午後七時
机の引出しからアノ人が置いていったタバコの箱を取り出しタバコを1本引き抜いた
タバコをくわえ ライターなんてないからガスコンロの炎で火をつける
窓を開け、その前に座ってタバコをふかす
ぼんやりと窓から外を見る
「窓を開けて吸うなんて中学生のガキみたいだな」
「いいじゃない!」と言うあたしをカレは笑った
ねえ、‘少し前’‘カノジョ’だった日も雲で覆われてたっけ?
独りの夜は淡く閉じた過去ばかりを見せるみたい
「お前とはこれからも仲良くしていきたい」
そんなことを言われたのがホンの1ヶ月前なのに
‘アノ人’は‘今’想っている子のことを楽しそうに話す
「へえ、そうなんだ」
あたしは笑顔すら浮かべて話を聞いてた
アナタの話ならいくらでも聞くわ
少し深く煙を吸い、大きくゆっくりと吐き出す
じんわありと苦味が体を侵す
奥のほうが少し熱くなった
何これ?
アノ人の前ではイイ人でいたいと思っているあたしへの苛立ち?
それともただ、アノ人を想ってしまう未練?
ケータイが鳴れば(ひょっとしたら)って思ってしまうあたしがやっぱりいる
いい加減、自分に嫌気がさすわ
『女は過去の恋を引きずらない』って誰が決めたの?
冗談じゃないわ
それが本当ならあたしは男になってロマンチストになってやる!
ラブソングだって書いてやるわよ
あたし、バカじゃない?と心で苦笑する
誤魔化すように人差指と中指で挟んだタバコを親指で弾く
今、アノ人は何をしているんだろう
今夜もあの子のことを想って眠りにつくのかな
アノ人はあたしの想いなんて知らないんでしょうね
あ、雨。
空を覆ってた雲から雨が地面をたたく
春の雨なんてロマンチックじゃない?
街灯の下をでけえおばさんが自転車で駆け抜けていく
「おばさん、自転車が泣いているわよ」
気がつくとタバコはずいぶんと短くなっている
最後に 一度だけふかしてベランダでもみ消した
アノ人への想いも一緒にもみ消せたら・・・
バッカみたい・・・
窓を閉め、吸殻を三角コーナーに投げ入れた
by matty.T
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