銀の鎧細工通信
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| 2004年08月25日(水) |
赤い雷と黒犬(銀土) |
ぱっと空が不穏な閃光に染まる。 赤みを帯びた空に、爆ぜるその光も赤みを帯びている。 しばらくの間の後に重い低音が腹の底を圧迫するようにとどろいた。 どぉんと遠くでそれは墜落する、墜落というよりは竜が地中を目指して 突進するような。
そして、にわかにぱらぱらと水滴が降り落ちてくる。 はじめはゆっくりと、そして急激に速度を速めて降り注ぐ水の粒。
むわんと水に打たれた地がその独特の匂いを熱気とともに大気中に発散する。
夏の、夕立ち。 急激な雷雨。
熱よ冷えろ。この雨を受けて。 熱を放て。この雨を受けて。
「うおーっとぉ。何じゃこりゃ!」 ぴょこぴょこと跳ね返る髪についた水滴を払いながら銀時は路地裏の 軒先に身を飛び込ませた。 「くっそー・・・通りで今日は天パがいつもより跳ねっかえると思ったぜ・・・」 湿気が多いと、癖のある髪はその跳ねやうねりを強める。 銀時はいつにもましてぴょこぴょことあちらこちらを向く毛先を 訝しみながらも、それでも傘を予め持って外出したりはしないのだった。 ぶつぶつと独り言を言いながら服の水滴も払っていると、 不意に稲光の閃光とともに黒い影が軒先にもの凄い勢いで飛び込んできた。
真っ黒な姿に、稲光にその目は赤くぎらりと煌めく。
ぎくりとした、まるで自分が押し殺した獣そのもののような影。 違う部分といえば視界をちらつくのは、自分の胸の中にうごめくのは 銀色の毛並みの獣だということ。
瞬間息をのんだ銀時に、低めのやや掠れた声がかかる 「何だ、おめえか」 黒い隊服を暑い中きっちり着た、漆黒の髪の、朱塗りの鞘に刀を差した、 真選組副長その人だった。 ぱたぱたと水滴を滴らせる土方は赤い目などしていない。 だいぶ濡れているにも関わらず、ごそごそと煙草を取り出して火をつける。 「完全防水加工でもしてんの?多串くんの煙草」 胸の動悸を押さえつけて、銀時は茶化して動揺を誤魔化す。 「あん?つまんねぇこと云うな。除湿加工でも手前ぇの髪にしろや」 何度目かで無事着火した煙草を旨そうに吸う土方は、 そのヘビースモーカーっぷりによって持ち前の声が掠れているのだろう。
ごろごろごろごろ・・・・どん ぴかり
雷雨は勢いを増す。 でもこれは一時の通り雨、待てば止む。 地熱を逃がして、ひやりとした風を運び緑の匂いを立ちこめさせる。 ぼんやりと雨を眺めつつ銀時は平常心に戻ってきた。 「んあ!?除湿加工しろってどういう意味だそりゃああ!」 「何だ反応鈍いな。手前ぇの天パが大変なことになってるから気ィ遣って やったんじゃねえか」 「余計なお世話だ多串コンチクショーおお!」 「だから俺は多串じゃねえって云ってるだろうが天パあああ!」 互いの胸ぐらをつかんで怒鳴り合う。 声が雷に消されるので自然といつもより大声になる。
ぴかり
またしても閃光。消える前に土方の目がまたしても稲光色に赤く光った。 雷の色を写しているような赤。不穏な赤味。胸が騒ぐ。 ぎらぎらした黒目が一瞬赤くなる。 「・・・っ、煙草くせぇな、近寄ると」銀時は手を離してフイと顔をそらす。 「雨の日は匂いが強くなるからな」 土方は煙草を持っていない方の手の袖口を鼻先に持って行ってスンと嗅ぐ。
ああまるでこういう仕草も獣じみた。
銀時は少し眩暈がした。確かに人間なのに、こいつはあの獣のようだ。 似ているのは見てくれだけで、コロセコワセウラミヲハラセと鳴きたてる あの獣とは大分違う。 この黒犬は護るものの前でがっちりと足を踏ん張って呻っているのだ。
銀時はスゥと眼を細めた。息を深く吸い込む。 「あんた、眼が赤く光るんだな」 違う獣だと思ったから正直に告げた、見たものを。
「ああ、虹彩がすこし薄いみてぇなんだ」 あっさりと土方は返答して寄越した。云われ慣れているのだろうか。 「どれ」 銀時は身を寄せる。コレ、はあの獣じゃないんだという確証をより得るために。 自分より少し背の低い土方の目をのぞき込む、 瞳は深く黒く、周りの虹彩が灰色に滲んでいる。 「ああ・・・この灰色の処が光線の加減で赤くなるんだな」 「自分じゃわからねえよ」 真剣にのぞき込む銀時がおかしかったのか土方はやや苦笑しながら答える。 二人の距離は近い。息が触れ合うほどに。 穏やかな苦笑につられて銀時は土方の頬に手を添えた。ごく自然に。 土方は笑いを消して銀時をじっと見据える。手を振り払いはしないで。
ぴかり
赤く煌めく眼、黒い艶々した毛並み、忠実な犬。 銀時は不意に愛しくなって土方に口吻た。 土方の濡れた黒い睫毛が少し震えるのが見えた。 熱よ冷えろ。この雨を受けて。もう抱えていても仕方のない熱よ。
雨はまだ止まない。 土方は、雨宿りの暇つぶしだ、退くに退けない戯れだ、と 自分に言い聞かせつつ接吻に甘んじた。 気色悪さはなかった。 熱を放て。この雨を受けて。もっと大事なものを護るために。
END
随分久しぶりになってしまいました。時間はどんどん過ぎてゆきます。 ここ数日友人宅のご厄介になりのんびりしてまいりました。 土方の虹彩が灰色で光を受けると赤く光る眼、っていうのはその友人と一緒に 考えた妄想です。た、楽しい・・・!ぷるぷる。(打ち震え)
鋼も書きたいんですがねーいまいち世界観と人物像を 自分の中で錬成できない。 もう原作で練られきってるからかもしれません・・・。
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