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『さんだらぼっち』 宇江佐真理 文藝春秋 - 2002年12月15日(日)

宇江佐真理さんの看板シリーズである、髪結いシリーズの第4弾です。
前回で家を焼かれた深川芸者のお文は、伊三次と一緒に長屋で住み始めます。
始めは上手く長屋暮らしをしていたお文ですが・・・

いつもにも増して情感たっぷりに描いています。今回は伊三次よりお文の方が主役といっていいような内容となってます。
以前は捕物要素と恋愛要素の比率が4:6ぐらいだったのですが、今は2:8ぐらいじゃないかなあと思います。それだけ2人の恋の行方が気になって読まれてる方も多いのでしょう。

全5編からなりますが、最初の「鬼の通る道」から熱くさせられます。
伊三次の上司の同心不破の頑固さがクローズアップされた一編ですが、息子の龍之介には泣かされます。

圧巻は表題作「さんだらぼっち」から「時雨てよ」までの3編です。
子供がテーマとされていて、話の繋げ方が本当に上手いのひと言です。お文の長所短所それぞれが凝縮されていて、彼女が感情を露わにするシーンの連続で読者が一喜一憂すること間違いありません。
途中で起こるある事件により、お文が家を出ることになりますが、そのあと伊三次がお文に対して理解を示していく過程が鮮やかです。いつもよりじれったくない2人の会話が楽しめます。

途中、いなみ(不破の妻)も、おみつ(弥八の妻)もおめでたとなりますが本作ではお文までもが終盤おめでたとなります。しかしなかなか簡単には事は運びません。 
最後の最後におみつの言葉によって熱くさせられます。女性の複雑な気持ちを最高に上手く表現しています。参りました。
寂しい終わり方が、連ドラ絶頂期の毎回続きが気になる終わり方を彷彿させられた気がします。あと何回この楽しみを味わえるのでしょう。もっともっと頑張ってほしいです、宇江佐さん!
次回は伊三次がもっと啖呵を切るシーンが読みたいです。贅沢でしょうか(笑)

評価 9点


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