階段の踊り場での立ち話。
彼は、待つ事がストレスだと言った。 然し、自分だけがと考えるのは早とちりだとも言った。 相手のことだって十分考えてあげないと。 ひょっとしたらこちらには到底解らない、又は口には言えない、又言葉や態度の裏に隠された事だってきっとあるのだからとも言った。
あの日から。 彼は告白された事をずっと考えていたようで。 それは、自分がうっすらと疑念を抱いていた事、またそれを認めたくはなかった事を告げられたのだ。 それは、仕事の中でもプライベートの中でも起こり得る事だった。 然し又それは、既に実現されている事でもあった。
彼はひとつ缶コーヒーをすすり、タバコに火を点け、ため息にも取れるような長く大きな煙を吐き出した。
僕は彼の話に相づちを打ち、然し何も言わなかった。 又僕も缶コーヒーをすすった。
二人で外に出ると、彼は、これから足を怪我して入院している彼女の見舞いに行くと言い、「また明日な」と言って車に乗り込んだ。
僕は、また他に考えてた。 ここはひとつ、探っていこうと。 誘惑に捉われず、まずは出来ることから。
何も遣らないより、まずペンをとってみる。
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