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JIROの独断的日記
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2003年07月04日(金) 世間は必ずしも人を正しく評価できない。アコーディオンの横森良造さんに思う。

 世間には、地道に研鑚を積み、優れた技術と経験をもちながら、正当な評価を得られない人が沢山いる。

 小学校の前を通ったら、ひさしぶりにアコーディオンの音が聞こえた。アコーディオンは子供が弾いていると幼稚な楽器に聞こえてしまうが、cobaこと小林靖宏氏が20年前に登場して以来、この楽器に対する認識は随分変わった。

 coba氏が登場する前はアコーディオンといえば横森良造さんだった。ところが、横森さんは主に素人ののど自慢の伴奏とか、歌手のオーディションの伴奏とか、お笑い番組での芸人の下手な歌の伴奏とか、そういう扱いしか受けなかった。一般の人は横森さんといえば、「バラエティ番組でニコニコ笑いながら、歌謡曲の伴奏をしている地味なおじさん」、という印象を抱いている事だろう。

 しかし、多少なりとも音楽の素養がある人ならば、横森さんがただものではないことに、気がつく。レパートリーが5000曲というのも無論すごいのだが、本質はそういうことではない。

 横森さんは、どんな歌の伴奏をするときでも、歌っている人間にとって、その曲の調性が合っていなければ(キーが高すぎるとか、低すぎるとかいうでしょう)、即座にその人が一番歌いやすい調性に替える、つまり、移調をすることが出来る。

 例えば、ニ長調の歌がちょっと高い、というときに、半音下げて嬰ハ長調にしたりするのである。ニ長調ならば♯2個だが、嬰ハ長になれば、♯7個となり、一挙に指使いが難しくなる。それでも、横森さんは決して間違えない。

 そして、アコーディオンの左手はハーモニーを奏する為のボタンが100数十個もついているわけで、ある調性の曲のある部分に適したコードに応じて、瞬間的にそれを選択しなければならない。横森さんは移調をしたときに、このようなハーモニーの移調も完璧にこなしている。

 ようするに、横森さんは西洋音楽を構成する24種類すべての音階とそれに付帯する和音群が完璧に身体に沁み込んでいるのである。

 楽器をやった人なら分かるだろうが、これは、本当に真面目に音楽を勉強した人でなければ出来ない技術だ。そして、常に練習をしていなければ、ダメになってしまうのが楽器の演奏技術というものである。

 横森良造さんは、愚かなテレビ局の連中や一般大衆が考えているよりもはるかにすごい技術を有している、それだけの研鑚を積んだ。本当の音楽家なのである。

 私は、横森さんがバラエティーでにこやかに笑いながら演奏をしているのをみると、いつも、口惜しくなる。

 世の中は、なかなか、優れた人に、正当な評価を下せないのである。


2002年07月04日(木) 天候とうつ病

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