一度だけの人生に
ひろ



 新ハムレット−1−

大学に入ってからの友人に
4人「心の病」の人がいます。全員女性です。
決して、そう言う人を選んで、仲良くなったわけではありません。
仲良くなってみたら、そうだった。
あるいはその人の友人がそうだった。
みたいな感じです。
知り合う前にそうだと言うことを、
知っていたことは一度もありません。
摂食障害、鬱病、人格障害、リストカッター等
様々です。自分のやっている勉強が勉強ですから、
そう言う人が集まるのでしょう。

最近5人になりました。
その人も女性(Dさん)です。
Dさんは専攻が一緒のこともあって、
二年のはじめから知り合いでした。
なんとなくぼんやりした感じの人でしたが、
容姿・外見にすこし取っつきにくい雰囲気を持っていて、
当初はあんまり気さくに話し掛けられませんでした。
年齢は一緒なんですが、学年はあちらが上って言うのもありましたが・・・。

最初の一年間は、顔見知りに毛が生えた程度の仲でしたが、
今年のはじめに、一度飲み会で話をして、顔見知りから知人程度になりました。
その後もたびたび、みんなで一緒にお酒を飲んだりしていました。
学校で会うことがあったら、少し話をしたりしていたんですが、
今年の夏くらいから、俺と会うと「何か噂聞いてませんか?」と
毎回、毎回聞いてくるようになりました。
俺は特に気にもかけずに「いや、別に何も聞いてないっすよ」と
応えていたんですが・・・。

しかし、あまりに何度も
聞いてくるものだから、何かあるのかと思って、
彼女の友人(Sくん)に聞いたところ、
彼女は友人・知人全員に、そう聞いて回っているらしく、
Sくんも聞かれたらしいのです。Sくんは訊く理由を尋ねたところ、
彼女いわく
「私の家には盗聴器が仕掛けられている。
スピーカーも仕掛けられていて、私の悪口を言っている。」
と応えたそうです。

精神・心理系の知識が皆無のSくんは
「それは気味が悪いね。業者に調査してもらった方がいいんじゃない?」
と言ったそうです。
少なからず知識のある僕は、盗聴器はともかく、
「スピーカー・声・悪口」と言うのには「まさか」っと
心配になり、さらに彼女と仲の良いKさんに
聞きにいきました。

Kさんも心配だったようで、
詳しく話をしてくれました。それによると
「夏くらいから、自分の悪口を言う人の声が
どこででも聞こえる。」
「話をしていても、心ここに在らずの状態で、
人の話を聞いていない。」
「ぼんやりしていたかと思うと、
突然泣きべそをかきはじめることがある。」
「家に引きこもっていることが多くなった。」
「精神的なものでは無いと頑固に言い張る。」
こんな感じでした。

それで、その時にはもう、Kさんともう一人の友人Mさんで
大学のカウンセラーの所に
連れていくことになっていると言うことでした。

Kさんは親友Dさんの突然の変化と
その尋常じゃない言動・行動に、
相当、当惑している様子でした。しかも
Kさんはもともと精神病に対する抵抗感もあるようで、
「あまり関わりたくない」と言う気持ちと
「しかし大切な人」と言う気持ちで葛藤していたようです。

カウンセラーの所へ行った後、
Kさんが俺の所に来て、行って来たから話を
聞いて欲しいと言うことでした。
俺が聞いて良いものかどうか迷いましたが、
やはり俺もDさんが心配でしたし、Kさんの方の
精神状況もあるので聞くことにしました。

それによるとDさんの話は更に誇大になり
「私の悪口を言う数人の人が互いに会話する声が聞こえる」
「ある組織があって、私のことを調べてみんなに私のことを教えている。
そのせいで、道を歩く見知らぬ人が私を馬鹿にしている。」
「その声と会話が出来る」
などなどでした。
結局、その、大学のカウンセラーの所に通って、
頃合いを見計らって、病院に行かせることになったようです。

Kさんも辛いようでした。
彼女は泣くまいとしていたようですが、
俺と話していた途中、泣いてしまいました。
それでなくとも、四年生のこの時期はみんな大変なのです。
ましてや大学に入った時からの親友が・・・。

2002年11月14日(木)
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