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| 2010年06月10日(木) ■ |
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| いつもごめんね |
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某出版社の担当編集さんが異動となった。 サバサバ、ハッキリした漢らしい?性格の若い女性。この3年、私はたくさん助けられた。 女性の担当さんは初めてだったこともあって、最初はずいぶん緊張したけれど、読者に近い「若い、恋する女性」の視点から意見をくださるのが、頼もしかった。ネームはたくさんダメ出しを食らい、たくさん直した。今の私には、他にダメ出しをくれる友人知人はいないので、ものっすごい助かった。実力を超える力を引出していただいた。 先週くらいから、担当さんが替わってしまうと知って、私は結構ショックで何も手につかなくなった。最後の打合せをお茶でも飲みながらしましょうと、昨日北千住で会ってきた。泣いちゃったらどうしよう…などとドキドキしていたのだが、相手方の性格もあってか、意外にお別れは、ひじょうにアッサリしたものになった。まあ、退社するわけじゃないんだから、いつでも連絡とれるしね。仕事も持っていったけれど、新担当さんに後腐れなくバトンタッチした方がいいやねということで、結局仕事上の詳しい打ち合わせはせずに終わった。
アッサリ別れて、ちょっと拍子抜けのような、あーでも泣いたり湿っぽくならないで良かったなあとホッとしたような気持ちで駅へ歩いた。まっすぐに電車に乗って帰りたくない気分だった。衝動買いしたいなあ。成城石井でラムネやタブレットを買う。無印良品ではいつもついつい何かしら買ってしまうのに、今日はうまく目に入らず、フラフラと店を出る。 落ちつかないまま、常磐線で松戸駅。寄り道したくてDマートをブラブラする。結局何も買わない。ひなびた古本屋へ。整理の行き届いていない棚のようすや、古い雑誌、巻の揃わない中途半端に古いコミックなどを、「こりゃ売れないわ」と心中でツッコミを入れつつながめながら、私はようやくホッとしていた。薄暗い雑然とした店内には客は少なく、古い本独特のにおいに満ちている。欲しい本を探すことに没頭できる。 店内のBGMは80年代のポップスの後、アコースティックなイントロが流れ出した。時々聴く、なんだっけ、これ。スピッツ?じゃなくてくるりだ。歌の中で、「いつもごめんね」と静かに繰り返している。
タバコの煙が換気扇に吸い寄せられるみたいに、 フワフワ落ちつかなかった気持ちが、流れを持った。 いつもごめんね。いろいろ、ごめんね。
歌は、今度はサビの繰り返し。 「ベイビーアイラーブユーーーー」シャワーのように降る。
言いたいことはたくさんあったはずなんだ。 最後に「ありがとうございましたー」と笑って別れたけれど、 それは私が持ってた、「ありがとう」とか「あなたで良かった」という感謝や信頼のうちの ほんのほんのひとかけらに過ぎない。
もちろん、どうやったって気持ちがそのまま全部なんか伝わるわけはないし。 涙のお別れにならなくて良かった、あれで正しかったと思うんだけど。
平静な顔で涙が出ないかわりに、両二の腕の内側のへんが、ざわざわざわざわ泣いている。やだなあ、心の片っぽがスカンと空虚な、こんな気持ち。行き場のない「ベイビーアイラブユー」。ざわめきはしばらくやまない。
もう一件、チェーン店の古書店に寄ってオトナ買い。 「はじめて描くBL漫画入門」みたいな本を買う。いかにもやけくそっぽいセレクトなんだけど、役に立ちますように。
えーと、3年間ありがとうございました……!
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