雨草子
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2007年05月08日(火) 万物生


雨の嫌いな男を好きになった。
彼のうちへ行った日、雨が降っていた。
夜の道を歩く。
手をつないで雨の夜を歩く。
彼は憂鬱そうに見えた。
手も冷たく、握り返されることもなく、
ただただ、私が手を掴んでいるだけだった。

朝方まで触れ合いながら微睡でいると、
雨音が大きく聞こえ始めた。
「万物生・・・。」
彼が呟く。
「万物生だね・・・。」
私も呟く。

帰るときになってもいまだ雨は続いている。
彼は傘もささずに、私を外まで送ってくれた。
別れ際、彼は無表情で言う。
「もうここへ来たらだめだ。」

桜の木から、桜の花びらが落ち、地面に薄汚れた桜色をして横たわっている。
水溜りに浮かんだ桜はまだ、桜色をしていてかろうじて元の姿を保っている。
そんな姿でも桜は、手に届かない美しさを放っていて、私の手は空を切る。

私は記憶の中に閉じ込める。
今日の万物生を・・・。
彼の姿を・・・。


※万物生とは春の雨を総じていう。


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