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蓄積疲労     2002年12月19日(木)

昨夜から異様に疲れている。早く寝たのに全く疲れが取れず、目覚めもすっきりしない。
今日は休日にしよう(毎日そうとも言うが)、と決めたのに買い物につきあわされる。次女を連れて行ったら機嫌が悪くてぐずり続け、抱いて急な坂道をのぼる羽目になる。

午後は起きていられなくて『黒と茶の幻想』(恩田陸)を再読しながら横になる。この本が疲れの一因かもしれない、と思いつつ。
この本は学生時代からの友人である利枝子・彰彦・蒔生・節子の4人の30代後半の男女が、Y島へ旅をする物語である。彰彦の提案で、『安楽椅子探偵紀行』として、旅の最中には数々のそして大小の『美しい謎』を解きあかすことになる。謎を解きあかすとは彰彦の言葉によれば「過去を取り戻す」事である。
私には取り戻すほどの過去も、4人が抱え込んでいるほどの美しい謎もありはしないが、この登場人物達(節子はあまり似ていない、と思うが)に余りにも自分に似ている部分があり過ぎる為、登場人物の苦しみがそのまま私自身の苦しみであるかのように感じてしまう。
こんな感覚が他の読書中に起こる事はないとは言えないが、この本は特にそれが強い。Y島(屋久島だろう)の描写も、4人の会話も、個々の謎も、底辺に流れる一つの大きな謎もそれぞれに面白く引き込まれてしまうが、読んだ時の消耗も激しい。余談だが、この本は『麦の海に沈む果実』や『三月は深き紅の淵を』を読んでいると更に楽しめるだろう。恩田陸の頭の中は一体どうなっているのだろう。

この本は一部につき一人が語り手となり、四部からなっている。第一部の利枝子の部分でもう激しく消耗してしまった。
利枝子は一番私に近い。利枝子が悩むと私も疲れる。もう止めてしまいたいと思うが、話の面白さには抗えない。第二部は彰彦が語り手で小休止、でもないが、第三部は語り手が蒔生に移る。蒔生はかつて利枝子と恋人同士だったが、利枝子の親友(その親友を巡る謎が底辺に流れる謎である)を好きになった、と言って利枝子に別れを告げた過去がある。
付合っていた頃の二人は、そして別れて長い月日が経った今でも、「良く似ている」と言われる──。利枝子は二人の相似を分析し、否定するが、端から見て似ている部分は(そうでない部分も)私にも共通するものがあり、やはり辛い。

この4人はそれぞれに強い。その強さだけはどうも似ていない……。
分厚い本のまだ半ば。もうちょっと疲れる旅に付合おう。






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