日々妄想
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「あーい、あーい」 舌足らずな喋りで、必死に俺を探している声が聞こえてくる。 あーい、じゃない、ガイだ。 植木の陰に隠れて膝を抱える。 ああ、鬱陶しい。赤ん坊のようになったルークの世話を押し付けられた。 メイドに懐けばいいのに、何故か俺にくっついて離れようとしない。 ラムダスが無理に引き剥がそうとしたら、大声で泣き出す。 まるで母親から離された赤ん坊みたいに。
無邪気に纏わり着いてくるルークを引き離せないで居た。 そんな自分に苛立ちを感じる。 復讐、するためにここに居るんだろ。何やってんだ、俺。 ぎゅっと膝を抱える腕に力を篭める。 「あーい、あーい」 俺を呼ぶ声がどんどん不安の色がまじっている。 泣き出す一歩前の声。
ああ、この声はおぼえがある。 あの懐かしい場所で。 姉と遊び相手の幼馴染とかくれんぼをやった時。 年上の二人をなかなか見つけることが出来なくて 不安でいっぱいになって、泣きながら 「マリィ姉さんー。ヴァーン。どこぉ」 名前を必死に呼んだ。 植え込みから、俺を心配して、慌てて飛び出してきたヴァンデスデルカと 木の影から腰に手をあてて 「マリィ姉さんじゃない、姉上と呼びなさい」 と説教するために飛び出してきた姉上。 二人の姿をみて安心してまた泣き出して。 ヴァンデスデルカが慰め、姉上が「男がこんな事で」とプリプリ怒り出して。
過去の思い出に浸っていると、葉がガサガサっと動く音が背後からする。 振り返ると、ルークが目を潤ませて立っていた。 「あーい!!!」 俺を見つけて顔を輝かせて抱きついてくる。 勢いにおされて、後ろに倒れそうになるのを後ろ手をついて留まる。 「あい、あい」 ただ俺の名前を必死で繰り返すルークの背中を撫でながら 溢れ出てくる感情に気付かぬ振りをする。
ルーク10歳 ガイ14歳 いつものパターンで、ガイを甘やかす髭とガイに厳しくも優しいマリィ姉さま妄想。 そしてこれが後にルークを甘やかすマリィ姉さまの弟ガイと、ルークに厳しい(でも優しい)髭の妹ティアという 構図になっていくのも、なんだかんだで美味しいと思う。
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