銀の鎧細工通信
目次|前|次
| 2005年02月18日(金) |
月とオレンジ (ラビミランダ) |
今回も無事に「ホーム」に帰って来られた。 相変らず「お帰り!」の声には慣れることが出来ず、 アレンはくすぐったい気持ちで、ひとつひとつに思いを 込めて「ただいま」と云う。
「アーレンっ、飯食いに行くさ」 躊躇いと、落ち着かなさに気付いたラビがすかさず ぽん、と肩を叩いて促す。 「ラビ・・・そうですね」 嬉しいのだけど、それをどう表現して良いのか、 解らないから。 あからさまにほっとした表情をしたアレンに、ラビは (仕方の無いヤツ)と肩をすくめ、側に居たリナリーは ちょっと困った笑顔を浮べて 「じゃあ、私は兄さんに報告に行って来るから」 と云って軽やかに去って行った。
アレンは気まずげに「へへ・・・」と苦笑し、 ラビはいよいよ眉を下げて一息つく。 「ほんと、お前、モヤシな」 「なっ・・・!」 「いいから行こうぜ、腹減ったー」 フイ、と顔を逸らして、半歩先を行くラビは足音をたてない。
「あっらーん!お帰りなさい!二人とも無事で何よりよv さァ何でも云って頂戴!腕振るっちゃうわよー!」 ジェリーの熱烈な歓待に、アレンは 「じゃあ・・・麻婆豆腐とオムライスとロールキャベツ、 鯖の押し寿司と温野菜のサラダにカツ丼、スコーンと ライスにナンとグリーンカレーとクッパに餃子、カニ玉で。 デザートはチーズケーキワンホールとおはぎ10個」 と応え、彼女を喜ばせた。 それだけ食べられれば、怪我も無く元気な証拠。 ラビはアレンの容赦無い大食を目の当たりにするのは初めてで、 聞きながら「おいおいおい」と顔にツッコミが浮かんでいたのだが、 敢えて黙って「じゃ、俺カツカレー大盛りに何かサラダとスープ」 とだけジェリーに頼んだ。 「具合でも悪いんですか?それだけなんて」 自覚の無いアレンは意外そうに訊ねる。 「いや、お前が食い過ぎ、俺は普通さ」 げんなりとカウンターに肘をつくラビの後ろから、アレンに向かって 声がかかった。アルトの、控えめな声。
「・・・アレンくん」
「ミランダさん!!」 アレンが顔を輝かせるのを見て、ラビがほよ?と振り向く。 細い女性が、丈の長いコートで立っている。 (まるで葬式みたいさ) ラビの第1印象はそれだった。
女性のエクソシストは比較的珍しく、と云うのもリナリーだけが コムイの熱望により、マメにホームに戻ってくるだけで、後は皆 方々を駆け回っている。 大抵が皆動きやすさを考えて、膝丈かパンツルックで、 リナリーは対アクマ武器が武器なだけにミニスカートなのだった。 (コムイの趣味という噂もあったが)
「怪我はもういいの?」 「ミランダさんこそ!どうですか?慣れましたか、此処」 女性は、ふわりと笑んで、 「まだ・・・慣れないわ。だって初めて私を必要としてくれた所 なんだもの。どうしたらいいか解らなくって・・・」 と恥ずかしそうにした。 アレンは子どもの様にはしゃいでいたのが、今の言葉で落ち着いたらしく、 「よく、解ります」 と云って、えへへと笑った。 「はーい!アレンちゃん、ラビ、お待たせー!上がったわよ!」 ジェリーの声が元気よく響いて、ミランダはアレンの膨大な食事を テーブルまで運ぶ手伝いをした。
「よい、せっと」 「すみません、ミランダさんまで手伝わせちゃって」 「いいのよ、お食事の邪魔に、ならないかしら・・・?」 アレンとラビが隣に座り、ミランダはアレンの向かいに腰掛けた。 「あ!ラビ、こちらはミランダさん」 ミランダはぺこりとお辞儀をした。 「ミランダ・ロットーさんだろ?噂は聞いてるさ、俺はラビっす」 ラビもぺこりとお辞儀を返す。 「噂って?」 ミランダが不安げに問うと、 「武器らしい武器じゃなくて、時計だろ?あの大きな。 化学班が喜んでるさ、サポートに入れるエクソシストはレアだから」 垂れ目のラビがにんまりと笑って応えてやると、ほっと表情を 緩ませて「そうなんですか・・・」とミランダは小さく呟いた。
プレッシャーと希望。 死線と隣り合わせでも、自分にも何かが出来るのだという喜び。 慣れない感情は持て余すけれど、決して不快ではない。 (このヒトも、アレンと似た様な表情するさ。まあ、直に適応出来る 奴なんかそう居ないけどな)
黙々と食事を摂るアレンを見ながら、済ませたラビにミランダは 「お茶でも頂いてきましょうか?」とやんわりと、おずおずと訊く。 「あ、すんません、コーヒー、ブラックでお願いします」 そそくさとミランダは裾を翻してジェリーの所へと行った。
「しっかし、アレン。お前アレだな」 「ふぁんでふか?」 まだもぐもぐしているアレンはそのまま答える、行儀悪いさ、と 嗜めた後に 「リナリーといい、あのヒトといい、モテるな。ガキの癖に」 「違います」 いつの間にか、コーヒーと紅茶をふたつトレイに乗せた ミランダがテーブルの前に戻ってきて、きっぱりと云った。 トレイからコーヒーをラビの前に、紅茶の一つをアレンの前に 静かに置くと、 「違います、ラビさん。そんなんじゃありません」 ともう一度云った。 毅然とした態度に二人は目を丸くしている。 ミランダはカップを両手で包むと、顔を上げて 「アレンくんには、本当に感謝しているけれど、そういうんでは、 無いですから」 と、凛と力を込めて云い放つ。その表情は堂々としていて、 弱気さが消えてその分、抑えた意志の強さを感じさせた。
はた、と我にかえるとミランダは真っ赤になって 「あっ・・・、アレンくんは、ミルクや砂糖、要るのかしら」 と焦って訊く。 「へっ!?あ、じゃあミルクだけ、いいですか」 「勿論」 ミランダはまたそそくさと席を立って、カウンターへ向かう。 黒いコートの裾がひらりと舞う。
ラビが顔ごとそれを追う。 アレンはおそるおそるラビの顔を窺うと、 妙に姿勢を正したラビが、垂れ目を丸くしたまま 「・・・いいね・・・彼女」 とぼそりと呟く。 アレンは(またか・・・)という表情をしながら、満更ではない。 「すっごく、芯の強い、素的な人ですよ、ミランダさん。 一生懸命なんですよね、本当に」 「・・・ん、そんな感じさ」 ラビはまだミランダを目で追っている。
何とも云えない、やっぱり何処かくすぐったい気持ちで アレンはシフォンケーキの最後の一口を、あむ、と頬張った。
月の様に静かで、凛としたあの人に、 オレンジ色が惑わされる。
END
はい、Dグレイマン初。ラビミラ。 いいですよね、ラビミラ。 更新停滞、と云いながら、睡眠時間を削ってまで、最後に一本。 しかもそれが初のDグレでラビミラ。笑。 銀迦ちゃんにあげるさ。
ちなみにアレンのオーダーは、私が食べたいものです。笑。
さ、朝一のバスで東北旅行だー! 風邪が流行ってます、皆様お気をつけて!!
|