駅に、降り立つと、 既にそこにはあのひとの気配が満ちていて、僕は息苦しく抑えた呼吸で 改札へ続く階段を上がってゆく。 改札を抜ける前にもう、あのひとは目を伏せた姿で僕の目に一瞬で焼きついて、 僕は切符を手に目を逸らして改札を抜ける。 進まない足を、ゆっくりと機械的に前へ運びながら、 無意識に僕はあのひとまでの歩数を数え、 壁際に立つひとを目の端にとらえたそれだけの姿勢で 一歩ずつ近付いていく予感を諦めとともに受け容れる。 隣に、立つと 目を上げてその視線をとらえ 微笑む、言葉では何を言えばいいのかわからなくてこわい
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恋なのかな。こういうのが。 だとしたら苦しすぎて思い出すたびに息ができなくなる。 想うだけで胸が詰まって、そんな日は朝が来ない。 もうどこへ行っても逃れようのない、そんな絶望感に満ちてしまうから、 僕の原風景は夜の雨、街外れの高台で潤んだように光る淋しい景色だ。 僕は結局今でもずっと、あの景色を探している
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