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2005年07月15日(金) ケイからの手紙


ケイから手紙が届いたのは、清清しい初夏の風がレースのカーテンを揺らす午後のことだった。

家の中は、誰もいないかのように静まり返っていたし、窓から風に乗ってやってくる
街の喧騒だけが、聞こえていた。


でも、そのときぼくは、はっきりと聞いたのだった。

郵便受けに投函されたケイからの手紙が立てたコトリという音。

ずっとまどろんでいて、ケイからの手紙が投函されるのを夢のなかで見ていたに過ぎないのかも知れない。

ぼくは、その手紙の立てたコトリという音で、目が醒めたのだった。

でも、なぜか本当にケイから手紙が来たという確証めいたものがあった。

ぼくは、寝ぼけまなこで階段を降りて行く。

ふと、ケイとふたりで歩いた川べりのことを思い出した。

あのときケイは、ぼくに別れを伝えたかったのだろう。

亜麻色の髪を風になびかせながら、ケイは終始笑みを絶やさなかったけれど
ぼくには、わかっていた。

わかっていたからこそ、ケイが言い出すのを待っていられなくて
饒舌になっていた。

ぼくにだってわかっていたさ。

ケイのことをもうこれ以上縛れないって。



階段を降りきると、チャコが足に纏わりついてきた。

ぼくは、チャコを抱き上げて喉を擦ってあげる。

チャコは、気持ち良さそうに喉をゴロゴロいわせながら
薄目を開けて、ぼくを見ていた。

何もかも見透かしてしまうようなその眸は

勇気を出せよ。

そう言っている気がした。


ぼくは、チャコにウィンクする。


大丈夫。

俺だって、男だぜ。


チャコを下ろし、意を決して、玄関のドアを開け外に出る。


快晴だ。


心が晴れ晴れするような、紺碧の空。
東京にいたときには、空がこんな色だと思わなかった。



門の脇にあるポストを覗いてみると、封筒が見えた。


懐かしいケイの筆跡。

やっぱり、着ていた。


でも、怖くて開くことなど出来はしない。



ぼくは嗚咽しながら、信じられないほど美しい紺碧の空を
もう一度見上げた。





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