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『砂漠の船』 篠田節子 (双葉社) - 2004年11月30日(火)

砂漠の船
篠田節子著

出版社 双葉社
発売日 2004.10
価格  ¥ 1,680(¥ 1,600)
ISBN  4575235075
勝手なことをしあって、家族も地域も、解体していく。砂粒のような個人が、それぞれの苦しみや悲しみを抱えて、死に向かって歩いていく−。静かに崩壊していくものへのレクイエム。 [bk1の内容紹介]

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篠田さんの作品は現代社会に生きる私たちにいつも問題点を投げかけてくれるのであるが、本作はあまりにもどうしようもなさすぎて辛過ぎるというのが正直な読後感である。

たとえば学歴問題。

もはや子供のことを集中して考えられるのはごく一部の恵まれた経済的環境にある方のみかもしれない。
茜の選んだ行動が“新しい時代の象徴である”。
“人間らしい生き方の模索”と言えば聞こえがいいのかもしれない。
“価値観の多様化”の時代である。

それにしても主人公・幹郎は不運な人生を歩んでいる。
人は幼い時の環境によってこれほどまでに将来に対する考え方を左右されるのだろうか?
自分の両親の取った行動を踏まえつつ、家族のことを思って取ってきた行動が裏目裏目に出てまわるのである。

篠田さんにひと言、苦言を呈したいのは、“登場人物の学歴を実名を使っている点”である。
これはどうにかならないだろうか?
あくまでもフィクションに徹してほしかったな。
その大学を目指している高校生や浪人生、篠田さんの小説を読む時間があるとは思えないが、そこまで夢を壊すようなことはどうかなと思う。

暗澹たる世の中であることは認めるとしても、少しは希望のあるものとして物語を収束させてほしかったと思う。

本作は男性には少し儚すぎるというのが本音であります。
少なくとも彼は家族円満とうい夢を持って長年頑張ってきたのであるから・・・
前後して読んだ『明日の記憶』(荻原浩)の主人公より悲壮感の漂ったと感じるのはやはり男性読者だけであろうか?
誠実に生きるってむずかしいのに何故に報われないんだろう?

その答えが本文中の次の言葉に集約されているような気がする。

「ところがここは腕も力もある男がお払い箱にされる国だ。若い娘が歌、歌って一日で何億だか稼ぎ出す国だ。飽きればポイッと捨てて、なんでも買って済ます。こんな狂っちまった日本で、俺たちはもう生きちゃいけない。だから俺は行く」


全体を通して少し曲解かもしれないが、“世の中の男性諸君よ、少しは要領良く生きなさい”とういう風にもとれるのは非常に残念だった。
ユーモアタッチの作品だったらやむをえないが、篠田さんの説得力のある文章はそれにほど遠い。

でも、女性が読まれたらわりとサラッと読めるのかもしれません。
妻や茜の気持ちがよくわかるし幹郎に対して息苦しく感じることであろう。

ということで“女性のしたたかな生き方講座的作品”ということで“女性に”強くオススメしたいと思う。
私が選んだ着地点である・・・

評価7点
2004年107冊目


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