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『百年の恋』 篠田節子 朝日文庫 - 2004年02月14日(土)

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本作はNHKで昨年末にドラマ化された作品であるが、とっても現実的な作品である。

内容的には世間一般的に言えば、美人で高収入のキャリアウーマンの梨香子といわゆる“三低”(身長・学歴・収入)で売れないライターの真一の逆玉カップルの運命の出会いから始まる。
大きく捉えると“一期一会”的な感じで始まるのであるが・・・
ロマンティックな話と思いきや・・・とんでもないのである(笑)
コメディタッチで面白可笑しく読ませてくれるのだが、物語の本質はもっと奥が深くって辛辣である。

本作ほど性別や環境(専業主婦or共働きor未婚)によって受け止め方が違う作品もないのではないだろうか?
専業主婦が読まれたら、真一に共感出来る方が多いのかもしれない。
でも真一の年収(200万円)では通常嫁を家に置いて生活は出来ないはずである。
そこに篠田さんが世の中の厳しさを漂わせているのであろうが、でも男性読者が読んだら梨香子って“あんまりだよ!”って言いたいなあ!

タイトルの付け方がとにかく秀逸である。
“百年の恋”も一気に冷めちゃうという意味合いの結婚生活である。

でも読み終えて少し2人がお互いの足りない部分を補完出来つつある点に気づくのである。
やはり宝物(娘)“未来”ちゃんの存在であろう。
胸をなでおろされた方も多いんじゃないかな。

序盤は梨香子のわがままぶりに対して嫌悪感を持って読まれた方が圧倒的に多いと思う(別れちゃえ〜ってね)が、本を閉じる時には2人の気持ちが良くわかったような気がする。
女性の目に見えない大変な部分を思い知らせてくれました、ハイ!
辛辣であっても嫌味がないのが篠田さんの“凄さ”だと思う。

家事と育児は女性の当たり前の仕事だという先入観を持っている未婚の方、是非お読みいただきたい。
そして“心して結婚してください”(笑)
逆に夫婦間で本作のような作品を読まれることによって、お互いの役割分担に関して考え直せる夫婦って理想だと思う。

重松清さんの深読みされてる解説には唸らされた。

評価8点。    
2004年17冊目 (旧作・再読作品4冊目)


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