずい
そこまで戻るには、もう少しばかり、時間の流れが必要なわけで
自然と、タクトのすることは仕事しかなくなってしまった
それだけ、だったの、だが…
「俺が仕事しちゃわるいのかよ」
「誰もそこまでいってないだろう?」
不貞腐れた言葉に、レスターがやれやれとため息
そして
「エンジェル隊はいいのか?」
「あぁ。みんな率先してヴァインとルシャーティにかまいっきりだもん」
もともと、かまいたがりであるところに、まるで人形のような姉弟
それは彼女たちの格好のおもちゃであった
「ヴァインとルシャーティか…」
「レスターは、二人のこと、どう思う?」
話題にでたところで、参考意見をもとめてみる
冷静沈着な副官は
「どう、ってな。そういったことはお前の得意分野だろうが…いっておくが、俺に人を見る目はないぞ?」
万能型の天才である副官は、自分でなんでもできるので他人に興味が薄い
あっさりといいきった
「なんだ、なにか気になることでもあるのか?」
「…というわけでもないんだけど、なんていうかな、ヴァインが…」
そこに
「お二人ともとてもお優しい方だとおもいますけど」
二人の会話をきいていた、アルモが意見を
そのアルモにひとつうなづいて、ココ
「えぇ。昨日も資料を運んでいたら手伝ってくれました」
「あ、俺も俺も」
「わたしもです」
あちこちのブリッジクルーからコメント
「へぇ…」
タクトはひとつ感嘆の言葉
まさかここまで、二人がエルシオールに馴染んでいるとは
「それになにより、お二人ともすっごい、綺麗じゃないですか」
「ヴァインさんなんて、整備班のお手伝いなんかもしてくれるらしくて、すっかりアイドル扱いだとか」
整備班
「整備班、ってことはクレータ班長か」
美少年アイドルのおっかけが趣味の彼女らしかった
「女どもの考えることは、わからん」
レスターは二人の会話をききながら、ひとつため息
「そーいえば、アルモ、ココ。俺も一昨日、データ整備手伝ったじゃないか。俺はアイドル扱いにならないの?」
その横でタクトがアホな質問

「あはははは、マイヤーズ司令ですし」
「ねぇ」
アルモとココは冷や汗たらたらで、ごまかした
「どーいう意味だよ…」
しくしくしく
タクトは泣きながら、自分で言ったことを後悔する
そこに容赦なくとどめ
「ま、けっきょくは顔ってことです」
…悲しかった(涙)
そんな馬鹿なことを繰り返していると
最後に
「まぁ、なんだ…あんまり、無理はするなよ」
ポンポン…
レスターは、ひとつ咳払いをしながら、タクトの頭を二度はたく
軽くて優しい音がして
「…」
視線を投げると、照れているのか、さっさと実務に戻る相方の後姿
そんななんでもないことが嬉しくて
タクトは、おもわずにやけてしまうのだ

そんな風に
ブリッジでいつもの光景が繰り返されていると

「お邪魔いたします」
そういって入ってきたのは
「ちとせ…と、それに」
「こんにちわ、タクトさん」
「お仕事、ごくろうさまです」
ちとせの後ろには、ヴァインとルシャーティ
先ほどまで話題に上っていた二人の姉弟は、優雅な仕草で一礼
タクトはとりあえず、ちとせに声をかける
「今日はちとせが案内役?」
「はい。エルシオール巡りもブリッジで最後です」

「ブリッジは遊び場じゃないんだぞ」
「遊びじゃありません。交友を深めるための見学です」
あきれたレスターのものいいに、ちとせははっきりと言い返した
(ちとせもだんだん、みんなに毒されてきたなぁ)
タクトは口にはださす、そんなことを思う
そこに
「あなたが、クールダラス副司令ですか?」
ヴァインが、レスターに視線をむけながら言った
「あ、あぁ」
まさか自分に話し掛けられるとはおもっていなかったレスターが返事を
タクトも
「ヴァイン?」
不思議そうに、ヴァインを見た
ヴァインは小さく笑って
「突然失礼しました。エンジェル隊のみなさんによくお話を伺っていたので、どのような方だろうと思って」
「へ?」
「俺の?」
「えぇ。エンジェル隊のどなたにお聞きしても、自分たちが戦ってこれたのは、
 タクトさんとクールダラス副司令のおかげだとおっしゃるんです」
「そんなことを?」
タクトは思わずちとせに視線をなげる
ちとせは
「はい!」
力いっぱい答え
「私たちのチームワークの中心となっているのは、タクトさんとクールダラス副司令の絆なのです
 先の大戦の時も、新人の私が大役を勤めることができたのは、お二人がいて下さったからなんですよ」
「先の大戦というのは、ヴァル・ファスクのネフェーリアを破った…という?」
ヴァインが興味深そうにたずねると
「はい!」
手を組み、夢をみるように語る
その目には、少女漫画のような、きらきらの星
「…ち、ちとせ」
帰ってこーい、とタクトは小さく手招き
「絆、ですか」
ヴァインは何か考えるように呟く
その隣で、ルシャーティが
「でも、クールダラス副司令って本当にかっこいい方なんですね」
「…」
普段ならば、くだらんと一言で切り捨てるレスターだが相手がルシャーティだったので、寸前のところで思いとどまる
「エンジェル隊のみなさんや、他の女性クルーのみなさんも口々にかっこいい方だとおっしゃっていたので
 どんな方だろうって、とても楽しみにしていたんです」
「それにとても優秀な方だと伺っています。文武両道で、機転に長け、信頼も厚いのだとか」
ヴァインとルシャーティは無邪気に、レスターに関する話を
当の本人は、返事をかえすことも、かといって無視することもできずに固まっているのだが
(こまってるこまってる)
(ファイトです、クールダラス副司令)
ちとせとタクトはそんなレスターを微笑ましく眺める

「でも、そんなに優秀な方がどうして副官なのですか?」
「え…」
「あぁ、失礼。深い意味はないんです。ただ、ひとつの艦に優秀な指揮官が二人いるよりかは
 2艦に分かれた方が、戦略なども広がるのではないか…とおもっただけで」
ヴァインは綺麗な笑顔で微笑みながら
「クールダラス副司令の階級は中将でしたよね?普通なら艦隊司令や参謀長官などもできる高官でしょう
 それをわざわざタクトさんの副官でいるのは、正直もったいないと思ったので」
「ヴァイン?」
ルシャーティが首をかしげて、弟をみる
ヴァインは、まるで理科の実験結果をまつ小学生のように、どこかウキウキとした眼差しでレスターの答えをまっていた
「あ…」
きまづい空気にちとせが隣のタクトに視線をながす

「タクトさん…」
ちとせには、タクトが泣き出しそうに、見えた
実際は、いつもとかわらない笑顔だったのだが
そっと手を伸ばす
だが、ちとせの手がタクトに届くよりも、はやく

「俺はタクトの副官以外をやるつもりはない」

レスターの言葉
きっぱりと
そして、どこかしら怒りを含んでいるようにも聞こえる言葉
その姿に、ちとせは以前、タクトを傷つけるものには容赦しない。といったレスターの言葉を思い出す
ヴァインはきづいているのか、それともただ気にしないだけなのか
「それは、なにか理由でも?」
堂々ときりかえし、次の言葉をまつ
弟の態度に、ルシャーティは不安そうに、その服のすそを掴んだ
だが、ヴァインはそれを無視して、視線はいまだレスターに注がれたまま
「理由なんてないさ。ただ、タクトには俺が必要ってだけだ」
「そう、なのですか?…でも」
次に、ヴァインの視線はタクトへ
視線があう
びくっ
タクトは無意識のうちに、一歩、後ろへ下がった
ヴァインは笑顔を崩さず
「タクトさんはどうなんです?」
「どう、って…」
「本当にクールダラス副司令が副官として必要なのでしょうか?」
「え、そ、そりゃもちろんだよ」
「どうしてです?だって、僕がみたところタクトさんはとても素晴らしい司令官だ
 でも、クールダラス副司令も優秀な方なので、そのありがたみが薄れている感じがするのですが」
「そんなことないよ。俺、怠け者だからレスターがいないと、困る…」
タクトの語尾が、段々弱くなって
「クールダラス副司令と限定する必要があるんですか?たとえば、そうエンジェル隊のみなさんとか」
「レスターとは、士官学校からずっといっしょだったし。気心がしれてるというか」
「…でも、人はいつまでも同じ関係を保つことは難しいでしょう。歳をとれば、立場もかわります」
ザワザワ
ブリッジクルーが騒ぎ出す
空気が、いつのまにか、冷たいものにかわっていた
ヴァインは、しかし、それすらも気にせず続ける
「それに、自分と同じ…もしかしたらそれ以上の能力の方が副官だと、劣等感や、心配事が絶えないでしょう?
 そう、たとえば…”彼は無理をして自分に付き合ってくれているんじゃ……」
ヴァインの言葉は最後まで続かなかった
ぐいっ
「へ?」
タクトの視界が、ゆれる
気がついたときには、すでにレスターの腕の中
レスターはタクトを片手で抱きしめつつ
睨む様にヴァインに視線をあわせて
「俺のいい方が悪かったな。言い直そう」
ひとこと

「俺にはタクトが必要だ」

言い切った。
「副官だからタクトの傍にいるんじゃない。タクトがいるから、俺は軍にいる」
「レ、レスター…そ、そのぅ、みんなみてるんですけど…」
ブリッジクルーの視線は一点集中
さすがのタクトも、恥ずかしくて顔が真っ赤だ
しかし、タクトのささやかな抵抗は
ヴァインによってかき消され
「なるほど、一番大切なのはタクトさん、ということですか…
 わかりました。不躾な言い方になってしまってすいません」
言ってから、頭をひとつ、さげる
だが、レスターはまだ警戒しているのかタクトを手放そうとはせずに
「ヴァインさんは、少々、難しく考えすぎですよ」
空気が若干和んだのをかんじて、ちとせが間に割って入った
「そう、ですね。…でも、なんとなくわかった気がします。これが皆さんがおっしゃる”絆”というものなんですね」
それは、まるで最終確認をするような口調で
答えたのは、ちとせ
「はい、こんな風に本当に心から信頼しあっておられるお二人がいて下さるからこそ
 私たちはどんなに苦しい戦いのときも、前を向いて戦ってこれたんですよ」
「なるほど。羨ましい」
力説するちとせに、ヴァインは優しく微笑みかけ
と、今まで不安そうにしていたルシャーティも緊張がとけたのか
小さく微笑みながら
「羨ましいです…でも、タクトさんとクールダラス副司令ってご親友というよりも、まるで恋人かご夫婦のようですね」
正直な感想
(そのとおり。しかもバカップル)
↑これは、声にこそでなかったけれど、ブリッジクルーが全員同時に思ったこと
そして

「えぇ、そうなんです。お二人は恋人同士なんですよ!」

更に馬鹿正直に答えたのは、ちとせであった
「…」
少しの沈黙
(あ、あれ…?)
ちとせが、そう、思った瞬間

「えぇー?!」×2

ヴァインとルシャーティの声が重なって、ブリッジ中に響いた

「こ、恋人同士って、お二人とも…男性、ですよね?」
おずおずとルシャーティが
さすがに、同じ男であるヴァインは言葉がでないようで
「えーと、まぁ、そうなんだけど…」
タクトは心の中で”もうどうにでもなれ”とやけになりつつ答える
「トランスバールでは、同性同士のカップルが多いのですか?」
「ど、どうでしょう…エルシオールでは結構多いのですが…」
でも、それがタクトとレスターの影響だとちとせは知らない(笑)
「あぁ、でもなんとなく納得いたしました。お二人ともお似合いだと思います」
「…ありがとう、ルシャーティ」
タクトはトホホと泣きつつ
レスターの腕からやっとの思いで抜け出した
そして、固まってしまっているヴァインに声を
「び、びっくりした?ヴァイン」
「え、えぇ…少し」
「ごめんね。でも、えーっと、その…」
タクトはなんとかフォローの言葉を探して視線をながす
目があうとあわてて職務に戻るブリッジクルー(そして視線が外れると再び注目)
あからさまに不機嫌な様子で職務に戻るレスター(今夜が怖い…)
レスターとタクトのラブラブ話に花を咲かせるルシャーティとちとせ(女の子ってこういう話題好きだよなぁ)

「あ、いえ。だいじょうぶです。わかっていますよ。クールダラス副司令は
 男性が好きなのではなくて、タクトさんが好きなんですよね。たまたまお二人が同性だったというだけで」
「…あー、うん。そういうこと」
あまりにもあっさりと理解してもらえたのでタクトは若干、拍子抜け

ヴァインは再び、先ほどの考える表情にもどると
ちいさく
「…男同士、か」
つぶやく
「え?」
聞こえなくて、タクトがヴァインの顔を覗き込んだ
視線があう

「?!」

目がすぐ、近くまで…
息が、できない
そんなことを、タクトが思ったときには
すでにヴァインの唇は、タクトの唇から離れていくところだった
コクリッ
唾、だろうか?何かが喉の奥へ滑り落ちて
「へ?」
空気のぬけるような、間抜けな疑問符
そうして、やっと
(俺、いま…)
キスをされたのだ、とタクトが自覚するのと
ヴァインが、美味しそうに舌なめずりをしたのが重なる

「あぁ、すいません。ついうっかり。…ちょっと興味があったものですから」

悪びれる様子もなく、ヴァインは優雅に微笑むのであった



2005年03月22日(火) 自分でも予期してなかったんですが…の日

なんか気がつくと、ヴァイン×タクトとかはいってるかもしれません
今回は完璧に無意識です
こわいなぁ…


第7話「真実三昧菖蒲酒」

白き月
トランスバール皇国に浮かぶ純白の人工惑星
謎の天災・クロノ・クエイクで滅びかけた人類に
天恵(ギフト)として失われた技術(ロストテクノロジー)を授けた救世主
それにより人類は爆発的な進化を遂げることに成功したのである
だが
白き月は本来、先代文明EDENの物であった
その高い科学力をもっていたが故に、ヴァル・ファスクと戦うことを余儀なくされたEDEN
それは「白き月」と「黒き月」という二つの巨大な兵器工場を生み出す
「白き月」は人が管理する
人の心やテンションといった不確定要素を取り入れるがために無限の可能性を生み出す「白き月」
「黒き月」は機械が管理する
逆に人をいう不確定要素を完全に取り払い確実な成果を発揮するが故にその限界が限られる「黒き月」
二つの兵器工場は互いに競い合い成長し
そしてその「融合」によって、究極の兵器を生み出すためのモノであったのだ

エオニアのクーデターの際、「黒き月」は破壊されたが、その管理者であるノアは生き残った
今では、「白き月」で暮らしている

そして

「そして、白き月がやってきた。というわけか…」
エルシオールの艦橋から、その優しい白光を放つ惑星をタクトは見上げていた
皇国暦412年
永遠の平和の象徴であった白き月は、トランスバール本星軌道上を離れ
ガイエン星系までの移動を完了した



「タクト・マイヤーズとエンジェル隊。EDENよりの客人をお連れいたしました」

白き月宮殿

やわらかい光を放つステンドグラスの前に大小二つの影
一人は、やわらかな白い布をたっぷりとつかった儀礼服を着た背の高い女性
もう一人は、褐色の肌に黒紫のドレスを身に付けた少女
「ごくろうさまです…そして、ようこそEDENからのお客様」
背の高い女性…白き月の管理者・聖母シャトヤーンは柔らかく微笑んだ
見るもの全てを優しい気分にさせる、そんな笑顔
「私は、この白き月の管理者…シャトヤーンとお呼びください」
「あたしのことはノアでいいわ。もうないけれど、黒き月の管理者よ」
その横から、ノアが一歩進み出ていった
(あいかわらずだなぁ)
タクトは懐かしさをこめて少し笑う

「…タクト」
「は、はいっ」
ジロリとにらまれた
あわてて姿勢を正す
後ろにいるエンジェル隊から小さく
「…馬鹿」
と一言(たぶん、ランファあたりだろう)
そんなやりとりは無視して

「…ルシャーティと申します」
「弟のヴァインです」
緊張した面持ちのルシャーティと、落ち着いたヴァインの声がして

「さっそくだけど、あんたたちがEDENの民だっていう証拠をみせてもらおうかしら?」
単刀直入にノアがいった
「ノア…」
「これだけははっきりさせておかないとね。タクトもエンジェル隊も、シャトヤーンも…
トランスバールの人間は平和ボケもいいところなんだから!騙されてからじゃ遅いのよ」
「騙すなんて、そんなっ…酷いです。ノアさん」
きつい言い方にミルフィーが抗議
だが、ノアは聞く耳もたないというふうにルシャーティとヴァインを正面から見据えると
「さぁ、なにか証明できるものはあるの?」

沈黙

そして
「…わかりました」
ルシャーティは目をつぶり、一歩前に出る
「これが、証拠になるのかどうかはわかりませんが」
そう呟くと、ゆっくり手を…

瞬間
世界が一転した
それは、いつか、どこかでみた景色
そう
「これはたしか、以前…白き月にアクセスしたときの?」
ちとせが呟いた

ネフェーリアとの戦闘
白き月に現われたノアがシャトヤーンとともに起動させた
”月の記録”
それは白き月が自動で収集した情報の集合体
そこにはEDENとヴァル・ファスクの戦いの歴史
更には、黒き月と白き月の詳細な情報
大小関わらない宇宙で起こった出来事が余すことなく記録保存されている

それはまるで、プラネタリウムに浮かぶような感覚
誰もがその宇宙の美しさに言葉を失いかけた
そのとき
「あれは…」
呟いたのはノアだった
タクトが見る
ノアは驚愕にわずかばかり震えていた
「ノアさん?」
声をかけたのは、ちとせ
すると

「あれは、惑星ジュノー…」

ノアが見つめる先には、蒼い星
綺麗な惑星
「ジュノー?」
「そう、あれは…ジュノーよ。EDENの首都星…わたしの、生まれたところ」
「なんだって?」
全員の視線がそこにうつる
蒼い星
そのまわりには
「あれ、もしかして…白き月?」
「黒き月もありますわ」
双子のようによりそう、黒と白の惑星

そこで、映像は途切れた

世界が白に戻る
漆黒の宇宙から、光あふれる下へ
しばらく、目が痛んだ

「あんた、いったい何者?」
ノアが口を開く
「管理者も知らない、白き月の記憶にアクセスできるなんて、そんなこと…」
ルシャーティは一歩前にでた
そして

「私は…EDENの『ライブラリ』の管理者なのです」

一言
「EDENのライブラリ?」
「はい。宇宙の全ての叡智が集まる場所…それがライブラリ。
白き月や黒き月にある”月の記憶”はその端末なのです
そして、ライブラリに干渉できる管理者は一族の人間のみ」
「なるほど…」
ノアはしばらく考える仕草

一方、そのころ
(ねぇねぇ、ランファ…)
(なによ)
(今のってどういう意味?)
(あんたって子は…)
ため息
(つまりですね、一軒の大きなケーキ屋さんがありますでしょ)
(うんうん)
(そのケーキ屋さんはとても美味しいので、スーパーやコンビニなんかにもケーキを出品してますの)
(へぇ、すっごくおいしいんだ。いいなぁ、食べてみたいなぁ)
(問題はそこじゃないの)
ポカリッ
(いたー)
(そのコンビニやスーパーに出品されているケーキが、白き月や黒き月の記憶。というわけですわ)
(ほぇー)
(そしてそこにケーキをだしている大きなケーキ屋さんがEDENのライブラリと呼ばれる場所なんですの)
(え、じゃぁEDENのライブラリっておっきなケーキ屋さんなの?!)


「わかったわ。あんたたちがEDENの人間だっていうのは信じる」
ノアが諦めたように呟いた
ルシャーティはほっと胸を撫で下ろした
「では、我々の話を聞いてくださるのですね?」
ルシャーティのとなりにヴァインが並んで、きりだす
「えぇ。聞かせて頂戴」
ノアは短く返事をすると、黙って二人の言葉をまつ

「EDENは今、ヴァル・ファスクの支配下にあります」
言葉はヴァインから
「僕たちは、管理者の一族の生き残りとしてヴァル・ファスクのためにライブラリで生かされていました
 そこで、先の大戦の際ネフェーリアを破ったあなた方のことを知ったのです」
「つまり、もうヴァル・ファスクはあたしたちのことを知っている。というわけね?」
「はい…白き月、そして黒き月には定期的に情報をライブラリへと送信する機能があり
それはクロノ・クエイクによってEDENと二つの月が離されたあとも継続して行われていました」
ルシャーティが不安そうにヴァインをみる
震える手をゆっくりとのばせば
ヴァインは、軽く、その手を握り返して
「ヴァル・ファスクは次のねらいをあなた方…トランスバール皇国へむけています。
 僕たちはその隙をついてなんとか逃げ出すことに成功したのですが、追っ手におわれてしまって…」
「逃げ出して、どうするつもりだったの?」
「…あなた方にお会いして、EDEN解放へのお力添えを願うつもりでした」
「じゃぁ、本当にラッキーだったんだ。あそこで私たちと出会ったのは」
ラッキーガール、ミルフィーユが感嘆とともに呟いた
「はい」
ルシャーティは少しだけ笑みをこぼしてうなづく
「これも運命ってやつなのかもね」
ランファも同意
「どうかお願いです。EDENを…私たちをお救いください」
ヴァインとつないだ手は離さないまま、ルシャーティがシャトヤーンとノアを見上げる

「一つだけ答えて欲しいことがあるの」
ノアは感情のこもらない声で一言
「なんでしょう?」

「EDENがヴァル・ファスクに占領されたのは、いつ?」

ビシッ
空気が凍るような音
時間が固まる
酷く長い時間がたったような気がした
答えたのは、ヴァイン

「ライブラリの記録によると、およそ600年前…
 クロノ・クエイクによって衰退していたEDENは一晩でヴァル・ファスクに占領された、と…」

「どうしてですの?クロノ・クエイクは天災なのでしょう?」
「それもそうだね、EDENとヴァル・ファスクの技術力は同じくらいだったんだろう?
 なのにEDENだけがクロノ・クエイクの被害を受けたっていうのかい?」
ミントとフォルテが簡潔にまとめる
全員の視線が姉弟にあつまった
そして

「クロノ・クエイクは…天災などではありません」

ゆっくりとヴァインが言葉を選ぶ

「え?」
その疑問符を出したのは誰だったろう
どういう意味なのか問いただす間もなく語られたのは

「あれは、ヴァル・ファスクが人工的に作り出したものなのです」

長い
長い沈黙が、あったと思う
「ヴァル・ファスクがクロノ・クエイクを?」
全員が驚愕に言葉を失うなか、ただ一人
「そう…なるほどね」
ノアだけが納得した表情をしていて
「ノア…」
「馬鹿馬鹿しいけど、効果的な方法だわ」
「でも、宇宙規模の災害なんておこせばヴァル・ファスクだって…」
「知っているのと知っていないのとじゃ対処の仕方が違う。その後の対応もね」
「はい…更に言えば、ヴァル・ファスクには寿命がない」
ヴァインはゆっくりとつけたした
「寿命がない?それってつまり…」
「歳をとらないっていうこと?!」
「まさか、そんな…」
「不老不死というわけではないのでしょうが、ヴァル・ファスクが私たちよりも長命であることはたしかです
 ライブラリにあるクロノ・クエイクを起こしたヴァル・ファスクの王の名はゲルン…そして、今現在のヴァル・ファスクの王も名をゲルンと」
「それは、たとえば…シャトヤーンさまのように名前だけ受け継いでいるということではなくて、ですか?」
「はい、ライブラリの記憶が正しければ」
「ただ記憶をためるだけのライブラリが間違いを起こすことは考えられないわ。それは全て事実よ…」
ノアは呟くように肯定する
「そして、ヴァル・ファスクはネフェーリアを破ったあなた方を警戒している」
「第二のクロノ・クエイクが引き起こされる可能性がある…ということですね?」
「えぇ、それもかなり高い確率で」

きゅっ
その時
タクトは、ルシャーティの手が震えるのを
そしてヴァインがその手をもう一度、強く握りなおすのをみた
それとともに、緊張でかたまっていたルシャーティの表情にわずかだが柔らかさがもどるところも

「私たちがこうしている間にも、EDENの人たちはヴァル・ファスクに酷い目にあわされているんですね」
ミルフィーが泣きそうな顔で呟く
「許せないっ、そんなやつらこのあたしがギッタギタにのしてやるわ」
胸をはってランファが
「一刻も早く、お救いしなくては」
普段は無表情なヴァニラも、決意に満ちた表情をしている
そんなエンジェル隊の言葉に押されるかのように、ルシャーティは一歩前へ
そして
「お願いいたします…どうか、我々を…EDENをお救い下さい」
「お願いいたします」
ヴァインも、その後ろで頭を下げた
「シャトヤーン様、あたしたちからもお願いします」
続いたのはフォルテ
「えぇ。事はもうEDENだけの問題ではありません」
そしてミント
「シャトヤーン様」
祈るようにちとせが
だが

「馬鹿ね、あんたたち」

答えたのはシャトヤーンではなく、ノアであった
「ノアさんっ」
「いい?今回、あたしたちはそこの二人が本当にEDENの人間なのか確認にきただけなの。
 ついでにいっちゃえば、皇国軍を動かす権利もない。それは政府の人間の仕事でしょ」
「ノア…」
「ヴァル・ファスクを倒してEDENを解放しました。はい、おしまい…ってわけにはいかない
 そこには、政治とか、情報とか、そういった細かくてややこしい問題が山積みなのよ」
長い金色の髪をうっとうしそうにかきあげる
それは、光をはらんできらきら眩しい
「じゃぁノア!あんたこのままEDENを見捨てろっていうの?!」
ランファがつかつかと前にでた
そのまま、ノアをきっと見据える
ノアも負けじと
「本当に馬鹿ね!そうやって一時の感情だけで行動するなっていってるの!」
「なによっ!この冷血漢!」
「脳みそまで筋肉の、格闘技馬鹿にいわれたくないわっ!」
今にも互いに掴み掛からんばかりの勢いでにらみ合う二人
その
二人の間
火花が散る、そこへ、影が、ひとつ

「はいはい、そこまで。そこまで」

「タクト、さん…」
ルシャーティが小さく呟く
タクトは、いつもとかわらない、ちょっと間の抜けた表情で
「ほら、二人が喧嘩してると、いつまでたっても話が先にすすまないよ?」
「なによ、タクトっ、邪魔する気?!」
がしっ
肩をひっつかむ
タクトは
「…ランファ」
名前をひとつ
「っ」
視線があう
ランファの鼓動が一つ、はねた
ドク…ンッ
「EDENはノアにとって故郷なんだ。本当に…見捨てるわけがないだろう?」
「………ぅ」
返事に詰まる
普段となにもかわらない、優しい声
だが、真ん中に一本、しっかりとした芯のある言葉
そして、瞳
優しくて
でも、どこか悲しい
そのくせ
決意に満ちた眼差し
「もちろん、わかってると思うけど」
ふにゃ
空気が抜けるように、タクトはいつもの笑顔に戻った
ランファは、小さく、息を吐くと
「あ、当たり前でしょ」
そういって、タクトの肩から手を離す
心臓はまだ、ドキドキいっている
そのまま背を向けた
背中越しに、タクトの、声
「ノアも…本当はわかってるはずだ。こんな風に他人の痛みを自分の痛みとして感じることができる彼女たちだからこそ
 これまでの戦いに勝ってこれたってことが」
「………わかってるわよ」
「大丈夫、心配しなくてもいいよ。EDENはきっと俺たちが解放してみせるから」
「…心配なんて」
それはまるで
兄が妹に昔話を聞かせるような優しい響きで
「大丈夫」
タクトはもう一度、はっきりと言い切った
「ま、すぐに…というわけにはいかないけどね」
へにょっと、いつもの表情と声に戻る

「マイヤーズ司令のおっしゃるとおりです。今すぐに、とはいきませんが…
 私からも、シヴァ女皇に頼みましょう」

「シャトヤーン様…」
柔らかなシャトヤーンの言葉に、エンジェル隊の表情に明るさが戻っていく
それは、ルシャーティとヴァインにも
シャトヤーンはもう一度、優しく微笑んだ



「タクトさん」
「ん?」
エルシオールの通路でタクトを呼び止めたのは
「ヴァイン…どうかしたかい?」
「さきほどは、ありがとうございました」
綺麗な笑顔で、頭をひとつ下げる
タクトは疑問符をだしつつ
「さっきって…?」
「白き月で、ノアさんとシャトヤーン様にお口添えをしてくださったことです」
「あぁ、あれは俺が言わなくてもあの結果になってたよ」
笑ってごまかす
そして
「シヴァ女皇は、とてもお優しい方だから、きっとEDEN解放に力を貸して下さるはずだ」
「はい」
ヴァインはほっと安心したようにうなづいた
そして
「それにしても、ノアさんとランファさんの喧嘩の仲裁はお見事でした。流石は司令官ですね」
尊敬のまなざし
「あはははは、まぁ、慣れてるからね」
照れ隠しのために、タクトは少しばかりおおげさなリアクションで返した
「本当は少し心配していたんです…僕たち姉弟のことでタクトさんとエンジェル隊のみなさんの仲が悪くなったんじゃないかって…」
ヴァインが申し訳なさそうにいう
タクトはあわてて否定した
「あぁ、いや…あれは俺が悪かったんだよ。君たちにも嫌な思いをさせてしまったね」
「いいえ。タクトさんの行動は間違ってはいない…この艦とエンジェル隊のみなさんを護るためには必要な行動です」
「…そういってもらえると」
少しだけ、救われる気がした
ヴァインは無邪気に会話を続ける
そこからは、今まで感じた違和感は感じられなくて
「ところで、ノアさんにおもしろいことをおっしゃっていましたよね?」
「おもしろい、こと?」
なんだろう、と思い返す間もなく
「”こんな風に他人の痛みを自分の痛みとして感じることができる彼女たちだからこそ、これまでの戦いに勝ってこれた”
 と…それが、エンジェル隊の強さの秘密ですか?」
「うん、俺はそう思うんだけれど…」
「それは、つまり…他人の苦しさを自分のことのように感じる分、他人のために働くことができる。ってことですよね?」
「まぁそういうことかな…でも、ヴァイン?どうして、そんなことを?」
いつのまにか、尋問されている気分になってタクトは息苦しさを感じる
と…
「いいえ。…少し興味があったので。ヴァル・ファスクを破ったエンジェル隊の強さについて
 僕たちにとって、あなた方はEDENを救ってくださるヒーローなんですから」
ヴァインは笑う
それは、それは綺麗に
「エンジェル隊のみなさんにもお聞きしたんですよ」
「へぇ…みんなは、なんて?」
「護りたいものがあるから戦えるのだと…」
「あはは、みんならしいや」
そう言ってる様子が想像できて、タクトは微笑んだ
ヴァインはその微笑をみながら、小さく呟く

「本当に…うらやましい…でも………」

それは、あまりにも小さすぎて、呟いたヴァイン自身にも聞こえなかった



2005年03月21日(月) Xファイルの日

Xファイルなんて見てみる
むかーし、深夜枠で放映してた話。なつかしー。


第6話「バラバラ心の音せんべい」

沈む夕日
絵の具が混ざるような空
永遠の時間のひとかけら
つないだ小さな手と手
伸びる影はどこまでもどこまでも一緒で

クジラルーム
「こんにちわ、タクトさん」
さくさくさく
砂を踏む軽い音をさせてタクトは中にはいった
そのまま、まっすぐ宇宙クジラとクロミエの傍による
そして
「クロミエ…その」
「わかっています。あの姉弟のことですね?」
にっこりと微笑まれて言われると、それだけでもう何もいえない
素直にひとつ、うなづいた
「宇宙クジラがいうには、あの二人の心を占めているのは漠然とした不安…
そして、お互いに対する深い想い…微かな希望」
「…そう、か」
「タクトさんが心配されるようなことはないと思いますよ?」
「あぁ、ありがとう…クロミエ」
そこまで聞いて、やっと心が軽くなったのを感じる
タクトはひとつため息
「それよりも、むしろ心配なのはタクトさんだと」
「え?」
クロミエをみる
ついさっきまでにこにことしていた表情が違うものになっていて
「宇宙クジラからの伝言です”君は君の存在の大きさを知るべきだ”と」
「存在の…大きさ?」
考える
それは、つまり
「それは、俺がエンジェル隊に与える影響ってことかな?」
皇国、いや今では銀河一を誇る”紋章機”
それは乗り手であるエンジェル隊のテンションによって性能が変化する
彼女たちのテンションが高く、精神的に安定されればされるほど高性能に
逆に、テンションが低く、不安定な精神で扱えば動くことすらままならなくなるほど極端に
エンジェル隊司令であるタクトの1番の任務は、彼女たちのテンションの調整なのだ
確かに、ここ数日、タクトは件の姉弟のことでエンジェル隊と今までにない不仲状態である
気まぐれで個性的。そしてかなりの癖がある彼女たちと、それでもタクトは仲良くやってきた
その絆こそが、先の2度に渡る大戦の勝因といってもいいほどに
だから、いま、タクトに問題があるとするならそのことだろう
しかし、クロミエは少し困った顔をすると…
「それもありますが…でも、宇宙クジラがいうのはもっと大きな意味だと思いますよ」
「大きな,意味?」
意味がわからなかった
「はい…つまり…」
クロミエの最後の言葉は聞こえることなく…


「タクトさん」


「ミント…」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにはミントがにこにこといつもの笑顔で立っていた
「こんにちわ」
「こんにちわ、ミントさん」
ミントはクロミエと簡単に挨拶をかわすと
「タクトさん、今、銀河展望公園でルシャーティさんとヴァインさんの歓迎ピクニックを開いておりますの」
「え、あ…そうなのか」
「えぇ。それでタクトさんにも是非出席して頂こうと思いまして」
「わかった、今いくよ」
タクトは二つ返事を返し
「クロミエ、いろいろありがと。それじゃぁ、また」
「…はい」
クロミエに一つお辞儀をしてから、先にまつミントの後を追った
「…」
クロミエはしばらく、タクトとミントが仲良くでていったクジラルームの出入り口を見つめていたが
キュォオオオオンッ
宇宙クジラの鳴き声がひとつ
「そうだね、宇宙クジラ…」
それに答えるように…壁のように視界をふさぐ宇宙クジラを撫で
「何度も危機を乗り越えた彼らだもの、今回もきっと…」



テクテク…
「でも、ミントが俺の迎えにきてくれるなんて珍しいなぁ」
銀河展望公園への通路を歩きながら、話題はタクトから
ミントは軽く笑うと
「あら、お嫌でしたか?」
「ううん、凄くうれしいよv」
慌てて否定
テクテク…
テクテク…
話題はそこで途切れ、無言の時間に再び戻る
テクテク
先に耐え切れなくなったのは、タクトだった
「…えーと、その、みんなまだ、怒ってるかな」
「怒ってなんておりませんわ」
「…」
切り捨てられるような言い方に、返事ができなくなる
言葉を捜してタクトは少しばかり考え
ミントは、そんなタクトの様子をみると
はぁ
ひとつ、ため息
そして
「怒っていましたら、ピクニックになんてお誘いしませんわよ」
「…うん」
「ですが、タクトさんのあの判断には私もフォルテさんも理解はしますが賛成できません」
「ミント…」
「表向きだけでも、あの姉弟の言う事に素直にうなづいて下されば、こんなことにはなりませんでしたわ」

『お願いです…どうか、どうか私たちのEDENをお救い下さい』

すがってくる瞳
そうだ
ミントの言うとおりだ
たとえ本心がどうあろうとも
あの場で、いつものようにうなづいていれば、こんなことにはならなかった
星空の出会いから
数えれば一年にも満たない、短い間だが
それでも、彼女たちと自分は上手くやってきた
それが
こんなにも簡単に崩れようとするなんて

「タクトさん、この前から、なにを考えていらっしゃるんですの?」
いつの間にか、歩みはとまっている
ミントの視線
自分の心の全てを見透かしてしまうような
そらすことのできない瞳
「前は、テレパスなんて使わなくても私たち、心を通わせることができましたわ」
「…」
「ですが、今は…私に貴方の気持ちはわからない…不安がまるで氷のように心を固めてしまっている」
そっ
ミントの伸ばされた手が左胸にあたる
あたたかさ
だけれど
「ミント、ごめん…」
こぼれた言葉は一つだけ
体をひく
ミントの手は、追うこともなく、ゆっくりと落ちた
逃げるようにその場から歩き出す
後姿に
「タクトさんっ」
「ごめん、俺にも、わからないんだよ…」
搾り出した言葉は、冷たくて
冷たい、これが、本当に、自分の声なのかと疑いたくなるほどに
酷く怖かった

「…タクト、さん」
見えなくなる後姿に一言
ミントは、行き場のなくなった自分の手をしばらくみつめ
そして、ゆっくりと祈るように結んだ
「そうやって、一人で抱え込まれてしまっては…私たちはどうすればいいんですの?」



銀河展望公園

開けた視界が、目に痛かった
光になれてくるころ
「タクトさーん」
ミルフィーの声
「あ、きた」
ランファが続く
声のしたほうに視線をむけると、ビニールシートをひいた上に7人の姿
「ごめんごめん、待たせたね」
「タクトさん、こちらへどうぞ」
ヴァニラが席をあけてくれる
そこへ座った
「あ、あの…」
その目前には
「お疲れ様です、マイヤーズ様」
おろおろと取り乱す金の髪の少女と
逆に落ち着いた声で挨拶をしてくる同じ髪の色をした少年
「いや。えっと、ヴァインって呼んでいいかな?」
「はい。どうぞお好きなようにお呼びください」
「ありがとう。…あと、俺のことはタクトって呼んでほしいな」
「いいんですか?」
「あぁ。どうもそう呼ばれるのは慣れてなくてね」
少し笑ってみせる
と、ヴァインの緊張も緊張が解けたのか
「では、そういたします」
かすかに微笑んで答えた
タクトは、そのまま隣に座るルシャーティの方をむくと
「ルシャーティもそれでいいかな?」
「………は、はい」
真っ赤になってコクコクとうなづく
まるで少し前までのちとせを見ているようだな
そんなことを、思っていると
「おやおや、なんだかちょっと前までのちとせを見ているようだねぇ」
フォルテも同じ事を思っていたらしい
「え、わ、私ですか?!」
もっていたお茶を落としそうな勢いで、ちとせが返事をした
「そうですねぇ」
「ほーんと、あのころはちとせもガチガチだったもんね」
ミルフィーとランファも笑いあう
やわらかな日差し
微かな風
のんびりとした時間
それは、数日前までエルシオールでよくみかけられた風景

…だったはず、なのだが

「あっ」
カシャン
カラコロ…
平穏に入る小さなヒビ
「ご、ごめんっだいじょうぶか?ヴァイン」
「いえ…」
「ちょっと、びしょ濡れじゃない」
タクトがお茶を受けそこない、近くに座っていたヴァインは頭からそれをかぶってしまった
「だ、大丈夫なの、ヴァイン?」
「心配ないよ、姉さん」
「大丈夫じゃないわよ、これはもう着替えるしかないわね」
ランファはヴァインの髪をハンカチで拭きながら
「…そうですね、では失礼します」
「あ、案内しようか?まだ、艦内に慣れてないでしょう?」
「えぇ、助かります。ミルフィーユさん」
ミルフィーがヴァインの手を取って銀河展望公園をあとにした
その姿を見送ってから

「もう、なにやってんのよ!この馬鹿タクト!」
ランファの鉄拳が飛んだ
「いったー」
「いったー、じゃないわよ。せっかくのピクニック台無しにして」
「わ、悪かったよ…ランファ」
タクトとランファのどつきあい
エルシオールでならそれこそ日常茶飯事であるはずの過激なスキンシップ
だが、今回ばかりはきまづい空気が流れる
「謝ればいいってもんじゃないのっ」
「…う」
「だいたい、この前からちょっと変よ!タクト。ヴァインに恨みでもあるの?」
「そんなわけないだろ」
「どうだか、あーぁ、タクトなんて呼ぶんじゃなかった!」
「ランファ先輩、いいすぎですっ」
ちとせが止めに入る
だが、それがますます気に入らなかったのか
「…はいはい、どうせ悪いのは私ですよーだ」
ランファはくるりと背を向けるとすたすたと出口へむかいだし
「ランファっ」
タクトの声もむなしく
ひらひらと手をふると、ランファの姿は銀河展望公園の外へと消えた

「ったく、しょうがないねぇ」
やれやれと、フォルテがため息
彼女は豪快な仕草で、髪をかきむしると
よいしょ、と立ち上がって
「仕方ない、タクト。ルシャーティを頼んだよ」
そういって、ランファのあとをおった
ヴァニラとちとせもそのあとに続く
「あ、あぁ…」
タクトはそういわれてはじめて、隅で震えるルシャーティにきづく
いきなりはじまった喧嘩に戸惑っているのはあきらかで
「あの、ルシャーティ?」
とりあえず、名前を呼ぶ
「は、はい」
微かだけれども、返事
タクトはほっと一息ついて
「ごめんね、驚かせて」
「いえ、その…こちらこそ、弟のことでみなさんが…」
「いや、ヴァインは悪くないよ。あれは俺の不注意…ほんと、ごめん」
タクトはもう一度頭を下げると、ちらかった物の後片付けをはじめた
ルシャーティもそれを手伝う
しばらくの沈黙
先に破ったのは、彼女から
「でも、私…本当は少し安心しているんです」
「え?」
「ヴァル・ファスクを破った英雄ってどのような方たちだろうって…ずっと考えていました」
タクトはルシャーティを見る
柔らかな春の日差しに、その輪郭が溶けて消えてしまいそうな
儚い少女
「もしかしたら、ヴァル・ファスクよりも怖い人たちだったら…なんて…」
馬鹿ですね、私
くすくすくす
小さな笑い
春の陽だまりのような笑顔
「ミルフィーユさんってとてもお料理が上手なんですね」
「あ、あぁ…ミルフィーの料理は絶品だよ。お菓子から和洋中華までなんでも作れちゃうんだ。
 ルシャーティもなにか食べたいものがあったらミルフィーにいってみるといいよ」
「はい」
「ランファはああ見えて占い好きなんだ、きっとそのうちルシャーティのことも占わせて〜ってくるよ」
「占い、ですか」
「そ。この前は髭占いとかいってったな。でもミントはあたらないっていってた」
「ミントさん、あの不思議なお耳の方ですね?」
「うん。あの耳の話を聞くとルシャーティ、きっと夜トイレにいけなくなるよ?」
「え、えぇ…?!」
「フォルテはあのとーり俺よりしっかりしてるエンジェル隊のリーダーで、火薬を使った銃を使わせたら右にでるものはいない。
 俺も良く射撃訓練に付き合わされるんだけど、なかなか上手くは…」
「ヴァニラさんが連れていらしたのは?」
「あれはナノマシンペット。かわいいよね」
「はい」
「それと、ちとせはね”あやとり”って遊びができるんだよ」
「”あやとり”ですか?」
「うん。こう輪にした紐でいろいろな形を作る遊び」
「楽しそう…」
ほぅ、とルシャーティは目を閉じる
そよそよ
穏やかな、風
「…ここは、スカイパレスに似ています」
「スカイパレス?」
懐かしむルシャーティ-の声
その名前を、タクトは反芻する
彼女はやわらかく微笑んで
「スカイパレスは、私たちEDENの中心です…私はそこで生まれました」
「…」
「ヴァル・ファスクに捕らわれの身となってからはめったにいくことはできませんでしたが
それでも、弟…ヴァインは何度も私をこっそりと連れ出してくれて………
幼心に見たあの夕日…暖かいオレンジと優しい夜の色がゆっくりと混ざるあの時間は、なによりの宝物です」
遠くを見つめる
彼女の目には、きっとその光景が浮かんでいるのだろう
沈む夕日
絵の具が混ざるような空
永遠の時間のひとかけら
つないだ小さな手と手
伸びる影はどこまでもどこまでも一緒で
「きっと、また見れますよ」
タクトはゆっくりと言葉をつむぐ
「タクトさん…」
「そのときは、俺やエンジェル隊のみんなも一緒に」
「はいっ」

ルシャーティの無邪気な笑顔
それにタクトは、ゆるゆると心を覆っていた不安が溶けていくのを感じた



2005年03月20日(日) 3悪登場…の日

この話はできたら「わるものがいく!」を聞きながらお読みください


第5話「三悪参上のツミレ」

「パトリックでぇーす」
「ジョナサンです」
「ガストですっ!」

エルシオール艦内に怪しい三つの人影

「三人あわせてぇ」
「パト・ジョナ・ガストです」
「せーの…」

「「「祝!初登場ー!!」」」

パンパンッパパンッ
クラッカーが鳴り響き
ポンッ
更に小さなくす玉まで割れた
”初登場おめでとう”の文字
ちらしやらリサイクル用紙やらで作った紙ふぶきが舞う

「いやぁったぁ、まにあったー、まにあったぜぇ…くぅ」
「あぁ、ほんと。もうこのまま一生出番ないんじゃないかと思ったな」
「でもさ、やーっぱ、俺たちがいないとGAじゃないっしょ」
だよな、だよなと三人がうなづく
背が高くて老け顔のパトリック
茶髪ロンゲで少したれ目なのがジョナサン
チビでふとっちょのガスト
エンジェル隊のいくところ、かならずといっていい程、この三人の影があり
敵だったり、敵だったり、ごくたまに味方だったり、敵だったり、ただの野次馬だったりする
今日もこりずに悪巧みを繰り返し
意識、無意識かかわらずエンジェル隊に邪魔をされては、玉砕する日々なのだ
「で、なーんで俺たち、この艦にのってるんだっけ?」
「さぁ?」
「深く考えるな、考えたら負けだ、とりあえず出番があったことを喜べ」
「「「わーい、わーい、わーい」」」
三人無邪気に万歳三唱
「と、思い出した!俺たちは今回、このエルシオールのクルーなんだった」
「あっ、そっかぁ…家賃が払えねぇから”エルシオール乗組員募集”のバイトに応募したんだった」
「そうそう、最前線だけあって時給いいんだよ。でもさ、面接でお前らと偶然出会ったのは、ほんと運命だよな」
「おうよ、そんでまた三人揃って受かっちまうんだから」
「よし、じゃぁしっかり働いてたまってる家賃返そうな!」
「「おう!」」
パトリックの呼びかけに、ジョナサンとガストがガッツポーズ
三人はそうやってひとしきり団結を深めた後
「そういや、ジョナサンはどこなんだ?」
「俺?俺は宇宙コンビニ。夜勤シフト」
「おっ、いいなぁ。廃棄品とか試供品とか!」
「そういうガストはどこなんだよ?」
「俺は食堂だ」
「いいねいいね、ミスオーダーとか、まかないとか、残り物とか」
「いいなぁお前ら…俺なんてブリッジだぞ?食費とかそういったのが浮く要素は皆無だ」
パトリックの声に、ジョナサンとガストは少々なぐさめるように
「なーにいっちゃってんの?!ブリッジなんて戦艦の花形じゃん!」
「そうそう!男ならやっぱ、ブリッジでしょ!」
「だけどよ…」
「心配すんなって、廃棄品も試供品も俺たち3人でやまわけしよーぜ」
「俺だって俺だって、まかないとかミスオーダーとか残り物とか、やまわけしよーぜ」
「お前ら…」
「俺たち三人、いつもいつもいつもあの女どもにいいところで邪魔されてよ、出番はだんだん少なくなるし
やーっと出番があったと思ったら変な猫の覆面させられて…」
「”とりあえずだしときゃいっかぁ”程度の認識のヤラレ役専用のキャラだけどよ、それでも俺たち明日は主役になれると
信じてがんばってきたんじゃねぇか」
「「主役になるときは三人いっしょだ」」
びっ
ジョナサンとガストがいい笑顔で親指をたてた
パトリックは若干、涙を滲ませながら
「…あぁ、あぁ!そうだ、そのとおりだ!よしっ、がんばろう!!」

三人はがっしり手と手をとりあい、お互いの友情を確認しあった
そして、最後に一言

「でも、奴らも同じ艦にのってんだよな…」
「…それは、いうな」
「あぁ…」

そんな風に3悪が盛り上がったり落ち込んだりしているのと同じころ

「?」
「どーしたんだい?タクト」
「いや、別に」
タクトは首をふって、ケーラ女医からの報告書に目を通した
「ん。身体的な異常とかそういったものはないんだな」
「あぁ、健康そのものだそうだよ」
報告書をもってきてくれたフォルテにもう一度確認をとると
「よし、じゃぁ行こうか」
そういってレスターに合図だけ送ると、ブリッジをでた
向かうのは居住区
そこには先日保護した、EDENからの使者…ルシャーティとヴァインの姉弟がいるのである
「しかし、びっくりしたよ。タクトも一応軍人なんだねぇ」
フォルテはなにか面白いことをみつけたかのような声でいった
「…うん」
姉妹は、先日の戦闘でネフューリア率いるヴァル・ファスクの艦隊を打ち破ったタクトに
今なおヴァル・ファスクに支配されているEDENを救ってほしいと亡命してきたのである
かつて
宇宙の支配者ヴァル・ファスクと唯一対抗しうる力を持っていた高度文明EDENは
クロノ・クエイクによって星系間のネットワークをたたれ、文明を失い
わずか一夜にしてヴァル・ファスクに落とされ、今もなお、苦しめられているという
姉弟からその話をきいたとき、すぐに助けにいこうというエンジェル隊に対し
タクトは首を横にふり
本国トランスバールに報告したのち、検討し、指示をまつこと
そして、感染症などの安全面が確認されるメディカルチェックの結果がでるまで、姉弟の外出を禁止したのだ
「なにかあってからじゃ、おそいからね」
答えるタクトの声は、心なしか、重い
その表情をみると、流石のフォルテも悪いことをしたという顔になってから
「あんまり、きにするんじゃないよ。あんたの指示は間違っちゃいないんだから」
声の調子を変えて、しゃべりだす
「………」
思い出すのは、そのときのエンジェル隊のこと
フォルテとミントを除いて、残りの4人はあからさまに不満な顔をした
以来、喧嘩をしたというわけでもないのだが口をきいてもらえないのである
「あの子たちだってわかっちゃいるんだよ。これがあたしらだけの問題じゃないってね」
「…」
「ただ…まさか、あんたがそういう人を疑う意見をだすなんておもっちゃいなかったから、びっくりしちまっただけさ。
…そうだねぇ、そいうのはほら、レスターの旦那の仕事だろ?」
「まるで、俺は人を疑っちゃいけないみたいだ」
「いけないってわけじゃないが、雰囲気的にね。まぁ、なんにせよあの姉弟の監禁がとければあの子たちだって機嫌をなおすはずさ」
いいきってから、フォルテは自分が墓穴をほったことにきづいた
あわててフォローをいれようとする
「あ、いや…タクト…あたしはべつにあんたを攻めてるわけじゃ…」
「わかってるよ。わざわざありがとう、フォルテ。…迷惑ついでに、みんなに二人の監禁がとけたって伝えてくれないか?」
「…あ、あぁ」
「ミルフィーとか、きっとピクニックなんかを計画してるだろうからね」
「そ、そうだね」
にっこり笑ってそういうと、フォルテも納得した顔してその場をあとにした
タクトはその後姿が完全に見えなくなるのを確認する
そして
「…よし」
気合をいれて、姉弟のいる部屋の扉をノックした

コンコン…
軽い音に続いて
「はい、お入りください」
微かな返事
「お邪魔します…」
タクトは短く、しかし丁寧に言葉を選ぶと中にはいった

「あれ?お休み中だったのかな」
中ではルシャーティがソファーで眠っている
その傍にヴァイン
ふっと足がとまった
「えぇ、姉は少し疲れてしまったようで」
ヴァインは小さく笑うと、ゆっくりとルシャーティの髪をすく
優しく、優しく、愛しく、優しく
それは酷く、大切なものを扱う手で
「あの…」
ヴァインにそう声をかけられるまで、見とれてしまうほど
「あ、そうだ。えっと、メディカルチェックの結果、君たちに異常は認められなかったよ」
「そうですか。これで、僕たちの疑いも晴れたということですね」
にっこり
ヴァインは笑ってそう付け足す
タクトは困ったように笑い返すと
「きついなぁ…そんなつもりじゃなかったんだけれど」
「仕方ありません。いきなり飛び込んできた正体不明の人間を信用しろというほうが無理ですから」
「とにかく、これからは艦内を自由に歩いてもらってかまわない。ルシャーティが起きたらそう伝えてもらえるかな」
「姉でしたら今…」
「いや、いいよ。気持ちよく眠ってるようだし…起きてからで」
「そう、ですか」
ほっと、ヴァインは安心した顔
そこには、初めてヴァインを見たときに感じた違和感はなく
(やっぱり、俺の思い過ごしだったのかな)
タクトはぼんやりと、そんなことを、思いながら
「あと、艦内の生活で何か困ったことがあれば俺に言ってください
規則とはいえ、数日も監禁するような形になってしまって申し訳ありませんでした。
遅くなりましたが、エルシオールはお二人を歓迎いたします」
「お心遣い感謝いたします」
形式的な挨拶をかわす
そして、寝ているルシャーティの傍でこれ以上話をするのもまずいかな、と考えると
「では、これで」
短く挨拶だけをすまし、扉に手をかける
その、刹那

ゾクッ

背筋を冷たいものが滑り落ちた
まるで背骨が氷になってしまったかのような、悪寒
あわてて振り返る
そのまま背中をむけていたら?
そんな思いが頭を過ぎるほどの、危機感
だが、そこにいるのは先ほどと変わらない笑顔を浮かべるヴァインだけで

「どうかしましたか?」

問われてしまうと

「い、や…」
なんとか言葉を搾り出す

トンッ
足音
ヴァインが一歩ちかづいて…
「お顔の色が悪いようですが…」
心配そうな声
でも

(怖い…)

そんなことを、思った
「少し…冷房がききすぎてるみたいだ…この艦ではよくあることで」
「…へぇ」
恐怖を振り切るように無理矢理、笑顔を作ってごまかす
ヴァインは足をとめた
「よくあるんだよ、暖房が,効き過ぎになったりとかね。気をつけないと…」
「えぇ、ご忠告ありがとうございます」
「風邪なんかひかないようにね、体調には気をつけて」
「そうします」
ヴァインはいうと、くるりと向きを変え、ベットまでいくと毛布をもってきてルシャーティにかけた

ほぅ

ため息とも安堵ともつかぬ重い空気が体からぬける
「それじゃぁ、おやすみ」
タクトはそういって、逃げるようにその部屋をあとにした



2005年03月19日(土) Wish Upon A Starの日

カラオケいってきました
最高得点は
Wish Upon A Star
の97点でした(byUGA)
GAのキャラソンの選曲がどういう基準なのか
こと細かにきいてみたいです。


第4話「甦る神話潮汁」

「このパターンも3回目かぁ」
「あぁ、まぁな」
3度目ともなると、流石に二人の会話に緊張感がない
他のクルーたちも同様だ
「1回目はエンジェル隊、2回目はちとせ。…さて3回目、外宇宙からのお客様は凶とでるか吉とでるか」
「さぁな」
レスターがいつものポーカーフェイスで興味なさげにつぶやく
「着艦完了しました」
そこに、アルモの声がして
「よし、じゃぁお迎えにいってくるよ」
「あぁ…まかせた」
タクトはパッと司令席から立ち上がると、浮かれた足取りでブリッジをあとにする
レスターはその後姿を見送ることもしないで、戦闘後の事務処理を開始した

ガイエン星系から外宇宙へでて数日
エルシオールはヴァル・ファスクだと思われる艦隊と戦闘
その艦隊は、一隻の小型脱出艇を追跡していた
ヴァル・ファスクを撃破したエルシオールは小型艇からのSOSを受信し回収
クロノ・クエイクで一度文明が滅びてから600年余り
初めての外宇宙文明との接触という運びになったのである

「歴史的瞬間っていうのに、いまいち緊張感ないよね」
「そうね、でも仕方ないわよ。司令官があれだもの」
ココとアルモは顔を見合わせて、タクトの去ったドアをむく
「その点、クールダラス副司令は流石よね」
「ほんと、ほんと。こんな時まで”興味ない”って感じで…」
そのまま、今後の航路の打合せをするレスターに視線は移動
「あぁ、副司令…今日もかっこいい」
アルモがハートマークを飛びしながら熱い視線を注ぐ
「あ、ほらアルモ。そろそろだよ」
そこに
「おい、モニターをこっちにもまわしてくれ」
レスターからの、声
「あ、はい」
あわてて、アルモがレスターに一番近い端末に映像回線をつなげる
レスターは画面を少し見つめると
「やっぱり、興味あるのかな?」
「どうだろう…」
二人のそんな会話をよそに
「エンジェル隊、聞こえるか?」
珍しくレスターから紋章機で待機中の6人に声をかける
すると
『あぁ、バッチリ見えてるし聞こえてるよ』
代表してフォルテからの返信
「結構。大丈夫だと思うがもしもの時は頼む」
『わかってるよ。アレが罠だった場合、速攻で撃破してやるからさ』
その答えにうなづきをかえしつつ
「タクトの警備は大丈夫だろうな?」
「はいっ」
次の問いには、警備班の班長が力強く答えた
それを聞くと、レスターは再びモニターに視線を向ける
「…興味があるのはマイヤーズ司令のことだけなのね」
「うん。でも、そこが素敵…♪」
ココがやれやれと、アルモがうっとりと呟いたそのとき

音もなく扉が開いた

光が射す…
タクトはそんな風に思った
きらきらと
淡い金色の髪が光を孕んでゆったりと輝く
「綺麗…」
そんな風に呟いたのはミルフィーユだっただろうか?
きらきら…
現れたのは一人の少女と、一人の少年
見とれていると、少年と瞳があった
にこり
小さく笑われる
その瞬間
ゾクッ
背筋を冷たいものが滑り落ちた
まるで背骨が氷になってしまったかのような、悪寒
デ・ジャ・ビュ
それは、どこかで、感じたことのある冷たさで
しかし、思い出そうとしてもすでにソレはなくなりつつあって掴むことができない
タクトは一つ深呼吸をすると
「…きみたちは?」
声を振り絞って、短く尋ねた
タクトの質問に答えたのは、少女の方
「私はルシャーティともうします。そして…」
少女はちらりと隣の少年をみる
少年は小さくうなづき返して
「弟のヴァインです」
名乗ってから、二人はまるで神に祈るように手を組み目をつぶる
「まずは感謝を…私たちを助けてくださって本当にありがとうございます」
「感謝を…」
「…ぁ、いや」
タクトはコホンと咳払いをひとつ
そして
「私が当艦エルシオールの司令官、タクト・マイヤーズです」
精一杯丁寧に、敬礼を作るとゆっくりと名乗る
その名前をきくと、
「あなたが、タクト・マイヤーズ様なのですか」
ルシャーティの顔がぱぁっと明るくなった
「…私のことを、ご存知で?」
「はい。私たちはあなた様に、いえ…あなた様とムーン・エンジェル隊のみなさまにお会いするために
ヴァル・ファスクから逃げ出してきたのです」
「エンジェル隊のことも?あなたがたは…一体」
ルシャーティは、すがるようにタクトをみた
口を開く
「タクト・マイヤーズ様。どうかお願いです。私たちを…我々をお救いください」
「救う、というのは…?」
タクトの疑問に、ルシャーティは一呼吸、おいてから

「私たちはEDENの民…600年前のクロノ・クエイクによって外宇宙へと切り離されたEDENの民の末裔なのです」



2005年03月18日(金) GAサイトが…の日

GAサイトのほうが更新できません。
はやくパスワードの再配布届かないかな…(しくしく)


第3話「悪夢はブイヨン」

「ト…い、タクト…」
「ん?」
「おい、タクト!…タクト・マイヤーズ司令!」
「あれ?」
目が覚める
「なにをしてるんだ?もうエンジェル隊はでたぞ」
呆れ顔のレスターがモニターの前にたっていた
ココやアルモもこちらをみてクスクス笑っている
「え、と…」
どうやら夢をみていたようだ
(夢?…どこから、どこまでが?)
寝ぼけた頭をたたき起こす
「大丈夫か?」
「あ、うん。平気だ…戦況は?」
「今、そっちにモニターをまわす」
そういうと、レスターはブリッジモニターの操作パネルを叩いた
その横顔をみながら
(…えっと、あれは夢なのかな)
考える
珍しくレスターが部屋にきて
一緒に暮らそうといってくれて
平和になったらエルシオールで旅がしたいと
(エルシオール…)
もう随分と座りなれたエルシオールの司令席を触ってみる
紋章機と同じ、ロストテクノロジーの結晶
白き月の聖母、シャトヤーン様のための儀礼艦
エンジェル隊に紋章機があるように
クーデター以降、自分にはこの月の艦があった
(いつもいつも、ありがとうな)
感謝の気持ちをこめて、そっと撫でる
そのとき
「タクト、いったぞ」
「わかった」
呼ばれて、タクトはモニタに向き直った

正体不明の黒い無人戦闘機

『エオニア軍の残党でしょうか?』
ミントからの通信
その逆に
『いや、あのネフューリアって女が率いていた艦隊の残りかもしれないよ』
フォルテが意見をだす
『どっちでもいいわよ、全部やっつければね』
『もう、ランファったら〜』
ふふん♪とご機嫌にうつるランファに、それを諌めるミルフィー
『油断大敵です』
『はいっ、ヴァニラ先輩』
ヴァニラはいつものポーカーフェイスを崩さず
ちとせはヴァニラの助言に、こくこくとうなづいた
「よし!エンジェル隊、出撃だ!!」

『了解っ』×6

銀河を6色の翼が駆ける
それはあっという間に、敵を撃破して

「あっさりと終わったな」
「そうだねぇ」
10分とかからなかった
「罠か?」
「どうだろう…ココ、アルモ。周囲の状況は?」
「今のところ、異常はありません」
「こちらもです」

『タクト、帰還していいかい?』
待ちくたびれたエンジェル隊を代表して、フォルテから通信がはいる
『つかれましたー』
ミルフィーが続く
『早くシャワーあびたーい。ねぇタクト!もう帰っていいでしょ?』
ランファが不満そうな顔をして
『どうなさいます?タクトさん』
ミントの涼しい顔が隣に
『それとも、まだ待機しますか?タクトさん』
ちとせがキリリとした表情をつくって言う
『ご命令を』
ヴァニラがそういった、その刹那

「前方に未確認物体を確認!」

ココから緊張した報告がはいった
全員が同じ方向に注目する
「敵か?」
「わかりません…ですが、戦闘機ではないようです」
そのとき

ゾクッ

背筋を冷たいものが滑り落ちた
まるで背骨が氷になってしまったかのような、悪寒

「な、んだ…あれは?」
その、なんともいえない嫌な予感は、前方から
次の瞬間

ピシィッ

氷が張るような音が銀河中に響き渡った
ガクンッ
それが走り去るとともに、艦内の電力が全て落ちる
「なにがおこった?!」
「わ、わかりませんっ」
レスターの怒鳴り声
ブリッジクルーの慌しい音
そして

『タクトさん、ラッキースターが動きません』
通信がひとつ
『タクト、カンフーファイターもよ!どうなってるのよ、これ』
ふたつ
『こちらトリックマスター、タクトさん一体なにがおこりましたの?』
『タクトっ、ハッピートリガーも駄目だ、クロノストリングエンジンがうんともすんともいわない』
みっつ、よっつ
『ハーベスタ-、行動不能…タクトさん、ご指示を』
いつつ、むっつ
『タクトさん、シャープシューターが…』

「タクト、どうする?」
「マイヤーズ司令っ」

全員の視線がタクトに注がれる
タクトは…

タクトは、ただ、ただ、宇宙をみつめ
そして



「くる…」



一言
「え?」
誰かが聞き返した
その瞬間

音もなく、光が、爆発、した
この世のものとは思えない色の光が走り
それは、瞬きする間もなく、全てを飲み込む
のみこんで
残されたのは…




「うわあぁぁぁぁっ」

バサッ
音を立てて、掛け布団が跳ね上がる
「は…ぁ、はぁ…っ……っ」
自然と、息を整えようとする
しかし、上手く呼吸が収まらない
吸おうと思っても、肺にまで空気が届かず
逆に吐き出そうとすると、喉で詰まる
「…っ…ぅっ…」
酸素不足で涙が滲んだ
そのとき
「タクト?」
声がして
手が…
「どうした?なにか、あったのか?」
「…レスタァ」
息をするのも忘れて、名前を呼んだ
すると
まるで今まで苦しかったのが嘘のように引いていく
新鮮な空気を吸って
固まってしまった古い空気を吐き出す
何度かそうやって、息を整えると
「ごめん…なんでも、ない」
「悪い夢でも見たのか?」
「ゆ、め…?」
(夢?…どこから、どこまでが?)
考える
だが、寝起きのせいなのか、先ほどの酸素不足のせいなのか頭は上手く働かなくて
考える
でも、考えがまとまらない
すると
「タクト…」
「え?」
ぐいっ
ドサッ
ベッドに引きづり戻された
軽く体が沈んで、浮き上がる
そこをレスターの腕が捕まえた
抱き寄せられる
だが、何も言わない
その沈黙が心地よくて
「レスター」
「ん、どうした?」
名前を呼ぶと返事
だから
「悪い、夢…だったんだ」
「どんな?」
「………お、憶えてない、けど」
嘘だ
今でもありありと、あの光を思い出せる
全てが飲み込まれる、あの刹那の恐怖すら
ミルフィーが
ランファが
ミントが
フォルテが
ヴァニラが
ちとせが
…そして
レスターも
それは、あまりにも怖くて口にだせない
レスターはふぅとあきれたようなため息をつくと
「ならさっさと忘れろ」
深く追求せずにそれだけをいった
「う、ん…」
歯切れ悪く、そう返事をしてから
「…ぁ」
微かに震えているのがわかった
止めようと自分で、自分の手を握ろうと
「タクト」
「?…っ」
だが、自分よりも早くレスターがその手をつかみ
そのまま口付けを
「ん…っふ、ぅ」
息苦しい
「はっ、レスター…な、に?」
解放されると同時に、肩で息をしながら訴えると
「べつに」
レスターから帰ってくるのは、悪びれもしない返事
その、あまりにもいつもと同じ態度には呆れると共に感心してしまう
気が付くと震えも止まっていた
くすくす
小さく笑みがこぼれて
すると、不思議と、心が軽くなり
「レスター…ありがと」
「…ん」
それだけ短く伝えると、もう何も言わずに目をつぶった
微かに聞こえるのは心臓の音
凍りついた心を溶かす、命の歌
ここに、いてくれる、という証
それは、どんな”だいじょうぶ”という言葉よりも確かな安心感をもっていて
悪夢の残滓さえ、優しく、掻き消していった



2005年03月17日(木) 今月のGAみち…の日

さすがの俺も、3コマ目のタッ君は萌えません(にこり)


第2話「エルシオールがんもどき」


種を蒔こう

皇国暦412年
儀礼艦エルシオールはロストテクノロジー探索中に突如交信を断った
ガイエン星系部隊の調査のため、外宇宙へと当ての無い航海に旅立った

「あれ?レスター」
エルシオール司令室
ここはタクトの自室も兼ねている
「はいるぞ、タクト」
「あぁ、うん…」
タクトが返事をかえすよりも早く、レスターは中にはいると扉をしめた
「なにか用なのか?」
ブリッジと自室以外の場所で彼を見るのは付き合いの長いタクトでも珍しいことで
「ん…いや、なんだ」
レスターは彼にしては珍しく歯切れ悪く答える
しばらく考える仕草
そうして、やっとまとまったのか
「ここ数日、お前の元気がないからな」
「え?」
「俺は…放っといても大丈夫だと思ったんだが、まぁ、あれだ…
お前の元気がないとうるさい奴らが、な」
「あははは、なんだ。そんなことか」
緊張が解けて、タクトが笑う
するとレスターは真面目な顔で
「笑い事じゃないぞ、あの連中に脅されてみろ。生きた心地がしない」
「ごめんごめん。だってレスターがあんまりシリアスな顔でくるからさ…あははは」
それでもしばらく、腑に落ちない顔をしてはいたが
笑うタクトをみていると、それも次第に緩み
最後にひとつ、大きなため息をつくと
「ったく。俺はいいが、彼女たちはあとで安心させとけよ」
どさっ
疲れがでたのか、レスターはスプリングを軋ませてベッドに座った
長い足を組む
「わかってるよ」
タクトはまだ笑いをかみ殺しながらデスクの上の端末を閉じた
その様子をみながら
「…なにを考えている?タクト」
「ん?」
「お前が周りに心配させるような真似をするときは、ろくなことを考えていない時だからな」
「ひどいなぁ」
タクトは困ったように笑い
笑って、そして
「それは…秘密」
「俺にもか?」
「うん。レスター…言霊ってしってるか?」
「言葉に力がこもるっていうやつか?」
「そういうこと」
二人の視線が合う
それはまるでお互いを試すように
そして
しばらくの沈黙
「わかったわかった…ったく。そういうところは頑固だからな」
「悪いな、レスター」
「いまさらだろうが、だがなタクト…一人で抱え込むのはやめろ」
手を伸ばす
長い指が届いてタクトの手首を掴んだ
そのまま引き寄せる
「…うん、わかってる」
抱きしめられながらつぶやき
「わかってるよ…」
抱きしめ返してもう一度
しばらくそうやって、互いの暖かさをわけあって
二人の体温が同じくらいになったころ
「ところで、レスター…ほんとにそれだけのために俺の部屋まできたのか?」
「…ん、あぁ…いや、それだけじゃないといえばないんだが」
「?」
歯切れ悪く…
今日は最初から最後までペースが崩れっぱなしだ
(こういうレスターも新鮮だよなぁ)
クスクス
思わず微笑ましく眺めていると
「タクト」
「んー?」
決心がついたようで
「あー、そのだな…今回の件が片付いて落ち着いたら…」
コホン
一つ咳払い
「いやにもったいぶるな。なんだよレスター?そんなにいいにくいことなのか?」
「…」
「…レスター?」
「タクト…」
小さく名前を呼ばれる
トクン…ッ
心臓が小さく跳ねた

「落ち着いたら、一緒に暮らさないか?」

「え?」
思わず聞き返す

「その、まぁなんだ…もちろん嫌なら別にいいんだが」
「レスター…」
真っ赤になってあれこれ言い訳を口にする彼の名前を呼ぶ

「…」
観念したように沈黙がひとつ
そして、改めて視線を投げると
「結婚できないかわりといっちゃなんだがな…」
答えるより先に腕に力が入った
ぎゅぅ
抱きしめる
「タクト…」
「どうしよう…どうしよう?レスター…嬉しいよ、すごく嬉しいのにどうやって喜んだらいいのかわからないよ」
だからとりあえず抱きしめる
ぎゅうぎゅう
「…籍とかいれるわけじゃないんだぞ?いつまで続くか保証もない」
「わかってる。でも、俺は結婚したいわけじゃないんだ。レスターとずっと一緒にいたい、ただそれだけなんだよ」
「…」
「こんな風に、嬉しいことがあったときに腕を伸ばせば、そこにレスターがいてくれて…
俺の手で抱きしめることが出来て、お前が抱きしめてくれて…大好きだって直接声を届けることが出来て…
俺の幸せはここに…レスターのところにしかない…それ以上でもそれ以下もないんだよ…」
「タクト…」
抱きしめられる腕に力がこもる
だから、負けないように抱きしめ返す
痛いくらいに
でも不思議と、その痛さは暖かさと優しさに満ちていて
痛ければ痛いほど幸せで
心地よさに目を閉じる
「愛してる…レスター」
「あぁ、俺もだよ。タクト」
小さく互いの名前を呼んで
まるで誓うように、少し長めのキスを交わす

種を蒔こう

「そういえば、お前は…平和になったらやりたいことってあるのか?」
「え、そりゃーもちろん!いっぱいあるぞー」
「たとえば?」
「えっと、そうだな…ミルフィーとケーキの食べ歩きしたり、ランファと激辛我慢大会したり、ミントと駄菓子屋巡りとか
あ、フォルテにおでん屋へつれていってもらうのも捨てがたいな。ヴァニラが美味しい珈琲専門店を知ってるらしいから
買出しにもいきたいし…ちとせの母星で和食料理っていうのも…あ!ピクニック!みんなでピクニックにもいきたいよっ」
ぎゅむ
「痛ーっ」
レスターの指が容赦なくタクトの両頬を引っ張った
「女と食べて歩くことしか頭にないのか」
「らってー」
「まったく」
パッ
指をはなすと、真っ赤になった頬だけが残る
タクトは痛そうにさすりながら
「あとは…エルシオールで旅がしたいかな」
「ん?」
「みんなの紋章機と同じように、あのクーデターのときからずっと俺たちを護ってくれたからね
平和になったら、旅にでて…今度は綺麗なものや面白いものや不思議なものとか、そんなものばかりを一緒にみたいよ」
「あぁ、そうだな」
「…レスターは、なにか、したいことがあるのか?」
「そうだな、とりあえず…お前の副官が俺以外に務まるとは考えられんから、お前の副官だろうな」
「ひどいなぁ…でも、それを聞いて安心したよ」
「だがタクト、いっておくぞ?”巨大宇宙ミミズ”とかこの前の”宇宙パンダ”とかわけのわからんものを探すのはやめろよ」
レスターの眼は真剣だった
タクトはきづいているのかいないのか
「えぇー」
あからさまに不満そうに頬をふくらます

「あたりまえだろうが!お前な、あれでいったいどんだけ迷惑かけさせられたと思っているんだ?!」
「宇宙パンダ、かわいかったのに」
「お前は女子高生か!」
ポカリッ
ついにレスターから怒りの鉄拳がふりおろされた
「いたっ、もう、痛いなぁレスター」
「俺はああいう、アホな事態で命の危機にさらされるのはごめんなんだ!」
「ちぇー」
タクトは心底残念そうに
そして
「楽しいと思うんだけどな…俺がいて、レスターがいて、エンジェル隊のみんながいて…」
目をつぶる
まるで夢をみるように
「ミルフィーがボケて、ランファが突っ込みをいれて…ミントが二人をからかって、
フォルテが止めにはいってますます大騒ぎになって、ヴァニラのもってるノーマッドが毒舌こぼしてみんなから袋叩きにあって…
ちとせがおろおろしながらフォローにはいってやっぱり巻き込まれて、ウォルコット中佐やメアリー少佐や、
マリブとかココモにまで被害が及んで…」
二人の脳裏には同じ光景がありありと
「地上から、銀河中をまきこんで、はちゃめちゃで刺激的で…でも、どこか優しさと暖かさに満ちた…
彼女たちにはそんな、能天気でお気楽極楽な日常が一番だ」
「お前もな」
レスターはタクトの頭に軽く手をおくと、子供にご褒美をあげるように撫でる
「その騒がしい毎日の中にはお前がいて、その傍に俺がいて…ココとかアルモとかクロミエとか小宇宙クジラとか
シヴァ皇女に、ルフト先生なんかもいるんだろ?」
「もちろん」
と、タクトが照れ笑い
連らてレスターも笑い返した
二人、ひとしきり笑いあっていると
タクトは思い出したように、すっと身を引いて
ぱらぱら
不思議な仕草
「タクト?」
名前を呼ぶと

種を蒔こう

「種を蒔くよ」
「たね?」
「そう、幸せの種を…いつか今を笑って昔話にできる日がくるように。たくさん」
ぱらぱら
タクトはかすかに手を広げて、種を蒔く仕草
それは、酷く神聖な儀式のように見えて
「不幸は、たとえば天災や事故のように突然やってきて全て奪っていってしまうものだけれど
幸せは、種のようなものだと思う」
「…」
「だから、俺はたくさん種を蒔きたいな」
ぱらぱら
今はまだ小さいけれど
いずれ大きくなる、幸せの種を
「何度奪われても、何度失っても、俺はきっと繰り返し繰り返し、種を蒔くよ
いつか、こうやって幸せの実を結ぶことを夢見て」
ぱらぱら
ぱらぱら
その意味をレスターは理解できなかったが
それでも
やさしく、やさしく、いとしく、やさしく
種をまくタクトの優しい手
それだけは、永遠に忘れることはないだろうと思った



2005年03月16日(水) ミュージカル「GALAXY ANGEL」の日

今日はミュージカル「GALAXY ANGEL」の公演初日です!!
というわけで

おまたせしましたっ
GA日替わり小説第3弾EternalLovers編「地上より永遠に」の開始です!
今回も(事情が許すかぎり)日替わり連載!
全26話を予定していますっ!
日替わり連載はたぶん、これでラスト!
最後まで全力疾走!
がむばりますっ!!

(服用注意事項)
・このシリーズは2004年12月26日〜2005年1月24日まで、日記で1日1話UP
してきた日替わりGA小説第2弾「fly me to the moon」の続編になります
・なるべく↑を読まなくても楽しめるような形にしたいとは思っていますが
なにぶん、3作目なのでそれもそろそろ難しいかもしれません
・タクト受。総受。レスタク、エオタク中心(今回も18禁ははいりません)
・ベースはGAME版「GALAXY ANGEL -Eternal Lovers-」話として本筋をなぞっている
部分も、そうじゃない部分も、ネタばれなんかも激しくあるので注意。
更にアニメ版のキャラなんかも入り混じりのごった煮状態
・全員の階級は上げてあります
タクト→大将、レスター→中将、フォルテ→少佐、ミルフィー・ランファ・
ミント・ヴァニラ→大尉、ちとせ→中尉。
・ゲームをしらない人は純粋に楽しんでください、ゲームをした人は同人と割り切ってください
・各話タイトルは、GAアニメ第3期の第29話〜最終話+第3期SP(特番)2話分のサブタイトルをもじってあります
・サイトのほうには順次、収録していきます
・楽しんでくださった者勝ち!!どうか少しでも楽しんでくだされば幸せですv




…それは、遥か未来

「たとえ…地上より永遠に、俺がいなくなったとしても」

絶望で漆黒に塗りつぶされた銀河を駆け抜ける
6人の天使と1組の恋人たちの物語



第1話「序章の干ぼし」



「タクトさんっ、こっちです」
遠くで少女が一人、にこにこと嬉しそうに手を振っている
彼女の名前は ミルフィーユ・桜葉
ピンクの髪に白い花のカチェーシャがよく似合う17歳
料理が上手でエンジェル隊のごはん・おやつ係でもある
いつもマイペースで明るく優しく、紋章機”ラッキー・スター”を自在に操る彼女はどこでも人気者だ

「もう、なにトロトロ歩いてるのよ、タクト!」
ミルフィーの隣から、今にも鉄拳制裁をしそうな勢いで一人
手入れの行き届いた自慢の長い金髪をさらりとかきあげるのは蘭花・フランボワーズ
ミルフィーユと同級生で(ミルフィーユが主席で彼女が次席だったとか)一番の親友でもある
そんな彼女ももちろん、エンジェル隊の一人であり、紋章機”カンフー・ファイター”をこなす天使だ
強気で押しが強く、運動神経に優れ、とくにカンフーという格闘技は達人クラスなのだという
そのわりに、占い好きという女の子らしい一面を持っていたりもするのだが



…かつて文明があった
名はEDEN。もうその名前しか残されていない古代の文明
今から見えれば魔法としかみえないような高度なテクノロジーが日常に普及した時代
ただ、いつの時代も人が高みへ手を伸ばそうとすると必ず邪魔がはいるもので
時空震…クロノクエイクと呼ばれる天災がこの場合はあてまるのだが
EDENは滅びた
そして、かろうじて生き残った人類は原始時代さながらの状態から、ゆるやかに歩き出す

その手をひく者がいた

ポジティブ・ムーン…”白き月”である
夜、闇と戦う人々につねに頭上で優しく微笑んでいた”白き月”
それは失われたEDENのテクノロジー(今でいうロストテクノロジー)の結晶体であり
そこには聖母が住むという伝説だけがあった
伝説が史実となり、人類に手をさしのばしたのが600年ほど前
聖母シャトヤーンは、白き月のロストテクノロジーを天恵(ギフト)としょうして人類に提供した
宇宙すら制覇していたEDENのソレからくらべれば、微々たるものではあったが
爆発的な進化をとげるには十分すぎるほどの贈り物である
こうして、トランスバール皇国を中心に人類は秩序とかりそめの平和を得たのだ



首都トランスバールのショッピング街
タクトはここで6人の少女と、束の間の休暇を過ごしていた

「ふふ、おいていかれてしまいますわよ。タクトさん」
となりでクスクスと少女が笑う
短くそろえた青い髪に生やしたクリーム色の耳が特徴的な彼女は、ミント・ブラマンシュ
おっとりしていて人当たりはよいが、少ししたたかなエンジェル隊きっての知性派
遠距離専門の紋章機”トリック・マスター”のパイロットである
ブラマンシュ財団の一人娘であり、、俗に言うテレパシストで人の考えたこと、おもったことを読む能力をもつ



エンジェル隊

月の聖母直属の”ムーン・エンジェル隊”に所属する6人の少女
彼女たちは敵から、また味方からも畏怖と尊敬をこめてそう呼ばれていた
ロスト・テクノロジーの結晶である”紋章機”(エンブレム・フレーム)に乗り
月の聖母シャトヤーンの護衛と、ロストテクノロジーの調査・回収をするために銀河中を飛び回る
美しく最強の天使たち…



「ほら、タクト。みんながおまちかねだよ」
ドンッと、背中を叩きながらいうのはフォルテ・シュトーレン
赤い髪に黒い軍帽、照準あわせのためのモノクル…と、他の少女たちにはない大人の色気を振りまくエンジェル隊の隊長
姉御肌のさっぱりとした気質をもち、面倒見が良く、他の隊員を実の妹のように可愛がっている
銃火器のコレクションを趣味にもち、彼女の愛機”ハッピートリガー”も攻撃専門の機体だ

「タクトさん、具合でも悪いのですか?」
小さな、それでいて不思議と通る声で一言
ヴァニラ・H。エンジェル隊最年少で13歳という年齢ではあるが
ナノマシンを使った治療・医療技術は抜群で欠かせない存在だ
彼女のあやつる紋章機”ハーベスター”は唯一の回復能力を持つのである
地方の宗教惑星出身の彼女は、あまり表情を表に出すようなことはしないが
「っていうか、あからさまに食べ過ぎだと思うんですけどねぇ」
彼女のかわりに、いつも一緒にいるピンクのぬいぐるみ(一応ロストテクノロジー)ノーマッドがしゃべった



辺境の一司令官であったタクトとエンジェル隊が出会ったのは数ヶ月前
事の発端はクーデターにある
5年前にクーデターを起こし辺境の島へ流刑されていた皇子エオニア・トランスバールが再びクーデターを起こしたのだ
未知のロスト・テクノロジーである”黒き月”を率いて
平和ぼけであった首都トランスバールが堕ちるのはものの数時間だったという
彼は叔父であるジェラール皇王を殺害すると
従兄弟の皇子・皇女、わずかばりでも王族の血を引く人間、その周辺の貴族すらも皆殺しにし
そして、皇国をのっとるとそのまま"白き月”へと手を伸ばした
”白き月”には皇族唯一の生き残りとなった、シヴァ皇子がいたのである
ロストテクノロジーと未知のテクノロジーが激戦する中、白き月の聖母シャトヤーンは
月の船エルシオールにわずかばかりの侍従と必要なだけの技術者
紋章機(エンブレムフレーム)とよばれる5機のロストテクノロジーの結晶と、それを操る五人の天使たち
その全てをシヴァ皇子のためにつめこみ、逃亡させた
そして、シヴァ皇子を護り、エオニアからトランスバール皇国に平和を取り戻すという使命が
タクトに任されたのである



「そ、そうなのですか?!だ、大丈夫ですか、タクトさん」
長い黒髪をなびかせて、おろおろと取り乱すのは
数週間前にエンジェル隊へ入隊したばかりの、烏丸ちとせ
エオニアのクーデター後、白き月で新たに発見された6番目の紋章機”シャープシューター”との相性を認められてエンジェル隊へ配属された
礼儀正しく控えめな、大和撫子



エンジェル隊と、力と心をあわせてエオニア軍と戦い
その背後でエオニアを操っていた真の黒幕”黒き月”を撃破したのが半年前
そして、半年の辺境惑星の調査から帰ってきたタクトを待っていたのが
6番目の天使、ちとせと…先代文明EDENと戦っていたという真の敵、ヴァル・ファスクの再来であった
ネフェーリア率いるヴァル・ファスク
二度に渡る危機を乗り越えることが出来たのは
他の誰でもない、彼女たちがいてくれたからだ
もちろん、彼女たちだけではなく
エルシオールの乗組員を初めとした、多くの人々があの絶望の中で希望を捨てなかった
だからこそ、束の間ではあるが、今の平和があるのだとタクトは思う

そして…

「どーしたんだい、タクト?ぼーっとして」
「ほんとだらしない顔がもっとだらしなく見えるわよ」
フォルテとランファのダブル攻撃に
「あははー、な、なんでもないよ」
タクトは笑ってごまかした
と…
「あら、私たちに隠し事ですか?タクトさん」
悲しいですわ…と涙をふくしぐさをしながらミント
「あ!わかった。タクトさん、レスターさんがいらっしゃらないから寂しいんですね」
ポンッと手をたたいてミルフィー
「ミ,ミルフィー;」
慌てて否定しようとした、そのうしろで
「そうなのですか?」
「な、なるほど…」
「ち、違うよ。何で納得してるのさ、ヴァニラ!ちとせ!」
とめるのも、むなしく…
「なんだそうだったのかい?だったらレスターの奴も誘うんだったねぇ」
「えー、でもクールダラス副司令なら『くだらん』とかいって断りそうですよ」
「まぁ、そうですわね…あまり甘いものがお好きなようでもありませんし」
話は弾んで…
「はぁ…」
ため息が一つ

レスター・クールダラス
タクトの士官学校時代からの親友で
今は副官として、それ以上に恋人としてタクトの側にいる青年
冷静沈着な切れ者で、毒舌家…さらに言ってしまうと、かなりの美形
普段はお気楽極楽なタクトに常識論を持ち出しては、フォローへとひた走る
だが、その反面では他の誰よりもタクトの実力を認めている人物なのだ
タクトが希望を捨てることなく、前をむいて戦ってこれたのは
いつだって、側にレスターがいてくれたから…
今までも、そして…これからも

タクトがそんなことに思いを馳せているうちに
話はどんどんエスカレートしていた
「でしたら、タクトさんを人質にとればいいんですわ」
「おお、そりゃーいいね。すっとんでくるよ」
「おーい…、みんないい加減にしてくれよー」
「嫌だなぁ冗談ですよ。タクトさん」
ミルフィーがにこにこと笑いながら言った
(ミルフィーは冗談でも他の三人はマジ顔だったような気もするのだけど)
「まぁ、休暇は長いんだ。今日くらいはあたしらにつきあっておくれよ」
「うぅ…ちがうのにー」
「もう男がウジウジするんじゃないわよ!ほら、さっさといくわよ」
そういいながら、7人(+1匹)は本日15件目のケーキ屋へと足を踏み入れたのであった



お祭りのような騒がしくて楽しい日常
地上(ここ)から、銀河中をまきこんで
はちゃめちゃで刺激的で
でも、どこか優しさと暖かさに満ちた
そんな毎日がずっと続くことを、願っている

地上より永遠に…





2005年03月13日(日) PC直りました…の日

金、土、日と寝つぶしたかみぃです。こんばんわ。
インフルエンザって怖いですな。

はいはいはい!
今月のガンガンですが
PAPUWAが萌えです(うっちょり)
パプワ君大好き〜vな俺としてはドリー夢な回でしたv
ソージ×パプワ(違)
この前の、ススム×パプワも萌えでございましたが、やっぱり
にっこり笑った鬼畜攻萌えの俺としては、ソージ×パプワです
あぁ、不思議なちみっこだ。パプワくん。らぶりー。

話題転換

人権擁護法案ってみなさんご存知ですか?
知らない?知らない方は↓をごらんください
http://nzm-gm.com/zinkenyoug.html
ちなみに今、流行のデスノート風フラッシュらしいんですが、おいらよく
知らないんで本当かどうか不明です。(すっきりさっぱり興味なし)
でも、まぁ内容はほんとよく理解できるので。一度ごらんくださいなv



2005年03月09日(水) ウイルス踏みました…の日

ウイルス踏みました。というわけで、パソ使用不可でーす。
これで二度目。やっぱりウイルスソフトは常に起動しとかないと駄目ですね(ほろほろ)
まぁ、今月末のイベントの原稿とかもあるんでぼちぼち直していきます。

はい、そしておまたせしました!
GALAXY ANGEL-Eternal Lovers編-「地上より永遠に」は

3月16日

から日替わり連載です!
日替わりSS連載なんて無謀な企画はもうたぶんこれでラストだと思いますので
全力でがんばっていく所存ですv(わぁい)
どうか、いましばらく、おまちくださいv


 < 昨日なくしてしまったもの  もくじ  ポストの中の明日 >


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