銀の鎧細工通信
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2004年08月31日(火) きょうのできごと(真選組+攘夷志士)


ちゃりん。
「暑い中ご苦労様、最近暑さで年寄りが結構死んでるし、
これで供養でもしてやってくださいよ」
近藤が托鉢の坊主の椀に小銭を入れて請うた。

横で共に巡察をしている沖田はその坊主が、そぐわぬ長髪の持ち主で、
攘夷戦争の生き残りの一級反乱分子、桂小太郎だと気付いていた。
表情の読めないどんぐり目でじっと桂を見つめてから、
くるりと顔を横に向けて真剣な顔で供養を請う近藤を見て、
そうして立ち去りながらくつくつと笑っては近藤に眉を吊り上げて
「何だ何だ、罰当たりな奴だな!」と叱られた。
笑い止まない沖田の頭頂をぺしんとはたきながら
「お、見てみろ総悟、今日はいい夕焼けが見られそうだぞ」
空を見上げる顔が童のようで沖田はまた少し笑った。
「全くアンタってお人は変わりやせんねェ・・・」
「?そうか?」
長い影が二人の後ろに伸びる。

桂は桂で「鈍い奴だな・・・・」と敵ながらその純朴さに呆れ、
供養などしてやれないことを心の中で詫びた。
托鉢姿を隠れ蓑にし、貯めているのは生活費と活動資金。
今更自分に罰当たりも何もない、当たるならとっくに当たっているはずだった。
抜けるように青い空は高く澄み、心なしか秋の気配を感じさせた。
桂はつややかな黒髪をなびかせて、空を見上げる。
飛び交う天人の船が風を起こす。
自分が闘うべき相手の舞う空を見上げる。
風に踊らされる袈裟と髪、黒い色が自身の長く伸びた影に吸い込まれる。
黒が自身に染み渡る。


ちゃりん。
釣り銭の取り出し口から小銭を取り出すや直ぐさま
買ったばかりの煙草のパッケージを開けて一本取り出す。
「副長、煙草増えてませんか?よくないですよ、
もう若くないんだから体動かす時に体力がアイタ!!!」
ライターを持った手で裏拳を鼻面に叩き込む。
密偵以外にも山崎には医術の心得がある、だからこその台詞だが
こいつに云われるとどうしても
「体動かす時ってのァミントンか、おい」
と云わずにはおれない何かがある。
「違いますよ〜直ぐ手が出るんだからアンタってお人は〜・・・」
鼻血でも出たのか鼻っ柱を押さえながらふがふがと答える。

しかし、確かに煙草は増えた。
近藤さんの道場にいる頃には興味もなかった代物だ。
だからといって直ぐに息切れするほど柔な鍛え方はしていない。
今や立派なチェーンスモーカーだ、このじれったいような暇つぶしのような
行為は「天人に掌握された幕府の、犬」という我が身と似通っている。
「・・・何だかなァ」
何があってもどんな形であってもあの人について行く。
あの人のやることなら何でも支える。
あの人を、あの大事な人を護る。あの人の大事なものを、護る。
自分にとってあまりにも大きすぎる存在。絶対な安堵と信頼。
でも、今や活躍の場もあまり無い。最近また騒がしくなったこの街で
武装警察としてようやく刀を振れるようになった。
「飼い犬ってのは、退屈なもんだよなァ・・・」
「何か云いました?副長」
「いや。それより鼻血止まったかよ。隊服来てる時に情けない真似すんな」
「止まりましたよ、そもそも副長の裏拳が原因じゃないっすか」
またしても土方の拳がぴくりと跳ねたのを見てすかさず山崎は話題を変えた。
「あ、副長すげェ夕焼けですよ。真っ赤だ」
指さされた方を向き直る。
びゅおと風が吹きすさぶ橋の上、血のように赤い夕焼けが滲んだ。
土方はその血のような燃え立つ色に、血がざわめき立つのを覚えて目を細めた。


「おー出立の間際に見る夕焼けちゅうのも佳いもんじゃの〜」
「さっさと乗り込んでくれろ、坂本さん。あんたが居らんと
仕事にならんきに」
艦船に乗り込むタラップで長身を見返らせて彼方の夕焼けに
感嘆の声を上げる坂本の後ろからやや小柄の菅笠被りの女が声をかける。
「そう無粋なこというもんじゃなか、陸奥。しばらくこの星とも
おさらばの船旅じゃ、堪能してこそ商売もうまく行くもんじゃきに」
ふう、と大仰にため息をついて坂本が見ている方に陸奥も目をやる。
燃え立つ赤が彼女の金灰色の細い髪に写る。
この男が眩しいのは、逆光の所為だけではない、陸奥は坂本を見て目を細めた。

長い影、黒い色、迫る闇に沸き立つ赤い渦。
赤く燃える風景、何もかもが赤に染まる、暗い闇を背後に忍ばせて。
不穏と平穏の中の、きょうのできごと。




END


いつも生き死ににまつわる物し書かないので、今日は夏の終わりっぽいのを。
近藤と沖田が一緒に居るのは和みます。兄弟みたいで親子みたいな。
桂は一人が似合います。さびしんぼ。
土方を誘導するの、実は山崎うまいと思います。土方単細胞(愛)。
陸奥が大好きです!はあはあ。高校時代は熱心な司馬読者で土佐弁を
自在に操るエセ土佐っぽだったのに、もう全然だめです。
陸奥と坂本は肉体関係はありますが愛はありません。良き仕事のパートナー。
陸奥は坂本に対して憧憬や尊敬はあるけれど恋人関係になりたいわけじゃない。

そんなごちゃまぜの妄想を込めたSSでした。
原題は柴崎友香『きょうのできごと』から。

実はシャーマンキングのことばかり考えてます。
ジャンプ編集部の馬鹿・・・・!!!!!!!!!!!!



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