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『あやめ横丁の人々』 講談社 宇江佐真理 - 2003年05月11日(日)

幕府書院番頭の三男の紀藤慎之介は、祝言の日に花嫁の恋人が花嫁をさらっていった事に立腹して相手の男を切り殺してしまい、花嫁も自害してしまう。
御家断絶となった相手方の敵討ちを逃れる為に、“あやめ横丁”に匿ってもらうのだがここの人はなんだかわけありの人が多いような気がするのであった・・・
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10編からなるがそれぞれの編の題名にまつわる話の作り方が秀逸。

それぞれの登場人物があやめ横丁に来たいきさつが徐々にわかる展開となっている。
このエピソード自体がとっても泣かせる話となっている。
あと、終盤の敵方の仇討ちのシーンもいつ来るのかドキドキして読ませてくれます。
それにしても、今も昔もいろんな人がいるんだなあと痛感出来ますね。

構成的には、約10年経った最終章がより一層物語を引き締めてるような気がした。
とにかく慎之助を含め登場人物の成長がうかがえる。

いちばんの読ませどころは慎之介と伊呂波との恋の行方ですが、これは読んでのお楽しみと言うことにして(笑)、やはり武士の慎之介が町人と生活をともにして行くことによって苦しみ悲しみを分かち合って行くところが微笑ましく感じられる点でしょうね。
特に子供たちのセリフがとっても生き生き感じる。
慎之介自身のキャラも少し世間知らず的な設定にしているところがとってもいい。
個人的には恩義を忘れて生きてはいけないということをいちばん学び取りました。

宇江佐さんの作品の中ではいちばんバラエティーに富んだ内容となっていて、宇江佐さんの魅力がいちばん盛り込まれた1冊といえると思う。
号泣するような作品でもないが、読んだあとジーンと来るとってもまとまった作品です。

日頃の疲れを癒してくれ、江戸時代にタイムスリップしたような気分になれますよ。

宇江佐さん著作リスト《こちら》

評価10点。超オススメ!


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