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■ トラウマの発見
ついに気づいてしまった。 恐がっているのは俺だけだったんだ。
俺はクルマのドアを閉めるのが恐い。 指を挟まれるのが恐くて、両手の位置を目で確認してからじゃないと閉めることができない。
何人かで乗るときは緊張する。 例えば助手席に乗るときは、後ろの人が何かの間違いで前に手を伸ばしているかもしれないのが気になるので、完全にその人がドアを閉めるのを待ってから自分のドアを閉める。 俺が後ろに乗るときは、その逆。
指が挟まれているのを想像してしまうと、血の気が引くなんてものじゃない。
それが、みんな、平気なの? 時代が狂っているにちがいない。みんな時代のせいだ。 と思いかけたけれど、おかしいのは俺、なのだ。はあ、典型的な自意識過剰。
これがトラウマというものか、俺には思い当たる記憶がある。
中3だったと思う。 体育だったか部活だったか忘れたが、体育館で練習した後でグラウンドに出ることになって、体育館の横で靴を履き替えていたときのことだ。
悪い癖で、俺はひもを脱ぐときも解かず、結びっぱなしにしておいて、履くときは無理やり指でかかとを突っ込んでいた。 そのときも、右足のかかとがなかなか入らなくて、俺は立ったまま、なんとか右足を突っ込もうとしていた。左足の片足立ちになるので、左手で扉の片方をつかんで支えていた。
ほら、体育館の側面の扉って、両開きになってて、たいてい全開にしないで片方は固定して閉めてあるでしょう。それをつかんでいたわけだ。
俺は友達のほうを向いてバカ話をしていたと思う。開けてあるほうの扉は、何かで外側に固定してあったけれど、何かのひょうしにそれが外れたのだ。
どごーん
という音がしたはずだが、そして友達が「危ない」とかなんとか叫んだはずだが、とにかく時すでに遅く、俺の左手親指は「行ってこい大霊界!!」((c)バスタード)状態だった。なんじゃそりゃ。
半月ぐらい左手では拳骨が握れなかった。親指は冷たいままだったし、爪が伸びてこなかったのが不気味だった。それでもへんな意地を張って病院へは行かなかった。
10年以上たっているのに、あの感触は生々しく思い出せる。 体育館のあのごっつい扉が押しつぶしたんだ・・・と思うたびに、冷たい感触が心臓のほうまでやってくる。 そしてクルマのドアにも、似たものを感じ取ってしまったに違いない。
ああ、そうだったのかあ。 トラウマに気づくのってけっこうすっきりするもんだね。
基本的にはビビリの俺だが、クルマのドアに比べればおよそたいていのものは平気である。 みんな俺を見かけても、これだけは試さないでいただきたい。 ・・・って書くとまるで試してほしいみたいだが、まじでそのときは自分を制御できる自信がないよ。
こんなことでクルマの免許を取る日は来るんだろうか・・・。
2003年07月29日(火)
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