言霊

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2004年01月23日(金) ◇ ささやか

代理出産。なんでか賛否が分かれるっていう。
少子化が問題ならば、ここまでして「子供が欲しい」と思っている夫婦の間にこそ
どんな手段をもっても子供を授けてやるべきだと思うのは、アタシだけかい?


それは「ないものねだり」と呼ぶに相応しいものなのかもしれない。
人間が本当に求めるものって、ずいぶんと「ささやか」なんじゃないかと、最近頓にそう思う。


赤ちゃんが生まれる前、高田さんがポツンと「風呂にいれたい」と言う。
ああ、わかるな…と、不覚にも涙が零れた。
「ファミレスに行って、お子様ランチ注文したいんだぁ…」
事情を知らない人が聞けばハテナマークが飛びそうな私の夢も、たぶんコレと似たようなもんだろう。
重度の障害児ということで、愛息マコリンは普通の食事が喉を通過しない。
ミキサーで完全なペースト状にしてから、スプーンで一口ずつ。
そんな彼にとってはレストランも、ホテルのロビーみたいな、ただの休憩所なの。
なんでもないようなこと。
だけど特定の誰かにとっては、それが特別な意味を持つこともある。

別に自分の置かれた状況を、哀れっぽく嘆くつもりはない。
マコリンを育てられたことに対する感謝は確かにあって。それはそれで幸せで。
たぶん・・・憧れなんだよね。
泣かない子を育てていた私にとって、
子育ての難関とも思われる「赤ちゃんの泣き声」は、心躍る騒音だったりして。
夜中に腹を空かせて泣くと、つい嬉しくて笑ってしまうのよ。
ずっと憧れてた、すがりついてくる手。
もう、可愛くて可愛くて可愛くて。怒る気になんかなれっこない。

たぶん何事もなく子育てをしていれば、ありえない感謝。
私だってマコリンを妊娠してた時は、想像もしていなかった感謝。

ミノルが生まれた時、缶ビールくんが泣いた。
産声ってやつを、初めて聞いたワタシタチ。
手がかからない子だとか嘯いて、しっかり手はかけて育てているけど。
だって、全然、苦にならないんだもん。
苦労が幸せに勝てない。
これも7年越しの「ないものねだり」の賜物かしらね(^^;

子育てを手伝わないパパは多いよね。
自分は仕事さえしてれば、役目は果たしていると思ってる。いつまでも独身気分が抜けないヒト。
それは母親側にもいるけどさ。
現実を目の当たりにすると、逃げてられないからムリヤリ脱皮して親になるのか。
一緒にマコリンを育ててきた相棒@缶ビールくんは、いつの間にか頼りになる父親になってた。
たぶん私も、8年前より立派な母親になってると思う。


不妊治療。代理出産。見えてこない苦労は色々あるけど。
悪いことばかりじゃないと信じたい。
一人じゃできない苦労だからこそ、少なくとも独りきりではないわけだし。

大きな病気と闘っている人も。
生きていくことそのものに苦労をしている人も。
生きてるからこそ「辛い」と思う瞬間は、たっぷりあるけど。
転んでも、凹んでも、泣いちゃっても。
諦めないで進んで行ければいつかは、どんな逆境にも打ち勝てる強さが宿るから。
だってほら、苦労しないで手に入れたものより、ずっとキラキラしてるよ。

ささやかな幸せは、石ころみたいなもんだから。
たぶん輝いてたら宝石でしょ。
その価値を決められるのは、持っている人の心だけなんだよね。

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