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ごっちゃ箱
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2007年11月26日(月)
バスが桜の木をのせて








バスにもたれて揺られていると
なつかしいひとが乗り込んできて
私のすぐ後ろの席に座っている

バスにもたれて揺られていると
いつのまにか、どの乗客たちも
花びらになってしまっている

新宿で桜の木をのせたまま
海岸から波打ち際へと砂をまきあげたり
金門橋で夕暮れを追いこしてしまったり

ヨーロッパの森で停留所を見失ったあと
サーカスをよけて大きくカーブをきったりして
やがて運転手に揺りおこされても

バスは桜をのせたままで
おとうさんもおかあさんもまだいた頃の
団地の裏に停車してます











2007年11月19日(月)
題名のあるはなしーごっちゃ箱篇








3月
某日
王様、キャバクラに行く
真夜中のパーティー
彼女達
みんな、かわいらしく
化粧
寄り添い合いし秩序と無秩序の気配かな
眠らないで
おしゃべりおしゃべり!
わいわいわい
わいわいわい(2)
天国のような
夢見ごこち
みんな夢の中
時計をとめて
夜よ、明けるな

時は流れて
最後のおつまみ
そろそろという時間
もう行かなきゃ

銭がなけりゃ
ひとりぶん

…ときどきちょっと固まる

泥棒
きみは詐欺師
3つ数えろ!

それはスポットライトではない

まぶしい道端

朝に溺れる












2007年11月12日(月)
王様、バイキングへ行く








王様はキャバクラへの視察以来
すっかりこの国がお気に入りぶっくまーく

あれ以来おキャバに行く機会はないものの
この国のもうひとつの代表的な文化、飽食時代の関係代名詞、
『食べ放題』にご執心です

王様はこの国のお金をあまり持っていないので
お寿司やホテルのブッフェなどに縁はありませんが
それでもカレー、焼肉、中華、イタリアンと
どれも千円で、しかも種類もあって飽きることがありません

今日ご視察されたのはお好み焼きの食べ放題
もちろん千円
千円とはいえ払ったからには
その意義と権利を目一杯に楽しみたいものです
お付きの家来も食べるのに夢中なので
食べるためには自分で焼かねばなりません
いっぺんに3食、4食ぶんは注文します
えーと。牛と豚とえびにカレー味、あとベビースターもね

王様は水分を極力摂りません
胃がふくれてしまうからです
しかも本日の品はお好み焼き、小麦粉の固まり、強敵です
いくら焼き物だからってビールとか頼んじゃったら
せっかく安く食べられるというのに
追加料金のうえに腹も早くふくれてお店側のおもうツボではありませんか

いいえ、これは王様の聖戦なのでした
家来たちがもう〜限界、とおなかをぽんぽん叩きはじめても
それを横目にしても
制限時間ギリギリまで食べるのをやめるわけにはいきません
限界は限界を超えてみなければわからないのです
味もすっかりわからなくなって
おいしくもなんともなくなったとしても
それでも戦い続ける王様、ただの負けずぎらい
ここで志半ばに倒れるとしてもー
箸を持ったまま前向きに倒れてみせるー
ちなみにタッパーを持ち込むのは反則です

うっすらと遠ざかっていく意識に手を振りながら、王様は思いました
なぜこんな辛いのにまた来てしまうんだろう
神よ、ひとはなぜ食べ放題での後悔をこうも繰り返してしまうのですか

この甘美と苦痛
あーっしをおなめ!!!という
ドリフの往年コントのような決め文句が
まだこの国に存在するかは知りませんが
もしかしたらSMのMは
満腹のM

そういえば、祖国にいる女王様の、
視察、視察でちっとも帰国しない王様に
罵声を浴びせる御姿が

そっと涙のにじむ瞼に
浮かんでくるのでした。うっぷ。










2007年11月05日(月)
常夜灯(2)










お酒と煙草があったら
ごめん、もう満足、はんずあっぷ

そこに友達がぶっつぶれてたら
ごめん、もういいや

ちょっとだけやりたいようにして
ほんのちょっと、寂しくって

なんにもしないまんま
でもちゃんと、生きてたくて

ときどきなんか書けてたら
ごめん、もう満足

ごめんごめん、もう満足