秋が深まってきたせいか 余計なことを思い出しては寂しくなる。 死んだ人のことや、 自分ができなかったこととかを。 彼が今も生きていたら… (わたしをサポートしてくれた) あの時体調を崩さなかったら… (この土地にはいなかった) あの夢が叶っていたら… (わたしは…) たとえ人生に「if」が無いとしても 人は思い出すものだ。 わたしも、何度も何度も悪夢のように思い出す。
高校時代、冬。 幾重にもマフラーをまいて通った英語の予備校のことを覚えている。 クリスマスが近付いて大阪の街はきらきらしていた。 ビルから見下ろした夜の梅田、 道路に連なる車のランプがゆるゆる流れてゆくのを見て 都市が生きているようだと思った。 授業の後はモスバーガーでシェイクを買って 自習するから遅くなる、と 時々は親に嘘をついて、ファッションビルに立ち寄ったりした。 授業はきつかったけれど いつも楽しみだった。 一年後の自分を想像して、それで幸せだったから。 それまでのどんな苦労も、もうすぐ報われるのだと思っていた。
思い出すだけで喉に何かがこみ上げてくる。
この激情をどうすれば落ち着かせることができるのか? できることならもう一度、 一度と言わず何度でも、 悪夢の数だけやり直したい。 しかしもう解き既に遅し、そういうわけにもいかないので 一日一日を満足いくようにやっつけていくしかない。
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