『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2005年09月21日(水) ひがんばなのあかをみにゆこう

ことばをかく余力とかスキマのようなものに
乾いた砂が詰め込まれてひしめいているので
ぼくは、ただっぽろくひろがる砂辺へいって
このみみをつめたいざらりとした肺につけようと思う
かさこそとなにものかがはいってくるだろう
それいじょうになにかが
こぼれだして消えてくれることを祈りながら

あかがほしいあかがほしいと
きみはいったけれど
ぼくはそうではないらしい
つきやぶり流れ出す色は邪魔であった
これ以上汚すのならば
なくてもよかった、ただしずかに夜にまぎれる
数多くの些細な秘密

すきだよ、とか
だいじだよ、とか
いきていてよ、とか
そんな労わりに似たような言葉がうちがわにとどかず
頬の上を滑って地面におちたのに
ぼくは拾い上げなければとかがみこんでみるけれど
君の口から転び出た言葉はもうかたちがなく
ただ
憎まれたような思いだけが残った

やわらかいものを希求した
そのぼくをまるでおかしなものでもみるように
遠巻きにしながら声をかけなかった
少しずつ痩せてゆくのは何を言いたいのだろう
たずねてみてもぼくのからだはなにも言わない
まるできみが何もいわないのと
同じくらいに、寡黙に

灰色の砂浜にあなたと立とうか
そしてそのさまを銀板にやきうつしてみようか
色をなくしたくらいの太陽と水気のない砂浜
笑い声なんてそんなにせものはいらないから
ただ忠実なくらいにうつしとれる
まなことペンと、容赦のない紙をもって

うけとりそこねた林檎の香りがまだ鼻先に残っている
紺色のびろうどの上着からあなたはそれをとりだして
ただ真顔でわたしに差し出したのだ
ああ、うけとりそこねた赤い実だったのだ
外では銀色のすすきがはてしなく揺れて
まるでもう、雪をふらした野原のようだった

あのとききみのてからぼくは赤い実をうけとりたかった
そしてきっとどこまでもどこまでも
ゆけるきっぷを手に入れたかった
誰かの夢であっても

存在を支えながら
もうだめだと
ぽつりと言って
みずにしずんでゆく



9月21日、深夜


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