朝がすこしずつつもってゆくのが見えた。 青い屋根のうえに、きずみたいな薄さで、はらはらと。
もうどこにもいない人なのがわかった。 それはもう、既にきのうの夜の電光掲示板のオレンジ色にさとってしまった現実でも、陽だまりのようにおだやかにわたしは泣いた。
せつないのは難しい。 恋でも、映画でも、色でも、生き様でも。
進化しないものに心を向けても、意味なんかないのだと思った。 自分の中の目盛りがすこしずつ減っていくのを、悟ってしまったサンタクロースの不在みたいに、悲しみはしない。
融通の利かない心に業を煮やして意に沿わぬことをしようとする。 よく、わからないテンションの流れに流されようとするのに、沿わぬ心がぎくしゃくする。とても、ぎくしゃくする。
ゆめみている。 そのことだけはもう誰にも語らない。
かさぶたの下に新しい皮膚なんて無い。 それだからわたしは、結局は何度も裂けてひきつれていく醜い傷痕にわざわざ爪を立てて掘り返しはしない。
とても濃い闇だった。 あのひとをここへ、ひきずりおろすのをわたしがおなじように堕ちてしまうのを逡巡はとても、長かった。ふゆのひだった
左手の、薬指のさかむけが気になる。 強く引きちぎりたいのをこらえている。
結局ここには、さびしいといわないひとばかり
そういうこと。
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