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『みんないってしまう』 山本文緒 角川文庫 - 2003年03月31日(月)

またまた山文さん、これで11冊目となりました。とにかく読みやすい。
今回のテーマは「対象喪失」。自信のない孤独な主人公が12人登場します(笑)

どれもが爽やかな終わり方をしてません(断言できる)のであんまり落ち込んでる時に読む本ではないかもしれません。
逆に読者にとっては自分を見つめなおす恰好の1冊となっている。

どちらかといえば“情けないというか悲観的な人間”にスポットライトを当てていて、いつもの毒気のある文章が陰を潜めているような気がします。読者によっては物足りないと思われる方もいると思います。私も少しそんな気がしました。
同じ短編集の『ブラックティー』の方が切れ味鋭くインパクトが強かったかなあ・・・
『ブラックティー』の登場人物の方が“人生徹して生きている”ような気がしました。
逆にこの作品の方が心温まる面はあるようです。ちょっと表現が曖昧かもしれませんが読後感を読者個人個人にゆだねてるようにも受け取れました。
でもどうしても虚無感が拭えないんですよね。山文さんにそういう部分を期待して読まれる方は少ないような気がするので、少し評価の分かれる作品かもしれませんね。

でも、生々しい女性を描くのは本当に上手い!と再認識した作品でもありました。お気軽にどうぞ。

一番好きな短編は「ハムスター」です。

『恋愛と結婚は違う。その延長線上にありながらも、それらは子供の浮輪と救命ボートぐらい違うのだということを、私は結構若い頃から知っていた。』

評価8点


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