あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2002年10月31日(木) さようなら。



朝から延々と寝ます。
するとバイトをずらしてくれ、という電話が入ったので嬉々として了承。
今日は大学に行きたかったけど、あきらめて寝ます。

今日中に書き上げたい詩がありました。
本当はこんなものをネット上で公開なんてしてはいけないのかもしれないけど。
・・・ってそんなやらしいもんじゃないですよ。
ただこんな、私小説のようなものを。


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Manna



待ちきれずに僕は先へ行ってしまった
いずれ帰ってくるつもりで儚いマナを撒きながら
だってこの真っ青な空の下には
あのひとは初めから出てこれない。
そしてマナが夜道にどんなに光っても
あのひとはそれを見もしないで昂然と顔を上げたまま突き進んでしまう
だから
僕はもうあのひとに会えないと知って
勝手な道を選んで
先へ行ってしまったのだ。


あのひとはいつも許している
僕は許すあのひとを咎めている
薄闇の下で不鮮明なあのひとの表情を
僕もまた不鮮明に睨みつけている。
手を引いて
あるく
その手は何度も何度も振り払われる冷たい手だから
いつからか 僕は
後ろからあのひとが付いてくるのを
黄泉路に疲れたオルフェのように
疑いながら諦めながら
置き去りにすることに頷いてしまって


僕は許されるのを知っている
あのひとは柔らかな笑みで
あのひとを汚せない僕を許し続ける
それは
僕の刃も通らない固い心臓をあのひとが
持ってしまったからで
あのひとの熱に浮かされたような熱い手も
やや潤んだ瞳も
僕のせいではなくあのひとの飲み続ける固い毒のせいなのだ。
そのことに
僕が苛立つのをあのひとは知ったまま
いつまでも毒を口にしながら僕を許している。


マナは
本当は僕が口にせねばならない分しか降ってこないから
少しずつ撒き散らす分だけ 僕は飢えている
そのマナも
明日の朝になれば朽ちて地に馴染んでしまうことを僕は知っていて
本当に帰っていくつもりなら
もう僕は踵を返さねばならない。
ただ
僕は
もう方角も分からなくなった 青い空を見つめている
あのひとは 今
どの暗闇で
安らぐというのだろう


あのひとにさよならを言うつもりなら
この僕はきっと
間違っている。
けれど捨て去ることを望む僕の細胞は
もうこの両手に
マナ以外の何ものも 置くことを拒み
この足は先を急ぎ
この唇は
別れの言葉を もう用意してしまっている。


ねぇK、
あなたなしでも
僕はもう歩いていけるけれど。


みちしるべ に 撒くマナは
あれは
僕だけのためのもの
いつまでも 道に悩むあのひとの
糧にはならない
なりはしない


神様
生きていくためのマナなど
僕は本当は 本当には欲してはいない。
ただ与えられるものを
いつの間にか少しずつ取り落として
欲しいものはここにはない ここにはない
いつも僕の手のひらにだけはない


いつも
あのひとを見るたびにさようならを呟いていた
さようならさようなら
あのひとはそこに居るだけで淋しくひとりきりだ
立っているあのひとのほつれた袖口から
ほろほろとことばはいつまでもこぼれて
それは見ているだけで
餞別のあいさつを 何度も
繰り返しているかのようで


あのひとが取り落としたペンは転がっていって
あのテトラポッドの絡み合う中に落ち込んでしまったのだ
そして深くえぐれた水底の もつれ合う海藻たちをくぐって
厚く積もったヘドロの中に 重たく沈み込んでしまって
かれは
いつかその海底の隆起する日を
思っているかもしれない
あのひとがいつか この暗く澱んだ海面に墜落する日を
実はもう既に知っているのかもしれない


あのひとが本当には盲目であることに
僕は最後まで
最後まで 気付かない振りをしていた
あのひとに 触れる この指はこの手は
誰のものであってもあのひとには違いなどないのだ。
日の暮れてしまったあとの薄闇にあのひとは立っていて
罪と罰とその他何もかもを
待ち望んで いる
その奔流を
待ち焦がれて いる


訣別の
あいさつを
繰り返されるままに僕は繰り返す
それは
僕だけの痛み僕だけの哀しみとわかってはいても
まっさらでない僕はその孤独に悲しい
いつも
許されることの赦されなさを 僕は
あのひとに語っていたかった。
その 目が
見えないと最初からわかっておれば
置いていくことに何も
ためらいはしなかったのに


てのひらを
上げる
このマナなど無くても僕は生きざるをえない
あのひとへ
見えはしないあのひとへ 手を振って
落ちてくるマナを振り払う
死んでしまえと祈ったあのひとへ
僕の見えぬあのひとへ
降り注ぐマナから逃げるように ただ大きく

手を 振っている



 ようなら、
さようなら、
どうか
どうか

どうか。





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↑僕めっちゃ泣きましたよ。
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こんなに泣くなんて思ってなかったし。



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