2016年08月01日(月) |
森博嗣『相田家のグッドバイ』★★★☆☆ |
森博嗣『相田家のグッドバイ』
『すべてがFになる』以来の森博嗣さん。
心に残ったところ。
「親孝行という言葉があるけれど、それは親の面倒を見ることではなく、人間として成長し、立派になり、親の生き方を真似つつ、自分の人生を歩むことだ。それを、紀彦はこの歳になってようやくはっきりとわかった。息子や娘になにかをしてもらいたいとは、これっぽっちも思わない。ただ、彼らは彼らの人生を一所懸命に生きてくれること、それだけを願う、それが親として一番嬉しいことなのである。」(p173)
「結局のところ、人間が一人生きていることなんて、本当にちっぽけなものなのだ。自分に意識があるうちは、自分が考えたこと、やっていることに意味があると解釈をする。その解釈が既に自己満足でしかない。自然の視点から見れば、なにも変わらない。相変わらず季節は移り変わり、毎年雑草が伸びて、また枯れていく。ときどき嵐になったり、地面が揺れたりするけれど、地球の寿命や太陽系の運行に比べれば、ゴザ範囲のさらに何桁も小さい。」(p192)
「無駄に生きるというのは、つまりなにもしないことだ。なにもしないというのは、なにも作り出さない、ということだろう。それでは、外側から見れば死んでいるのと同じ、そこにその人間がいないのと同じことになる。」(p193-194)
森博嗣『相田家のグッドバイ』
|