010・アンゲルブルク城

 
 さっきはよく見ていなかったが、ここの柱や壁、天井などにもそれぞれに城主(オーナー)の想い入れと財力を感じる事が出来た。彫刻や甲冑、壁に掛かった絵画、至る所に飾ってある花々達がより一層、華やかさを引き立てていた。
 ピエトロは今すぐにでもスケッチをしたい衝動に駆られたが、たくさんをスケッチする時間は無いんだから、と、自分に言い聞かせ、まずは見て回る事に専念する。
 まだラウンジに残っている人達もこのホテルの豪華さに感嘆し、公演されるオペラの話題で持ち切りだった。

(そういえば、僕は初めてなんだよな、三部構成のオペラを見るのは)

 久し振りのわくわくした気持ちに、隠し切れない微笑みが浮かぶ。
今回は三部構成のオペラになっている。その為宿泊日数に多少の限定があった。最低三泊、長くて一週間、宿泊券がオペラのチケットも兼ねていて、一週間泊は公演を二回観る事が出来る様になっている。ただし、この限定も三ヶ月の間だけとなっている。
 いろいろ思いを巡らせながらピエトロの足は自然、中庭の方へ向いていた。
ホテル館を抜けると中庭が広がっていた。そしてその向うに劇場が見える。劇場は、何と言うか‥ホテル館で見た優雅さとは違い、要塞の様な堅固さがあった。

(中はどんな感じになっているんだろう。ラインツは今リハーサルとかやってるのかな)

 中庭を一回りしてみる。
中央には噴水があってブロンズ像が立っている。噴水の側にはベンチも置いてある。そこから放射状に、花壇、低木の植え込み、花壇と並ぶ、美しい庭園となっていた。植え込みも、花の咲く頃になると、低木と花のコントラストを楽しめそうだった。
ピエトロはベンチに座り、庭や城を軽くスケッチする。本格的に描くのでは無く、腕や感覚の馴らしによくこう言う方法を使うのだ。
そうして見ると、この新築の城が、古城と言われる訳が何となく判って来る。数枚程をスケッチすると、今度は城の外回りを見てみたくなった。去り際に、劇場の少し奥に、八角形の尖塔を掲げたこじんまりとした建物が目に入った。

(あれは、何だろう?‥‥ああ、きっと礼拝堂、かな)

 なるほど、良く見ると尖塔の先に十字架があった。
 再びホールに戻って来た。ここから表の入口の方に目をやる。その先に太陽の光を浴びた河の煌きが見えた。城門をくぐると館までの間を、短い並木道が迎えてくれる。
ピエトロはもう、この丘の上に建つお城がとっても気に入ってしまっていた。豪華さだけで無く自然とも調和した、その名に相応しい、アンゲルブルク城が。

(昼の時間まではもうちょっとあるな‥。直接待ち合わせの円塔の方へ行けばいいよな)

 ジェイは心配するかな‥?と思いつつウロウロしだすと止まらないピエトロだった。
円塔はホテル館と続きで建っていて、レストランやバー、遊戯場や遊戯室など様々な施設がある塔だ。屋上は展望台にもなっている。
 外壁に手で触れながら歩く。触れてみると思った事が確信に近付く。少し白ばんだ石。どう見ても最近切り出された物では無いと見える。古い、かなり古いものでは無いか。中には茶や鼠色をしたのもあって、それが又、キレイな模様の様になっていた。これらは全て元々、何所かの城を形作っていた物ではないだろうか。風化するだけの夢の城を、現実の夢の城に。
勿論これはピエトロの勝手な想像に過ぎないのだが。
 そんな事を想い描きながら、城壁の方へ近付き、そこから少し離れたお城を見上げてみた。
ホテル館の冠には幾つもの小尖塔が突き出している。城にはよく見られる、角に細い円形の塔が付いている。この塔と小尖塔とのバランスも実に見事だった。

(僕達の階にも小尖塔が付いる‥。部屋に出窓があったけど、それがあの小尖塔の部分かな‥)

 ピエトロはまた城の外壁の側まで戻って来て、壁にそって先に進んで行った。
曲がり角まで来て、ふと立ち止まる。

(‥あれ?何で立ち止まったんだろう)

 そんなつもりはまったく無かったのに。首を傾げながらも、特に気に止めず角を曲がって城の側面に出た。
城の外壁と城壁が平行に奥まで続いている。一番奥に、中庭で屋根が見えた礼拝堂の建物が少し見えた。
その時、ピエトロの目の前をヒラリと掠める物があった。それは白い羽の様に見えた。何気なく掌で受け止め様と手を出す。しかしその羽は、

「‥!!」

 その手をすり抜けて行った。驚いたピエトロは辺りを見回すが、目の前が白く霞むのを感じた。お城も城壁も、奥に見えていた礼拝堂も既に見えなかった。来た道を慌てて振り返るが、そこは

「‥‥ーーーうわぁ!」

 全てが白い羽で埋め尽くされていたーーー。





 一方、アルとサーマスは机の下で息を飲んで隠れていた。ゆっくりとドアが開き、静かに閉まる音が聞こえた。コツコツと足音が近付く。カバーの隙間から床が見えていた。そこを男物の靴が通る。
じっと固まる二人。黒い革靴、チラチラ見えるマントの裾。

(ん?マント?!)

 アルは同時に二つの事を思い返していた。良い事と嫌な事。
その靴の持ち主は何かを探しているのか、時々立ち止まったり、行ったり来たりして、二人の隠れている所から少しづつ遠ざかって行こうとしていた。



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コメント。
皆書くの早いよ−;;; 遅いのは私だけか?! こんな私のために時間作ってくれてありがとう!! えっ違うって??(笑)はあーピエトロばっかだった‥orz 書くのは楽だけど(笑)
結局10日間くらい考えてたホテル館の全容はイメージ上手く文に出来なかった(汗)こんなんで4P(内1Pは落描き)使ってすまぬダス〜〜。最後ちょっと余ったのでアル側を書いちゃいました‥。楓しゃま、いつも迷惑掛けます〜orz
五条猫。


 2007年02月14日(水)
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