銀の鎧細工通信
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重いものは何だったのか。 たまたま割りと強くってなかなか死なない自分が、死んでいく力無い者を 守らねばならなかったことか。怪我を負ったものを担ぐことの重さか。 死に行くものの最期の言葉や表情を見る羽目になることか。 勝ち目の無い戦に最早そもそもの理念ばかりが空回りし、 自分が何をしたかったのか、今何をしたいのかわからないまま 血まみれになって血みどろになっていることか。 死んでいった人間たちの命の重さか。 沢山死んで行った人間が居る中で生き残った自分が生きているということか。 銀色の獣の影がちらつく、ひらりひらりと飛跳ねて、ゆらりゆらりと 自分を待つように背中を見せながら先をゆく。
「・・・ちゃん、銀ちゃん」 「・・・んあ」 覗き込んだ神楽がいつものようにまん丸な眼をしてまくし立てる。 「良かった生きてたアルね。いつもの取り立てヨ。家賃払え妖怪が出たアル。 今死なれたらわたしとメガネ困るネ」 「俺はお前らの父親かっつーの・・・」 のそおり、と身を起こしてぼりぼりと頭を掻く。 外では戸を蹴破らんばかりで 「家賃また滞納しやがるのかああああこの天パの甲斐性なしいいいい」 という絶叫が聞こえる。 「養ってもらうどころか給料ももらってないネ」 と神楽がぼそりと呟いたので銀時はまたがくりと倒れこんで、寝た、 寝ようとした。 「・・・銀ちゃんうなされてたアル」 またしてもぼそりと神楽は呟いた、こういう時彼女は人のことを見ない。 空を見たりしながら言う。けして俯きはしないで。 この娘も壊すことの奪うことの断片を身に突き刺さらせながら生きている。 「そうかあ、俺ってば霊能力があるから、あの外の妖怪の邪気に 寝てても反応しちまったんだなあ・・・」 うんうんと頷きながらしみじみと語る。
思いや感情をさらけ出さないことに罪悪感は無い。 誰しも何がしかを抱えていることだ。 惚けや莫迦話ですりかえ、お茶を濁すことを欺瞞だと怒る桂は 潔癖だからこそ歪んでいる。 真っ直ぐに美しく思いつめてとり憑かれている。 不憫だとも思い、健全だとも思う。 自分が病んでいる。 重かったからこそ引き摺り続ける、忘れない真面目な人間。 血まみれの血みどろになったから、それを抱えて生きる誠実な人間。 重さと血だまりの中から何かを掬い取って、選んでいった建設的な人間。
久しぶりに会った高杉は相変わらず優しく誠実だった。 絶望を昇華も出来ず、忘れられもせず、その変化の無さは幼稚でもあった。 あいつは多分血塗れた手を洗うことも出来ずに生きてきたのだ、 何て哀れな誠実さ。 アクシデントで再会した坂本は、血の池から掬い取ったものを大切に磨いて 形にしていた。あんな経験をしても大勢の人間と何かを為すことを 怖れない奴は、莫迦でもあり強くもある。
自分にも覚悟がある、心に決めたものがある。 人に口にすることは無い。 もう他人と深く関わらず、身軽にそれを貫こうと思っていた。 殺しても殺しても殺しても息を吹き返して後をついてくる銀色の獣を、 いつからか無視して生きることも決めた。 殺すという対峙すらもうしてはならない。振り回されてはならない。 ひょっとすると、それは自己満足的な処世術。
ごろりと神楽に背を向ける形に寝返りを打ち、目をあけて畳の目を数える。
何か重いものが自分の全身を押しつぶしてくる。 気のせいだ、と思う。
青白い焔が自分の指先からともり、全身を燃やし尽くそうとする。 気のせいだ、と思う。
自分の胸からずるりと血まみれで銀の毛をした獣が這い出てこようとする。 気のせいだ、と思う。
今自分が生きることにそれらは必要ない、 経験から掴み取った自分のルールを守るために必要なものではない。
神楽は隣で定春を撫でている。 バーさんがパシリに行かせて戻ってきた新八を(おそらく)絞め殺す勢いで 家賃の催促をし、新八は 「ちょ・・っつ!!止めて下さいよおおお何で僕に云うんですかあ!! あの天パの甲斐性なしにいうことでしょそれは・・・!!大体此処借りてるのは 僕じゃない・・・ぐえっ」 とか何とか懸命な奴である。いついかなるときもツッコミは忘れない、一途さ。 ふっと自分を取り巻いていたものの気配が掻き消える。 銀時は目を閉じたままふっと微笑む。
殺した者に守れなかった者に、後悔も謝罪も罪悪も悔恨ももう際限が無い。 取り返しはつかないやり直しも出来ない。 ただ、もう自分は。
END
私が銀時さんに(改まった呼び方)思うことは鬼束ちひろの「私とワルツを」 に近いものがあります。 優しくて誰にも傷がつかないようにしてて、悲しい。 それだけじゃなくて、ちょっともう何にも期待もしてなくて信用とかしてないと いいと思う悪い癖(好きなキャラを不幸にしたがる)も出てみたり。 銀さん大好きなんです。格好いい人本当に。ひとりでなんか踊らないで欲しい。
後書きたかったのは、どう見てもイカレキャラでるろ剣の志々雄みたいな (ああ云っちゃった・・)位置付けの高杉は、単なる優しくて優しくて幼い 未成熟な少年みたいな人だなあ、と思っている自分の高杉観とかが 書きたかったんです。鬼兵隊がとても大切で、悲しくて、諦め切れなくて・・・ 何だか「不憫な子だねえ・・・」なんて頭撫でてあげたくなります。 坂本はすごいと思います。桂は真面目だと思います。
次回「獣飼ってるっていうか自分が黒犬丸出しだよ(健気で可愛い)土方さん! と出会ってちょっとびっくり「何この変な人」とか思いながら「ぷっ」とか 吹き出しちゃったりもしながら土方さんが気になる銀さん」。 長い上に夢みがち。 ・・・まあ実は銀迦ちゃんの「まんまる」日記読んで身につまされて ちょっと泣いて全然まんまるくなれない自分が、まんまるくなったんだろうな、 と思う銀さんについて書いた話でございました。はい。暴露。
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