一度だけの人生に
ひろ



 汝ら断食するとき偽善者の如く・・・

悲しき面持ちをすな。
彼らは断食するを人に表さんとて
その顔色を害うなり。」

ダメだと思う。
これじゃやっていけないと思う。
この言葉の苦しさ、辛さ、遣る瀬無さ。
悶えるほどの苦しさである。
どうして良いのか分からなくなる。
一人、泣きべそをかいているしかない。
ダメだ。言わなきゃダメだ。
表さなきゃダメだ。
太宰には神がいなかったと言うのは
このことか。僕にも神はいない。

ただ、黙って、
影で人を助けて、力になって、
誰にも知られずに、死ぬまで
ニコニコしていることの美しさと苦しさ。
ただ、微笑していることの苦しさ。
死んだ方がましだ。

ずるくやればいいんだ。
隠れた苦労なんて、誰も知らない。
誰も知ったことじゃない。
良かれと思って、相手を思って、
黙っていれば、結局、それは無かったことだ。
無い苦労だ。無だ。価値も美醜も無い。
無。

甲斐の無い苦労に耐えること。
無報酬の行為。確かにそれは至難の業だ。
常人の出来うることじゃない。

事実はみんな知っているんだ。
影で、必ず誰かが苦労している。
それは知っているんだ。
でも「知ったことじゃない」んだ。

僕が間違っているんだろうか。
言わなかったことがいけなかったのだろうか。
僕がやらなければ、必ず他の誰かが
苦労することになる。
そう思って黙ってずっとやってきた。
それがいけなかったのだろうか。

いつの間にか、僕がやることを
みんな当たり前と思うようになって、
先生すら当たり前と思うようになった。

そして今回、やらなかった結果、
不手際が発生したことについて、
僕は先生から呼び出されて責められた。

普通、僕はやる立場に無いはずだ。
いや、普通は、普通の感性なら
僕がやるって言っても、
やらせるはずの無いことだ。
みんな僕がやって当たり前と思っている。

世の中は、全てこんなものかと思うと、
とてもやりきれなくなる。
人は全て、こういうものなのかと思うと、
誰も彼もが憎くなる。


2003年05月24日(土)
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