スカーレットの心のつぶやき
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2003年06月05日(木) 本物

昔、娘がまだ赤ちゃんだった頃、

誰かが「分らないかもしれないけれど、絵でも音楽でも
本当のものを見せたり聞かせたりすることが大切だ」という
話を聞いた。

子供は純粋で、無垢で言わばまだ書いていない真っ白な
ノートみたいなもの。

その真っ白い紙面に、なにを書くか
なにが書かれるかはわからないけれど
分らないから必要ないとは思わないで

良い物を見せたり聞かせたりすることは
とても大事なことだと思う。

娘がまだ幼かった頃から、毎年、春、秋には
美術館へ連れていって、本物の絵を見せていた。

反応はまだ返ってこなかったけれど
確かに娘の目は、良い物を見ていたと信じたい。

又音楽会も幾度となく足を運んだものだ。

ピアノの演奏会だけではなく
チェロの演奏会、オーケストラ、室内合奏、
バイオリン、歌曲、ミュージカル
オペラ・・・

数多くの良い音楽に親しんだ。

今その結果はまだ出てはないけれど
絶対に娘の心や頭には、これらの良い音楽は
残っていると思う。

勿論演奏会に行くには時間もお金もかかる。

私は特に夜の外出が好きではないので
演奏会のある日は夕方になると何故か
心がそわそわして落ち着かない気分だった。

でも、いざ会場に行って、演奏会を聞いていると
やはり来て良かったと納得したものだ。

昨日私は友人と小さな美術館へ行ってきた。

チケットを2枚もらっていたし、友人が行った事がない
ということなので、誘って行った。

静かな環境の中に、その美術館は建っていた。

館内の雰囲気もとても落ち着いた良い感じだった。

私達が行ったのは「加山又造版画展」だった、

小さなものから何号かは分らないけれど
大作もあった。

版画というものは、私が小学生の時に
削った覚えはあるけれど、

その版画の手法に寄って、まったく違う作品に
なっていくのだ。

まるで生まれた子供の成長ぶりに目を張るばかり。

版画?と信じられない技法や感性で
描かれていた。

「木版画」(凸版)
 板の表面に下絵を描くか、
あるいは下絵を描いた薄い紙を貼り、
必要な選を彫刻等で彫り残して凸版刷りする方法。


「リトグラフ」(平版)
石版画のこと。水と油の反発しあう性質を利用した技法

「ビュラン」(凹版)
彫刻銅版画。ビュランはフランス語で英語では エングレーバー。

他にも技法は「ルーレット」 「エッチング」「ドライポイント」
 「メゾチント」「アクアチント」「ソフトグランド・エッチング」
などがあるそうだ。

意味も分らない、方法も想像できない技法だけれど
何でも本物に囲まれていると、それら全てがとても貴重なものに
思えてきた。

下絵を描く人、その下絵の線にそって彫る人、
そしてそれを摺る人

この3人の感性や技の終結したものが
結局一つの作品となる。

工程一つ一つにその人の魂と力が籠もっている。

感動することばかりだった昨日の版画展。

このような静かな小さな美術館で楽しく
又嬉しい時間を持つことができてとても嬉しかった。

こんな良いものを本物を見ることができるのは
幸せだとつくづく思った半日だった。

これからも、分らなくても良い
本物を見、本物を聞き続けたいと思う。



スカーレット