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JIROの独断的日記
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2007年09月07日(金) 「奈良、札幌の受け入れ拒否 「受診しない妊婦にも責任」←そのとおりだ。/【追加】厚労相、産科医不足問題で「報酬を引き上げたい」

◆記事:奈良、札幌の受け入れ拒否 「受診しない妊婦にも責任」(北海道新聞 09/07 18:10)

奈良県や札幌で、救急搬送された妊婦の受け入れを医療機関が相次いで断った問題で、

拒否された患者全員が出産まで一度も産科を受診してなかったことから、産婦人科医の間で批判の声が上がっている。

背景には札幌市内だけで年間一千万円を超す出産費用の未払いがあり、救急態勢の改善だけで問題は解決しない。

「病院や役所ばかり責められるけど、妊娠六カ月まで医者に行かない妊婦がそもそも悪い」

札幌市内の総合病院の産婦人科で働く四十代の男性医師は、奈良の女性の自己責任を問う。

奈良の女性も、札幌で五回以上受け入れを断られた女性五人も、全員に産科の受診歴が無かった。
「妊娠したかなと思ってから出産まで約二百八十日。その間、一度も受診しないというのは確信犯ですよ」。

札幌市産婦人科医会の遠藤一行会長も語気を強めた。

通常の患者は妊娠の兆候に気づいた時点で産科にかかる。

容体が急変しても、119番通報すれば、かかりつけ医に運ばれる。

国民健康保険なら一人三十五万円の出産育児一時金も支給される。

遠藤医師が「確信犯」と嘆く患者の大半は国保の保険料が未納、または無保険者という。

保険料未納なら、失業や災害など特別な事情がない限り一時金は差し止められる。

保険を使えないので妊娠しても産科にかからず、陣痛が始まってから119番通報する。
「救急車に乗れば必ずどこかの病院に行けますから。無事産んだら、退院する段になってお金がない、と。

ひどい場合は子供を置いて失踪(しっそう)する。病院はやってられませんよ」。

遠藤医師は嘆く。

同医会の調査によると、二○○六年度に、救急指定を受けた札幌市内の十四医療機関だけで、

出産費用の未払いは二十六件、総額一千万円を超す。

同医会理事で市立札幌病院の晴山仁志産婦人科部長は「予想より多い数字」と驚いた。

医療機関からみると、かかりつけ医がおらず、救急搬送される妊婦は、

未熟児などの危険性が不明でリスクが高い上、出産費不払いになる可能性も高く、受け入れを断る病院が出てくる。

ただ、産科にかからない妊婦を責めるだけでは、子どもの生命は守れない。

胆振管内で産婦人科を開業する六十代の男性医師は
「産科に行かない妊婦にはそれぞれ事情がある。救急態勢以外に、母親側の背景を検討して対策を講じないと、問題は繰り返される」

と訴えている。


◆コメント:奈良と札幌の妊婦には「かかりつけ」がいなかった

一昨日、「救急搬送妊婦の2割、最初の病院で拒否…千葉市」←マスコミの過剰・偏向報道

という記事を書き、その中で奈良の妊婦が病院の「たらいまわし」に遭い、死産となった事件に触れた。

そこで私は、

もう一つ不思議なことがある。

奈良県の妊婦は、死産という結果になり、気の毒ではあるが、何故「かかりつけ」の病院を指定しなかったのか。

妊婦は定期的に、同じ産婦人科に通っているはずだ。

妊婦はいつ産気づいても良いように、なるべく自宅近くの産婦人科をかかりつけにしておくものだ。

と書いた。

すると読者の方から、「奈良の妊婦にはかかりつけの医者がいなかった」ことを教えていただいた。

奈良の事件は8月27日に起きたが、新聞にはそのようなことは書かれておらず、ただ、
「11の病院が救急車の受け入れを拒んだので、死産に至った」

という内容だった。翌日、社説でこの問題を取りあげた社も多かったが、そこでもやはり、

患者側に落ち度が無かったのかどうかには触れられていなかった。

だから、私は「このような報道は不公平だ。」と書いた。やはりそうだった。

冒頭の記事は北海道新聞のもので、医者、病院側の言い分を載せている。

驚いたことに、奈良や札幌(でも同じようなことがあった)の妊婦は、妊娠六ヶ月まで、

医師の診察を受けていなかった。つまり、「かかりつけ医」がいなかったのである。

おかしいと思ったよ。

一昨日書いたとおり、かかりつけ医がいたら、救急車は最初にそこに連れて行くはずだ。

どうやら、奈良や札幌の「たらい回し」は、100%とは断言できないが、相当程度、患者にも責任がある、と考えられる。


但し、厳密に言うと、記事の後半で「六十代の男性医師」が言うとおり、

何故妊娠6ヶ月まで医師の診察を受けなかったのか、をさらに明らかにする必要がある。

単純に、患者がだらしのない人物なのか。

保険の問題なのか? つまり、国民健康保険の保険料が上がって払えず、保険証を取りあげられてしまって

病院の診察を受けたくても受けられなかったのか。

もし、保険料を払えなかったとしたら、それは、本人の責任ではない事情により極端に所得が低いのか。

または、怠惰で働かないから所得が低いのか。

或いは、実は保険料を支払える程度の所得はあるのに、故意に保険料を納めなかったのか。

健康保険の事だけを考えても、確かめるべきことはこれほどあるのだ。

そういうことを一切書かないで、とにかく、救急車の受入を拒否した病院・医者だけが悪い、と

決めつけた報道は、間違っている。


北海道新聞をいつも読んでいるわけではないので、この新聞が、一般的に優れた報道をする新聞社なのかどうか、

私には判断が付かないが、本件に関して、この記事を載せたのは、評価されるべきである。


◆【追加】記事:舛添厚労相、産科医不足問題で「報酬を引き上げたい」(読売新聞 - 09月08日 11:23)

舛添厚生労働相は8日、深刻化する病院の産科医不足について、

「勤務環境が非常に悪い。報酬面で見てあげないと、医者が不足し、なり手がいなくなるので、(待遇改善を)やりたい」と述べ、

産科医を診療報酬で優遇する考えを示した。都内で記者団に語った。

産科医は過酷な勤務体制や、医療事故の訴訟リスクが高いことなどから、減少が続いており、

産科を閉鎖する病院も相次いでいる。今後、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会に、

産科に報酬を重点的に加算するよう諮問する予定だ。


◆コメント:当然だと思いますよ。

産婦人科医が減っているのは、死ぬほど働いて、勤務医の給料は安く、真面目に任務を遂行しても、

問題があるとすぐに刑事被告人にされてしまうからである。私の親戚にも産婦人科の勤務医がいる。

全くあんなキツイ仕事があるだろうか。何日も泊まり込みで働いて、やっと自宅に戻り一風呂浴びて、

さあ、メシだ、というその瞬間、病院から電話がかかり、担当患者の容態が急変したという。

結局、彼の母親が用意していた御馳走を一口も食べず、病院に戻っていった。

そしてそれから、何日も戻ることがなかった。また徹夜が続いたらしい。

だが、医師はこれが仕事だから、当たり前なのだ、と自らに言い聞かせてやりきれなさを我慢している。

これほどのことをして、大学病院の勤務医なら時給にすれば1000円にもならない、という。

殆どの分娩は見事にこなしているし、出血が激しいとか、新生児が呼吸をしないとかの非常事態も

切り抜けている。それなのに、たった一回失敗したら、罪人、人間の屑、のように患者やその家族に

言われるのだ。

これでは、産科医のなり手が減るのは当たり前だ。

人に、大変な仕事をさせておいて、カネを払わないのは、一番いけないことだ。

資本主義社会である。高度な技術を身につけた者は、それなりの対価を得て当然なのだ。



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