| 2007年01月02日(火) |
松瀬 学『日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯』★★★★☆ |
 『日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯』 松瀬 学 新潮社
混迷を極めるイラクにて、車での移動中に銃撃を受け亡くなった外交官、奥克彦さんの評伝。
あとがきで著者は、美談にするためだけの記事にしたくなかった、しか集まったのは褒め讃える話ばかり、悪い話は出て来なかった、と書いています。
確かに美談ばかり。
これでは、ほんとうにただの故人をヨイショするだけの本になってしまうと危惧するのもわかるほど、そういったエピソードが続いています。
かなりひねくれものの私ですが、一読して、やはり奥さんの外交官としての手腕、情熱、正義感、人間としての温かさ、大きさは本物だったのだろうと思います。
ラグビーへの情熱。 外交官という目標。 そのための、それぞれの努力も尋常ではない精神力に支えられているよう。
世界のあちこちで広げたネットワークを作り上げた人間としての魅力。
外交官としてNGOをサポートし、現地の人の笑顔のために、身を粉にして働く。 テロリストの目標リストに載せられ、イラクに戻るなと言われても現場に戻ってきた彼。 「捨て石」であることをいとわず、誇りに思いつつも、国に雇われ給料をもらっているのだから当たり前だと言える謙虚さ。
この謙虚さを物語るエピソードが、川口外相の「川口賞」辞退。 死後、再び与えられたこの賞を授与され、外相が弔辞でこう言ったそうです。
「あらためて川口賞を贈ります。今回はどうか受け取ってください」(p205)
アメリカのようにチームではなく、個人を『撃墜王』にして対応する日本。 このシステムを変えていいかなければならないことにも、読むと気づきます。
彼の死を無駄にしてはならない。
心からそう思います。 日本のために、困っている人たちのために、子どもたちの笑顔のために、リスクを認識した上で踏みとどまった奥さん。
そのために平和な日本で暮らす自分は何ができるのか。
考えていかなくてはと思いました。
惜しい人をなくした、とはこういうケースを言うのだな、とも。
ご冥福をお祈りいたします。
『日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯』
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