銀の鎧細工通信
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2004年08月16日(月) 遭難者2(近高、近←高?)

さまよいさまよって何が残った?

あちらこちらをふらふらと、うろつきまわって何になった?

自分はあの後、どうやって、どうやって生きてきた??

どのようにしてして生きのびてきた?



もうわからない。わからないけれど自分は生き残っている。
今確かに、今いる場所に。
居場所はないのに。

あたたかいものも、たしかなものも、あんしんできるものも、
何も持たない自分はまるで遭難者のようだ。





殺された仲間がよく話していた実家に足を運んでみた、
云っていた通りの親父が機械をいじっていた。
黒い獣をけしかけても、得られたものは祭の混乱だけだった。
獣の腹は満たないだろう、早く自分を食らえばいいものを。早く。

祭で昔馴染みに遭った、余りにも簡単に、容易く遭うことが出来
そのあっけなさにやや虚しさと悲しみを覚えた。
銀時は獣を殺しもせず養いもせず、それは懸命の生の選択に見えた。
桂は真っ直ぐに、死者の命と失われた時間を決して忘れない選択をして
生きていた。真面目に。
自分は失われたものへの悲しみに虚しく生を費やしているのか?
もう帰らない、喪失したものを惜しむだけに、黒い獣に自分と他人の血肉を
食わせて、破壊して消滅させて養っているのか?
無意味に。哀惜だけの為に。生きてもいない、死ぬ事も出来ない自分の為に。

考えまい。もうどうにもならない。帰らないし戻らない。
ただこの場所にくれば、遭えるかも知れないと思ったのは昔馴染みだけではない。
死にかけていた自分をこの生に引き戻した男。
今、彼を呪うつもりは無い。
あの時仲間と共に死なせて呉れればと思う事も無いが、彼に恨みは抱かない。
彼に遭えば、いやもう何も変わらないだろう。自分の選択した生は。
自分が育てた獣は彼に遭った処で消え去りはしないだろう。



桂とわかれて川原へ向かった。
銀時や桂という一級危険分子=旧攘夷志士が普通に生活しているのだ、
武装警察が居ようともこの町は攘夷戦争の爪痕を確かに忘れてきている。
しかし自分の派手な着流し(というか女物の襦袢だ)に隻眼の包帯、
長脇差は目立つ。明らかに堅気の者ではないから因縁を付けられるのは
面倒だった。人ごみも好きではない。沢山の人がいるのはもう嫌だ。
ただ、この町で武装警察の頭をはっている彼の目に、自分が止まれば、と
少し思わなくは無かった。
とにかく高杉は川原に向かう。彼とかつて出会ったのも川原だ。
橋の下で顔の覚書があるが気にはしない。
そのまま歩く。川原へと向かって。三途の川であれば好い、と無性に思った。

獣は飢えている、なのに自分を食わない。俺を食ったら自分が消滅する事を
知っているのか、悪賢いけもの。
そして川原。
遭いたいのはもう、今、何も持たない自分が想うのは彼しか居ない。
何も変わらなくていいから。ただ。


「副長、祭の際の、覚書の、あの・・・鬼兵隊の高杉に似た男がここ数日
川原に居るらしいんですが・・・」
「わかった。行って来るか」
「待て、トシ。俺が行く」
「・・・何でですか」
「いいから。頼む」
何より想う局長に頼まれると、土方は何も云えなくなる。


夕刻の川原、空が血を流したように赤い。
じゃりじゃりと川原を踏み鳴らして歩いて来る者、高杉は確信を持っていた。

「・・・あんた、天人とそれに従う幕府を脅かすテロリストやらを即時処刑する
権限をもつ組織の偉いにになったらしいな。・・・・天人対人間じゃなくて
人間対人間の殺し合いだ。そんな物騒なものになりたかったのか」

「久しぶりだな。目は・・・完治しなかったんだな。・・・でも・・・
生きていて、良かった」
どこかで既に自分の姿を見ていたのか、高杉は振り返っていないのに
近藤は高杉が隻眼で居る事を知っていた。
覚書の所為かとも、自嘲したが、どこかであの混乱の中で自分を見つけた
近藤の事を想っていた。
高杉のやや斜め後ろに立つ相変わらずの彼に、猛烈に腹が立ち、呪いが噴出し、
そして感傷もこみ上げた。

「質問に答えろよ。俺は死にぞこないの犯罪者だ。あんたはそれを生かすも
殺すもの自由を持ってる」

「こういう組織になりたかったわけじゃねえよ、でも沢山の人間が俺を
信じて付いてきてくれた。食い扶持と肩書きが必要で、選択なんてしてる
場合じゃなかった。でも、人殺しをしたい訳ではなかった」
近藤は淡々と語る。理想通りでは居られない組織。その不条理。
理想を貫き通そうとすれば、遅かれ早かれ自分の愛した鬼兵隊のように、
潰れること。

「そんな正直で、よく集団の頭で居られるな」
「あんたに云われると、重いよ。・・・思い出しては時々不安になる」


黒い獣、ここまで育ててやったんだ。食えよ、今すぐに俺を。
そのためにお前は居るのだろう?!
泣きたくもあり、叫びたくもあり、殺したくもあり、死にたくもあり、
高杉はもう抱えきれないものに身を包まれた。
声にならない叫びと涙なら、救いを求める声なら、いつもいつもいつもいつも
この痩せこけた身の中からあげていた。
でもあんなに殺した自分が、あっさり死んで言い訳がないだろう?
自分を信じてくれた奴らを不条理に死なせて、自分は生き延びて。

ふっと背後の近藤の気配が揺らぎ、高杉を包んだ。

もう止めてくれ。
逢いたかった。確信を持って。
でも止めてくれ。
悔やませないでくれ。
もう戻れない自分を。
背中を押すな、ならば殺せ。
許すな。認めるな。
流す涙なんてもう、無い。
高杉は自分をやわらかに、しっかりと抱きしめる近藤に縋り、
泣きもせず縋り、涙も声も無くわなないた。
この身体の中からこみ上げてくる震えは、何なのだろう。
悔やんでも戻らない。だからお前は亡くすな。
そう云いたいのだろうか。
違う、そんなんじゃない。綺麗事では何も解消され得ない。
強く強く、ふたりはかき抱きあった。まるで世界がそれだけ全てのように。
近藤が高杉の包帯で覆った目の部分に口吻けを落とした。
労わるように、励ますように、同情するように、仲間のように。



もう、いい。
十分だ。



爪の跡がつくまで強く抱いた手を離し、高杉は近藤から離れた。

「俺は高杉晋助だ。鬼兵隊の高杉だ。殺して首持って幕府に行きゃ、
あんたはもっと上に行ける」
近藤の目を見据えながら云う。

にわかに川原につむじ風が吹く。
永遠に消えたもの。失したもの。
もう光らない、軋んだものを抱える。絶望の果てで灯りを差し伸べたあんた。
最終的に命くらいあんたに、くれてやる。

思い出して、あの日の俺を。
思い出して、あんたが生き延びさせた俺。
壊して、あの日からの俺を。
壊して壊して、あんたが殺さなかった俺。


「もう、俺にはあんたは殺せない。その資格はあっても俺に理由が無い。
あんたの抱える闇は驚異でも、あんたの哀しみは人事じゃない。
これ同情じゃない、・・・仲間意識だ」
またしてもくしゃっとガキ大将のように笑って近藤は俯く。
頭を掻きながら優しく力強く、寛容に物悲しげに。



高杉は笑った。
そのかすかなかすかな口角の吊り上りは意識される類のものではない。
でも高杉は笑った。

その場を離れた。
あの世とこの世をつなぐ川。
あの世とこの世をつないだ人。
想いつづける事は変わらない、死んだ仲間を。
でも生きている仲間を想う事、想ってもいいのか。
黒い獣という呪い。
抱えて。抱えて。抱えて。


俺は遭難者。








END



近高、というか高→近でしょうか。
銀魂は片想いになりがちです。なぜでしょうか。
酔っ払って書いているので訳分からないかもしれないけれど、
黒い獣という負荷、呪いを抱えてでも生きることを余儀なくされた高杉と
近藤は、沢山の仲間のいる組織を抱える身として同志です。
高杉ソングは、かつBGMはACIDMAN『飛光』。

あとで捕捉するかもしれないけど、今は此れが精一杯(ルパン)
銀迦ちゃんにプレゼント。
銀魂は書いていて楽しい。奥が深いです、とても。






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