■羊三本勝負〜羊が一匹
2000年08月20日(日)
会社の新人問題児、ジャイ子との仕事に辟易していたヨウコさん。
疲れた顔で辛い物が食べたいなあ…と呟いたので
インドカレー屋に連れて行った。
僕はもう百回は行っているのでマスターとは顔なじみだ。
話好きなマスターはこの日も人懐こく話しかけてきた。
(女性連れなので少しは気を使って欲しいものではある)
「そういえばさ、最近あんたんとこの会社に受付嬢が入っただろ?」
ん?まさか…ヨウコさんと顔を見合わせる。まさか…ジャイ子?
「××(ジャイ子の本名)ていうんだけどさ」
「ええええ!!マスター、何で知ってるのお??」
「近所なんだよ。小さい頃から知ってるよ」
ジャイ子の愚痴言い合ってなくて良かったね…と
ヨウコさんとヒソヒソ…。
世間は狭い。ジャイ子おそるべし。
気を取り直してメニューを見る。ヨウコさんはよりによって
「ラム肉(子羊)カレー」に目を光らせた。
ヨウコさんは羊毛を使う織物職人でもあり、羊とはお友達のはずである、と
僕は思っていたからだ。
「ラム、食べたい!!」
「織物職人のくせに羊食べるの?」
「うん。なんで?」
「織物の糸って、羊毛でしょ?」
「うん。マイ羊も持ってたんだよ。かわいいよ」
「なのに!なんで食べるんだよ! 僕の知ってる競馬好きな人達は
全員馬刺し食べないよ」
「だって。美味しいんだもん。毛は刈れるし、かわいいし、
おいしいし、羊大好き」
「…分かったよ。じゃあ僕もラムにしよう」
その飼っていたマイ羊というのも食べてしまったに違いない。
いや、考えるのはよそう。きっと食べちゃいたいぐらいかわいくて、
食べてしまったのだ。
彼女にとってはそれだけのことなんだろう。
やがてラムがどっちゃり入ったカレーが出てきた。
牛よりほんの少し固くて肉厚感があって美味かった。
ジャイ子ネタを封印されたヨウコさんは
「もうちょっとどこか寄っていかない?」と次に行った飲み屋で
グチを言いまくりだった。
一見仲良さげに見える我々であるが実はお別れの時が迫っているのであった…。
<続>なんちて。
今日もアリガトウゴザイマシタ。
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