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JIROの独断的日記
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2003年06月14日(土) 「退職金16億円全額を軽井沢に寄付 ソニー大賀氏、」 なかなかできることではない。

◆記事:退職金全額を軽井沢に寄付 ソニー大賀氏、音楽施設に
 ソニーの大賀典雄名誉会長(73)が、退職慰労金として支払われる予定の16億円の手取り全額を、長期静養していた長野県軽井沢町に寄付する意向であることが11日、分かった。大賀氏は音楽ホールなどの建設を同町に求めているという。

◆所感:なかなか、できることではない。立派だと思う。
 ENPITUの「時事・社会」では、世の中の問題を取り上げて、誰かを批判する文章がどうしても多くなる。しかし、他人のアラを見つけて批判するばかりではなくて、善行を称えることも大切だろう。

 ソニーの社長、会長を長く務めた大賀さんは、もともと音楽家を目指していた。単に夢見ていたという段階ではなく、芸大とベルリン国立音楽大学の声楽科を卒業した、れっきとしたプロのバリトン歌手なのである。

 大賀氏は、芸大の学生の頃から、音大生でありながらラジオの配線図も読めた多才なひとで、そこに目をつけた井深氏、盛田氏(共にSONYの創業者)に、「音楽家と実業家の2足のわらじを履けばいい」とスカウトされ、学生なのに会社の重役でもあった、という大変珍しい経歴の持ち主である。

 CDやMDを開発させたり、米国のレコード会社を買収してSONYを世界のエンターテイメント企業にも発展させた。プロの音楽家でもあるから、芸術家との付き合いも多く、カラヤンとは大変親しかった。ともに、車好きだし、自ら自家用飛行機の操縦もする(なんでもできちゃうのである。この人は。)ので話が合った。

 カラヤンの晩年の日常を記録した「カラヤン・イン・ザルツブルグ」というビデオでは、カラヤンが新しく買った車の性能を嬉しそうに自慢して、それに大袈裟に驚いてみせる大賀氏の姿が映っている。奇しくもカラヤンが心臓発作で急逝したとき、たまたま現場に居合わせたのも、大賀氏だった。

 「2足のわらじ」を履くつもりだったが、どうしても事業家として多忙になり、音楽家としては活動できなかった。一度、社長時代に、盛田氏に「1日だけ音楽家に戻してやる」といわれて、東京でプロのオーケストラを指揮したことがあったが、コンサートの後で盛田氏から「次は10年後にしてくれ」とクギをさされてしまったそうだ。

 大賀氏は数ヶ月前、日本経済新聞の「私の履歴書」にその華麗な半生について綴っていた。大半はSONYに関わる話だが、最終回で、自分にはやはり大きな忘れ物がある。それは、音楽だ、ということを書いていた。私は、ああ、やはり大賀さんが本当に好きなのは、なんと言っても音楽なのだな、と思った。世間的に見れば順風満帆の人生だが、人にはそれぞれ他人にはわからない苦悩があるのだ。

 「私の履歴書」の最終回で、大賀さんは、だから余生は音楽に貢献するような事をしたいと書いていたが、早くも具体的な行動となって、今回のニュースが報じられた。

 無論、今までSONYの社長・会長として十分な財産を蓄えているのだろうが、16億円の退職金を全額、音楽のために使ってくれといって寄付する事は、なかなかできることではない。私が大賀さんの立場だったら、凡人だから、もし寄付するとしても半額、とか考えるだろう。16億まるまる全額という潔さが素晴らしい。

 大賀氏の、音楽への思いは、本物なのだ。


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