活字中毒のワタシの日記

2017年09月01日(金) 阿部 修士『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策』★★★★☆


阿部 修士『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策

意思決定に関する科学的な理論や研究結果を、素人にもわかりやすい言葉で説明してくれている一冊。

やる気、意志力、心の仕組みに関心のある人には読みがいのある内容だと思います。面白かった!

二重過程理論
欲求や情動のシステム1
合理的判断や論理的思考、自制心といった意志の力によるこころの働きをささえるシステム2

「ロイ・バウマイスターらによる一連の研究も有名です。彼らは人間の意志の力や自制心は有限であることを、様々な実験によって証明し、自我消耗(ego depletion)という概念を提唱しています。要するに、システム2を使うと疲弊してしまい、連続してシステム2をうまく機能させるのは難しいということです。」(p26)

「反射的プロセス(X-System)と内省的プロセス(C-System)という区分を提唱しているリーバーマンら」(p37)
X-Systemは大脳基底核や扁桃体といった古い脳の構造、一方は前頭前野

マシュマロテスト
「長い時間待つことができた子供たちは、待つことができなかった子供たちに比べ、高い教育歴を有しており、肥満の割合も大幅に低いことが判明しました。青少年期同様、将来の計画を立てて自信をもって行動することができ、社会的にも成功している例が多かったのです。」(p45)

待てた子たちは
「ボタンを押すのを我慢するときに下前頭回と呼ばれる領域の活動が高いことがわかりました。下前頭回は脳の前頭前野の一部です。(略)まさに理性を司っている領域です。」(p46)

我慢できた子どもたちの特徴
「欲求の先延ばしを可能にする重要な方法として、ミシェルは気をそらすこと、そして抽象化をあげています。誘惑を感じさせる対象そのものに注意を向けるのではなく、気をそらすことはわたしたちが考えている以上に大きな効果があるのです。」(p56)

「頭の中でそのお菓子を額縁に入れることで、なんと一八分も待てるようになりました。一方、画像を目の前にした子供たちが平均して待てた時間は一八分だったのですが、本物が目の前にあると想像すると、待てる時間は半分以下になってしまいました。」

「まったく同じ状況であっても、意図的に体調から注意をそらしたり、あるいは対象を抽象的にとらえたりすることで、抗いがたい誘惑に抵抗することが可能になるのです。自制心そのものというよりは、柔軟性をもつことが重要であると結論づけられるかもしれません。」(p58-59)

この力は鍛えられるのか?
「ミシェルらの一連の研究によれば、その答えは『イエス』です。彼らは、誘惑に直面した場合に、それを回避するための戦略をあらかじめ準備しておくことで、効果的に自制心を発揮できるようになることを証明しました。もし○○したら、XXする、というように自分の行動方針を決めておくのです。帰宅途中にお菓子屋さんが目に入っても、もっとヘルシーな果物が家にあることを思い出して、足早に家に帰るようにする、とあらかじめ決めておくのです。誘惑とそれに対する抵抗手段との間に、自動的な結びつきを作ることです。(略)こうした方略は、練習を続けることによって、自動的に発言させることができるようになります。」(p59-60)

「こうした知見は、単に理性で欲求をコントロールするというわけではなく、理性の力をもう一段上の視点から俯瞰的にコントロールして使っている、と言えるかもしれません。」(p61)

「自制心そのものを最大限発揮するというよりは、自制心が最大限発揮できるように環境を整える、というイメージでよいでしょう。遅いこころそのもので意思決定を行うというよりは、遅いこころをうまく利用してより良い意思決定を行う、ということです。」(p180-181)

「『どうにでもなれ効果』の落とし穴」(p61)

「心理学では『対抗制御的摂食行動』」(p63)

損失回避性
「私たちは同額の利益と損失では、損失の方を過大評価する傾向があり、損失を回避しようという動機が強く働くのです。」(p94)

「好機よりも脅威に対してすばやく対応する生命体のほうが、生存や再生産の可能性が高まるからだ」(p94-95)

遅いこころは速いこころをコントロールできるのか?
「この問いに対して現時点で筆者は『俯瞰的に二つのこころのはたらきをとらえ、遅いこころをサポートすることで、多くの場面ではコントロールが可能』としたいと思います。そしてこのこころのはたらきをより正確に理解し、より正しく使用するために、脳の取扱説明書が必要、ということももう一度述べておきたいと思います。」(p185)

「ただし、残念ながらこの取扱説明書が完成するのは、当分先のことになりそうです。」(p185)

阿部 修士『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策



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