銀の鎧細工通信
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| 2004年09月08日(水) |
白日の下の透明2(坂土) |
畳に擦れることと隊服が汚れること、両方を気遣った坂本は 土方の上着を脱がせベストとシャツはすべてはだけさせた。 大小の傷跡の残る、それでも白い肌を滑るように労るように 大きな手で愛撫する。 口吻たり舐めたりするのに邪魔なグラサンを取った坂本の目は 真っ直ぐで遠くにある輝かしい物でも見ているようで、土方はまた 既視感を覚えて胸が苦しくなった。見えないようにと自分から口吻をした。 それは小さな嬌声を押し殺すためでもあった。
性急にでもなく、焦らす風でもなく、土方の呼吸に合わせて坂本は 愛撫や口吻をする。その優しさに土方は惑乱する。 丁寧な手付きで土方のズボンを下着ごと脱がしそっと土方の熱に指を絡ませる。 柔らかに土方の性感を高めてゆき、溜息のような息がこぼれる。 声を殺して眉を顰めて何かを必死に耐える土方が哀れで、 坂本は頭を撫でたり軽い口吻を落としたり、そっと微笑んだ。 自分の体の下で震えるこの男を可愛いと思った。 「達っていいぜよ、楽になっていいきに」 耳元で呟くと、外套の襟を掴まれて引き寄せられた。 土方が顔を見られないようにしたままで「挿れてくれ、あんたの」 とこれまた震える声で呟いた。
「おんしゃ、難儀じゃの。何ばそないに抱えて耐えておるんじゃ」 と土方の頭を撫でながら身を起こし、くしゃりと笑った。
坂本が内ポケットからなにやら軟膏を取り出し、「傷薬じゃ、安心するろー」 と云いながら土方の体を慣らしてほぐす、緩やかに緩やかに。 慣れない違和感に必死で土方は耐えた、手の甲を噛みしめながら 自分に覆い被さる坂本を細めた目で見つめる。 嫌悪感はなかった、白日の下でこのまま蒸発する水溜まりにでもなりたい、 そんな風に思った時に、
「泣いちょる。泣かんでいいんじゃ」
と労るような声がかけられて、 土方はもう自分が消え去ってしまえばいいと強く思った。 「もう・・・い、い・・・平気だ、から・・・」 恥もプライドもなく強請ってばかりだ、初対面の男に。土方は自嘲した。 「力抜いてるろー」 「・・!った、あっく・・・う・・・!」 いくら脱力しきっていても本来の機能を逸脱した行為の衝撃は大きかった、 質量と熱さにまた目眩がする。 「ふ・・・・くう・・・んっ・・・」 はじめは土方のなかで動かさず、呼吸が落ち着くのを待っていた坂本が 律動を始めると土方は必死で声を殺した。 荒い呼吸だけが部屋にわずかに響き、なだめるように自分の体の奥を突く 坂本と視線を絡ませていた。 ずるりずるりと内臓を出し入れされるような感覚と、内臓の奥のうずきが いたたまれなく、土方は坂本の腕にすがった。 土方の腕が絡まった方の手で自分の上体を支え、坂本は器用に もう片方の手で頭を撫でてやる。
「透明な男じゃのー、おんしゃ」 坂本がそう云い、土方の熱の中心への刺激を再開し、律動が速まった。 放たれた言葉の意味を考えるよりも前に土方は声もなく達した。 白光に、目の裏が満ちた。
土方が呆然として、胸を上下させている間に坂本はしゅるりと取った スカーフで体を拭いて、はだけた服を着せてやる。 土方も意識はあるものの為すがままだ。自分はどうかしていると思っていた。
「土方サンよ、自分をそげに追いつめちょるんは毒にしかならんきに」
またしても考えていることを読んだようにかけられた言葉に、ぐるりと 首を巡らして坂本をじっと見た。 この初対面の旧攘夷志士に何故こんなにも自分は良いように強請り、甘え、 わかった風な口をきかれているのか。 しかもそれが不快ではないのは一体どうしたことか。 あの人の代わりにしたわけではないのだ、似通った部分があっても、 あの人はこんなに敏くない。自分の押し殺している思いになど気付かない。
「ああ、また眉間に皺ば寄せちょる。おんしゃ泣き虫じゃのう」 「泣いてなんかいねェだろうが」 「涙が出ちょらんだけじゃ、何ば堪えて我慢して泣いちょる。難儀じゃのー」 「そんなことねェ・・・」 「・・・よしよし」
すっかり身を清められ、上着以外は服も整えられてしまった。 あの人にすらこんなに気を許したことはない。 いやあの人だからこそかもしれない。他の奴は無論のことだ。 襖の外からの光がかげってきている、夕暮れか。 白日の時間は過ぎた。 土方は身を起こし、上着に袖を通した。 「引き留めて・・・すまなかった。痴漢騒ぎとかであんたは 騒がれて良い立場の人間じゃない。気をつけろ」 「アッハッハ!おんし、コトの後で「お前」呼ばわりが「あんた」に なったぜよ!わかりやすい奴っちゃのー」 土方の頬から耳にかけて朱が走った。
自分が「あんた」と呼ぶのはあの人だけだ。
「日も暮れかけてきたぜよ、早よ戻らんと陸奥に半殺しじゃ〜」 「門まで案内する」 鈍痛の残る腰を隠しつつ土方は事も無げに立ち上がり、襖を開けた。 中庭を挟んで向かいの部屋で刀を抱いた山崎がうつらうつらと舟をこいでいる。 心配をかけた、見張っててくれていたのだろう。 情けなく不甲斐ない自分を叱咤した。俺は真選組の副長、土方だ。
門の見える辺りまで来たところで、背後から坂本が肩をぽんと叩いた。 「ここで大丈夫じゃ」 振り向くとニカァと笑って「おんしゃ腰労って寝ちょった方がいいきに」 と云った。 好き放題した弱みのせいで、ここで食ってかかることができない。 土方は唸って俯いた。 またぽんと肩を叩かれる。 「おんし、透明な男じゃ、張り裂けて割れんようにせんとダメじゃ」 「透明どころか・・・血で真っ赤だよ俺は」 「でもダメじゃ、このままじゃいかんぜよ」 「・・・どうしようもねェのさ」 自嘲に満ちた嫌な、笑い方をした。それでいい。それでいいんだ。 俯くと、夕暮れの影は薄い。 白日の下でこそ影は濃く暗く暗く、なるのだ。 自分はあの人の分までその影になる。 あの人が白ければ、その分自身が黒い影を負う。幾らでも。 「・・・じゃあな」 顔を上げて坂本に告げた。 坂本はくしゃりと笑って、ひょいひょいと下駄履きにしては軽い足取りで 門を出て行った。
ごぅ、と旋風がとぐろを巻いた。風のうねり。 土方の黒い髪が舞う。まなじりを吊り上げて虚空を見据えた。
澄んだ透明だからこそ、深い深い黒い暗い影を写せるのだと、 土方には、理解できない。
END
長くなりました。坂土・・・シリアスエロ・・・。 土方さんがヘタレました・・・いいえでも坂本のコロコロした笑いや 軽やかさに彼はよろめかされますのです・・・よろめいているのは私です。 銀さんほど茶化したりしなそうだから、坂本は。 繰り返し云いますけどお父ちゃん系だし。 つーわけで坂土/近←土でした。 何か・・・こんな好き放題やってて、読んでくれてる人本当にいるのかな・・・。 畏れ多くも「花に嵐 月に叢雲 君に涙」 http://homepage3.nifty.com/hikage_m/hijikata/hijikata-1.html のもり様に献上させていただきました!
BGMは天野月子。
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