006・各々の思い

 
 アルはたたかれた肩ごしに振り返る。‥が、

「あれ?気のせいかな‥?」

 誰も居ない。するとまた反対側の肩をたたかれる。今度は身体ごと振り返ってみたが、やはり誰も居ない。気になった話はそらされるし、肩をたたかれるが、誰も居ないし。アルは何だか複雑な表情で頭に「?」マークを浮かべているとー。
後ろからクスクス笑う声が聞こえて来た。アルには聞き覚えのある声だった。確認しようともう一度振り返る。そこには、かがんでアルを見上げ、手をヒラヒラさせながら微笑んでいる女性の姿があった。

「やっほー。相変わらずそうねーアルちゃんv」
「ああーっミシャエルさん!!隠れてるなんてひどいです−っビックリしましたよぅ!幽霊に肩たたかれたのかと思ったー」

 アルはからかわれた事への一応の抗議をしているものの、再会の嬉しさの方が先に立ったらしく、ニコニコしている。ミシャエルも、ごめんねと言いながら無邪気に笑う。そしてメンバーに挨拶すべくまず、ジェイムスに声を掛けに行った。
 今し方のアルの言葉「幽霊」に反応した人間が約二名。一人はサーマスだ。彼は何やら思い付いたらしく、心の中でニヤリとした。勿論それは、少しは表情に出たかもしれないが、気付いた者は居ない様だった。
もう一人はラインツだった。そろそろ招待した皆が到着した頃だろうと、出迎えに来たのだった。そこでアルの声が聞こえて来て、最後の方だけしか聞き取れなかったのだが、幽霊とは色々穏やかでは無いと思い、何事か尋ねようと、近くに居たピエトロに近寄る。

「ピエトロ!良く来たな」

 声を掛けられたピエトロは吃驚した様子で振り返った。
ピエトロは少し前から、ぼんやりと突っ立っていた。ハタからはそう見えたが実は硬直していたのだ。原因は言わずと知れたミシャエルの事。まさか来ていたとは夢にも思わず。そして彼女は夫と二人で来ているらしかった。当然、二人並んだ姿はごく自然でー。
そこへの突然の呼び掛けだった。

「所でアルが今、幽霊がどうとか言っていたが、何事だ?」

 そんなピエトロに気付いてか気付かずか、ラインツは内心の焦りを隠し平静を装って話し掛けた。
盛大驚いたピエトロも人の事どころでは無いので、そんな事は知らず、自身の動揺を隠そうとして、失敗しながら答える。

「え?‥ああ、何か、からかわれてたんだよ。後ろから肩を叩いて、相手の死角に入って、脅かすって言うのを、‥ミ、シャエルに」
「ああ、成る程ね」

 ラインツは多少なりほっとして、サーマスにちらりと目をやる。それに気付いたサーマスはフイッとそっぽを向く。そして見えない位置で、半眼になってベロを出した。
ラインツは視線をピエトロに戻すと不意に不安になり、言い訳っぽく言う。

「ミシャエルも呼んだんだよ。埋め合わせ名目だからな。それで、ミシャエルだけ呼ぶのも何だし‥と思ってな。二人共誘ったんだ。‥‥大丈夫か?」
「えっな何が?全然大丈夫だよ!うん久し振りだし挨拶しないとね」

 ピエトロはそそくさと皆の居る方へ歩き出す。もしかするとピエトロは彼の想いが知られていない、と思っているのだろうか。アルですら薄々気付いているらしいのに。

「ま、強がれるんだから、大丈夫か」

 苦笑いをしながら、ラインツも皆の所へ足を向ける。
 ピエトロが皆の居るラウンジに着くと、ジェイムスが唐突に聞いて来た。

「お前はどうなんだ?」

 は?と気の抜けた様な声が出ても仕方ないだろう。気を取り直して、周りの会話に耳を傾ける。実際聞こえて来るのはアルの声だが。どうやら部屋がどうとか言う話の様だった。
シングルが無くてほぼ全室がツインになっている。どうやら、部屋割りに付いてもめているらしい。
それで、ジェイムスの一言。それならピエトロの答える言葉は決まっていた。

「僕はアル以外なら誰でもいいよ」

 その言葉に、アルが悲痛な面持ちで何か返そうとした時、ラインツが現れた。

「やあ!‥----皆様、我がオペラを観に、ようこそ----」

 ラインツは片足を引き、片手を胸へ引き寄せ、仰々しく、しかしスマートな一礼をして見せた。



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コメント。
今回は当初の目的、ミシャを出す事が出来て満足です。超々読み難くてごめん‥。あっ文中に招待者は揃ったとありますが、ある程度、なので、出したいキャラは出していって下さいね〜。
五条猫。


 2007年01月03日(水)
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