| 2002年10月29日(火) |
言うなれば僕は一本の、樹です。 |
大丈夫、わかっています。 今日はちゃんと寝なくてはなりません。 いくら外が寒くとも、それは僕とは何のかかわりもないこと。 僕は部屋で暖房器具を点けて、暖かな寝巻を着て、布団にくるまって何もかも忘れてしまえばいいだけ。 少し腕から落としそこねた香水の匂いがしても、 耳元でケータイが薄明かりに光っても、 僕はとりあえず睡眠を深く充分に摂取すれば良い。 残りのすべては明日。 明日になれば、 少し和らいだ寒さに、 僕は微笑むことができるだろう。
悲しみの言葉がごく透明であるように、 悲しみの姿もまた同じように透明に淡い。 いつの間にかそれが傍らに無言のまま寄り添っているのを、 僕はいつも唐突に気付いてしなだれる。
僕は自分の感覚には信頼を置いていないから、 自分が悲しんでいるのか、今は悲しむべき時なのか、それすらも はっきりと決め付けることができずにぼんやりとする。 だから僕は今、しなだれているだけ、悲しくて泣き喚くのでもなく、しなだれているだけ。 僕が失っていくものは、たぶんとても大事なものだろう。 不可欠でも貴重でもないけれども、僕が哀惜するものだろう。 それでも、 僕は今日は睡眠を摂らねばなりません。 ちゃんと明日が来るように。
泣き疲れて眠って、明日の朝を絶望に目を覚ますのでは駄目で。
僕は僕なのだから、たとえどんなであれ僕は生きて生活しているのだから、 僕はちゃんと息をして日々を送らねばならない。 ええ。 いつかまた揚々と枝を伸ばすことを今は信じられなくても、 それでも、 それでも。 今はしなだれているだけ、この地の上に、静かに。
|