カガミが割れたから - 2003年02月01日(土) 本日、上田現『百物語』第十六夜(いざよい) 『カガミ』@草月ホール。 草月って言ったら華道のお家元なので、 ホールの入り口にはもちろん作品がある。 それが、直径10センチはある青竹を8つに割いて しだれさせたものと梅の花という組み合わせで、 ものすごくデカイ。ちょっとビビッた。 今日は椅子席あり。1F最後方からの観覧になった。 昨日寝ていない身にはとてもありがたいが、 現爺の心地よい音に包まれたらきっと眠ってしまいそうで ちょっとドキドキ。 開演。客席真ん中後方から、大きく白いアタマをした 『導標』さんが歩いてステージに登る。 彼は現爺の声、そして導標。 そして今日は彼の話す声に被ってカガミの声が響く。 両者はほぼ同じ言葉を発するものの、時折カガミが 自らの意思を持って導標さんと違うことを言ったりする。 鏡の中には閉じ込められた異次元。 もうひとりの自分に会いたくても、きっと会わないほうが… ワタシはかなりの歳になるまで、 鏡の作り方を知らなかった。 平たい形に流すと鏡のように周りを映しこむ 鉱物があるのだろうくらいに思っていた。 工業製品とは思えない、その、不思議。 不思議と言えば、現爺の音楽は不思議だ。 毎回コンセプトは違っても、核になる曲目は変わらない。 それでも、何度でも現爺の生の声で、演奏で聴きたくなるのだ。 それは、マシンガンズを何度でも観たいのとはちょっと違う。 マシンガンズは、2度と同じライヴにならないから何度でも観る。 でも、現爺の曲とその演奏は、いつでも同じ空気で構わない。 その曲の、生の持つ空気をまた反芻して味わいたいのだ。 そんなことを思いながら、新曲も交えられた前半を心地よく過ごす。 しかして、現爺の弾き語りコーナー(苦笑)でそれは無情にもやってきた。 心地よい音楽、好みの歌声、暖かく静かな会場。パーフェクトだ(号泣 そう、ワタシは現爺の弾き語りを聴きながら 夢と現実の境をさまよってしまったのだ…(滅 とても心地よかったことだけは覚えているけど(涙 意識がはっきりした時には、現爺はメンバー紹介を始めていた。 そして後に10年ぶりの演奏だと言っていた曲で、 導標さんが再び登場する。 曲にあわせて穏やかに揺れていた彼が、 組んでいた両手を開いて客席にかざすと、 柔らかな昼白色の灯りがワタシたちを照らして。 そのままワタシたちは、その温かい灯りに酔った。 さて。 ここまで我々観客はもれなく着席していたわけだが。 現爺が「立ち上がらずにいられない曲を演る」という。 それはなにかと問うならば!←バンドが違うから 上田現のテーマ!!! 客席から歓声が上がった!! というわけで、ここからバンドが変わってしまったかのように birdy、いっそのこと!と踊らせる曲が続いて。 ところが現爺が「放置プレイ。」と自嘲的なギャグを飛ばしながら 森の掟を演奏し始めたら、やっぱりみんな着席して。 ワタシは今日斯くのごとき次第で長時間立っていられなかったし、 椅子があるのだから、そしてじっくり現爺の歌を聴きたいのだから 着席して聴いておればよい、と思っていたのだけれど。 なんだか現爺はコチラにわかるわだかまりを残してステージを去った。 しかも演奏後のSE、映像の終えるタイミングを見計らおうと ファンがアンコールをかけずにいたら 「強制アンコールです」と言って全員で出てきてしまった。 爺は、SEのモールス信号を思わせる電子音を指して 「モールス信号が寂しいのは、受け手の顔が見えないから」などと言う。 そうなの?ワタシは座ってても現爺の歌を堪能したし、 ノってたつもりだけど?? 「あと少しだけ演らせて」などと切ないことを言いながら、 現爺は北京の蝶とHappy Birthdayを一生懸命歌ってくれた。 「こんなシメ方でイイのかな」なんて言うから、こっちが心配したよ。 ワタシは座って観ていただけ。 立ったほうが絶対にいいライヴもあると思うけど、 現爺のライヴには、暴れ倒すそれとは違う 『静』の魅力が溢れていると思うから、 それを身体の疲労を気にせずに享受したかった、今日は。 まぁ、同じアーティストを何本も観にいくうちには こんなこともあるよね、と思いながら最後の曲を終えて。 ぱらぱらと帰りはじめる客席から、 それでもアンコールの拍手が止まない。 客電がついて、それがだんだん明るくなって、 帰ろうとする人もいるけど、一方拍手も鳴り止まない。 ワタシはもちろん残って一生懸命拍手しました。 だって、今そのときその方法でしか、ワタシたちの 本当の気持ちを現爺やELEのメンバには伝えられないじゃない。 座っていたからって、決して醒めていた訳じゃないし、 現爺も、そういうものの測り方をする人じゃないと思いたかった。 そしたら。 客電のあかあかとついたステージに 照れながら現爺が戻ってきてくれたのだ!! 「お題をくれたら即興でピアノを弾く」と。 すぐさま客席から、今回のテーマでもある「カガミ」がお題に上がった。 キーボードに引っ付いた花吹雪(北京の蝶の時降ったのだ)を 「この後演奏するつもりなかったんだ…(こんなにゴミを載せて) ローランドのモニタークビになっちゃう」とか言いながら 一生懸命取ってる現爺。やっぱり嬉しそうで。 アンコールってやっぱりいいもんだなぁ、と思いながら 現爺のピアノに酔いしれました。 最後に低音弦を叩いて「ここでカガミが割れたんだよ」と言うあたり、 やっぱり現爺の発想の縦横無尽さが出てて。 最後にこの数分間で全てが逆転されたね。 鏡が割れて、本当によかった。 現爺が思っているより、ワタシたちは現爺の音楽を楽しんでるんだよ。 少しでも近づけて、本当によかった。 -
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文投げる |